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26歳会社員をSAOにぶち込んで見た。

作者:憑唄
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第四話 AUCTION

 
前書き
ソードアート・オンラインの二次創作、第四話となります。 よろしくお願いします。 ここから武器やパーソナルカラー等の個性を書いてみました。 あとオリジナル要素強かったりします。 あくまでも原作リスペクト、ということで、時系列的にはキリトが月夜の黒猫団に入って最前線からいない間です。 強化については作中でも説明していますが、MHF、ドスの防具強化やSP武器の強化に近いものだと思ってください。 武器はあえてSAOクエストと現存するネットゲームの武器をモチーフにしています。 グリュンヒル→MapleStory同名大剣 激浪→MHF怒髪天槌【激浪】 バードナセ→TW同名棒 

 

 4月、春の始まり。
 俺は、攻略組とかいう連中と共に、最前線にいた。
 コトの始まりは3月頃。
 最前線にいた一人が抜けたということで、俺が参加を表明し、参加することになったのだ。
 武器、防具を一式新調し、常にレベルを攻略レベルより+10のマージンを取る。
 最低限、これが出来なければ攻略なんて出来やしなかった。
 俺は最前線に参加するために年始めから作り始めていた大剣を、3月頃にようやく完成させていた。
 路上販売をやっていたリズベットとかいうやつのところで素材を全て揃え、エギルとかいう職人スキルを上げているやつに任せて完成した。
 強化型特殊大剣『グリュンヒル』。
 文字通り強化型の大剣で、製作難易度、強化難易度共に非常にマゾい。
 その代わりに、サイズが普通の大剣よりも遥かに大きく、特殊リーチとなっている。
 武器ウィンドウの右上に武器レベルが表示され、Lv1~Lv99まで存在するという特殊仕様だ。
 それに合わせて攻撃力が上昇し、必要なSTR値も上がる。
 スキル付与効果もレベルが上がる毎についていくが……。
 今の俺が装備している状態だとLv30。
 次の強化で必要STR値が俺よりも上回ってしまう。
 しかも強化素材がこの層では恐らく手に入らない素材。
 だからひとまずはここで頭打ちだ。
 付与スキルは今のところ3つだけ。
 それぞれ特性が違い、使い所が限られてくる。
 同じグリュンヒル使いとこういう情報を交換したいものの……。
 グリュンヒル使いは必要素材故に非常に少ない。
 実際レアドロップを狙うよりはまだ楽で、強力な武器ではあるものの、わざわざ生産する気になれない武器でもある。
 そもそも大剣使いが少ない上にこんなもんを生産するのは本当に一部の物好きだけだろう。
 桜花は俺が最前線に行ってからも着いてきてくれている。
 相変わらずギルドを作ろうとうるさいが、それでも、実力はメキメキと上がっている。
 正直、俺よりも強いんじゃないかと思うことが多々ある。
 最近は俺、桜花の二人に加え、他のメンバーでPTを組むことが多い。
 固定メンバーの一人としては、盾役として、俺のツレである天乃だ。
 リアルで同じ歳だけあって、非常に話しやすく、気さくだ。
 ついでにヲタではあるが、見た目はインテリ系っぽい。
 髪型もゲーム中で変更したようで、ジャンプ漫画よろしくボサボサ頭になってる。
 余談ではあるが、SAO内では顔の変更こそ出来ないが、髪型と髪の色の変更は可能である。
 それを利用して、俺も髪の色を紺色にしている。
