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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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フェアリィ・ダンス編~妖精郷の剣聖~
  第七十話 総力戦

「なんかよー、こうしてみると俺らって結構集まりいいよな」

「なにをバカなことを言っているのですか、まったく」

ルシフェルの呟きに反応したのは長い水色の髪をたなびかせるウンディーネ領主ドロシーだった。風にたなびく長髪を押さえながら呆れたようにため息を吐く。

「だいたい、私たちをここに召集した件の依頼人はどこにいるのですか?ぜんぜん姿が見えないじゃないですか」

「いやー、そこを俺に聞かれてもなー・・・っと、メールが来てたか・・・」

ウインドウをいじりながら話していたルシフェルはメールが来ていたことに気がつく。着信時間は今日のメンテが始まる直前だった。メールの中身を確認するルシフェル。そんな悠長なルシフェルにドロシーは再びため息を吐くと、警戒しながら周りを見渡す。
なぜここまでドロシーが警戒するのか。それは、この場に集まっている面子が原因であった。現在ドロシーたちがいるのはグランド・クエストが受けられる扉の前である。大人数が集まれるように扉の前には広場がもうけられているこの場所には、現在総勢二十三人の四グループが集結していた。それだけならここまで警戒することはなかったのだが、問題となるのが集結しているメンバーの顔ぶれだ。

「貴様、また仕事をしなかったらしいな!」

「はて、なんのことやら」

「貴様っ!!」

「おちつけ、兄者!」

なにやら内輪もめをしている火妖精の三将。

「で、誰からのメールだったんだ?」

「クライアントからだな」

「ほう。なんて書いてあるんだ?」

「何でも、依頼内容の変更だって。後、なんかおもしろいことが書いてあった」

「あいつ、僕たちを便利屋と勘違いしてる?」

「まぁ、こうして雇われてしまった以上仕方ない気がするがな・・・」

なにやら諦めムードの闇妖精の七大罪。

「なんで、俺がこんなこと・・・」

「ルシフェルの旦那の口車に乗せられた領主が悪い気がする」

「言ってやるなって。何でか知らないけど、あの人うちの領主の性格、深く理解してるのよねぇ」

落ち込む領主とその領主に聞こえないようにひそひそ話をする影妖精の六道。

「はぁ・・・」

「どうかした、ドロシー?」

「いえ、何でもありません」

水妖精の虹の一人として長い付き合いでもあるセレナが心配そうに声をかけてくるが、取り立てて言うほどのことでもないので、なんでもないと言うドロシー。あらためてドロシーは自分を見返してみると、こうして極度の緊張を保っている自分がばかばかしくなってきた。疲れをとるため軽く頭を振っていると、フォルテに詰め寄っていたサラマンダーの領主モーティマーが今度はルシフェルに詰め寄っていた。

「おい、ルシフェル!貴様の言うクライアントはまだか!」

「おいおい、そうがっつくなよ。気が短けぇなぁ」

かれこれこの場に四グループが集まってから十分ちょっとたっている。気が短い性格のモーティマーが我慢の限界だ、といいたげに今回の話しを持ちかけてきたルシフェルに噛み付いていく。

「だいたい、全種族で世界樹の攻略など・・・!」

「くどいぜ、モーティマー。その話ならすんでるだろうが」

「俺が言いたいのは、貴様の言うクライアントとかいう奴が信用できるのか、どうかと言うことだ!」

「・・・それにしても、遅いなー」

モーティマーの相手をするのに疲れたのか、はたまた別の理由があるのかルシフェルはこの広場につながる階段を見ながら口を開くと、怒りで顔を赤くしながらルシフェルに詰め寄ろうとしたが、そこで新たな声が響き渡った。

「ずいぶん騒がしいな」

「モーティマーだから仕方ないんじゃないですか?」

現れたのは大剣を背負ったノームと腰にダガーを装備したプーカだった。その後ろには三人のノームと五人のプーカもいた。

「よぉ、アラン、ロゼ。お前らんとこにうちの奴がいっただろ?」

「いーや、来てないな。ソレイユとかいう奴から伝言を頼まれたサクヤなら来たが」

「私のところにはルーが来ました」

「で、その二人は?」

「レプラに言ってからくるそうだ。少し遅れるみたい――いや、来たな」

アランが北の空に目を向けると、いくつもの人影がこの広場に向かって飛んでくるのが見えた。それと同時にこの広場に続く階段から三人のシルフが上がってくる。

「あれは・・・ケット・シーのドラグーン部隊か。随分ひさしぶりにみるな」

ドラグーン部隊。それはかつて一度だけ姿を現したケットシーの切り札。東西戦争でその猛威を振るい、それ以降はスクリーンショットの流出すらなかった伝説の戦士たちである。

