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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百八話:出陣の朝

「おはよう、ドーラちゃん!朝よ!」
「爽やかな朝よ!勝負の、朝よ!」
「おはようドーラちゃん、今日も可愛いわね!でも、もっともっと可愛くしてあげるから!さあ、起きて!」

 踊り子さんたちの宿舎の、クラリスさんのお部屋にお泊まりした翌朝。

 突撃してきた踊り子さんたちに、起こされました。

「……おはようございます。……朝から元気ですね、みなさん。夜のお仕事の人たちなのに」
「今日だけはね!特別よ!」
「最高に、可愛いドーラちゃんをね!ヘンリーさんに、見せてあげるんだから!時間をかけて、気合い入れてかないとね!」
「……ヘンリーに?……バネッサさんですよね?」
「どっちでもいいから!さ、早く早く!」
「あ、朝食は?先に食べる?」
「いえ。まだ早いし、それは戻ってから宿で」
「そう!それじゃ、早速始めましょう!」


 と、いつもより早い起床に若干テンション低めな私を、いつもより早いどころでは無いだろうにやたらハイテンションな踊り子さんたちが急き立てて、着替えさせられて。

「……(さらし)で潰して、隠してたからだと思ってたけど。……基本的に、着痩せするのよね。脱いだらすごいのに着てれば清楚とか、ホントずるいわ」
「……はあ。……すみません」


 いつの間にサイズを確認したのか靴や小物までしっかり取り揃えられて、髪を結い上げられ、軽く化粧を施されて。

「若いし元が良すぎるから、ホントはお化粧なんて要らないくらいだけど。折角だからね!普段とちょっと違う余所行きなドーラちゃんを、演出していきましょう!」
「……いや、そこまで」
「ダメよ!やるなら、とことんやるのよ!」
「ヘンリーさんを、とことん幸せにしてあげるんだから!例え、一時でも!!」
「はあ。そうですね、手を抜いて失敗でもしたら、いけませんよね」


 清楚さを損なわない範囲で飾り立てられ、大変に愛らしい清楚可憐な美少女、ドーラちゃんが完成しました!

「わー、すごい!さすが、プロですね!本当に、清楚な美少女に仕上がりましたね!」

 素晴らしい仕上がりに、私の低めだったテンションも、上がってきました!

「なに言ってるの。ほとんど、いじってないわよ。元から清楚で可愛いのよ、ドーラちゃんが」
「またまた。これだけ手をかけて頂いて、いじってないとか。謙遜にもほどがありますよ」
「どっちが謙遜なのよ。……まあ、いいわ。最高に可愛く仕上がったことは、間違い無いんだから!これなら、ヘンリーさんも大喜びね!」
「そうですね!不幸な未来から確実に救い出して、喜ばせてみせます!」
「いちいちずれてるけど、まあいいわ!行くわよ、戦地に!」
「はい!……って、みなさんも来るんですか?朝からバネッサさんが来るとも、限らないのでは」
「来るわね!来るわよ、間違い無く!」
「ヘンリーさんが、いつまでここにいるかわからないんだから!少ない機会を、バネッサが見逃すわけが無いわ!」
「そうよ!それに、こんな楽しそうなものを見逃すとか、あり得ないから!行くわよ、早く!」
「……見世物ですか」
「大丈夫!バネッサの敗北を見届けた後は、もう邪魔しないから!行くわよ、ドーラちゃん!!」
「……はーい……」


 と、これも知らぬ間にまとめておいて頂いた貰い物の服を持たされて、宿舎を出るところでマッチョおネエ警備員のキャサリンさんにお会いして。

「……あら!アンタ、ドーラよね!?」
「はい。おはようございます、キャサリンさん」
「何よ、今日はやたら可愛いじゃないの!なんで、最初からそれで来ないのよ!そんなに可愛いのに、男装なんかしてんじゃないわよ!神と親から授かった美貌に対する冒涜よ!ふざけんじゃないわよ!」

 こちらも朝からハイテンションに、食い付かれました。

 ……クール?
 昨日のクールなおネエさまは、一体どこへ。

「……キャサリンさん?……って、男性が、お好きなんですよね……?」
「そうよ!それとこれとは別よ!可愛いものなんて、好きに決まってるじゃない乙女として!ふざけんじゃないわよ!」
「え、えっと……。すみませんでした……」
「いいのよ!許すわ!可愛いから!その代わり、また来るのよ!ちゃんと、可愛くして来るのよ!!」
「えっと……。こちらにも、事情というものが……」
「なによ、アタシには見せられないって言うの?アタシのためには、着飾れないってわけ!?」
「いや、そうじゃなくて……わかりました、善処します」
「それでいいのよ!」

 そうか、乙女だからか。
 乙女は、可愛いものが好きか。

 ……昨日の、踊り子さんたちみたいな状態に、キャサリンさんがなってしまったら。
 割と、本気で怖い……。

「……キャサリンさんは、大丈夫ですよね?キャサリンさんは、淑女ですよね?」
「そりゃ、アタシは淑女だけど。大丈夫って、何よ。なんでちょっと、怯えてるわけ?」
「いや……昨日、踊り子さんたちが」
「ドーラちゃん!!その話は!!」
「なんでもないのよ、キャサリン!!」