 服装もそれに合わせてミッドナイトブルーにゴールドのラインを基調にしたものだ。
 天乃は俺に対になるように、スカーレッドにブラックのラインを入れた服装をしている。
 まぁコイツは盾役と言っても、マルチウエポンタイプで状況に応じて激浪と言う名の戦槌を使いこなす。
 激浪は俺のグリュンヒルと同じ強化型武器だ。
 火力としても申し分がない働きをしてくれる頼れるメンバーだ。
 もう一人は、桜花が呼んだツレの一人、レイカとかいうやつ。
 高レベルの特殊武器使い。
 SAO内には特殊武器というものが幾つか存在しており、例としてはナイフやハリセン等がそれに当てはまる。
 ネタ武器として某ネトゲのように、レイトウマグロ等というものも存在するが……。
 その中でも極めて異彩を放つのが、アサルトライフルとアハトアハトである。
 どう見てもこの世界で存在しちゃいけない武器ではあるが、射出機能無しで存在している。
 というかあったら色々と酷いことになるだろう。
 レイカは何故か、黒とエメラルドグリーンを基調とした紳士風の格好でこのアサルトライフルを運用する。
 武器としての種類は特殊リーチの昆と槍。
 バヨネットと呼ばれる専属の特殊アイテムで強化することで槍になる。
 これをレイカは装備している。
 他から見ればSAOらしくない、物騒な格好である。
 特殊リーチのため、通常の槍よりも短いものではあるが……。
 何故か知らないが攻撃力は非常に高い。
 専用スキルとして、トリガーを引くと攻撃に追加ダメージが付与される。 何処のFF8の世界の武器だ、これは……。
 攻略組と共にこのPTで参戦しているだけあって、全員レベルは高い。
 攻略組のやつらとも最近交流が出来たことで、顔見知りがまた増えた。
 クラディールとかいうやつは俺と同じ大剣使いだったが、上げているスキルが違うため、大剣使いとして話していて面白いやつだった。
 まぁ、たまにセミ犯罪者的な発言が目立つが……。
 そいつと同じギルドのゴドフリーっていうおっさんもかなりいい人だった。
 最近はよく一緒に飲み食いすることが多い。
 まぁしかし、クラディールもゴドフリーもギルドの人間だ。
 フリーな俺とは都合が合わなくなることも多い。
 ……やはり、考えるところはあるな。
 ギルドに入らないのは確かに気楽だ。
 変な縛りもなければ、集会もない、仲間に気を使わなくてもいい。
 だが……。
「……ギルド、か」
 どうしても気になる単語を、口から漏らしてしまう。
 すると、そんな俺のため息を自慢の地獄耳で聞いたのか。
「あ、作る? ギルド。 今作る?」
 桜花がうざったく俺に向けて言葉を発してきた。
 無駄に耳がいいってのもどうかと思うぜ。
 眼鏡かけてるから眼は悪いんだろうけどな。
「なんだアルス、作りたいならそう言えよ。俺らはいつでも準備できてるぜー?」
 そして桜花に便乗するように言うのが天乃だ。
 こいつらは無駄に息が合う。
 しかしまぁ、俺としてはうざさが二倍だ。
「まぁ待てよお前ら、気になることには気になるけどなぁ……いや、ほら、なんていうのかな」
 俺が思ったことを口に出していると。
「アルス君。 私は迷うくらいなら作った方がいいと思う。 人生迷ってばっかじゃ先に進めないよ」
 横からレイカが口を挟んできた。
 いや、それはわかってるんだよ、レイカ。
 わかってる、わかってるんだけど……なぁ?
 確かに優柔不断な俺も悪いよ悪いさ、ああ悪い、悪で結構! 大いに結構!
 悪でも悪魔でも、こういう場面で迷うのが俺だ。
「うーん。 よし、じゃあ作る前提で話をするが、人数はこの4人じゃ少ないだろ?
