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lineage もうひとつの物語

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オーレン戦役
  エルモア兵

タラスの話が終わり席を立った。
皆に続き部屋を出ようとするが列はなかなか前に進まない。
「そういえば出口で便箋受け渡しがあるっていってたわね」と思い出し少しずつ進みだした流れに乗って足を踏み出す。
部屋の入り口に殺到している者たちから視線を外し振り替えってみると男女二人組が立ち上がろうとせず座ったまま話し込んでいるのが目に入った。
「あれが正解だわ」そう心の中で呟き自分の順番がくるのを待っていた。

しばらくして便箋を受け取り狭苦しい列から解放されぐっと背伸びをする。

「あー疲れた」

さて、これからどうしようか
もっと時間がかかると思っていたため1日戻らないと仲間に伝えてきたのだ。
特にやることもないため研修生だった頃お世話になった先生方へ挨拶するため研究室へ向かおうとすると不意に背後から声がかかった。

「先輩!お久しぶりです!」

振り返ると嬉しそうに手を振りながら近寄ってくる一人の若い女性。
さっき座り話し込んでたのはこの子だったのか。

「フィオナじゃないの。久しぶりね」

見た目はずいぶんと大人な感じになって成長したのがわかったが人懐っこい笑顔は変わらず昔を思い出させる。

「先輩は変わりませんね。相変わらず可愛らしいです!」

いつものやり取りを懐かしく思いほっとする。

「あんたもね。相変わらずだわ」

フィオナも研究室に用事があるようで一緒に向かうことになった。

一通り挨拶を終え一段落するとフィオナから村でお茶しないかと誘われた。
アジトに戻ったところで仲間は出掛けているだろうしこのままでも暇なので了承する。
この辺りは野生の動物しかおらずモンスターの類いはいない。
二人は研修生時代と同じように歩いて村へと向かった。



「変わってないなぁ。まだあの店あるのかしら?」

象牙の搭の村。
村という割に人通りが多く賑わいを見せている。
冒険者や研修生であふれかえっているので街と称してもよさそうに見えるが実際の住民は村レベルの人数しかいない。
かといって商店や宿の規模は村クラスではおさまらない。
そんな変わった村のいつも通っていたカフェを目指して歩く二人は昔話に花を咲かせていた。
目的の店に入ると店内は賑わっておりテーブル席は一杯なようだ。
仕方なくカウンターに並びマスターへ声をかけると覚えてくれていたようで歓迎された。
いつもの飲み物を注文し話し込む二人。
一時間くらい経っただろうか。

「すいません先輩。仲間と合流してもいいですか?」

会話石で連絡がきたようで眉間を押さえながらフィオナが聞いてきた。
あの隣にいた男だろうと思い承諾する。
そして10分くらいしてから眼鏡をかけ落ち着きのある男性が店内に訪れた。

「すまない待たせた」

そう言ってフィオナを挟んで反対側に座る男性。

「先輩、この人はナイルさん。一緒のパーティーにいるの」

そう言ってフィオナはナイルに向き直り

「こちらはアーニャさん。研修生時代の先輩ですごくお世話になった人」

アーニャとナイルは挨拶を交わしフィオナを中心とし世間話をしていた。

「アーニャさんのパーティーは参加するのですか?」

話が一段落ついたところでナイルが問う。

「リーダー次第ですが参加すると思います」

アーニャは「アレンなら絶対参加だわね」と思いながら答えた。

「そうですか、我らも参加は間違いないと思いますのでそのときは宜しくお願いします」

ナイルは手を差し出しアーニャはそれに応えた。

「こちらこそ宜しくお願いします」

二人で握手が交わされお茶会はお開きとなった。
全員の料金を支払ったナイルにお礼を言いアーニャは宿へ行くからと離れていった。

「フィオナ、アーニャさんの実力は?」

「努力家でね。卒業時点で三段階、と言えばわかるかな?」

「なるほど」とナイルは呟く。
象牙の搭の魔法科は三年で一段階の魔法を習得することを目標としている。
三年で習得できない場合は個人が本来持っている魔力量が少ないということになり、例え時間をかけ習得できたとしても魔力量が絶対的に足りなく実用性がない。
習得できなかった者の中には研究者となり魔法書の研究やアイテムの理論構築などで活躍しているものも大勢いる。
その三年という期限に三段階もの魔法を習得してしまったアーニャはかなり優秀な部類に入るだろう。
ちなみにナイルは二年で三段階を習得し飛び越し卒業している。

「戦力として期待できるか。」

「もちろん!だって先輩だもの!」

笑顔で言うフィオナにナイルも笑顔で返す。

「可愛いからって先輩に手を出しちゃ駄目だよ?」

「大丈夫だよ。そんなことに構ってる場合じゃないしな」

象牙の搭を眺めながらナイルは応える。
すると搭の最上階、デーモンがいるであろう8階外側に人影が見えた。
目を凝らして見るが遠くてよくわからない。
ただ、ローブがはためいているのが見えウィザードではないかと推測する。
嫌な予感がする。
ナイルが象牙の搭へテレポートしようとしたときだった。

「た、たすけてくれ!」

村の南入り口から負傷した四人組の冒険者パーティーが叫んでいる。
ナイルとフィオナは駆け寄りヒールを展開する。

「誰にやられた?」

戦士の傷が特に酷い。
フィオナに他三名の治療を託し戦士の治療にはいる。
続々と人が集まってきそれぞれに担架や病院の手配をお願いする。
刀傷と槍で突かれたような跡がみてとれる。
この辺りはモンスターがいないので野党に襲われたのだろうと推測するが。