「本腰入てんなー」

だんだんと大きくなる人影をみてルシフェルは感嘆するしかなかった。今まで平静を保ってきた各種族の重役たちが一斉にその重い腰を上げたのだ。その原因となっているのは間違いなくソレイユである。

「あーあ、大変な奴がきたもんだ」

これからはきっと楽しくなる。そんな予感が強いてならないルシフェルだった。



キリトとの和解を果たしたリーファは応援に駆けつけたレコンにゲートの入り口がある広場に通じる階段の前で堂々と宣言した。

「世界樹を攻略するのよ。この人と、アンタと、あたしの三人で」

「そ、そう・・・って・・・ええ!?」

そんなリーファにレコンは驚くしかなかった。そもそも、なぜ彼がここにてこんなことになっているのか。シルフ領に残り、パーティーメンバーであったシグルドの悪巧みを(ストーカー紛いな技術を使って)見抜き、それをリーファに(深夜という時間帯であるにも関わらず現実の電話で)伝えた。その後(必要とされるかどうかは別として)リーファの力になるべくこのアルンに来て、現実に絶望していたリーファを(ほめられた手段ではない方法であったが)励ました。そして言われた言葉が世界樹攻略という言葉だった。これで驚くな、という方が無理である。

「ユイ、いるか?」

だが、そんなレコンの反応を無視してキリトは愛娘を呼び出す。それを見たレコンが騒ぎだしユイが怯えるが、リーファによって鎮圧された。

「ユイ、あの戦闘で何かわかったか?」

「はい。あのガーディアン・モンスターは、ステータス的には高くありませんが、湧出パターンが異常です。ゲートの距離に比例してポップ率が増え、最接近時には秒間十二体にも達していました。あれでは・・・攻略不可能な難易度に設定されているとしか・・・」

「ふん」

「でも、異常なのはパパのスキル熟練度も同じです。瞬間的な突破力だけならあるいは可能性があるかもしれません」

階段を上りながらユイの説明を聞いたキリトはしばらくの間、歩きながら黙考した後リーファを見て口を開いた。

「・・・すまない。もう一度だけ俺のわがままに付き合ってくれないか。もう、あまり猶予がないきがするんだ・・・」

「・・・・・・わかった。もう一度だけがんばってみよ。あたしにできることなら何でもする・・・それと、コイツもね」

「え、ええ~」

巻き込まれたレコンは不満の声を上げるが、彼の意見が通ることはなかった。
決意を固めた三人(一人はまだ納得ができていないが)は再びグランド・クエストに挑むため、階段をかけあがっていく。そんな三人を石扉のがある広場で出迎えたのは四十四名(+α)のプレイヤーだった。それだけの数のプレイヤーがこんなところにいることにキリトたちは呆然としたが、それ以上にキリトが驚いたことは、まるで彼らがキリトを待っていたかのような雰囲気が見え隠れしているということだった。

「よう、やーっと来たか、少年!」

インプと思われるプレイヤーの一人が気さくにそう言ってくる中、キリトは混乱する頭をどうにか働かせ周りの様子をうかがう。その中に、見知ったシルフのプレイヤーとケットシーのプレイヤー、あとサラマンダーの二人のプレイヤーの姿を見つけることができた。キリトがその二人を認識するのと同時に、リーファもその二人を認識することができた。