そのあたりはどうするんだよ」
 俺がそう口にすると、桜花、天乃、レイカは互いの顔を見合わせた後。
「じゃ、ウチは一人呼ぶ」
「俺のとこからも一人だ」
「私はアテがないかな」
 それぞれの意見を口にした。
 そうなると、六人か……。
 桜花は女を連れてくるとして、天乃がきっと男を連れてくるだろう。
 3:3である意味理想的とも言える。
「……よしわかった。 お前ら、最後に聞くぞ、ギルド作りたいか!?」
 俺がそう口にすると、3人は待ちに待ったかのように、声を揃えて、その場で叫んだ。
「「「もちろん!」」」
 こうして、俺達はギルドを結成することになったのである。







 結成に当たって、多少面倒なクエストを終了させ、とりあえず結成となったわけだが。
 ギルドの名称やギルドマスター、通称ギルマスについても大分モメにモメた。
 正直俺はギルマスをやるつもりはなかったし、面倒だったから早速降りさせてもらった。
 そこで挙手したのが天乃と桜花である。
 正直どっちになろうが変わらんと言ったのだが、二人は俺の意見を全く聞きいれなかった。
 何故か暫定的に副ギルマスに勝手に任命された俺とは違い、二人はやたらと意見をぶつかり合わせ。
 結局、年功序列ということで天乃になった。
 桜花は俺と同じ副ギルマスだ。
 そこから序列順にレイカと新しく入った二人、となる。
 ギルドの方針については天乃と俺が話し合って、野良ギルドということで落ち着いた。
 よって別にギルドのパーソナルカラーがあるわけでもなく、エンブレムがあるわけでもない。
 それぞれが好きな格好をしているギルドとなった。
 余談だが桜花がギルマスになった場合、衣装を全て桜色で統一する気だったらしい。
 考えただけでも恐ろしい……悪い意味で鳥肌が立つ。
 流石に26になってパステル系のカラーは勘弁してほしい。
 俺正直お洒落じゃないし……。
 ギルド名についてはレイカが考案した『ディラック』で落ち着いた。
 ディラックというのは物理学の用語のディラックの海から来ている単語だ。
 意味は『物理学的真空』。
 簡易的な説明をすると、一見すると何も無い状態だが、そこには同じ量のプラスとマイナスがあるから0に見えるだけ、ということらしい。
 まぁ3:3で構成されてるこのギルドにはぴったりなのかもしれないな。
 正直物理学に大して興味は無かったし、響きがいいから俺はそれで許可した。
 天乃と桜花はよく意味を理解してなかったが、認証はした。
 よって、ギルド『ディラック』がここに誕生したわけである。
 因みに新しく入る二人とは俺とレイカはまだ顔合わせしてない。
 桜花と天乃はそれぞれ顔合わせしたらしい。
 まぁ気の早いやつらだ。
 俺はその内でいい、どうせ今は最前線、ほぼ毎日迷宮区に入り浸る日々なんだからな。
 落ち着いた頃に顔合わせでもいいだろう。
「さて、じゃあギルドも出来たし、早速狩りに行くか」
 俺がそう口にすると、天乃とレイカはすぐに頷く。
 しかし、桜花は……。
「えー、あと二人来るまで待つべきじゃない?」
 そんなことを言い出した。
 まぁ、気持ちはわかるが……。
「まぁまぁ、それは後で合流すればいいだけだ。 今は出来るだけ早く迷宮区の詮索に行きたい。
アイテムを早く回収しないと他のやつらに取られちまうからな」
 そう提案すると、桜花はどうにも気が乗らないという顔をしながらも、渋々と俺達についてきた。


 ―――迷宮区―――



 SAOでは階層によって迷宮区の構造はそれぞれ異なる。
 共通しているのは、モンスターが出る、ということだけか。
 さて、この迷宮区、稀にだが、面白い仕掛けがある。
 それは、隠し部屋の存在だ。
 大体はアイテムがあったり、トラップだったりする。
 つまり当たれば天国か地獄かの二者一択だ。
 しかしそれでも、隠し部屋には価値がある。
 様々なスキルを持つ最前線のやつらでも、隠し部屋は見つけにくい。
 故に、そこに眠っているレアアイテムを入手できる確率も全員が平等だ。
