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脂肪率

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第二章

 健康診断では正典は身長や体重は何も言われなかった、それに痛風等も言われなかった。診断の後の通知では。
 だが、だ。一つだけ問題があった。その問題はというと。
 職場でだ、智に驚いた顔で言ったのである。
「脂肪率がちょっとな」
「それがどうかしたのかな」
「いや、二十三パーセント超えてるんだよ」
「えっ、結構高いね」
「ああ、俺痩せてるのにな」
 それだけあるというのだ、脂肪率が。
「何でかさ」
「脂肪率がどうしてそんなに」
「わからないよ、何でだ?」 
 いぶかしむ顔で言う正典だった、彼自身も。
「俺脂肪率結構あるんだ」
「ううん、それじゃあ」
「それじゃあ?」
「腹見せてくれるか?」
 そこをだというのだ。
「まずは」
「お腹をかい」
「うん、そこをね」
 それで見たいというのだ。
「そうしてくれるかな」
「わかったよ、それじゃあね」
 正典は智の言葉に頷いた、そしてだった。
 二人ですぐに社内のトイレに行きその腹を見せた、するとだった。
 たるみしかも出ていた、肉付きがいいと言えば前向きな言葉だがそれでも明らかに出ていた。その腹を見てだった。
 智はだ、考える顔になってこう言ったのだった。
「僕達ももう二十九だしね」
「もうすぐで三十だよな」
「君日頃運動してないよね」
「ずっとな」
 その通りだとだ、正典も答える。
「それこそ中学時代からな」
「部活は文化系で」
「ああ、漫研だよ」
 所謂漫画研究会だ、彼は漫画好きなのでそこで漫画を好きなだけ読んで部活を堪能していたのである。
「そこにいたんだよ」
「成程ね、じゃあそのお腹はね」
「運動不足だっていうのかな」
「あとあれだよ」
「ビールと?」
「それと甘いものだよ」
 この二つだというのだ。
「間食も好きだよね、君」
「ああ、仕事中もよくな」
 その時にだ、何をしているかというと。
「ポテトチップスとか煎餅とかカントリーマアムとか食ってるな」
「それも駄目だよ」
「それでか」
「うん、脂肪率が高くなったんだよ」
「体重は増えてないんだけれどな」
「ああ、体重は増えていなくてもね」
 それでもだというのだ。
「脂肪率は増えるんだよ」
「つまり筋肉が落ちて」
「脂肪が増えたんだよ」
 その減っていない体重の中でだというのだ。
 そしてだ、智はこのことから言うのだった。
「脂肪率が増える、即ちね」
「成人病への危険が増えているよな」
「また言うけれど僕達もう二十九だよ」
 三十前だ、この年齢になってくると。
「成人病の危険が現実になってくるよ」
「嫌な話だな」
「嫌でも生きていれば絶対にそうなるから」
 歳を重ねるということは残酷なものだ、脂肪率だけでなく髪の毛も減れば身体のあちこちにがたがくるものだ。
 それでだ、智は言うのだ。
「危ないよ、冗談抜きに」
「うわ、これまた嫌な現実だな」
「だから、気をつけないとね」
 どうしてもだというのだ、そしてだった。
 智はここでだ、こう正典に言ったのだった。
「節制と運動どっちがいいのかな」
「シビアだな、おい」
 二人はトイレからその外に出ている、喫煙コーナーのソファーに座ってそこで二人で紙コップのコーヒーを飲みながらの会話だ。二人共無糖のブラックコーヒーだ、話している内容が内容だけに正典も今はそれを飲んでいるのだ。 
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