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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第七十一話 歪む歯車

「アンタらが出迎えってわけか?なら早い所着艦させてくれ。いい加減疲れたからな」

ミラージュコロイドを展開させつつ、戦場から無事逃れたダナはデュランダルが用意していたそこまで大型とは言えないのサイズの艦がネロブリッツの着艦に応える。着艦してすぐにコックピットから降り立ち、議長が用意した部隊に挨拶を交わして用意されている私室まで向かう。

「さーて、ネオの旦那の方は上手くやってるのかねぇ?」

人を食ったような笑みを浮かべながらダナはネオがどうなったのか考えていた。ライゴウを破壊しなかったのは自分が楽しむためだ。元々ダナの性格は敵を残忍な方法で嬲り殺したりするのが好みだ。そういった性格からか、あえてライゴウを破壊せずにネオがどれだけ抵抗して見せるのかというのを遠くから楽しむ気である。
そのまま何も成し遂げずに死んだなら上々、成し遂げて死んだなら、まあ元上官に対して冥福を祈るぐらいはするつもりである。そして生き残ったなら機会を狙い、この手で仕留める。

「もしそうなったらって考えると今から楽しみで仕方がないぜ……期待を裏切らないでくれよ」

ダナは連合の敗北もザフトの勝利も、それどころかデスティニープランすら対して気にかけていない。彼にとって重要なのは自分の望む戦場が与えられるか否かだ。そういった面で言えばある程度好みの戦場を渡してくれたファントムペインは非常に便利な組織ではあった。
そして、彼が裏切ったのはそういった戦場を用意してくれる上で現在最も便利なのがデュランダル議長に変化したというだけの話だ。そのような理由で、などと他人なら思うだろうがダナにとっては裏切る条件などその程度で十分すぎると考えている。

「コロニーレーザーに対してどう対処するのか、ここから高みの見物とさせてもらうぜ」

そう言ってダナは外部の様子が分かるモニターがある場所で一人ドリンクを飲みながら悠々と戦場の様子を眺めていた。







「クソッ、いい加減にしろっての!」

ガナーウィザードを装備していたディアッカの黒いザクは両手にビーム突撃銃を持ち、ロッソイージスを相手にビームを連射する。しかし、ロッソイージスのパイロットであるエミリオはそれを容易く躱し、逆に接近して両腕のビームサーベルで対抗してくる。
スラスターを全力で噴かせて後ろに下がりながら、必死に抵抗するディアッカ。だが、ガナーウィザードの武器であるオルトロス砲を取り出せない現状、彼にとってこの装備は重しにしかならない。

「こんな事ならブレイズウィザードにしとくんだったぜ!」

機動力はロッソイージスの方が上である以上、敵の間合いに常に翻弄され続けなければいけない。近接戦は最大四本のビームサーベル、中距離戦ならビームライフル、遠距離戦となればスキュラが襲い掛かるロッソイージスの万能性を前に中遠距離向きのガナーウィザード装備のザクでは対応しきれない。
ディアッカの役割はエース級の敵を相手に足止めを行い、コロニーレーザーを止めるために行動している味方の砲撃隊を撃破させない事なので時間を稼ぐという役割は十分果たしていると言える。しかし、このままでは埒が明かないだろう。

『これで止めだ!』

「そう簡単にやらせるかよ!?」

両腕のビームサーベルを振り抜く様に攻撃するが、両肩のシールドを斜め前に向けることによって何とか攻撃を防ぐ。そして、そのまま反撃するために両肩のシールドに装備されているビームトマホークを取り出し、懐に入り込んで今度は逆にロッソイージスの両肩から縦に切り裂こうとする。
しかし、当然エミリオはその攻撃を黙って受けるはずもなく、脚のビームサーベルを展開し、振り上げることでビームトマホークの持ち手の部分を狙い、切り裂く。

「嘘だろッ!?冗談じゃないぜ!」

エミリオの正確な攻撃に流石のディアッカも驚愕し、引き下がるしかない。もう一歩踏み込んでいれば腕ごと裂かれていたであろうことは容易く予想でき、自身の直感的な判断に感謝するばかりである。だが、当然喜んでばかりもいられない。寧ろ近接戦用の武器を失ったことでディアッカはますます追い込まれてしまっている。

『近接戦での対応も出来なければこちらに翻弄されるしかあるまい。死ね、コーディネーター――――俺の勝ちだ!』

『あの赤いMSに攻撃を許すな!』

「おい馬鹿ッ!止めろ!?」

味方のザフト部隊がディアッカが押される様子を見て援護しようとロッソイージスに向かって攻撃を仕掛けるが、逆にロッソイージスのスキュラの連続砲撃によって次々と味方のMSが撃破される。