 この階層ではまだ隠し部屋は見つかっていないはず……。
 だからこそ、見つけておきたい……。
「オラよっと! ほい、スイッチ!」
「はーい!」
 俺の後ろでは天乃とレイカが絶賛狩り中だ。
 今回の戦闘では俺は参加しない。
 大体参加する前に終わっちまうからな。
 それには理由があって、基本的にSAOはデスゲームということもあって。
 通常攻略適正レベルよりも遥かに高いレベルでボスを倒すことになる。
 攻略組と呼ばれる連中や俺らはまさにそれだ。
 攻略適正レベル+10が理想で、ある意味適正安全マージンだ。
 寧ろそれ以下のやつらは攻略組達の輪に入れない。
 いても無駄な犠牲になるだけだからな。
 よって、そんなレベルで最前線の雑魚と戦えば。
 最悪、ソロですら十二分に倒せるレベルになる。
 というか大体一撃~二撃だ。
 それでもスイッチを使って倒すのは経験値が平等に行くためであって、別に各々はソロでも倒せる。
 しかしそれでも、戦闘時間の短縮になるためPTを組んでいた方が効率的ではある。
 PTプレイの最大のメリットは大量生産大量消費だ。
 沸き時間の短縮、戦闘時間の短縮、それによって得られるドロップ率の上昇、各々の疲労の減少。
 さらにソロでは絶対に得られない絶対的な安心感。
 デメリットとしては息が合ってないとソロよりも面倒ということ。
 さらに危機感が若干薄れる、ってところか。
 縛られてる状態だから、人によってそれに窮屈感を覚えることもあるかもしれないしな。
 よく勘違いされるのは、PTプレイをしてるやつはソロよりも技術が劣っていると思われるとこだろうが。
 PTプレイでうまくできるやつはソロでも強いんだよ。
 ノウハウ、技術、情報量がソロのそれとは遥かに違うからな……。
 例えばモンスターってのには初めから設定されてるモーション、攻撃パターンがあるわけだ。
 それはSAOだろうがなんだろうが、ゲームである以上変わらない。
 そのモーションの動きが何通りあろうが、数をこなせばその動きはなんとなくわかってくる。
 AIが学習機能を持ったところで、所詮今の技術じゃ人を超えることは出来ない。
 人が作ったものが人を超えちまったらターミネーターの世界だぜ。
 1bit、1ドット、1数値で全部が変わるのがゲームだ。
 なんとなくでいいから、それを理論化して、技術に出来るやつが、強い。
 全部わかるゲーム製作者みたいなやつがいたら、マジで無敵なんだろうけどな。
 まぁそれはともかく、俺達みたいなPTプレイにおいてはそれらの理論と技術は必要不可欠だ。
 ゴリ押しで倒せることもあるが、それを何処まで効率化できるかがレベル上げの肝だ。
 特に最前線で戦ってる俺らにとって未知の敵との遭遇なんてのは日常茶飯事で。
 最悪の即死攻撃を持ってると思ってかかって、なんてことなかった、なんてのも当たり前。
 兎に角、相手の情報を全て引き出す、その上で倒す。
 それが攻略への近道だ。
 故に、隠し部屋のような不確定要素も探さなければならない。
 そんなことを思って歩いていると。
「うわっ、と」
 桜花が何か変なスイッチを踏んづけやがった。
 思わず、全員が臨戦態勢を取るが……。
 それによって現れたのは敵ではなく、隠し部屋だった。
「お、ナイスじゃん、桜花!」
「こりゃラッキーだな!」
「しかも見て、宝箱あるよ!」
 俺も含めて桜花を褒めると、桜花は暫く困惑した後。
「……まぁ、ウチだから」
 なんて、当たり前のように言い出した。
 こいつは変なとこで素直じゃねぇなぁ……。
「んじゃ、あれ誰取る?」
 俺が早速提案すると、天乃が気になることを口にした。
「もしかしてトラップじゃね?」
 あー、確かに、可能性は無きにしも非ずだ。
 この前も引っかかったし。
 あの時は宝箱取ったやつが麻痺ったな。
 まぁ麻痺ったのはめでたく俺だったんだけどさ。
 正直二度とああいうのは勘弁してほしい。
「俺怖いからいいや」
 ということで早速俺はパス。
「じゃあここはレディーファーストで、桜花かレイカ、どっちかでー」