「サ、サクヤ!?・・・と、アリシャさんも!?」

どうしてここに!?というリーファの驚きの声に二人の領主はさも当然といったように口を開いた。

「何を言っているんだ、リーファ。我々は世界樹を攻略するために同盟を組んだのだが?」

「そうそう。だからワタシたちがここにいいても不思議じゃないヨ!」

「そうれは、そうだけど・・・」

どこか納得のいかないリーファだったがもっともな意見を言われたためこれ以上追求することができなかった。

「そういえば、少年。同盟で思い出したんだが――スプリガンとウンディーネが同盟を組んでるんだって?」

思い出したような表情でルシフェルはキリトの肩に組み付き顔をのぞき込むようにしてそんな爆弾発言をした。それに反応したのは三人のプレイヤーだった。

「なんだと!?貴様等、いつの間にそんなことを?」

「そうだったか、ドロシー?」

「いえ、記憶にありませんね」

「い、いや、それは――」

「それに、少年。君はその同盟の大使と言うじゃないか」

言い訳をしようとしたキリトだったが、またしてもルシフェルの爆弾発言にキリトの背中には冷や汗が伝うのが止まらない。後ろにいたリーファも顔をひきつらせながら冷や汗を流している。頼みの綱のサクヤアリシャはおもしろそうに成り行きを見ているだけで何も言ってくれそうになく、ユージーンは自業自得だ、といわんばかりの表情でことの成り行きを見ている。援軍なんか期待できない。あのときのようにあれは嘘なんです、といえたらどれだけ楽なことか、などと思いながら必死に言い訳を考える。

「おい、お前、名前は?」

「キ、キリトです・・・」

シェイドに名前を聞かれて緊張しながら答えるキリト。何かを言おうと、シェイドが口を開きかけた瞬間それを遮るものがいた。

「おーい、シェイド。少年のことを問いつめんのもいいがTPOを考えてくれよー」

「う、うるさい!そんなこと、お前に言われなくてもわかっている」

ルシフェルだ。未だにキリトの肩に腕を回してもたれ掛かる状態だがしっかりとフォローを入れるあたりそれほどことを大きくする気はないのだろう。

「さて、少年。ここにいる全員あるやつに雇われていてな」

「へっ?」

「お前の手伝いをしてくれってそのクライアントから言われてんだ」

「へ?え、えっと・・・?」

ルシフェルの言いたいことがわからないキリト。そんな困惑しているキリトにルシフェルはニッと笑いながら言い放った。

「つまり、だ。少年が世界樹の上に行くサポートをここにいる俺たちがするってことさ」

その言葉を聞いたキリト、リーファ、レコンはすぐにその意味を理解できなかった。だが、そんな三人を差し置いてルシフェルの言葉に異議を唱える者がいた。

「ちょっと待て、ルシフェル!なぜそんなことになっている!?我々は世界樹を攻略するというから集まったんだぞ!!」

言わずもがな、モーティマーである。

「仕方ねぇだろ。クライアントからそう言われたんだから。ああ、あとサプライズゲストが来るとかなんとか。それに、もう報酬受け取っちまったんだからやらないなんて腰抜けたこと言わないよな?」

腰抜けを強調して言うとモーティマーは憤怒の表情を浮かべながらも口を噤んだ。プライドの高いやつほどコントロールしやすいよな、とルシフェルはそんなモーティマーのことを見ながらそんなことを呟く。もちろん心の中で、だ。口にした日には戦争なんてことになりかねない。

「(いや、でも、そっちの方が面白いよな)」

ソレイユというバグ級の強さを持つプレイヤーもいるわけだし、戦力としては申し分ない。なんてことをルシフェルが考えていると、プーカの領主であるロゼが一歩前に出て軽く挙手をしながら口を開いた。

「あの、一ついいですか?」

キリトたちを含めた視線がロゼに集中する。当然、ルシフェルも考えを中断させてロゼに目を向ける。

「私たちプーカはグランド・クエストに挑んだことがないので、どういうものなのかわからないのですが・・・」

「あー、そういや、俺達もだな」

今まで仕切っていたルシフェルだが、インプも世界樹攻略に挑んだことはない。もっと言うならシルフ、ケットシー、ノーム、レプラコーン、スプリガン、ウンディーネも挑んだことは皆無である。つまり、九種族の中で世界樹に挑んだことがあるのはサラマンダーだけということである。

「で、そこんとこどうなのよ、モーティマー?」

「・・・貴様に答える義理はない」

先ほどのことを根に持っているのか、ルシフェルの問いにモーティマーは答えなかった。だが、ルシフェル達が求めた答えは(彼らにとって)意外な人物からもたらされた。

「あのクエストは天蓋にあるゲートまでたどり着くという簡単なものだった。けど、湧出パターンが異常なガーディアン・モンスターがそれを阻んでくるんだ」

キリトだった。もたれ掛かっていたルシフェルを引き離しながら、ここにいる全員に向かって先ほど得た情報を開示していく。それを聞いたルシフェルは二、三回頷くとモーティマーに向かって口を開いた。

