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lineage もうひとつの物語

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動乱
  ドレイク

ケントの宿の一室
アーニャはうろうろ歩き回りエレナはテーブルでティータイムだ。

「ちょっとは落ち着いたら?折角のお茶が冷めちゃうわよ?」

エレナは諫めるがアーニャは聞く耳をもたない。

「あいつは心配するこっちのことなんて考えたことないんだわ!」

長い髪を振り乱し怒る

「いつもいつも勝手に居なくなってひょこり帰ってくるの繰り返し!」

エレナとテーブルを挟んで仁王立ちになる

「今日こそガツーンと行ってやるんだから!」

テーブルを叩きカップが揺れるがお茶はこばれなかったようだ。

そして部屋の外、ドアの前にアレンはノックする格好のまま後退りを始める。

「アーニャ、彼なら帰ってきてるわよ」

とドアを指差しバラすエレナ。

バタバタと音がし隣の部屋の鍵がかけられる。

「ちょっと様子みてくるねー」

アーニャは満面の笑みで部屋を出ていった。

隣からはアレンの謝る声とアーニャの怒声が聞こえてくる。

「あの娘これ飲まないのかしら」

自分のカップが空になったエレナはもうひとつのカップに口をつけた。


その後エレナはアレンの鎧の修理のためエルフの森へ戻っていた。
そこは4種の守護者によって護られていて人間の姿は皆無である。
エルフ達の憩の場であるマザーツリー周辺では腰を降ろし会話に興じるものもいれば瞑想しているものがいたり様々な生活の中心となっている。
そこにエレナもいた。
修理に必要な材料を集め終わったエレナは足りない物がないか地面に広げ確認している。

「大丈夫ね」

そう呟き袋へと仕舞うエレナに声がかかる

「こんなところでお店ゴッコかい?」

見上げると優しそうに微笑みながら男性のエルフが目の前に立っていた。

「ハスランじゃないの。お久しぶりね」

エレナは作業を中断し立ち上がる。

「久しぶりだな。いつの間にか冒険者として出ていってたから心配したぞ」

「あら失礼ね。あなたがなかなか戻ってこないのが悪いんでしょ」

幼い頃はハスランの後を追うようにエレナがついて回り仲良く遊んでいた。
12歳でハスランは話せる島へ渡りナターシャの元へ遣えたが、その後も帰ったときはお土産を持ってエレナに外の世界の話を聞かせていた。

「まぁそう言うな。しかし元気そうでよかった」

ハスランはバツが悪そうに話題をかえる

「ええ。あなたもね。まだ話せる島にいるの?」

「いや。今はメインランドに渡って各地を回っている。結構おもしろいもんだ」

「私もケントを拠点に各地を回ってるわよ。なかなか出会わないものね」

それから二人は互いに肝心な部分を隠し現状についての会話を楽しんだ。

「そういえば何か作成でもするのか?」

ハスランは材料を指し問う

「いえ、これを修理にね。仲間のなんだけど無茶するからボロボロで」

ハスランは奇妙な巡り合わせに驚いた。
神が選んだとしか思えないほどに奇妙だ。
その鎧には見覚えがある。
ここでもアレンを見ることになろうとは。

「その持ち主はアレンというナイトでは?」

「ええそうよ。なぜわかったの?」

エレナは少し警戒しながら尋ねる

「昨日南の森で出会ってね。共闘したんだ。強く爽やかな青年だったよ」

「そういうことだったのね。偶然って怖いわ」

「あぁ、それが重なれば奇跡といえるかな?」

ハスランはアレンを思い浮かべこれからどんな偶然が待っているのか楽しみだった。

「では俺は戻らなくては。」

「ええ。私も用事を済ませて戻ることにするわ」

別れる前に握手を交わそうとしたときである

「た、たいへんだー!」

二人は声がしたほうに振り返る。
少年がこちらに向かって走りながら叫んでいる。

「なにがあった!」

ハスランが少年に向かって走る。
エレナも後に続くがハスランは早い。
少し遅れて到着したエレナは水を取りだし少年にわたす。
少年は水を飲んだ後とんでもないことを告げた

「と、とかげ。違う!ドラゴンだ!ドラゴンバレーから飛んできてエントがやられちゃった!」

パニックになりながら必死で話す少年

「友達が反対側に取り残されちゃった!助けて!」

「どっちだ!」

少年は北東を指差す。

「君は子供たちを避難させるんだ。地下の工房がいいだろう」

ハスランは少年に伝えエレナに声をかけ走り出す。

「ほんとにドラゴンが?」

「俺はそれを調査しに戻ってきたんだ。昨日までは何もなかったはずだ」

何か見落としがあったのかもしれないとハスランは悔やむ。
そしてたどり着いた先ではエントが焼かれ火災が発生しパンやアラクネが敵と戦っていた。

「加勢にきました!」

ハスランは弓を引き絞り敵を狙いながらパンに伝える。

「いったいどこから」

「こやつはドレイク。かつてのドラゴンバレーの守護者だ」

パンは槍で牽制しながら語る。

「復活したと?」

ハスランは矢を放ちながら問う

「理由はわからないがそうだろう。ここで食い止めねば母が危ない」

エレナは木の矢ではダメージが通らないためハスランに告げる。

「ここを一時任せてもいいかしら?」

「ああ、任せておけ」

それを聞いたエレナは残されていた子供達を連れ頷き走り去っていった。




3日前のことである。

「ほう、デスナイトが復活したと?」

ここはアデン城、王の間。
ラウヘルは報告を受けると兵に聞き直す。

「はっ。ゲラド殿から各地の掲示板に掲示されております」

「そうか、ゲラドか」

ラウヘルがゲラドを生かしておく理由はひとつ。
税収のためだ。
ゲラドは納税を完璧にこなし一度も漏れや遅れがない。
ラウヘルにとって手強い相手ではあるもののアデン軍には全く及ばない。

