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“銃”を使わない“銃使い”

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その男と“強襲科”試験


 改竄された“強盗事件”から数週間。


 Alexは、東西500m、南北約2km人工浮島(メガフロート)の上にある“東京武偵高校”に居た。此処に来た理由は言わずもがな、入学する為である。


 同じく入学する為に集まったらしい、体格、性別、髪の色まで様々な受験生達を見て、Alexはニヤリと笑う。


(さ~て……この中から何人、面白い奴が出てくるか)


 この“東京武偵高校”には、戦闘向きの学科が属している“強襲学部”(アサルト)、犯罪組織、犯罪容疑者からの情報収集方法を習得する学科が属している“諜報学部”(レザド)、犯罪調査、分析を担当する学科が属している“探偵学部”(インケスタ) 、 実戦部隊の補助や装備の調達や改装、人員および物資の輸送支援などを担当する学科が属している“兵站学部”(ロジ)、情報の伝達と集積を担う学科が属している“通信学部”(コネクト)、負傷者や病人の治療にあたる学科が属する“衛生学部”(メディカ)、超常的な知識や技術を研究する超能力捜査研究科と、美しい女性による捜査方法を研究する特殊捜査研究科が属している “研究部”(リサーチ)等の学科があり、それぞれが受験する学科を選び、試験に合格する事で初めて入学できるのだ。


 Alexが受けるのは強襲学部の“強襲科”(アサルト)という学科で、卒業時の生存率が97.1パーセントと約3パーセントの生徒が死亡するため、「明日無き学科」とも呼ばれる、武偵校一危険な学科でもある。


 強襲科の試験は、敷地内にある廃ビルに20人ほどの受験生を武装させて放り込み、その中で拘束し合うという、言ってしまえば『実戦』に近いものであり、更には武偵高の教員が試験官として何人か紛れ込んでるらしい。



 一回目の試験開始からすでに数時間………ついにAlexの番が来る。



(さ~て……“遊び”にならんよう祈るかね)


 未だに不気味な笑みを浮かべたまま、Alexは受験生達と共に廃ビルへと歩を進めた。














「はっ……はっ」


 ある一人の男が、何かから逃げるように走り続ける。彼は筋肉の付いた長身とう、逃げるよりも追う方が似合う体格をしている。だが、彼の顔は恐怖に歪んでおり、迫力などは消え失せている為、何故かその状況が似合っているようにも感じられた。


(来るなッ……来るんじゃねぇっ……!?)


 彼はまるで怯える少女ように振り返りながら、必死でその“何か”から逃げている。


 その逃走の途中、偶然にも隠れる場所を見つけた彼は、そことは別の方向に瓦礫を投げ、その瓦礫が砕けて音を立てると同時に物影に隠れた。


 彼は思った。自分の実力ならば強襲科試験トップになることも可能だと思っていた試験前の自分を、思いっきりぶん殴って眼をさまさせてやりたいと。
 彼は願った。今追ってきている“者”が、此処から一秒でも早く、一ミリでも遠くに行ってくれる事を。


(頼む……頼むっ!!)


やがて、“者”は標的を見失ったのか、先程まで響いていたその“者“による足音が遠ざかっていくのを彼は聞き、心底安堵する。









「よお」



そして一気に絶望へと叩き落された。



 
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