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戦場のメリー=クリスマス

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第五章

「あんなものを毎日食ってるんだぞ」
「あのマーマイトとビスケットですね」
「それとアメリカで出したら一日で店が潰れるレベルのオートミールな」
 缶に入っているのだ、オートミールも。
「それとぱさぱさのパンしかないんだぞ」
「あれはないですね」
「あれと比べたらずっとましだろ」
「はい、スパムも」
「それに俺達は確かにスパムがやたら多いがな」
 それでもだというのだ。
「他にも一杯あるからな」
「ステーキもアイスもありますしね」
「パンケーキもな」
 とにかく食うものには困っていない、アメリカ軍は。
「だからスパムにも我慢するしかない」
「そうなりますね」
「スパムに飽きたらイギリス軍を思い出せ」
 軍曹はオズバーンだけでなくジョーンズとリックにも言った。
「あんなまずいものしかない連中より俺達はずっとましだ」
「はい、わかりました」
「俺達はイギリス軍よりましです」
「それも遥かに」
 三人もこれで納得した、そんなことを話しながら食事を摂ってだった。そのうえでまたトラックに乗り込み目的地に向かうのだった。
 目的地まで着いたのは夜だった、目の前には野営地がある。ジョーンズはその野営地に翻っている旗を見て言った。
「何だよ、ユニオンジャックかよ」
「ああ、そうだな」
「イギリス軍だな」
 オズバーンとリックもジョーンズの言葉に応える。
「俺達の輸送先はイギリス軍だったか」
「アメリカ軍じゃなかったんだな」
「というと俺達はマーマイトを輸送してきたのか」
「そうなるのか?」
「ああ、輸送したのは食いものと飲みものだがな」
 軍曹がここで話す。
「マーマイトじゃないのは確かだ」
「アメリカ軍にはないですしね」
「だからですね」
「あんなものアメリカ人が食うか」
 軍曹はマーマイトをまるで悪魔の食事の様に言い捨てた。
「食えたものじゃない」
「そうですね、確かに」
「マーマイトはないですね」
「あれだけは」
「ああ、ただこれは元々予定に入っていたが」
 軍曹はマーマイトから別の話をした、その話はというと。
「俺達は今日はこの野営地で泊まる」
「それで明日の朝ですね」
「その時にここを発つんですね」
「そうなる、朝にはガソリンの補給も受けてな」
 トラックのそれのだ。
「そうしてだ」
「それからですね」
「基地に戻るんですね」
「そうなっている、まあイギリス軍の飯には期待するな」
 休憩時間の時に話した通りにだというのだ、このことについては。
「どれだけまずくてもな」
「そこは我慢してですね」
「腹の中に入れろってことですね」
「クリスマスだろうが何だろうがイギリス軍はイギリス軍だ」
 食事は期待出来ないというのだ。
「世界を股にかけてても食いものを美味くする才能はないからな」
「それがどうもわからないんですけれどね」
「世界中で美味いものを食ってるでしょうね」
「美味いものを食ってもそれを再現出来ないんですね」
「ある意味才能だろうな」
 軍曹は皮肉めいた声でこうも言うのだった、三人に。 
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