 天乃がそう言ってレイカと桜花に眼を向けると、桜花が手を挙げた。
「じゃ、ウチ、ウチ! 見つけたからウチ」
 無駄に主張が激しくそう口にすると。
 レイカはそれを見かねたのか、苦笑しながら桜花に宝箱を譲った。
 まぁ、大人な対応だわな。
 しかし、若いっていいなぁ……。
 あんな無茶を俺が言ったら流石に見苦しいが、桜花くらい若いとまだ微笑ましいもんな……。
 そんな思いに浸っていると、桜花が宝箱に向かってトコトコと走り出す。
 俺らはトラップだった場合を備え武装。
 そして、桜花が宝箱へと手をかける。
 その瞬間だった。
 突如、俺達の横を何かが凄まじい速度で通り過ぎ。
 桜花を押しのけて、宝箱を開けた人物がいた。
 一瞬俺らは何が起きたのかわからなかったが……。
 現れたそいつの頭の上のカーソルの色を見て、事態を理解した。
 オレンジカーソル。
 犯罪者の証である。
「チッ! ただのゴミ装備かよ! まぁいいか、横流しすればどうにか……」
 そして盗人猛々しいとはまさにこれ。
 本来桜花が取るはずだったアイテムを手にして、愚痴を言い始めたのだ。
「ちょ、ちょっと! 何アンタ! 人のものとったら泥棒!」
 桜花が敵意を剥き出しにしてソイツに刃を向けるが……。
 ソイツは別段気にしていない様子で、飄々とした態度を取った。
「ああ、泥棒だよ。 これが私の仕事。 所謂、横取り。
あとはこいつを露店やってるやつに流して生計立ててる、健全な泥棒だ」
 そう言ってソイツは桜花と距離を置いた後、懐から長い昆を取り出した。
「やり合おうってのならいいよ。 別に命まで取る気はないし。 PKもPKKも、私は御免でね!」
 正直、ここで口を出して、俺らが参戦する手もある。
 四対一なら、まぁ間違いなくこっちが勝つだろう。
 しかし、俺はそれがどうしても出来なかった。
 何故なら……目の前にいるオレンジカーソルのそいつは……。
 小学生だか中学生だかわからない幼女だったからだ。
 こんなやつを大人3人に高校性が囲ってリンチって……。
 ちょっと、大人気ないよなぁ……。
 俺と同意権なのか、隣でレイカもどうしていいかわからず、苦笑しながら桜花と幼女の様子を見ている。
 しかし、ここで口を出したのが、天乃だ。
「まぁまぁ君。 泥棒ってのはわかったが、それはよくない。 学校で習わなかったかな?
人のモノをとったら罰せられるんだって……」
 天乃がそこまで言った瞬間。
 幼女は何か操作をしたかと思うと。
 天乃の画面に、デュエル申し込み画面が表示された。
「お兄さん、文句垂れるなら、まず勝ってみろよ?」
 依然として強気な態度でそう口にする幼女に、天乃は少しだけたじろいだ後。
「……よし、わかった。 負けても泣くなよ?」
 素直にデュエルを、受けた。
 デュエルの方式はメジャーな初撃決着モード。
 大半のデュエルはこの方式となる。
 ま、文字通りそれぞれの初撃のダメージ値で勝敗を決するものだが……。
 今回は天乃が圧倒的にアドバンテージを得ている。
 天乃の武器の激浪の攻撃力の高さは折り紙つきだ。
 それに対してあっちの昆は……どうも俺が見たことない武器のようだが。
 まぁ、どうせどっかのレアドロップだろう。
 有名どころの昆は俺も知ってるし、そうじゃないってことは、マイナーな武器なんだろ。
 そう思いながらデュエルの様子を眺める。
「じゃ、初めからキツいの行くぞ!」
 天乃がエフェクトを纏ながら幼女へと殴りかかる。
 第三者視点で見れば犯罪者極まりないが……まぁゲームだしな。
 幼女は、その攻撃を。
「はいはい」
 少しだけ避ける動作をした後、わざと、食らった。
「な……!?」
 減っていく幼女のHPバーを見ながら、天乃は唖然とする。
 恐ろしいことに、HPバーがあまり減っていない。
 その一瞬の間、天乃の頭の中では何故こんなにダメージが通らなかったのかという考えがよぎっていたのだろう。
 しかし、それが悪かった。
 攻撃後、隙だらけの天乃に向かって。
「よっと!」
 幼女から、煌くエフェクトと共に昆の一撃が天乃の脳天を襲う!
