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lineage もうひとつの物語

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ギラン
  アーニャと家族

ホワイトナイツの面々はギランへと向かって街道を進んでいた。

「お父さんお母さん元気かなぁ」

そうぼやくアーニャ。

「そういえばギラン出身だったわね」

エレナは思い出したように答える。

「そうか、会いに帰ってあげなよ。安心させてあげなくちゃな」

両親のいないアレンにそう言われると弱い。

「ちょっとだけ顔出すことにするかなぁ」

アーニャの言葉を聞き二人はにこやかに微笑んでいた。

ギランに到着した三人は宿をとり一旦荷物を下ろす。
そしていつものように会議が始まった。

「さて、いろいろ考えたんだけどここを拠点に動いた方が何かと便利だと思う。どうかな?」

二人に問うアレンは自信なさげだ。

「王国の中央に位置するしいいんじゃないかしら。でも資金が足りないわね」

エレナは財布の中身を見ながら話す。

「修練も兼ねてここから比較的近いドラゴンバレーに行きながら資金貯めようか」

さすが出身なだけあって地理に詳しいアーニャ。
二人とも賛成なようだ。

「ドラゴンバレーってあの竜の墓ってとこ?たしか強いアンデッドが大半だったと思うけど」

アレンは記憶を頼りに思い浮かべる。
座学は苦手だったが旅に役立ちそうなことは頑張ったかいがあったようだ。

「そう、他にコカトリスやパーピーとかも棲息してるよ」

アーニャは得意気に話し修練に適しているとも付け加えた。

「奥地は危険だから手前でね。ドラゴンがいるとも限らないし」

エレナはエルフの森で戦ったドラゴンを思いだし注意を促す。

「自信がついたら各地のケイブを回ってもいいしね。ドラゴンバレーのアンデッド以外のモンスターは祝福されたテレポートスクロールを持ってること多いから売ってもいいし使ってもいいと思う」