「そうかそうか。で、どうするんだ、モーティマー?」

「・・・・・・」

ルシフェルの言いたいことを理解したモーティマーは苦虫を噛んだような表情でルシフェルを睨み返す。だが、ルシフェルはどこ吹く風でその視線を受け流す。
数秒にらみ合いが続いた後、モーティマーは渋々とした感じで口を開いた。

「・・・・・・前衛にサラマンダーとシルフ。中衛にインプ、ウンディーネ、ケットシー、ノーム、スプリガン。後衛にレプラコーン、プーカだ。インプ、ケットシー、ウンディーネは前衛のサポートを。スプリガン、ノームは後衛のサポートだ。質問は?」

「特にねぇよ」

モーティマーがルシフェルを睨みながら言うと、ルシフェルはニヤリッと笑いながら言葉を返し、他の種族の領主たちもモーティマーの作戦に異議を唱えなかった。だが、モーティマーの言いたいことを理解していない者もいた。

「え、えっと、俺はどうすれば?」

「・・・・・・貴様は前衛と一緒だ。俺たちは貴様をサポートしなければならないらしいからな」

ここで漁夫の利を得ようとして動けば即座に他の種族たちから攻撃されるのは目に見えているため、うかつに動くことができない。ならば、もう諦めてさっさとこんな作戦終わらせるに限る、とモーティマーは心の中で思う。

「・・・さっさと行くぞ」

そう言って石造りの扉へと歩を進める。その姿を見たルシフェルは面白そうな表情で呟いた。

「なんだかんだで一番やる気になってるのってあいつじゃね?」



「うおおおおおおおお!!」

「元気がいいねぇ」

鬼神の如く闘うキリトの姿を遠目で見たルシフェルはほのぼのとそう呟く。

「馬鹿なこと言ってないで、ちゃんと戦ってください!」

「へいへい」

ドロシーに注意されながら思考を闘いへと引き戻すルシフェル。現在は入り口から半分くらいの距離まで前衛陣が昇っている。キリトを囲うようにサラマンダーの二人とシルフ勢が守護騎士たちを倒していくが、処理が間に合わずキリトの方へと抜けてしまう。それをキリトはしょっていた大剣じみた片手剣でバッサバッサ斬り倒していく。その近くではリーファもキリトの背を守るように立ち回っていた。
中衛陣はウンディーネが前衛を中心に支援魔法及び回復魔法をかけ、インプは専ら前衛が手の回らないアウトレンジの敵を魔法で屠り、ケットシーのドラグーン部隊もその火力を生かして守護騎士たちを薙ぎ払っていく。

「うーん・・・ロゼ、こっちに支援もらえねぇか?」

「無理ですっ!っていうか、話しかけないでください!!こっちはこっちで手一杯なんです!!」

ルシフェルの要請にロゼは必死の形相で叫んだ。
プーカは楽器演奏と歌唱を得意とする種族である。一見すると、戦闘では役に立たない娯楽のみの種族に見られがちだがそんなことは断じてない。なぜなら、プーカの行う楽器演奏や歌唱は味方のパーティー及びレイドにバフを与えることができるからだ。だが、それだけなら支援魔法で事足りるという声も上がるだろう。しかし、支援魔法とプーカが行う楽器演奏や歌唱とでは大きな違いがある。それは――持続時間である。通常の支援魔法では○秒間や○分間など時間的な制約が付くのが当たり前である。その制約がなかったとしても支援魔法を使うたびに魔力を消費してしまうこともデメリットにつながるだろう。魔法だから仕方がないと言えば仕方がない。だが、プーカの楽器演奏や歌唱は魔力を必要とせず、スキルさえとっていれば発動は可能であり、尚且つその演奏を行っている限りバフは有効とされ支援魔法との掛け合せもできるため、今回の様な団体戦においてプーカから得られるバフと言うのは非常にありがたいものがある。
しかし、守護騎士たちは容赦がなかった。

「・・・くぅ~!?」

六詩人(ローレライ)の誰かが苦悶の声を漏らす。プーカの行う楽器演奏は使用者にしか見えない“楽譜”と言うものが存在し、右から左に流れていく音符を正確に弾かなければならない。今、六詩人(ローレライ)が演奏している曲は六重奏(セクステット)の曲であり、その効果は一人で行う楽器演奏で得られる効果の約七倍となっているが、その分難易度は格段に上がる。一人でもミスをすれば即座にファンブルしてしまうし、“楽譜”も通常のものより高難度になっている。だが、それだけならば最古参で演奏し慣れている六詩人(ローレライ)たちには何の障害にもならない。問題となってくるのはこの場に湧出する守護騎士たちだ。彼らはプーカに好きにはさせないと“楽譜”に偽の音符を交えたり、一時的に楽譜を見えなくしたりと色々な細工をしてくる。そのため、プーカ達は何とか曲を繋いでいるため、他の場所へ気を回す余裕がない。また、プーカの周りでは演奏を物理的に妨害してこようとする守護騎士たちをノームとスプリガン、レプラコーンがプーカを守りながら戦っている。