 その瞬間、CRITICAL!の文字と共に天乃のHPが幼女よりも遥かに多く削れた。
 直後、幼女の頭上にはWINの文字、天乃にはLoseの情けない文字が浮かんだ。
「マジか……」
 天乃は力なくその場に手を着き、絶望感に苛まれているようだった。
 ……まぁ、そりゃあそうだろう。
 まさかあんな幼女、しかもわけわからん昆使いに負けるなんてなぁ……。
「残念だったな! デュエルは技術による頭脳戦だよ、お兄さん? いかにダメージを食らわずに、相手に大きなダメージを当てれるか。
初撃決着モードの基本だぜ」
「ぐぅ……」
 情けなく呟く天乃と反対に、幼女は元気よく手に持った昆をバトンのように器用に回すと。
 桜花に向けて、その昆の先を向けた。
「さて、じゃあ次は眼鏡の姉ちゃん、アンタだ! どうするよ!? 私とデュエルしてみる!?」
「ぐぬぬ……!」
 桜花は、先ほどの戦闘を見たばかりだからなのか。
 ただ、その場から動けず、文句も言えなかった。
 実際、桜花は天乃より攻撃力が低い。
 というか俺らの中では一撃の攻撃力は最低クラスだ。
 当然、デュエルでの勝率は極端に低い。
 だからこそ、天乃に勝った幼女に対しては、相手が悪すぎた。
「よーし、それじゃあアイテムはもらってくよ! そっちにいる姉ちゃんと兄ちゃんも文句ないな?」
 こっちについに向けられたが……。
 まぁ、流石にここまでやられちゃ、諦めるのが大人の対応だろうな。
「まぁ俺はそれでいい。 レイカはどうする?」
「あー、まぁ天乃が負けた時点で箔はついちゃったからね。 私もそれでいいかな」
 そんな俺とレイカの対応に納得したのか、幼女はニカっといい笑顔を見せた後。
「それじゃ、そういうことで! バイバーイ!」
 そう言って、堂々と俺らの横を歩いて去っていく。
 その去り際に、俺は、不意に声をかけた。
「おい、お前。 名前は? ついでにその昆はなんだ?」
 俺がそう言うと、幼女は何かを企んだような笑顔で振り向いた後。
「私? 私は泥棒の『玖渚』。 デュエルを第一とするデュエリストでもある!
この武器はバードナセ。 当てる場所によってクリティカル率が100%になるマイナーなレア武器だ!」
 クリティカル率100%だと……!?
 どんなチート武器だそれ……。
 しかし、そんなのがマイナーとは……。
 まだまだ俺も情報収集能力が足りてないみたいだな……。
「……なるほどな。 俺はアルス。 玖渚。 名前を覚えておくぜ」
「ああ、覚えておくといいよ。 武器を賭けてのデュエルなら、いつでも受け付けるよ」
 それだけ言って、玖渚はその場から消える。
 ようやく見えなくなったオレンジカーソルに、俺はため息を吐くと。
「悔しい! あんな小さい子に脅された!」
 桜花がわめき出した。
 まぁ、気持ちはわからんでもない。
「いや……つええよアイツ……俺の攻撃であれしか削れないとか……」
 そしてすっかり気力を失った天乃。
 ……こりゃあ、今日の狩りの続行は無理そうだな。
「まぁ仕方ねぇよ。 あっちのが二枚も三枚も上手だったってだけの話だ」
「そうそう、デュエルなんてうちらあんまりしたことないしね」
 俺とレイカがなぁなぁでそう言いくるめるも。
 天乃の気力は戻らず、桜花は只管愚痴を呟き続けていた。
 ギルド結成一日目はこうして波乱の中、幕を閉じたのであった。





――――――







 第十層。
 その郊外に、玖渚はいた。
 先ほど横取りして奪った宝を持って、取引をしにきたのだ。
 オレンジカーソルの玖渚は街へは入れない。
 そのため、取引はフィールドで行われることとなる。
「えー、じゃあまずこっちの細剣から。 スタートは10kでーす」
 玖渚がそう言うと、その場にいた何人かが手を挙げながら叫ぶ。
「20k」
「100k!」
「なら200k!」
「240kだ!」
 次々に上の額が提示され、遂には300kを突破する。
 その後、誰も挙手しなくなったことを確認すると。
「はいじゃあ360kで打ち切り! 毎度ー」
 玖渚は落札者にアイテムを渡し、落札者から金を受け取る。
 ここでは所謂オークション形式でアイテムの取引が行われている。
 出品者、落札者、開催者の3つに別れて行われるこのオークションは。
