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正義と悪徳の狭間で

作者:紅冬華
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導入編
麻帆良編
  導入編 第4-M話 許可証

マナにあとで街を案内してもらう約束をして、本校女子中等部の学園長室がある建物にやってきた。

「こんにちは、Mr. 高畑、今日もよろしくお願いします」
「ああ、長谷川君、よろしく」

少し老け顔の男性と握手する。
彼は高畑・T・タカミチ、関東魔法協会の有名な実力者で、アイシャの元同級生らしい。
ついでにいうなら表の顔は私の担任になる英語教師だ。
昨日の朝に麻帆良にやってきたときにも簡単に案内(兼監視)をしてくれた。

「昨日はよく眠れたかい?」
「はい、おかげさまでよく眠れましたよ。あちらとの違いには少し慣れませんが」
そういってエアガンに偽装された魔法銃を服の上から撫でる。

「あはは…君の事情を考えると理解はできるけど、さすがに…ね。
武装解除までは求めないけど、抜いたらだめだよ?」
「わかってますよ、遥かに格上の高畑先生と学園長先生相手にケンカ売るほど命知らずじゃありませんから」

そんな事態になったら、そんなことする間に結界か転移の魔法符を発動させる、常識的に考えて。

そんな話をしていると学園長室についた。Mr. 高畑が扉をノックする。
「高畑です、長谷川君を連れてきました」

少ししてから入室の許可が出て、Mr. 高畑が扉を開けてくれた。
「失礼します」
そういって入室し、前に進む。

そこには長い後頭部が特徴的な老人がいた。彼こそがこの街の支配者である近衛近右衛門だ。
「お初にお目にかかります、Mr. 近衛、アンブレラ社のエージェントをしております長谷川千雨と申します」
そういってお辞儀をしてアンブレラのペンダントを見せる。

「ワシが近衛近右衛門じゃ、この街の魔法使いの長をしておる、長谷川殿いやMiss. レインと呼ぶべきかの?」
「そうですね、この街の住人としての私は長谷川千雨ですが、
今、私はアンブレラのエージェントとしてここにおりますのでレインとお呼びいただいても問題はないかと」
「フム、そうじゃな。では早速協定内容の確認といこうかの」
「ではさっそく」
そういって事前にアンブレラと関東魔法協会で結ばれた内容を書いたギアスペーパーを渡し、その写しを読み上げていく。

…まあ、アンブレラのエージェントが正規に現地の魔法協会の支配地域で活動する際に結ぶ定型そのものだが。

端的に言うと、アンブレラのエージェントが魔法協会の支配地域で武装を含めた魔法関連商品の売買をするにあたり行う『支配地域内での』活動に関する誓約で、

1. 魔法関連商品は正規の居住者および滞在者のみに販売する事
2. その魔法協会における禁制および規制には従う事
3. 魔法関係者以外に対する商取引は魔法の秘匿および現地の法律を極力守る事

この三つを関東魔法協会の決まりや日本の法律に関してある程度細かく記述している。
たとえば一般人の使用する火薬式の銃器および弾丸の携帯禁止もこれに含まれる。
…共用の魔法式の銃火器は規制はあるものの許可されているけど。
私は向こうでも付加魔法付きの弾丸入りの弾倉を常に携帯していたが基本は純粋な火薬式だった。
現在は異空間倉庫にいくつかの銃器を魔法式の弾丸を装填して携帯しているが、基本はB2弾タイプの偽装銃を使っている。

「以上で相違ないでしょうか」
「うむ、問題ない、ではサインしてくれるかの」
Mr. 近衛から一度ギアスペーパーを受け取り、羽ペンでサインをする。

そしてそれと引き換えに一枚の羊皮紙を受け取る。
麻帆良における武装の売買許可証だ、これがないといろいろ面倒なことになる。

「ありがとうございます、Mr. 近衛」
「これで終わりじゃな、商売だけではなく学生生活も大切にの」
Mr. 近衛…いや学園長が穏やかな顔でいう。

「はい、そういったことを身をもって知るために来ているのですし」
そう、私も微笑み返す。まあ、楽しめるかはともかく楽しむ努力はしよう。


ちなみに、関東魔法協会の場合はこの学園都市といくつかの拠点の敷地が『支配地域』にあたり、
関東一円の殆どを『管轄地域』にしている。管轄地域はその地域に対していくつかの事項に優越権を持つが領土ではない。

この国の魔法組織は大きく分けて3つあって、関東一円に強い影響力を持つ『関東魔法協会』、
京都を本拠地とし、近畿地方を中心に拠点を有する『関西呪術協会』、それに『異能力者互助連絡会』だ。
アンブレラの日本支部も異能力者互助連絡会に所属している。

関東魔法協会がメセンブリーナ連合と関係が強く、明治維新後に立ち上げられた新興組織、
関西呪術協会は陰陽寮を前身とし、明治維新とその後の遷都に伴って現在の形となった元国家機関の歴史ある土着組織だ。

異能力者互助連絡会は…まあ、その他の小さな組織やどちらにも属さないいわゆる野良術者などが緩く結合した組織で登録人数こそを圧倒しているが、どちらかというと衝突を避けるための話し合いの場というべきものだ。
アンブレラが関東魔法教会と個別にこういう契約をしている時点でお察しってやつだ。