「わかった。下がっていい」

ラウヘルは兵を下がらせ魔法使いのケレニスを見る。
ケレニスは側近中の側近でありラウヘルが王座についた立役者だ。
すらりとした体型は年齢を感じさせずまだまだ若さを保っている。
胸を強調した衣装はその衰えない美貌をひけらかせているようだ。

「ケレニス、世はおもしろいことを思い付いた。頼まれてほしいことがあるのだが」

「ふふふ、なんでしょう陛下」

「各地に眠る伝説のモンスターを復活させてほしいのだが、できるか?」

「もちろんです陛下」

「よろしく頼む。まぁ暇潰しにはなるだろう」

「では早速行ってまいります」


その日、アデン各地でモンスターの目撃報告があがった。
そして翌日ゲラドはまだ報告のあがっていないドラゴンバレーにハスラン、ナイルを派遣した。
調査は何も異常なくナイルは一足先にゲラドへ報告へ戻りハスランはエルフの森へ立ち寄りアレンと出会ったのである。



エレナはマザーツリーへ戻りミスリルの矢を大量に作製するようアラクネに頼んだ。
緊急事態であるため大勢のアラクネが集い量産していくのであった。
そうしてるうちにマザーツリーから救援を受けた各地に散らばっていたエルフ達が戻り戦闘準備が進められた。
エルフはどこにいても母なるマザーツリーと繋がっており駆けつけられるのだ。
その数約50名。
歴戦の戦士達が集まりエレナが状況を説明する。
そしてハスランが待つ場所へ大量のミスリルの矢と共に移動を開始した。


ハスランは冷静に対応していた。
近くにいたフェアリーが応援に駆け付け魔法の援護を受けながらパンと共に攻撃をする。
少し動きが鈍ってきたようだ。
ハスランは比較的皮膚の薄いであろう腹の部分を的確に狙い僅かながらもダメージを蓄積させていく。
そして救援部隊が到着した。

「ハスラン!皆も一緒に戻ったわよ!」

「ありがたい!前衛は盾を展開し防御体勢を!弓を持つ者はその後ろで攻撃に入ってくれ!」

「ハスラン、これを!」

ミスリルの矢をハスランに見せエレナは矢筒ごと放り投げた。
見事受け取ったハスランは矢筒を交換しミスリルの矢を放つ!
矢が刺さり悲鳴をあげたドレイクは息を吸い込む。

「広範囲の炎がくるぞ!盾で防げ!後衛は前衛の回復を!」

流石は歴戦の猛者達である。炎に怯むことなく盾で防ぐ。
しかし勢いは凄く全てを防ぎきれない。
後衛はヒールを展開し炎が止むのを待つ。
誰も文句を言わずハスランの指示に従っている。
未知の敵であり一番理解しているのは明らかにハスランだからだ。
何度もこの炎を見たハスランはパンと共に戦いながらタイミングよく指示を飛ばす。

「前衛耐えてくれ!後衛は弓の準備を!」

ミスリルの矢を引き絞り敵を狙う。
炎が弱くなり途切れた瞬間

「打てー!」

一斉に放たれた矢はドレイクに突き刺さり針ネズミのような状態にしていく。
そのうちに回復をした前衛が突撃のタイミングを狙う。

「後衛!打ち方止め!前衛突撃!」

雄叫びをあげ突撃していかエルフ達。

「後衛はヒールをしながら隙あらば攻撃を!」

その時飛来してきたものがあった。
ドレイクだ。
しかも2体。

「こちらはもうすぐ終わるでしょう。パン様、それまで一体足止め引き受けてもらえますか?」

「よかろう。引き受けよう」

「エレナ!後は頼む!」

そう言い残しハスランは新たに飛来したドレイクへ向かっていった。



ハスランは自分にフィジカルエンチャントの魔法をかけ身体能力を向上させ更にエルブンワッフルを口に放り込み体のリミッターを外す。
そしてドレイクと1対1で対峙しミスリルの矢を放つ!
放たれたミスリルの矢はドレイクの体に食い込みターゲットをハスランへと集中させる。
ハスランは至近距離で致命傷を避け矢を食い込ませる。
それはまるで踊っているかのように展開させていた。

一体目を倒した部隊は半分に分けられ2体のドレイクへ攻撃を開始した。
ハスランは一旦距離をとりそれを見守る。
ドレイクがターゲットを変え部隊に炎を吐こうとしたときハスランが矢を放ちそれを防ぐ。
フェアリークイーンがフェアリーを大勢引き連れ応援に駆け付けた。
そして大量の矢、魔法に包まれ弱ったところを剣で止めを刺され2体のドレイクは沈黙した。


「ありがとう森の子らよ。森は守られた」

パンとフェアリークイーンはそう告げ本来の守る場所へ戻っていった。
残されたエルフ達は喜びあいそしてハスランを称賛した。
一人で対峙し抑えこんだ力を。
その勇気を。

エレナがハスランに抱きつき無事を喜びその二人を周りのエルフ達は笑顔で見守っていた。
 
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