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ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝

作者:あさつき
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キラーパンサーに転生
  5二人のドーラちゃん

 ドーラちゃんの村、サンタローズについて、ドーラちゃんのおうちについて。

 サンチョさんに出迎えられます。

 ドーラちゃんのパパと違って、カッコいいとかいかにも強そうとかはないけど、すごく優しそう!
 突然やってきたあたしを見ても全然イヤな顔をしないで、優しく撫でてくれたし!
 ドーラちゃんがあたしにくれるごはんを持ち出そうとして断ってるのも、文句もいわずに聞いてくれました!

 ドーラちゃんが渡したお土産のお菓子を熱心に眺めて研究してるみたいだし、お料理が好きなのかな?
 このサンチョさんが作ったごはんなら、すごくおいしそう!
 ビアンカちゃんのママのごはんもおいしかったけど、こっちも楽しみ!



 ドーラちゃんと一緒に外に出て、広場みたいなところに行って。

 あたしのごはんをひとまず少し離れたところに置いて、ドーラちゃんがこちらを向きます。


 うん、大丈夫。
 ただごはんをくれるだけなら、外に出る必要はなかったもんね!
 きっとこれから、あたしの賢さが試されるんだね!

 あたしはベビーパンサーだけど、前は人間だったんだから!
 ベビーパンサーの体でできることなら、なんでもついていって見せるから、絶対に大丈夫!


 なんだかいつもより厳しいような雰囲気のドーラちゃんと向き合って顔を見つめ、姿勢を良くして指示を待ちます。

「……お手!」
「ミャッ!」

 ドーラちゃんが差し出した手に、すかさず右の前肢(まえあし)をのせます。

 うん、基本だよね!
 あたしが人間なら怒るところだけど、今のあたしはベビーパンサーだからね!
 指示を理解してることと、ちゃんと聞けることと!
 それを確認するには、これが一番だよね!

 でも、まだ油断はできない!
 そこらのベビーパンサーとは違う、元人間としてのあたしの賢さを見せつけるためには、少しの油断もできない!
 うっかり聞き逃したり間違えたりして、ドーラちゃんにバカなベビーパンサーだと思われたらイヤだもんね!
 ちゃんとドーラちゃんの役に立てる賢いベビーパンサーだって、ドーラちゃんによくわかってもらうんだから!

「……おかわり!」
「ニャッ!」

 ドーラちゃんの手にのせていた右前肢を素早く引っ込めて、かわりに左前肢をのせます。

 なにも教えられてない普通のベビーパンサーが、こんなことできたら逆におかしいと思うけど!
 でも、そんなの関係ない!
 あたしは、あたしが賢いって、ちゃんと役に立てるって、わかってもらえればいいんだから!

 大丈夫、ドーラちゃんならわかってくれる!
 あたしがちゃんとして、ちゃんとできれば、絶対に!
 ドーラちゃんはわかってくれるから、きっと大丈夫!

 次の指示を待つあたしの前に、ドーラちゃんがごはんの入ったお皿を差し出してきます。

 ……おいしそう!

 で、でも、ダメ!
 まだいいって言われてないんだから、勝手に食べたらダメだよ、あたし!

「待て!」
「ミャッ……!」

 ほら、やっぱり!
 よかった、食べなくて!
 ただのバカなベビーパンサーだと思われちゃうところだった!

 ……でも、おいしそうだなあ……。

 ……あたしは元は人間だけど、今はベビーパンサーなんだから。
 人間だったときよりも、本能的な欲求っていうの?が、強いっていうか。
 まだ子供なせいもあるかもしれないけど、頑張って我慢はできるけど。
 その我慢が、結構苦しいんだよね……。

「……」
「……」

 ドーラちゃんが、見てる。
 あたし、試されてる。
 我慢できなくて食べちゃっても、きっと怒られはしないけど。
 でもその程度の、バカなベビーパンサーだって思われちゃう。

 ……負けない!
 あたし、負けない!
 ちゃんと賢いベビーパンサーだって、証明するんだから!

「……」
「……ミュウ」

 あ、なんか情けない声、出た。
 でも、これくらいは許してほしい。
 だってあたしまだ子供だし、ケモノなんだから。

 ……うう、おいしそう。
 早く食べたいよう。
 ねえ、ドーラちゃん、まだ?
 まだ、ダメ?

「……」
「……ミュー、……ミュウー……」

 ねえ、お願い、ドーラちゃん。
 ドーラちゃんがいいって言うまで、ちゃんと我慢するけど。
 でもあたし、やっぱり食べたいの。
 我慢できるけど、でも食べたいの。

「……ごめんね、モモ!いいよ、食べて、いいから!」
「ミャア!」

 やった!やっぱりドーラちゃん、大好き!
 ちゃんとお願いしたら、ちゃんと聞いてくれるんだ!

 さっそく食べてみると、やっぱりおいしい!
 やっぱりサンチョさん、お料理上手なんだね!


 すっかりお皿の中身を食べ尽くして満足して毛繕いを始めると、ドーラちゃんがあたしを撫で回しながら褒めてくれます。

「モモ、よくできたね!ホントに賢い、いい子だね!ごめんね、いじわるしたみたいになっちゃって!」

 ううん、いいの!
 いじわるなんかじゃないって、ちゃんとわかってるから!
 ドーラちゃんにわかってもらえて、褒められて撫でてもらえて、あたしはとっても嬉しいから!

