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ドリトル先生と京都の狐

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第二幕その四

「いや、いいね」
「これが京都のお酒なんだ」
「こんなに美味しいなんて」
「いやいや、これがね」
「これが?」
「京都は神戸と違ってね」
「京都に来る前に王子が言ったことだったね」
 先生もここで思い出しました、王子が先生にお話してくれたことを。
「京都で美味しいものを食べようと思えばね」
「そうなんだ、お金を出さないとね」
 美味しいものは食べられないというのです。
「ここはそうした街なんだ」
「お金持ちの街なのかな」
「そうした一面はあるよ」
 それは否定出来ないというのです、王子も。
「このお酒にしても高いお酒だから」
「お豆腐もかな」
「その他のものもね」
 どれもだというのです。
「京都の美味しいものは高いから」
「そういえばこのお料理の腕も」
 先生はここでお野菜を薄味で、しかも繊細に味付けたものを口にしながら言いました。口に入れただけでは味がしません、ですが。 
 その後で徐々にほのかに香りと共に風味が漂ってきます、そしてその盛り付けもとても綺麗なのです。そうしたところも手がかかっています。
 それで、です。先生はそうしたことまで見て言うのでした。
「凄いね」
「京都のお料理は職人だよ」
「料理人のだね」
「そうなんだ、京料理はそうなんだ」
「職人が作るものなんだ」
「だからこれもね」 
「職人のものだね」
「日本は職人の国でもあるからね」
 王子は皆にこのこともお話します。
「例えば食器も」
「あっ、この食器も」
 先生は今手にしている食器にも気付きました、どれも只の食器ではありません。黒塗りで赤い模様まであるそれは。
「漆だね」
「そう、漆塗りでね」
「職人が作ったものなんだ」
「漆塗sり職人がね」
 その腕を存分に使って作ったものだというのです。
「そうして作ったものなんだ」
「そうなんだね、これも」
「そうだよ、お箸もね」
「これが噂の漆塗りなんだ」
「そうだよ、だから洗うのもね」
 食器を使ったら絶対に洗わなければなりません、特に日本はそうしたことにはかなり気を使う国なのです。だからこの漆塗りの食器も洗うのですが。
「大変なんだよ」
「漆が剥がれない様に」
「この食器一つでもかなりの価値があるよ」
「具体的にはどれ位かな」
「先生のお家にある食器の優に百倍以上かな」
 値段にしてそれ位だというのです。
「とにかく高いよ」
「そうなんだね」
「うん、だからね」
 それでだというのです。
「この食器はどれもね」
「高いんだね」
「そう、凄くね」
 そうだというのです。
「陶器だってね」
「それもだね」
「凄く高価なものばかりだから」
「ううん、何かこうして食べているだけで」
 トミーはそんな高価な食器を使って高価なものを食べていると聞いてです、恐縮している顔で言うのでした。
「怖くなるよ」
「いや、怖くなる必要はね」
「ないのかな」
「うん、ないよ」
 王子はトミーにも言います。 
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