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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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  volume-3 Fate Testarossa-Harlaown




 あっ……みんな来たの? どお? 話聞けたって……どうしてはやてとなのはもいるのさ。……あー最後まで言わなくてもいいよ。どうせはやてが面白そうって先導してなのはがそれに巻き込まれたんでしょ。何で分かるのってもう長い付き合いだからね。二人が何を考えているかなんてすぐに分かるよ。


 私の出した条件はクリアされちゃったか。はやてなら言わないと思ったんだけどなあ……。やっぱり私のことだからこうでもしないと逃げちゃうから? ……やっぱりそうか、今までそうして煙に撒いていたからなあ。


 ううん、言うよ。約束だからね。流石に私だって約束を破るようなことはしないよ。でも、気を付けてね。自分でいうのもあれなんだけど、本当に暗いから。……えっ? 知ってる? なんで!?


 ……うわっ、そんなにひどかったのあの頃の私。そっかあ……でも、そんなに暗くはなかったって? そんなことはないと思うけどなあ……。まあ、それは私が話していけばわかることだよね。別に話す気になったとかじゃないよ。だって約束しちゃったんだもん。守らなきゃ。……でも本当に聞くの? 大して面白い話でもないし、なのはみたいにキュンキュンする話でもないよ? それでもいいの? ……み、みんな楽しそうだね……。
 ……うん、私も覚悟決めたよ。話すからね。


 私、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは、義理の母親であるリンディ・ハラオウンと義理の兄であるクロノ・ハラオウン親子に引き取られて三人仲良く日々を過ごしていました。……えっ? そんな前口上はいらない? 私の話を聞きたいって言っておきながらそれは酷いよ。もうっ……しょうがないなあ……。


 ◯


 小学五年生になって早二か月が過ぎようとしていた。私と、なのは、はやての三人は保護者の了承も得て、学校生活と管理局での仕事を両立させていた。でも、私は最近それが出来なくなっている。勿論原因は私にある。でも、私が特段大きなミスをしたわけではない。いつも通りに勤務している筈なんだけど、五年生に上がってから小さなミスを何度もするようになっていた。


 仕事には影響しない程度のものだし、私自身問題ないと思っている。でも、リンディさん――――義母(かあ)さんに学校のテストのことも指摘されて何も言えなくなっちゃった。
 ここ最近のテストは、下がっている。ガクッと下がっているわけでもない。パッと見ただけじゃあわからないぐらいの下り具合なんだけど、義母(かあ)さんはすぐに見抜いた。確かに下がっている。でも、それは見直しをしなかったことによるケアレスミスにすぎない。いつもならするんだけど、最近見直しすらしなくなった。


 明らかに影響が出ているため、私には仕事を休むように言われている。それも今の状態から立ち直るまでの間。実質、無期限の長期休暇だ。勿論反対した。もっとなのはたちと一緒にいたいし、たくさんの人の役に立ちたい。でも、許してはくれなかった。渋々、従う。頭では納得していたけど、心は納得していないっていうのが一番あてはまると思う。


 心ここに在らずといった状態は今だってそう。今も授業中なのに窓の外ばかり見ている。私の席は窓際の一番後ろの席なんだけど、ちょっとするといつも窓の外を見ているみたい。自分では自覚がないから分からなかったんだけどね。いつもある人のことばかり考えている。


 三桜、燐夜。プロジェクトFから作り出されたクローン。それが私なんだけど、燐夜は私を私として見てくれた。それはなのはだって同じだったんだけど、一番最初にできた友達だった。
 私の実の母親、プレシア・テスタロッサは私に娘であるアリシア・テスタロッサを重ねていた。でも私はアリシアと違っていたから優しくしてもらえなかったんだ。私をアリシアとして見ていた。……私はそれがつらかったんだ。つらかったから、母さんに自分を見てほしくて何でも言われた通りにしてた。そうすると母さんは私を私として見てくれたから。


「――――――――」


 でも、燐夜は違ったんだ。最初の出会いは恥ずかしいものになっちゃったけど、私を私として見ていた。私をクローンだと知っても私だって言ってくれた。そ、その……可愛い女の子だって言ってくれたの。それがとても嬉しかった。嬉しかったから時間のあったときはいつも一緒にいたと思う。なのは、知ってた? あの時の燐夜の家、私が住んでいたところの隣だったんだよ? 知らなかったでしょ。


 それでね、いつも夜ご飯を一緒に食べて、たまに朝ごはんも一緒に食べて、時々、一緒に寝た。そうして燐夜と過ごしているうちにとても温かいものを胸の奥底に感じたの。でもその正体を知ることは出来なかった。私も分からなかったし、アルフも知らなかった。


「―――トーさ――。フェ―――ん」


 でも、その燐夜も突然いなくなった。リインフォースを救うために勝手な行動をして、どうせ私たちに迷惑をかけない様にって思ったのか多重転移魔法で逃げて。手紙を残していたのは嬉しかったけど、どうせなら面と向かっていってほしかったな。


 それからいろいろあって、とっても慌しくて目の前のことに精一杯だった。燐夜のことを考えていられないほどに。ようやく五年生になって余裕が出来てきてふと燐夜のことを考えちゃう。今どこにいるんだろうとか。元気なのかなとか。私のこと覚えているかなとか。
 もし私のこと忘れてたらどうしようって一番考えちゃう。もしそうだったら私はもう立ち直れないのかなって思っちゃう。それほどまでに燐夜が私の中で大きな存在だった。考えることは、燐夜に会いたい。ただそれだけ。


