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オズの五人の子供達

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第三幕その五

「だからね」
「それでなんですね」
「そうだよ、けれど味はね」
「美味しいんですね」
「あたしも腕によりをかけて作ってるからね」
 それもあるというのです。
「じゃあいいね」
「はい、食べます」
「頂きます」
「皆で食べようね」
 こうお話してでした、そうしてです。
 皆で食べます、そしてなのでした。
 そのローストチキンやシチューについてです、五人はお婆さんに笑顔で答えました。
「美味しいです」
「とても」
「そうだろ、美味しいだろ」
 お婆さんも食べています、満面の笑顔での言葉です。
「マンチキンのお料理はね」
「そうですね、本当に」
「サラダもパンも」
「プティングも美味しいよ」
 その青いプティングもだというのです。
「それもね」
「青いプティングですね」
「これもですね」
「そう、美味しいからね」
 それでだというのです。
「最後に食べてね」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
「プティングはあたしが最も得意な料理なんだよ」
「婆さんのプティングは絶品だぞ」
 お爺さんも言ってきます。
「もう一回食べたら忘れられないぞ」
「そこまで美味しいんですか。ただ」
 ナターシャはその青いプティングを見てです、お爺さんに答えました。
「見ただけでも」
「忘れられないかい?」
「青いプティングなんて私達の世界にはないですから」
 あちらの世界ではプティングは黄色いものです、ですから青いプティングが印象に残らない筈がないのです。
 だからです、こう言うのでした。
「見ただけで」
「忘れられないかい」
「それにお爺さんが飲んでいるものを」
「ビールだね」
「青いビールですね」
 黄色いものではありません、青いビールの上に白い泡があります。これもナターシャ達のいる世界にはありません。
 そのビールも見てです、ナターシャはお爺さんに言うのです。
「それも私達の世界には」
「あんた達の世界はオズの国とは全く違うんだな」
「はい、何もかもが」
 違うとです、ナターシャは今ではすっかり見慣れた青いパンを食べながら答えます。白パンが青くなっただけで味もかなりいいです。
「違います」
「あんた達の世界はいい世界かい?」
「いいって言えばいいですね」
 こう返したナターシャでした。
「悪いって言えば悪いです」
「そんな世界ですか」
「そうなんです」
 それがあちらの世界だというのです。
「私達の世界は」
「そうなのかい、辛くはないかい?」
「私達の世界にいてですか」
「うん、どうだい?」 
 青いビールを飲みつつです、お爺さんは五人に尋ねるのです。
「そうした世界にいたら」
「確かに辛いこともありますけれど」
「それでもなんだね」
「それはそれで楽しい世界です」
「そうか、じゃあどっちかっていうと」
「いい世界だと思います」
「そう思えているのなら何よりだよ」
 お爺さんはナターシャの言葉を聞いて笑顔で頷きました、そのうえで五人のお顔を見てこう言ったのでした。 
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