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旗手

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第五章

 壊れた厩の中からポールが出ているのを見た、そのポールを見て言った。
「ポールも無事ですし」
「そうだな、どうやらな」
 連隊長は空を見上げた、今はだった。
「スツーカも行ったな」
「そうですね」
「全く、ソーセージ野郎もやってくれるよ」
「部隊の損害はかなりの様ですね」
「ああ、けれどな」
 それでもだとだ、連隊長は今度は周囲を見回してからマルゴットに言った。
「全滅は免れた、旗もな」
「それもですね」
「御前が護ってくれた、じゃあな」
「部隊を集結させてですね」
「あらためてダンケルクまで撤退するぞ」
 そうするというのだ。
「いいな、ドイツ軍に追いつかれないうちにな」
「了解です」
「旗はポールに付けてな」
 先程までの通りにしてだというのだ。
「すぐに部隊を集結させて撤退するとするか」
「急がないといけませんね」
「まずダンケルクまで撤退してからだ」
 それからだというのだ、まずは。
「ドイツ軍にやり返さないとな」
「ええ、絶対に」
「やられっぱなしでたまるか」
 連隊長は強い声で言い切った。
「やられたらやり返せだ」
「ですね、我々にも意地がありますから」
「そういうことだ、じゃあな」
 マルゴットは壊れた厩からポールを出してそのうえでそれに旗を付けていた。連隊長はその彼に対して言った。
「もう一度な」
「わかりました」
 マルゴットはその旗を大きく掲げた、その旗の下にスツーカ達から逃れていた将兵も集まってきた、そしてだった。
 連隊は高く掲げられた連隊旗の下で再びダンケルクに向かう、旗はダンケルクまで倒れることなくそのままイギリスにまで渡ることになった。
 旗は船の中でも翻っている、その旗を見てだ、彼は言った。
「この旗は絶対にもう一度フランスに戻る」
「ああ、絶対にな」
「次の時にな」
「その時まで倒れないよ」
 マルゴットは自分が掲げている旗を見上げつつ同僚達に言った。
「そして奪われないよ」
「その時まで護ってくれよ」
「頼むぞ」
「うん、やるよ」
 絶対にだというのだ。
「僕はね」
「そうしてくれよ、じゃあな」
「絶対にフランスに戻ろうな」
 彼等は掲げられている旗を見上げて誓い合った、旗は今も健在だった。
 ダンケルクからイギリスに逃れる船の中で彼等は誓い合うのだった、今は敗れてもまだ旗は残っている、その旗を再びフランスに掲げようと。
 そう誓いながら今は撤退するのだった、撤退するがマルゴットが守り抜いた連隊旗はその彼の手で船の中でも堂々と翻っていた。


旗手   完


                        2013・6・26 
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