「チッ、下がれ!とにかく下がるんだよ!半端な実力じゃあアレに落とされるだけだぞ!」

口ではそう言いつつも味方の犠牲によって出来た隙を逃すわけにもいかず、ディアッカは距離を置いてオルトロスを取り出す。ディアッカのザクが放った収束ビームが襲い掛かるが、ロッソイージスはシールドを構えてそれを受け止める。そのままエミリオはロッソイージスのスキュラをお返しとばかりに叩き込もうとするが、そこで横槍が入ってきた。

『ディアッカ!何をしている!貴様それでも俺の副官か!』

四連装ビームガンがロッソイージスの横から襲い掛かり、VPS装甲なら耐えれるであろうビームガン程度とはいえ無視するわけにはいかないと判断し、回避に移る。

「イザーク!そっちは放ってていいのかよ?」

『貴様が俺の前で情けない姿を見せているのが悪い!合わせろ、二対二なら俺達の方が上だという事を見せてやれ!』

遅れて追随する様に現れたG-Vが背を向けているイザークのグフにビームを放とうとする。しかし、それをイザークはあえて避けず、そのままロッソイージスの方に向かってビームソードを抜いて突撃する。ディアッカはイザークのその行動に自身に対する信頼だと受け取り、ハンドグレネードを投げつけてビーム突撃銃でそれを貫いた。

『なッ、クソッ――何だよコレ!?』

ハンドグレネードは多くがMS戦において直接的な威力に欠けるものだが、牽制用の武器としては十分な効果を発揮する。勿論、ハンドグレネードの種類にもよるのだが、ディアッカのザクが投げたのはテルミット焼夷弾であり、それを自ら撃ち抜いたことで爆発のタイミングが調整でき、イザークのグフに攻撃させないようにすることは成功していた。

『ここまでだな!こういう時は近接戦に優れたグフの方が!』

『自然に逆らうコーディネーター風情が!?』

グフとロッソイージスのビームソードとビームサーベルがぶつかるが、勢いをつけて攻撃を仕掛けたイザークのグフの方が押していた。そこから挽回するために足のビームサーベルを展開して切り上げようとするが、イザークがかつての同期が乗っていた機体の後継機の特徴を予測していないはずもなく、逆に振り上げた足をシールドで滑らせるように防ぎ、一瞬空いた空白のタイミングを狙ってショルダーアタックを仕掛けた。

『グッ、だがこれで!』

吹き飛ばされたロッソイージスだが、そこからスキュラをお見舞いしてやるといった様子を見せ、正面のグフに向かって構えるが、今度は横から黒いザク――――ディアッカが蹴りを繰り出して吹き飛ばしてきた。

「グゥレイト!砲撃だけが取り柄ってわけじゃねえんだぜ!!」

『貰ったァ!!』

蹴りを入れて隙を見せたディアッカのザクにアウルがインコムと正面からの銃撃で撃ち落とそうとする。しかし、ディアッカは焦ることなく正面のアウルのG-Vに対して迎撃を行い、インコムは無視した。

「イザーク!」

『分かっている!』

ディアッカがあえて隙を見せることでインコムの軌道を予測させやすくし、それを狙ってイザークが四連装ビームガンを放つ。同じ二対二であってもファントムペインのエミリオとアウルは連携を取ろうとせず、逆にイザークとディアッカは完璧とすら言っていい連携によって形勢を一気に傾けた。







コロニーレーザーの深部にまでたどり着いたネオは既に充填されているエネルギーを確認して思わず舌打ちする。充填が完了しているという事はいつ発射されてもおかしくないという事だ。さらに言えば自身の生存率はただでさえ低いにも関わらず、これによってより大幅に激減することになるのは確実だ。

「幸いなのは敵も味方もいないんだから好き勝手出来るって事ぐらいかね?」

ファントムペイン側は自分以外に突破できたパイロットがおらず、ザフト側もコロニーレーザーがいつ発射されるのか分からないこともあり迂闊に侵入できないのだろう。

「ま、その方が気が楽か……」

ファントムペインにしろザフトにしろ、この場に居たならば面倒なことになるだけだ。ファントムペインならば何故止めようとしているのか説明しなくてはならず、したところで中立都市を守ろうとすることに納得するかどうか怪しい。ザフトにかんしては言わずもがなだ。