その歴史から国土と国内の安寧を第一に考える日本の守護者を自認する者が多い関西と、
世界平和や慈善活動大好きな理想家が多い関東に、自治組織の連合組織の側面を持つ互助連絡会
…まあ、お互い仲が良いとは言えないが、そんなに悪いわけでもない。

土着魔法使いの過激派は西洋魔法使いが世界大戦期における日本への肩入れを邪魔したと考えてるし、
西洋魔法使いの過激派は土着魔法使いが特に大分裂戦争とそれに伴う荒廃を顧みないと考えている。

だが、実際の所、それは恐ろしく一方的な物の見方どころか言いがかりの類で、
もし第二次大戦に呪い(まじない)以上の肩入れ、つまり前線に出て言って直接参戦とかやらかしていれば、正面戦闘に優れる西洋魔法使い達も出張ってきて、魔法の秘匿何それおいしいのになった挙句に、余計不利になっただろう…という予測の元に大多数派の理性的な連中が少数の馬鹿を抑えていたというのが事実だ。
逆に、大分裂戦争云々は土着系の魔法使いたちからすると存在すら知らない方が多かった位遠い世界の出来事なのだし、参戦義務やらがあるのはメセンブリーナ系列の関東魔法協会だけだ。
そしてそれぞれの思惑はあるものの、関東魔法協会からの支援要請に応じて、国内の霊脈等の維持や妖怪、組織間の均衡に支障が出ない範囲で義勇兵や人道支援はしっかりやったのだから、こちらも完全に言いがかりだし、
むしろ当時の地球出身の西洋魔法使いの世論としては、アフガニスタン紛争をはじめとする冷戦の諸問題やその他もろもろで忙しい時期にそれ放り投げて魔法世界に召集される事に不満が出てたりしたのが本当の所らしい。

とにかく、仲が良い訳ではないが、衝突にまで発展するのはごくまれな事態で、他の組織にちょっかいかけて捕縛されるのは建前ではなく、本当に組織の意向を無視したような連中か魔法使いにとってもアウトローな連中位だ。

こほん、話がそれた。

「そうじゃったの、長谷川君…君が麻帆良で過ごす日々がよいものであるように祈っておるよ」
「はい、ありがとうございます、学園長先生。それでは失礼します」
お辞儀をして退出する。私の後ろでずっと控えてくれていた(そして私を監視していた)高畑先生と一緒に





「ふぅ…木乃香と同い年の少女が…のう。やはり世の中ままならんものじゃ…」
そのつぶやきを私が聞く事は無かった。





「長谷川君、この後はどうする予定かな?」
高畑先生と廊下を歩いているとこんな事を聞かれた。

「はい、一件依頼を済ませてからm…友人に麻帆良を案内してもらう予定です」
「…アイシャからの定期便かい?いつもエヴァが楽しみにしているよ」
まあ当然想像はつくだろう、月一程度手紙のやり取りをしている様だし、高畑先生は二人の高校の同級生だ。

それゆえ、私が会った事もないアイシャの『麻帆良に残してきた大切な人』については私より詳しい。
…私には二人の関係が家族か親友か恋人かお気に入りの玩具かはわからないが。

「まあ、守秘義務って奴で明言はいたしかねます」
だが秘密配達のオプションはついてないにせよペラペラ詳細を話す様な事はできない。

「ああ、そうだね。それじゃあまた明日、入学式でね」
「はい、それでは高畑先生、失礼します」

校舎の玄関で先生と別れて配達先に向かう事にした。

 
 

 
後書き
・異能力者互助連絡会について
ふと思う事があって4巻の学園長のイメージした勢力図をみると、関東魔法協会と関西呪術協会って、
東西日本の分割支配っていうよりは、それぞれ関東地方と近畿地方を支配してる、という方が正しそうだったので、
他の地域はどっちでもない小組織、それこそ『山伏連絡会』とか『東北イタコ会議』とか、いっそ『アイヌ呪術文化保存会』とか、わざわざ『京都』神明流と名乗るのであれば、京都以外の『神鳴流』とかありそうだなーと言う妄想がわいてきたのででっち上げてみました。
三者協議会とかもやってて、歴史的に見て、土着の面々は関西を日本の魔法関係の盟主と仰いでるけど、正面戦力でいえばメセンブリーナの支援を期待できる関東、登録者でいえば互助連絡会が圧倒してて…といった感じ。
UQホルダーみたいな組織が堂々と加盟できるほどかは別として、妖怪ではなく亜人(刹那の父方にあたる烏族とか、小太郎とか)に分類される人たちは普通に互助連絡会に所属しているイメージ。

ただ、日本の魔法関係者で一番対人の正面戦闘に向いてるのは西洋魔術師で、その次が陰陽師ですかね。
イメージ的に(日本の)ほかの組織って戦闘って言っても対妖怪とかメインで対人戦って苦手そうなんです。

修学旅行編のネギ君にぼろ負けしてた千草さんとか考えると、対人の正面切っての殺し合いとかあくまでおまけっぽいんすよねぇ…組織間の均衡が保ててるという前提に立てば。

私の独断的な考えですが、関西呪術協会の中心をなすであろう陰陽師の仕事って暦作成(昔は)、対魔、対神(精霊やら土地神扱いの大妖怪なんやら?)、霊脈や霊地の管理など、風水的な事etc…

呪いや呪い返しによる非直接戦闘や、退魔戦闘+α程度だったんじゃないかなーと…いえ、西洋魔法にも本来そういう呪いの類あるんですけどね、原作で出てこないもんで… 
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