 郊外ということだけあって、オレンジネームも参加できる場となっていた。
 一部の商業専門ギルド連合によってPK等の行為は抑止されてるためオークション内は比較的安全である。
 しかしあくまでもこのオークションは窃盗品等も平気で出品されるためクリーンではない。
 そのため、一部の知る人ぞ知る闇市として確立していた。
 玖渚達のような出品者は現実のブローカーになぞらえて、ブローカーと呼ばれる。
 因みに、売られるのは装備品等だけではない。
「えー、今回は身売りします。 此方レベル30細剣使い。 武器スキル400程度。 盾役としてもOKです。
契約期限は一週間。 傭兵でもボディガードでもどうぞー。 20kから。 質問もどうぞー」
 そう口にする男性に、何人からか挙手が上がる。
「装備品は今つけてるものですか?」
「はい、一応最低限強化済みです。 最前線で戦えます」
「なら100k!」
 こういった、傭兵として己の身を売り出すものも居る。
 もちろんSAOはデスゲーム。
 自分の命を売って、それでも金がほしいのだ。
 しかしこういうことは非合法。
 故に、こんな闇市でしか取引されていない。
 結局、自分の身売りをした男性は500kで契約されていった。
 玖渚は未だに身売りはしたことはないが、噂では結構ハードなものであると聞いていた。
 故に、玖渚はそうならないためにも、泥棒をして金を稼いでいるのだ。
 もっと言えば、傭兵としての身売りならまだいい方で……。
「身売りします。 一晩。 コード解除済み。 1Mから、金は先渡しで」
 こういった女性の身売りが、一番黒い。
 コード解除済みというのは理論コードというシステムの一番奥底にあるもので、これを解除すると性行為まがいが出来る。
 あくまでもまがいであり、現実世界には影響がない。
 しかし、これは娯楽が非常に少ないSAOにとって食以上の対象で。
「3M!」
「7M!!」
「10M!」
 法外な値段であっても、平気で金を出すやつらがうようよいる。
 ビジネスとしては非常にいいが、これが中々酷く……。
 詐欺も存在している。
 基本的にSAOは男性に厳しいシステムで、女性キャラの体を不用意に触ると、女性キャラクターの画面に投獄選択画面が現れる。
 そこで女性キャラが認証ボタンを押せば、触ったキャラクターは見事牢獄にぶち込まれるわけだ。
 つまり幾ら身売りすると言っても、金を先に渡して、行為の直前に牢獄に飛ばされる、なんてことも平気であるわけだ。
 事実そういうことも平気で起きている。
 それでも金を出すのは、きっと男の性なのだろう。
 先ほど身売りした女性は決して美人ではなかったが、15Mで落札された。
 たった一晩で15Mという大金が飛ぶ。
 闇市は、あまりにも、常識の外にあった。
 もちろん、食材においても、常識外の値段がつくことが多々ある。
 食材のみを集めてこういう場で売りさばく者もいるほどだ。
 玖渚は己の出品が終わると、こういう場で食材等を入手して食いつないでいるのだ。
 そして中には……。
「歌売ります! 俺の歌を聴けってか! 先に歌うんでよかったら金ください!」
 こういった愛すべき馬鹿もいる。
 もちろん、なんでもありの闇市だからこそ、こういった芸当が出来るのだが。
 闇市というと暗いイメージもあるが、実際面白いやつもいるからこそ、お祭り的な感じになって終わる。
「毎度おなじみ壁殴り代行です! 殴る壁がない、筋力が無いというアナタ! ご安心してください、レベル31の私が責任を持ってお好きな階層の街中の壁を殴りまくります!
今ならお値段1kから! いかがでしょうか!」
「よしきた! 10k!」
「よーし、パパ30k出しちゃうぞ!」
 オレンジカーソルの玖渚も、こういったグリーンとの交流は決して悪いものではなく。
 寧ろ、玖渚にとっては心の在り処で、職業柄、必要不可欠の場所だった。
 もちろん、オレンジカーソルとしているのは、泥棒等だけではなく……PKもいるのだが。
 それは、その場に居る人間にとっては知る余地もなく、どうでもいいことだった。 
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