 ……でも、さっきの試されてたときもそうだけど。
 なんかドーラちゃんの話し方が、いつもと違うっていうか。
 いつもはもっと子供らしいのに、なんだか大人っぽいっていうか……。

 ……なんでだろう、大人の前でだけいい子ぶる子供は、結構いると思うけど。
 今のドーラちゃんも子供らしくないだけでいい子なのは変わらないし、ませてる子だったらむしろ大人の前で背伸びする感じになるんじゃ……。


 撫でてくれるドーラちゃんにじゃれつきながら、あたしがドーラちゃんの態度の変化について考えていると、ドーラちゃんの後ろから声がかかります。

「はー……。やっぱりベビーパンサーは、可愛いね!キラーパンサーも可愛いけど、子供故の、特有の可愛さっていうの?あるよね!」

 あれ?
 人の気配は感じなかったけど、いつからいたの?

 あたしはまだ弱いけど、これでも野生のベビーパンサーだったんだから、普通に人がいれば気付かないわけがないのに。
 ドーラちゃんのパパみたいに、すごく強い人なのかな?


 ドーラちゃんが振り向くのに合わせて、あたしもドーラちゃんの後ろを覗き込んで相手の顔を確認してみると。

 ……すごく、キレイな人。

 すごく美人なのにカッコいい、キレイな女の人みたいな、カッコいい男の人みたいな、見たこともないくらいキレイな人。

 といっても、ベビーパンサーになってから見た人って、そんなに多くないんだけど。
 人間だったときに見た芸能人とかモデルさんでも、こんなにキレイな人って見たことない。

 見てなければ本当にいるなんて信じられないくらいキレイな、こんな人って、いるんだ。

 ……でも、こんな人見たことあるわけないのに、なんだかどこかで会ったような。
 なんでだか安心するような、ずっと一緒にいたくなるような。

 ドーラちゃんが大人になったら、もしかしたらこんなにキレイになるのかもしれないけど。


 ……そうだ、ドーラちゃんだ。
 ドーラちゃんみたいなんだ。

 すごくキレイで、それだけならすごく緊張しちゃいそうなのに、なぜかすごく安心する。
 まるで、大人になったドーラちゃんに会ったみたいな。

 ……って、そう言えば。
 この村で、この時期って……。


 あたしが気付きかけたところでちょうど、そのキレイな人が口を開いて。

「うわー、ドーラちゃんマジ美少女!一回見てみたかったんだよねー、外から!一回しか無いなんてホント残念だわ、よく見とかないと!」

 あ、あれ?
 この人たぶん、大人になったドーラちゃんだと思うけど。

 そんなこと言って、いいの?
 知らないふりでゴールドオーブをすり替えて、辛くても負けるな、みたいなこと言って帰るんじゃないの?

 っていうか、大人になったドーラちゃんって……そんな感じなの?
 ちょっと、イメージが違うどころじゃ……。

 あたしが戸惑ってる間にも、大人になったドーラちゃんらしい人はすごい勢いでしゃべりながら子供のドーラちゃんを抱き上げて、頭を撫でながら子供のドーラちゃんの顔を眺めてうっとりしてます。

 ……すごくキレイな歳の離れた兄妹か姉妹を見てるみたいで、あたしもうっとりしちゃうけど!
 そのうっとりした表情もすごく魅力的で、本当にうっとりしちゃうけど!
 大人になったドーラちゃんのしゃべってる内容が、いちいち……!
 なんていうか、こんなのドーラちゃんじゃないっていうか……!!


 あたしが目の前の現実を受け入れられずに混乱していると、今度は子供のドーラちゃんが。

「……私、キター!イケメン美女、キターー!!」



 …………え?

 今の、ドーラちゃんが言ったの?

 ……なんか、おかしな言葉が……。

 ……イケメン、美女?って、なに?


 さらに混乱するあたしの前で、盛り上がる二人のドーラちゃん。

「よくやった、私!完璧!正に、完璧!」
「ありがとう、私!そうでしょ、そう、思うでしょ!?」
「これなら、全方位ハーレムも!全く以て、夢物語などでは無い!!」
「当然!!」

 ……えっと。
 全方位?ハーレム?って?

 ……なんだろう、あたしの中のドーラちゃんのイメージが。
 ガラガラと、音を立てて崩れていくんですけど。

 ……イメージは、ともかくとして。

 なんでこのドーラちゃんたち、普通に会話してるの?
 大人のドーラちゃんはなにも説明してないのに、なんで子供のドーラちゃんも、知ってるみたいになってるの??


 子供のドーラちゃんを下ろした大人のドーラちゃんが、混乱しすぎて思考が停止気味になったあたしの前にしゃがみこんで、あたしを撫で始めます。

「びっくりさせてごめんね、モモー!お前にも、会えて嬉しいよー!」

 ……あ、やっぱりドーラちゃん、撫でるの上手。

 大人になって手も大きくなってるし、包み込まれる感じが加わって、ほんとに気持ちいい……。


 ……うん、びっくりしたけど、すごくびっくりしたけど!
 ドーラちゃんはドーラちゃんに、変わりないもんね!
 最初のイメージと違っても、あまりにも違いすぎても、優しくて可愛くて、ずっと一緒にいたくなるドーラちゃんであるのは、なにも変わらないもんね!

 よくわからないところはきっとこのあとの二人のお話を聞けば、わかるようになるところもあるだろうし!

 大丈夫、どんなドーラちゃんでもあたしは受け入れて、ずっと一緒にいるから!! 
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