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MS Operative Theory

作者:ユリス
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MS戦術解説
  白兵戦➁

——白兵戦のシークエンス———その手順と効果——

 宇宙世紀の戦乱でも、幾度か人間同士の白兵戦が発生している。しかし大半は偶発的に白兵戦へと発展したもので、計画性のない単純な銃撃戦や格闘戦が行われたに過ぎない(損害が大きくなるので、計画的に実行することは困難である)。

 だが、中には周到な準備の上に行われた白兵戦もあった。その代表とされるものがU.C.0079,11,05、ジオン公国軍のランバ・ラル隊がWB隊に対して実施した「M3作戦」である。

 この作戦では、白兵部隊を安全にWBに接近させるため、母艦とMSを使った陽動を行ったうえ、白兵戦部隊の移動も特殊車両とパーソナル・ジェットを併用することで展開速度を格段にアップさせ、低空飛行を行っていたWBに進入した。

 作戦自体は失敗に終わったが、白兵戦を用いた制圧作戦としての完成度の高さから、ここにその全貌を紹介する。


➀陽動

 いかに強靭な肉体を持つ人間でも、近代兵器の威力の前には全くの無力である。このため白兵戦を行う場合は、徹底して部隊の存在を隠匿しなくてはならない。

 その方法として迷彩やステルス化といった技術があるが、別の場所に目立つモノ—————所謂囮である—————を用意することで、相対的に目立ちにくくするという手段もよく使われる。

 「M3作戦」では白兵攻撃を行う主力部隊の存在を隠すために、WBの正面にザクⅡと母艦であるギャロップを展開させ、ガンダムを誘い出した。ガンダムの出撃後、WBはラル隊を乗せた白兵戦車の存在に気付いたが、もはやMSでは対処が難しいところにまで接近されていた。


➁接近

 囮部隊による陽動があるとはいえ、白兵戦を行う主軸部隊が移動中に発見されないという保証はない。移動中、特に目標まで距離がある状態で発見されれば、人間で構成された白兵部隊など、火砲を受けて全滅する可能性も否定できない。そのため、白兵部隊は迅速に目標に接近する必要がある。

 また、部隊員が個別に目標にたどりついても、各個に撃破されてしまうため、それぞれの兵士が同じタイミングで目標に接近しなければならない。そこで「M3作戦」では、多数の将兵を同時に運搬できる白兵戦車「キュイ」を使用し、さらに兵員にパーソナル・ジェットを装備させることで、高い運用柔軟性と即応性を確保した。

 ラル隊は囮部隊が正面から陽動している間に、WBの右方向から2輌のキュイで接近。白兵戦部隊の全員がパーソナル・ジェットを使用し、一気にWBに着艦した。これに対しWBは、ラル隊が着艦するまで対抗策を講じる事が出来なかった。


➂侵入

 部隊単位で接近した後は、一斉に素早く侵入を行うことがベストである。「M3作戦」ではキュイで接近した後、パーソナル・ジェットでWBに着艦したところまでがこれに当たる。

 本来なら、空中にあるWBに進入するのは困難だが、個人に高い機動性を与えるパーソナル・ジェットは、低速で低高度を飛行していたWBへの侵入を容易にしただけでなく、部隊の展開速度をも大幅に向上させた(ラル隊着艦時、WBの防衛態勢は整っていなかった)。

 また、パーソナル・ジェットを使用した兵士の中には舷側だけでなく、ブリッジに到達した者もおり、一挙にWBを占拠することも可能であった。


➃戦闘

 「M3作戦」での戦闘は、艦外と艦内で行われた戦闘の二つに分けられる。艦外戦闘は文字通りWB内に進入するまでの戦いで、パーソナル・ジェット使用時や着艦直後に行われている。

 障害物が少ないためライフルが使われたが、敵の射撃も受けやすいために被弾確率も高く、艦外戦闘で死亡した隊員も多かった。一転して、入り組んだ通路と多数の部屋がある艦内での戦闘では、ライフルが使いにくいため、曲がり角や障害物に隠れた敵に効果的なハンド・グレネード(手榴弾)が多用された。

 手榴弾は小銃弾と異なり「投げ込む」事が可能で、爆発時に破片をまき散らすため、エリア制圧にも有効で、入り組んだ場所での使い勝手に優れている。実際、艦内に進入したランバ・ラル大尉は明けた場所ではライフル、障害物がある場所では手榴弾を使い分けていた。


➄占拠

 白兵戦に限らず多くの軍事作戦の目的は、重要施設の占拠や特定人物の確保などであり、敵部隊を全滅させることではない。

 例えば「M3作戦」の目的はWBの制圧・掌握であり、進路上の敵は排除するが、必要のない戦闘を行っている余裕はなかった。

 ただでさえリスクが大きい白兵突撃を実行しているうえに、敵は自らの母艦というホームグラウンドでの戦闘であるため、長期戦となれば攻撃側が不利になるのは明白であり、作戦を早期に終了させる必要があった。

 はっきりとした作戦目的と、それをまとめ上げる作戦立案能力、そして問題なく実行できる能力を持つ将兵こそ、白兵戦には必要なのだ。

 
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