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ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝

作者:あさつき
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キラーパンサーに転生
  7妖精さんを探しに

 大人のドーラちゃんが、帰っていったあと。

 大人のドーラちゃんが置いていった本を睨み付けるように、ドーラちゃんはずっとお勉強してます。

 あたしも横から覗き込んでみると、意外にも字が読めました!

 なんでだろう、日本語なのかな?
 日本で作られたゲームだったんだから、そうでもおかしくはないけど。
 そう言えばドーラちゃんたち人間の言ってることを、最初に会ったときからいきなりわかるっていうのも、よく考えてみたらおかしいし。
 だけどゲームでも、しゃべれない魔物だって賢ささえ足りてれば命令は聞くわけだから……。
 前世の記憶とかよりも、そこは賢さの問題なのかもしれない。
 人間同士だって、外国で言葉が通じないなんてことはないんだから、言葉の感覚自体が前世とは違うのかも。
 この文字だって、あたしに日本語に見えてるだけで、本当は違うのかもしれないし。
 ……とにかく読めるんだから、なんでもいっか!

 ……あ!
 文字が読めるなら、練習すれば書けるようになるかもしれない!
 道具を持つのは無理でも、爪でひっかいて地面に書くくらいはできるし!
 文字が書ければ、時間はかかってもドーラちゃんとお話しできるようになるかも!

 うん、ちょっと練習してみよう。
 お別れするまでには無理かもしれないけど、また会ったときにはできるようになってるように!


 ドーラちゃんが読んでる本の内容は気になったけど、ずっと覗き込んでると邪魔になっちゃうし、伸び上がったままでいるのも疲れるし。
 魔法のことなんか勉強したって、あたしは魔力がないんだからどうやっても使えないし。

 あたしはあたしで文字の練習をすることにして、そうは言ってもその辺に傷を付けちゃうわけにはいかないし、勝手に外に出るのもできないししたくないから、空中に書くように前肢を動かしてみるだけだけど。

 ……これが、なかなか難しい。
 実際に書いてるわけじゃないから、うまくできてるかは確認できないんだけど。
 確認とかの前に、まず思うように動かせない!
 ケモノで子供なんだから、そんなに器用に細かい作業ができるわけがないんだけど。
 でも練習しなければ絶対にできるようにはならないんだから、諦めないで頑張ろう!



 そんな風に字を書く練習を重ねて、気分転換みたいにドーラちゃんに少しの間お散歩に連れ出してもらって。
 あんまり遊んではもらえないけど、ごはんとかお風呂とか、お世話はちゃんとしてもらえるし、寝るときも一緒だし!
 あたしはドーラちゃんといられるだけでも幸せだから、毎日そんな感じでもよかったんだけど。

 でも、見てるしかできないっていうのもなあ……。
 あたしにも、なにかお手伝いできることないかなあ。


 ドーラちゃんのためにあたしになにかできることがないか考えてたら、ドーラちゃんが。

「モモ。この前、村に帰ってくるときに、魔物が何度も出たけど。お父さんが全部倒しちゃったの、覚えてる?」
「ミャア!」

 もちろん!
 あたしは賢いベビーパンサーだからね、ちゃんと見てたから覚えてるよ!
 ドーラちゃんのパパ、すごく強かったよね!

「お父さんは、私にも戦わせてくれるって言ったんだけど。私を魔物に近付けるのが怖いみたいで、勝手に体が動いちゃうみたいなの」
「フニャ……」

 そうなんだ。
 ドーラちゃんが心配だからかな?
 心配すぎて、魔物にも近付けたくないくらいなの?

 うーん、でもそれだと、パパさんの前でドーラちゃんが戦うのは難しいよね。
 パパさん、強いし。

「私が魔物を倒してるところを一回でも見てもらって、私がちゃんと戦えるって、魔物に近付いても大丈夫なんだって、わかってもらえればいいと思うんだけどね。お父さんが強すぎて、私一人じゃできないの」
「フニャ……フニャ」

 ふんふん。
 ちょっと話が見えてきたよ!
 それを、あたしがお手伝いすればいいんだね!

 ……なにすればいいの?
 あたしが参加しても、パパさんのほうが早いのは変わらないんじゃ。
 この前だって戦えるようなら戦おうと思ってたのに、全然無理だったし。

「だからモモには、お父さんの撹乱……って、わかんないよね。お父さんの、邪魔をして欲しいんだ。魔物が出たときに、お父さんがすぐに攻撃できないように。私が先に攻撃して倒せるように、時間を稼いで欲しいの」
「フニャ、フニャ」

 なるほど、そういう風にお手伝いすればいいんだね!
 撹乱、わかるよ!
 だってあたし、元は人間だったんだから!

 パパさんを力でおさえるのは絶対に無理だけど、足元で動き回って邪魔するくらいなら、あたしでもできるね!
 パパさんほどではないけど、あたしも素早さにはちょっと自信あるしね!

「練習もしないでいきなりやろうとしてもきっと失敗しちゃうし、やろうとして失敗したらその後は警戒されて余計に成功させにくくなると思うから。お父さんが見てない時の戦いで練習してから、実際にやってみようと思うんだけど。お手伝いしてくれる?」
「ニャア!」

 もちろん、いいよ!
 あたしは、ドーラちゃんを助けてあげたいんだから!
 あたしにできることなら、なんでもやるよ!
 このあとは妖精さんの世界に行くはずだから、そこで練習できるもんね!