「一撃だ、それ以上はいらねえ……」

ネオ自身、自殺しに来たわけではない。ただ単に止めるだけならライゴウを自爆させるだけでいいのだ。自分も生き延びるためにコロニーレーザーを止め、脱出しなくてはならない。その為には余剰のエネルギーは経っ出の為に総て他に回し、ただ一発のみビームライフルのエネルギーを用意させる。
狙いは砲塔そのものではなくコロニーレーザーの中核。普通に狙うにしても無謀としか言いようがない。確実に誘爆が巻き起こるだろう。しかし、仮に狙いを外すことなく撃ち抜いたならば機能の停止は確実なものとなるはずである。少なくともコペルニクスに砲撃が届くことはないはずだ。

「頼むぜ……最後まで付き合ってくれよ――――」

自身の愛機であるライゴウに対してそう呟きながらネオはビームライフルを正面に構える。両手でビームライフルを持ち、姿勢制御を行いながら計算する。何故かこの機体に対して既視感に囚われるが、ネオは余計なことに神経を割くことなどせず計算を続ける。

(機体がまるで自分の手足のように感じるが、今はそれは喜ぶべきことだ)

ようやく計算が終了する。射撃後は確認をした後、即座に後退。ライゴウの機動力で間に合うかどうかは分からないが、少なくとも他の機体よりは可能性は高いはずだと考える。ともかく砲口の射線上から逃れれば膨大なエネルギーの誘爆も抑えられるはずだろう。

「ッ……………」

息遣いが煩わしく感じる。呼吸一つ一つが耳障りだ。震えているのは緊張からか、それとも自分の感覚が鋭くなって過敏に反応しているのか――――

「早い所終わらせて熱いシャワーでも浴びたいぜ……」

自分の恐怖心や緊張を紛らわせるために呟いたその何気ない一言がやけに耳に残ったりもする。そのせいで余計に苛立ちが増すような感覚だ。

(宇宙は嫌いだ……何処までいっても孤独に感じるからな……)

遂に放たれる一撃。その煌めくビームの一閃は寸分違わずコロニーレーザーの中核を撃ち抜いた。







「発射されたのか!?」

コロニーレーザーから溢れ出る光を見て、イザークはコロニーレーザーが発射されてしまったのかと叫ぶ。だが、その予想に反しコロニーレーザーは照射されずに自壊しだしていた。

「どういうことだ!一体誰がやった!」

『失敗したのか……下がるぞ!』

『だったらこいつだけでも!』

コロニーレーザーの崩壊にこの場にいた全員が驚愕しつつも最初に行動し始めたのはファントムペインのエミリオとアウルだった。彼らにとってはコロニーレーザーに対する関心は薄く、時間切れ程度としか認識していない。

「グッ、しまッ――――!?」

その結果、彼らの不意の攻撃を許すことになり、イザークのグフはアウルのG-Vが抜いた二本のビームサーベルを前にして、シールドとビームソードで防御する。しかし、体勢を崩したその瞬間に横からロッソイージスが攻撃を仕掛け、それによってビームソードを持つ手首を切断されてしまう。
そのままもう一方の左腕も切り裂こうとしたのをシールドで受け止めるが、何度も攻撃を受け止めつづけていたシールドは限界が訪れてそのまま左腕ごと断ち切られた。

『イザーク!?』

追撃を仕掛けようとしたG-Vやロッソイージスの様子を見てディアッカは閃光弾のハンドグレネードを投げつけ、切り裂かれたイザークのグフの右腕に握られていたビームソードを取って、牽制する。その攻防で失敗を悟ったのか彼らは撤退行動に移った。

「クソッ、全軍に告げる!敵部隊を逃すな!」

機体が損傷しつつもイザークは指示を出さないわけにはいかない。コロニーレーザーに対する警戒が薄まった以上、敵に集中できることもあり、ファントムペインの部隊を挟撃することが出来る。結果、ダークダガーやスローターダガーの部隊は全滅したが、流石にエース用の機体でもあるG-Vとロッソイージスは逃してしまう。

「クソ、逃げられたか!」

しかしながら、最悪の事態だと予測できたコペルニクスへの砲撃は何とか防ぐことが出来た。それだけが、彼らにとって安堵すべき吉報だったと言えた。
 
 

 
後書き
相変わらずのネオ大活躍。間接的にエミリオとアウル救ってるし(笑)
イザークとディアッカの夫婦も相変わらずだけどグフが破壊されてしまった。これは量産機からエース機への乗り換えフラグ? 
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