「フェイトさん!!」
「はひっ……はっ、はいぃっ!!」


 先生が目の前にいた。いきなり大きな声で呼ばれてびっくりしちゃった。そのせいで噛んだし。恥ずかしい。
 どうやら、考え事をしていて呼ばれていることに気付かないままで先生が心配して私のところまで来たということだったらしい。前の席の子に教えてもらった。
 教えてもらったことに感謝しながら、どうせならって思っちゃうけど、前の子は男の子だから何かあるのかもしれない。私には分からない領域だけどきっとそうなのだろう。なんか知らないけどものすごく嬉しそうだし。


 そういえば、先生に呼ばれた理由は算数の時間で黒板に書いてある計算式を解いてみるとのことだった。勿論、算数は得意な私。クラスメイトに迷惑をかけてしまったことに若干の居心地の悪さを感じながら前に出て解く。ちょっと難しかったけど、いつもやっている魔法の構築術式の方が難しいから難なく解く。
 席に戻ってそれを先生が確認してから答え合わせ。合っているか心配だったけど、その心配は杞憂に終わってくれた。良かったと一息つく。


 席に戻った私は、また窓の外を向く。そういえばと自分の首にかけてあるものを取り出す。燐夜が私にくれたネックレス。いつも燐夜が使っている剣が小っちゃくなって、黒一色の剣の重なっているところに金の石が埋め込まれているもの。
 私の大切な思い出が形になったもの。これが今一番近くで燐夜を感じられるもの。


 授業の終わりを告げるチャイムが鳴るのと同時に自然に瞳から何かがぽろっと零れた。それに気づいた私はみんなに見られない様に慌てて拭う。
 周りにいた人は気付かなかったようでこっちを見ている人はいなかった。


 さっきの数学の時間で今日の授業は終わりだから、帰る準備をする。すると、向こうからアリサが来る。


「フェイト、放課後時間ある?」
「うん、あるよ。どうしたの?」
「話があるのよ。あんまり時間は取らせないから残ってて頂戴」


 アリサは言いたいことだけを言って自分の席に戻って行った。私は特に気にすることもなく帰りのHRを受ける。
 そして放課後。クラスのみんなはもう教室から出て行って残っているのは私とアリサとすずかの三人。良く分からないけど、なぜか重苦しい雰囲気が流れていた。その雰囲気を切り裂いたのはアリサであった。


「最近、どうしたの? フェイトらしくないわよ。何か悩みでもあるの?」


 私は、燐夜のことについて話した。最初の友達で一番の友達であること。大切な人であること。なのにいきなり居なくなってしまったこと。それらを簡潔に話す。すべてを聞き終わった後、何かを確信したようにすずかが頷くを口を開いた。


「フェイトちゃん。そういう思いをね、恋っていうんだよ」
「恋?」
「そう、恋」


 ぽっかり空いていたように感じた穴が少し埋まったような気がした。今まで、この気持ちについて深く難しく考えてきたけど、考え過ぎだった。
 恋。好きっていう気持ちを言葉にしたもの。不思議と心に響いてくる言葉。


「多分、それでフェイトちゃんの悩みは解決すると思うよ。頑張ってね、応援しているから」
「うん!」


 そう言い残して二人は教室から出ていった。私は胸に手を当てて自分の鼓動を感じる。ドクンドクンを激しく脈打っている。とても心地よい胸の高鳴り。どうしても笑いを堪えきれなくて、にやけてしまう。
 ようやくわかった。この不思議な思いの正体が。とてもすっきりする。自分の顔は見れないから分からないけど、多分顔は赤く染まっていると思う。いや、間違いなく赤らんでいる。今すぐ会いたい。会ってこの想いを伝えたい。


「大好きだよ、燐夜」


 大好き。好きでは足りないから大好き。本当は大好きでも物足りないぐらい大好き。
 私の視界に霞かかっていたものが切り払われて鮮明になった瞬間だった。


 ◯


 ――――ふう、こんな感じかな。これでいい? ……ん? なんだかみんな心なしか顔が赤いよ。私のせいなの? ど、どうしてさ、私はただ言ってって言ったから言っただけなのにそんな反応をされたらどうすればいいか分からないよ……。
 でももういいでしょ。私だって恥ずかしいんだからね。もうっ……。この話、誰にも言っちゃだめだからね!


 あーあ、また燐夜と一緒に寝たいな。えっ、なのはも一緒に寝る? ええっ!? はやてまで!? うーん、さすがに三人はつらいんじゃないかな、ベットの大きさ的に。でも、四人で寝られたら楽しいよね、きっと。
 さあっ、仕事に戻るよ。まだどうせ終わってないんでしょ? ほらほら、さっさと終わらせよう。
 あ、そうだ。なのはとはやてって、夜空いてる? もしよかったら、義母さんとクロノと夜ご飯食べるから一緒に食べない?


 ほんと!? 分かった伝えておくね。じゃあね、またあとで。














 何処にいるのさ燐夜。……早く、会いたいよ……。





 
 

 
後書き



遅れてすいません! いろいろ立て込んでいてパソコンに向かっていられなかったんです。もう時間が足りないよ。

 
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