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関門トンネル

作者:一日一善
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1942年トンネル開通

2042年6月11日 門司駅下り線に突然昭和の貨物列車が到着
した。
列車はデッドセクションで立ち往生すると、古風な制服の運転士が
降りてきてキョロキョロしながらホームにおりた。

「私は試運転列車の運転士です。ここは本当に門司駅ですか?」

 この運転士は開通前に関門連絡汽船に乗り門司駅に来たことがあ
り、高層ビルなど一つもなかったのだ。

「ココは駅名標の通り門司駅ですが、貴方の列車は到着予定に無い
し、相当旧式のようですね。」

ホームにいた駅員が列車に見とれながら答えた。

「この列車は関門鉄道トンネルが開通して試運転として下関から始
めて乗り入れたのです。」

「今は2042年で関門トンネルが開通して100年経っているの
です。もし貴方の言っていることが事実ならアメリカと戦争してい
ませんか?」

「はい、今戦時中でアメリカから石油が入らなくなりました。」

「この後もこちらに列車がきますか?」

「この列車が折り返して戻ることになっています。」

「わかりました。同じトンネルに列車が一緒になると衝突の怖れが
あるので下関駅に連絡するので一緒に来て事務所で待機していて下
さい」

それから駅員は駅長に連絡したり、駅から政府の危機管理センター
に連絡したりと大忙しだった。

時の内閣野田○次郎総理大臣は歴史資料の印刷物やプロジェクター
に資源地図等を運転士に持たせて昭和へと送り出した。
連絡手段が列車だけなので政府部内で史実に介入がいいのか、その
まま敗戦がいいのか喧々囂々の秘密会議が続けられた。

支援するにしろ、しないにしろ実行したがいいこととやめた方がい
いことをまとめ昭和政府に提案した。
1:工作機械を新型にして防弾性能に優れた飛行機を開発すること
2:国内のスパイや中国人、朝鮮人を排除すること
3:戦艦は建造しないで静かな潜水艦を作ること
4:硫黄島やマリアナ諸島などに秘密のうちに洞窟の奥に飛行場や
  港湾の近くの丘に地下潜水艦基地を整備し守りを堅くすること
5:部下への体罰やいじめをやめること
6:ミサイルを開発し、レーダーやソナーを装備すること
7:このままでは敗戦は避けられないので、下関、広島、呉、水島
  を戦時収容して新世紀工業地帯にすること

東條内閣はミッドウェー海戦の結果や戦後資料を極秘に検討して未
来からの提案を全て受け入れ中国侵攻拡大の取りやめと満州への撤
収を関東軍に通達した。

御前会議が開かれ未来からの支援を受け入れるか、史実通りの歴史
をたどるべきかが検討され、未来の指導と、援助を無条件で受け入
れる事が決まった。


未来でも支援の順序や派遣人員が極秘のうちに決定され、特にアメ
リカやイギリス等に気取られることの無いように慎重に進められた

昭和への派遣人選では戦闘指揮に自衛隊からは航空統合幕僚長の齋
藤俊雄と海上統合幕僚長の石川克俊が決まり国土交通省や他の省庁
からも数人の派遣が決まり民間からも半導体やミサイルに製鉄やロ
ボット工学、発電送電、原子力や三菱重工などの潜水艦や飛行機の
設計製造に関係する多数の技術者が順次派遣される事となった。

石川克俊と齋藤俊雄が昭和の呉海軍工廠に赴任して、山本五十六と
会談をしている。
石川が
「もう充分体験したと思いますが、戦艦や空母だけでは資源の輸送
は出来ません。潜水艦から輸送船を守る護衛艦、また護衛艦には潜
水艦を探知するソナーが必要です。それに探知したら駆逐する爆雷
や魚雷が必要です。」
山本もその言葉に頷き
「空母4隻撃沈され、零戦も防弾が弱くて消耗が激しい、このまま
ではじり貧だ。」
齋藤が
「アメリカの潜水艦を駆逐するには、探知した潜水艦にはヘリコプ
ターで磁気探知爆雷を上から落とすのが最も堅実だと思う。」
石川は
「護衛艦を大量に建造するには時間がかかるので、輸送船をハイブ
リッド化してソナーとヘリを装備させるのはいかがでしょうか」
齋藤が
「アメリカの潜水艦が15ノット約30km/hの水中速度として
ヘリは150km/hは出るので輸送船のアクティブソナーの探知
距離を考慮すると被害は押さえられるかもしれません」
石川が
「対潜ソナーと爆雷を水雷挺に配備して、まず日本の周囲3000
km以内から潜水艦を排除するのが一番ではないでしょうか、駆逐
艦を建造するより鉄が少なくて済むので経済的だと思います。」
山本は
「零戦は旧式化するので総てフロートを付けて水雷艇に改造しまし
ょう」

鉄筋にセメントにフォークリフトからクレーンなどの工作機械が満
載で門司駅から送り出された。

未来からの幅2m縦8mのブロック部品で潜水艦の組み立てが始ま
り、ゴムや鉄板や電気溶接機が呉に届き未来からの工員が満州帰り
の兵に教えながら丁寧に組み立て指導していくので、2ヶ月もあれ
ば熟練工に成長するでしょう。

東北地震の時の貯水タンク建造の経験が生かされて、臨時の油層タ
ンクが下関や水島等に配置されて、舟の燃料や発電に使われはじめ
徐々に日本全体が活性化されている。

海軍工廠では巡洋艦の砲塔が下ろされ、エレベータが設置され、艦
橋にはフェーイズドアレイレーダーが設置され、対潜ソナー等には
あきづき型巡洋艦の部品が取り付けられていく。

古米や古々米等の過剰在庫品が列車に乗せられていくリサイクルの
衣類や解体材木なども全て古いコンテナに詰められ昭和では鉄材と
なる。

東京や大阪等では無差別爆撃の映像が見せられているので、全ての
施設を地下に建設する準備を始めていた。

名古屋は地震が立て続けに起きるようなので、海岸部は5年間立ち
入り禁止地区を徐々に増やしていく。

未来からのパワーショベルや農機具が未来からの石油で強靱な日本
に作り変えていく。



年末には対潜対空護衛艦が整ったので、南方に行った兵士と資源を
輸送船で台湾や本土に引き上げさせるとともに、現地の独立勢力に
武器を渡し指導訓練も開始した。

今年一年は絶対防衛権内の千島や南方の島嶼を要塞で強化しアメリ
カの飛び石作戦を頓挫させることに重点実行していく。 
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