「……モモ。もしかして、わかった?今の」
「ニャア!」

 もちろん!
 だって元は人間だからね!
 ベビーパンサーとしてはかなり賢いってわかってもらえたと思うけど、やっぱりここまでとは思わないかなあ、まだ。

 ……でも、実際にやってみればわかることだから!
 今はまだ、はっきりわかってもらえてなくても、大丈夫だよね!



 ドーラちゃんのお願いに早く応えて見せたくて、早く妖精さんがこないかなあと思ってた、ある日のこと。

 サンチョさんがまな板の行方をドーラちゃんに聞いてきたので、その日は朝からお出かけすることになりました!
 ひさしぶりに、ドーラちゃんといっぱい遊べる!
 近くにいられるだけでもあたしは嬉しいからよかったけど、やっぱり遊んでもらえるならもっと嬉しいからね!
 ケモノの子供としては、やっぱり体がうずうずしちゃうところ、あるんだよね!

 ドーラちゃんはイタズラをしてる妖精のベラさんの居場所を知ってるんだから、すぐにベラさんのところに行くのかな?
 この村でも妖精さんの世界でもドーラちゃんと一緒には違いないから、あたしはどっちでもいいけどね!


 ドーラちゃんはのんびりお散歩しながら村を見て回ることにしたようなので、あたしも急がずにドーラちゃんの周りを跳ね回りながらついていきます。

 ドーラちゃんがたくさん話しかけて撫でてくれるので、あたしはずっとのどをゴロゴロ鳴らしながら、ドーラちゃんが歩きにくくなるのも構わずにたくさんじゃれつきます。

 ドーラちゃんが嫌がったらやめようと思ってたけど、全然そんなことなくて全部受け止めてくれるから。
 やっぱりついつい、甘えたくなっちゃうんだよね。
 ……大丈夫!
 遊んじゃダメなときは、ちゃんとするから!


 そうやってゆっくり進みながら、妖精さんのイタズラを確認するみたいに村を歩き回って。

「いたずらっこのようせいさんが、いるかもしれないんですよー?モモも、さがしてくださいねー?」
「ニャー」

 あれ、もしかしてドーラちゃん、ベラさんのいる場所、忘れちゃってたの?
 大丈夫、あたしちゃんと覚えてるから!
 あたしが、連れて行ってあげるね!

 ドーラちゃんのお洋服を軽くくわえて、引っ張ります。

「ミャー」

 こっち、こっち!
 ついてきて、ドーラちゃん!

「……え?みつけたんですか?ようせいさん?」
「ニャー!」

 うん、知ってたんだけどね!
 わかるから、大丈夫だから、ついてきて!

「モモは、すごいですねー!ついていくから、つれていってください!」
「ニャッ!」

 やった、褒められちゃった!
 あたしはお話しできないのに、それでもちゃんとわかってくれるなんて、さすがドーラちゃんだね!
 あたしもちゃんと、案内してあげなくちゃ!
 調子に乗りすぎて一人で走って行くなんて、そんなバカなケモノみたいなことはしないんだからね!


 途中で何度も立ち止まって振り返って、ドーラちゃんがついてきてくれてるのを確認しながら、宿屋さんの地下の酒場に入ります。


 あ、妖精さんがいた!
 カウンターの上に、乗ってる!
 あたしにも、見えるんだ!

 ゲームの通りにちゃんといてくれてよかったけど、目の前で見ちゃうと、なんだか……。
 ……お行儀悪いなあ。
 そこは、乗っていい場所じゃないと思うんだけど。
 妖精さんだから、わからないのかな?

 だけど、お話もできないあたしが、勝手に気付いてみせちゃうわけにはいかないんだから。
 あとは、黙って見ていよう。


 あたしがおとなしく様子を見ていると、ドーラちゃんも妖精さんに気付いてないみたいに、バーテンさんとお話を始めます。

 ……あれ、ドーラちゃん、気付いてない?
 まさか、中身が大人だから、見えないの?
 だったらどうしよう、あたしがなんとかしないといけないのかな?
 どうしたらいいのかな?

 考えている間にバーテンさんがあたしにもミルクを出してくれたので、お礼を言って飲み始めます。
 ちゃんとお礼を言えたドーラちゃんとあたしをバーテンさんが褒めてくれますが、そうしたらドーラちゃんが。

「いいこ、ですか?えーと、かうんたーにのったりするのは、わるいこ、ですか?」

 あれ。
 これは、そこの妖精さんのことだよね?
 なんだ、やっぱり見えてたんだ!
 よかった、ならあたしはなにもしなくても大丈夫だね!

 すっかり安心してミルクに集中しだしたあたしの横で、バーテンさんとお話しするドーラちゃんに妖精さんもなにか言ってるみたいだけど。

 よく聞いてなかったけど、いつのまにか妖精さんがカウンターから降りてるから、きっとドーラちゃんがうまく言ってくれたんだね!
 うん、あたしもお行儀が悪いのは気になってたから、よかった!


 ミルクをキレイに飲み終えてあたしが毛繕いをしてる間に、地下室でまた会う約束もできたみたいだし。

 いよいよ、妖精さんの世界で冒険だね!
 妖精さんの世界に行ったら、あたしももっと役に立ってみせるからね、ドーラちゃん! 
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