「このままだとジリ貧で負けるな」

そうボソッと呟くルシフェル。あらためてこのクエストにたった九人で挑んで無事生還してきた初代領主の凄まじさを痛感した。だが、無い物強請りをしていても仕方がない。また、先が見えない状況での強化魔法(エンチャント・スペル)は自殺行為だ。ポーションはできる限りは持ってきているが、それでも数には限りがある。なのでルシフェルは魔法の詠唱に入った。
ふと上を見上げてみると、前衛陣は四分の三まで上り詰めていた。



「ドアアアアアアッ!?」

「おいおい・・・」

気合の入った声と共に剣を振るうのはユージーン。相も変わらない湧出する守護騎士たちの数に呆れながら剣を振るうのはフォルテ。モーティマーは戦闘に向かないのでここにはいない。

「・・・一つ聞いていいかしら、フォルテ?」

「どうした、セリーヌ?」

脇からキリトに近づこうとする守護騎士を屠りながらシルフ五傑のセリーヌがフォルテに近寄り話しかけてきた。それをフォルテは守護騎士たちの相手をしながら応じる。

「前にサラマンダーがこのクエストに挑んだ時もこんな感じだったのかしら?」

「ああ、まさしくこんな感じだった」

その時を思い出しながらしみじみと頷くフォルテ。それを聞いたセリーヌはそう、と頷くと魔法を詠唱して発動させる。四、五体の守護騎士を倒すがすぐに湧出してしまうため、焼け石に水状態だった。
チラリッとキリトの方を見るが、あちらもなかなか芳しくない状況だ。前後左右からの攻撃をサラマンダーとシルフが防いでくれているため、一回目挑戦した時よりも天蓋に向かうことに集中できるのだが、それでも四分の三を超えたあたりからの守護騎士たちの異常なほどの湧出にたたらを踏んでいる状態だった。

「おおおッ!!」

倒せども倒せども減らない敵の数。それどころか増えてるようにさえ錯覚する。それが錯覚ならどれだけよかったことか。残念ながら、それは錯覚などではなく現実だった。ありえない湧出数。それはまさしく数の暴力と言うにふさわしかった。

「・・・・・・っ!?」

せっかくリーファが力を貸してくれてるのに、立場に関係なく協力してくれている人たちがいるのに、そんな思考がキリトの脳裏を横切った。そして、それは致命的な隙となってしまった。

「ぐっ!?」

近くまで接近していた守護騎士の一撃をキリトが喰らってしまったのだ。そのことに前衛陣の注意が一瞬だけキリトに向いてしまった。その隙を逃がすまいと守護騎士たちはいっせいに妖精たちに襲い掛かっていく。何とか持ち直そうとするキリト。だが――

「キャア!?」

リーファの悲鳴に守護騎士が正面から迫っているにも関わらずキリトはとっさに後ろを向いてしまった。その隙を逃すほど守護騎士たちは甘くはなく、掲げた剣を振り下そうとした瞬間、一陣の風が駆け抜け――

パリィンッ

と何かが砕け散る音とともに呆れを含んだ声がドーム内に響き渡った。

「ったくよぉ、お前等、ちとだらしなさすぎなんじゃねぇの?」
 
 

 
後書き
ハッピーバレンタイン!!
私はあげる人もくれる人もいないけどね!!

ソレイユ「初っ端から愚痴が入ったよ」

ルナ「しょうがないよ、字伏だもん。それより、はいこれ」

ソレイユ「おっ、サンキュー!」

コラーッ!?ここはイチャイチャ禁止だぞ!!あそこに一ヶ国語で書いてあるだろう!!
って、言ってる傍から何をしてるんだっ!!やめれー!!もう字伏のライフはゼロよ!(はやっ
だ、だめだ・・・口じゃあいつらとまらねェ・・・
そ、それじゃあ、感想などお待ちしてます・・・(ガクッ 
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