「エルモア兵・・・エルモア兵のゾンビだ」

すると村の入り口に鎧姿の大剣を持ったゾンビ、槍を持ったゾンビ、杖を持ちウィザードであろうゾンビがのそのそとゆっくり近付いてきていた。
それを見た冒険者達が応戦する。
治療を終えたナイルは救援に向かおうとするがそのゾンビの後ろから次々とこちらに向かってくるのが見えた。

「くそっ!皆村の中に戻れ!戦闘に向かない者は負傷者を伴い避難を!」

叫びながらナイルは魔法を展開する。

「ファイアーウォール!」

村の入り口より外側に炎で出来た壁が出現した。
少しの時間だがこれで進撃は防げるであろう。
最初のゾンビは冒険者達に倒され動かなくなっている。

「西門にも大量にきている!」

先程応戦していたパーティーは西門へ半数が向かっていった。
そろそろファイアーウォールが消える頃である。
ナイルは呼吸を整えフィオナに告げる。

「もう一発壁を作る。その間にリーダーへ連絡を取ってくれ」

フィオナは頷き会話石を手にした。

「ファイアーウォール!」

ナイルの魔法詠唱が聞こえる中、フィオナはナターシャへ語りかける。

『ナタリシア様、モンスターの大群が押し寄せています。象牙の搭の村へ救援を』

するとすぐに了解の返事がきた。

「ナイルさん!すぐに来てくれるそうです」

ナイルは頷き魔法力を高めるため瞑想に入る。
他の冒険者達も戦闘準備を整え炎の壁が消えるのをじっと待つ。
そして壁が消え去ったと同時に戦闘が始まった。



西門でも壮絶な迎撃戦が繰り広げられていた。

「ちくしょう!どうなってんのよ!」

宿へ向かったアーニャであったが西門にて戦士が戦っていたので駆けつけたのだ。
ファイアーアローを打ち出し戦士達の援護に回りながらアーニャは叫んだ。
真っ先に西門で戦闘を開始したのは巨大な戦斧を軽々と振り回している戦士である。
一人旅なのか仲間は見えず一人で西門を守っていたのだ。
アーニャはすぐさまその戦士の援護に回り現在もその形のまま戦っていた。
ヒールで斧の戦士の体力を回復しながらファイアーアローで牽制する。

「ありがとよ!お嬢ちゃん!わしはガンドってんだ!よろしくな!」

ガンドは敵と武器を交えながらお礼を言う。
アーニャも名乗り防衛戦に徹していると冒険者達がかけつけてきた。
回りでは混戦となっているが徐々に押されているようだ。
しかもアーニャは魔力が残り僅かである。
そんな中、ガンドは衰えを見せず戦斧を振り回し次々とゾンビを駆逐している。

「ガンドさん少し下がりましょう!」

回りが少し後退してしまったためガンドが取り残された形になってしまっている。
それに気付きアーニャが進言したが遅かった。
周囲を囲まれ絶体絶命の危機となってしまったガンドは覚悟を決めたのかアーニャに大声で叫んだ。

「お嬢ちゃん今までありがとよ!危ないから下がってな!」

「だめよ!死なせない!」

アーニャはガンドに向かって走りながら魔法を詠唱する!

「覚えたてだけどちゃんと発動してよね。ファイアーウォール!」

ナイルと同じ戦法だ。
ガンドの前方に炎の壁が展開する!
それを見たガンドは振り向き後ろのゾンビを凪ぎ払う。
アーニャの魔力は枯渇寸前で額に大量の汗が浮かんでいる。
それでも負けじと次の魔法を唱える。

「効いてよね。ターンアンデッド!」

ガンドの死角から槍を突き出したゾンビから光が発せられ砕け散る。
その隙にガンドは包囲網を突破し倒れる寸前のアーニャを抱え味方の元へ無事辿り着いた。

「やったぜ!ねぇちゃん!」

周囲の冒険者達から歓声が上がり士気も上昇する。

「ここは任せておねぇちゃんを安全な場所に!」

ナイトと思える出で立ちの冒険者はガンドに声をかけ応戦する。
ガンドはお礼を言いアーニャを抱え村の広場へ向かった。

「アーニャ!」

一人のナイトが駆け寄ってくる。
アレンだ。
中央広場には次々とテレポートしてきた冒険者達が到着し戦闘準備を始めていた。
フィオナより連絡を受けたナターシャは各地のレジスタンスへ救援を要請しレジスタンスは街の冒険者達へ呼び掛けたのだ。
その結果膨大な人数が集結し広場はごった返していた。
各レジスタンスのリーダーが指揮を摂り向かうようだ。

「魔力を使い果たした疲労だろう。お嬢ちゃんのお仲間か?」

「ええ、アーニャを保護していただいたようでありがとうございます」

「いやいや、逆じゃよ。わしが助けられたのさ」

そしてガンドはアレンにアーニャを託すと前線へ戻っていった。
アーニャは意識はあるものの疲れはて動けないようだ。

「エレナ、アーニャを拠点に連れていって休ませてくれ。俺は残って戦う。」

エレナは頷きアーニャがテレポートスクロールを使えるよう助けエレナもテレポートしていった。

「よし、やるか!」

アレンは気合いを入れイスマイルを指揮官としたケント混成部隊の後を追った。

 
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