二人の意見を聞きアレンは決断する。

「とりあえずここを拠点にしよう。ずっと宿はキツイから貸家とかないかな?」

アーニャに向けて言われた言葉だ。

「あると思うけど元手がないし・・・」

そして考えこむアーニャ。

「ん、仕方ない最終手段を使いますか」

三日間ちょうだいと告げ今後の方針を詰めていく三人。
エレナは一旦エルフの森に戻り新しい魔法を習得してくることになりアレンはアーニャの手伝いとなった。




翌日アーニャはアレンを連れ実家の前にいた。

「おっ、アーニャちゃん彼氏連れて里帰りかい?」

笑顔で話し掛けてくるの初老の男性。
アーニャは男を伴う里帰りがもたらす影響を考えていなかったようで慌てふためき

「ち、ち、違います!彼はただの旅の仲間ですよ!」

と大声で否定した。
勿論周囲の人達に気付かれ母親も何事かと家から出てきた。

「まぁ、アーニャじゃないの。おかえりなさい」

「ただいま、お母さん」

顔を真っ赤にしたアーニャは俯き加減に告げるのだった。


母親に促されたアレンはテーブルにつき
アーニャは落ち着きを取り戻したようで母親とともにお茶の準備をしている。

「アレンさんはハーブ苦手じゃないかしら?」

母親はアレンに問いかけるが

「好き嫌いないから大丈夫よ」

とアーニャが代わりに答える。
アレンは何も言えず眺めているのみだ。

「お父さんは?」

「今日は納入があるって言ってたからちょっと遅いかもね」

そっか と呟きお茶をアレンの前に差し出す。
アーニャと母親もテーブルにつき

「で?アーニャ、アレンさんの紹介はないの?」

「あー名前しか言ってないよね。今パーティー組んでるリーダーのアレンさん。こう見えて正式なナイトなのよ」

「娘がお世話になっております。この子そそっかしくて大変でしょう?」

母親は笑いながらアーニャの背中を叩く。
お茶を口に含んだ直後のことで激しく咳き込んで恨めしそうに母親を睨む。

「いえ、いつも助けてもらってばかりです」

そして雑談をしばらくした後アーニャが切り出す。

「お母さん使ってない小屋あったでしょ?あそこ残ってたらしばらくの間使いたいんだけど」

「まぁ大変!そういうことだったのね!」

そして考えて母親は切り出す。

「アーニャ、イイ人じゃないの。あんたのことだから変な男にひっかかるんじゃないかと心配してたのよ。この人ならお父さんも許してくれるわよ」

何を?とアーニャは思うが次の瞬間にはわかってしまった。
ここにアレンを連れてきた理由はひとつ。
アレンの誠実さを見せて安心して部屋を貸してもらおうと思っていたのだが。

「お母さん違うから!パーティーの拠点で使いたいだけだから!」

「恥ずかしがらなくてもいいのよ。アレンさんに失礼じゃないの」

アレンは意味がわからず呆然としアーニャは必死に説明をする。

「だーかーらー、そんなんじゃなくてパーティー全員で使いたいの!三人しかいないけど!」

無理を言ってエレナもきてもらえばよかったと後悔するがすでに遅い。

「なんだ、つまんないのね。てっきり結婚の挨拶かと思ったじゃない」

本気でつまらなさそうな顔をした母親はお茶を淹れ直すため立ち上がる。

アレンはさらに呆然としアーニャは話を変えようと小屋のことを話題にあげる。

「こ、小屋はまだあるよね?」

「あるけどお父さんに許可もらいなさいよ」

父親が戻るまで待つことになりアレンは質問攻めをうける。
いつからアーニャと行動しているのか。
どのようにして知り合ったのか。
アーニャは役にたつのか。
もう一人のメンバーはどんな人なのか。
様々な質問に答えているうちに打ち解け母親とはかなり仲良くなっていた。

「お父さん遅いわねぇ。もう戻ってもおかしくないんだけど」

と母親は夕食の準備をしながら呟く。
父親は各種ポーションを作り店舗へ卸す仕事をしているようだ。
借りる小屋は元々倉庫として使っていたようで手狭になった為広い倉庫に移転したらしい。
直せばまだまだ使えるとのことで許可が降りれば随分助かることは間違いない。
夕食も頂くことになり出来上がった頃父親が帰宅した。

「ただいま、 アーニャ、帰ってるのか。ん?お客さんかい?」

ドアを閉めながらアレンに視線を投げ掛けるのは体の線は細く穏和な雰囲気をもつ男性。
メガネをかけ学者と言われても疑わないだろう風貌だ。

「初めまして、アレンといいます。アーニャさんとパーティーを組ませて頂いています」

立ち上がりナイトとして恥ずかしくないよう振る舞う。

「初めまして、ドエルといいます。アーニャの父親です。」

先程とは違い鋭い目をすると値踏みをするようにアレンを見る。

「アーニャ、おまえには勿体ないくらいの男性じゃないか。それにおまえが選んだんだ許可するよ」

アーニャは駆け寄り母親のときと同じようなやり取りをするのであった。



誤解も解けたところで四人で食卓を囲み

「さっきも言ったんだけど小屋使ってもいい?」

アーニャは父親に尋ねる。

「あぁ、アレン君のことは残念だけど使ってくれてもかまわないよ」

あれから色々と話をして余程気に入ったらしい。

「ありがとうございます。大変助かります」

アレンは頭を下げお礼を告げる。

「いやいや気にしないでくれ。将来アーニャに使わせようと思っていた建物だから丁度いい」

場所はアーニャが知っているからと鍵だけを渡され簡単な説明をうける。
更に旅に必要だろうとポーションの卸値での提供を約束してくれた。
そして翌日から早速建物の修理に入ると決めこの日はドエル邸で泊まらせてもらうこととなった。

 
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