 ポロッと不安を口に出した私にキャサリンさんが怪訝な顔をし、説明しようとしたところを慌てた様子の踊り子さんたちに止められて。

「……ドーラ?……何が、あったの?」
「……えっと……」

 あくまで静かに、穏やかに問いかけてくるキャサリンさん、懇願するようにこちらを見詰めてくる踊り子さんたち。

 両者の間で視線を彷徨わせ、最終的にクラリスさんに縋るような目を向けて。

「血迷った馬鹿どもが、嫌がるドーラちゃんを無理矢理裸に剥いて、やらしい手つきであちこち触り倒したのよ」
「ちょ……!!クラリス……!!」
「……なんですって?」

 スパッとバラしたクラリスさんに悲鳴を上げる踊り子さんたち、ピクリと眉を動かして踊り子さんたちを睨み付けるキャサリンさん。

「……アンタたち。こんなに可愛い娘を、……無理矢理?……剥いて?……好き勝手に弄り回して、怯えさせるだなんて。……なんて、はしたない。……なんて、……外道な。……淑女にあるまじき、暴挙よね?」
「……す……すみませんでしたーー!!」
「反省してます!!悔い改めました!!」
「……当然よね。まだそんなことしてるようなら、出会い頭にシメてるわ。……ただ。……してしまったことには、……お仕置きが、必要よね……?」
「……」

 もはや言葉も無く、蒼褪めて黙り込む踊り子さんたち。

 え?怖い人なの?
 キャサリンさん、そんなに怖い人なの?
 下手なことをしたら、粛清されてしまうの?

 ……怖いかも!

「……あら、やだ。アタシまで、ドーラを怯えさせたらダメよね。淑女失格だわ」

 と、キャサリンさんの雰囲気が急に和らぎます。

「ドーラ、怯えなくても大丈夫よ?アタシは可愛い娘が嫌がるようなことはしないし、馬鹿どもは改めて教育し直しておくから。安心して、いつでも遊びに来てね?」
「そうよ、ドーラちゃん。キャサリンは、大丈夫だから。怖がらなくていいのよ」
「キャサリンさん、クラリスさん……」

 今ちょっと、かなり怖かったが。

 実際、キャサリンさんには何も嫌なことはされてないし。
 私のために、怒ってくれたようなものでもあるし。
 クラリスさんもそう言うのなら、間違い無いだろう。

「……わかりました!ちゃんと可愛くして、また来ますね!」
「ええ、楽しみにしてるわ。……アンタたちは、帰ったら……わかってるわね?」

 私に優しく微笑みかけた後、また踊り子さんたちに鋭い視線を向けるキャサリンさんに、諦め悪く食い下がる踊り子さんたち。

「えーと……どうしても?」
「反省して改めたし、今回は」
「……今すぐ、お話が必要かしら?」
「……帰ってからで、お願いします!!」
「そう。なら、せいぜい楽しんでくることね。行ってきなさい」


 キャサリンさんのお見送りを受けて、踊り子さんの宿舎を離れ、宿に取った部屋の前に到着します。

「……バネッサさんは、まだ来てないみたいですね?この時間なら、ヘンリーも外に出てるかもしれませんけど」
「そう。なら、ひとまず部屋に入って待つ感じになるのね。……じゃ、あたしたちは適当な場所から見守ってるから!頑張ってね、ドーラちゃん!」
「……やっぱり、見てるんですか?」
「当然よ!大丈夫、いい雰囲気になったら速やかに撤収するから!邪魔はしないわ、絶対に!」
「いや……邪魔とか、そんな心配をしてるわけじゃ……。ともかく、ありがとうございました。頑張ります」

 茶番を他人に見られてるというのが、単純に恥ずかしいんですけれども。
 色々と力になってもらったわけだし、それくらいは我慢するか。



 踊り子さんたちが離れていったところで、部屋の扉を叩きます。

「ただいまー。帰ったよー。誰か、いるー?」
「ドーラ様。只今、参ります」

 返事があり、すぐにピエールが扉を開けて迎えてくれます。

「ただいま、ピエール。一人?」
「お帰りなさいませ、ドーラ様。お三方は出ておられまして、拙者一人にござります。今朝はまた、一段とお美しくあられますな」
「ありがとう。踊り子さんたちが、やってくれたんだ。……ヘンリーは?昨日は、帰ってきたの?」
「勿論にござります。纏わりつく女人を振り切るのに大層苦労なされたようで、随分と消耗しておられましたが。確かに、戻られ申した」
「そ、そうなんだ……。放っといて、悪いことしたかな……?」
「なんの。昨夜のドーラ様の状況からすれば、更なる問題を招いた可能性もありましたゆえ。賢明なご判断であったかと」
「そうだね……男装だったもんね……」

 男装では、恋人のフリもできない……とも限らないが。
 話が無駄にややこしくなることは、間違い無さそう。

「……でも!今日は、戦闘準備は万端だから!今日は、大丈夫!ちゃんと、ヘンリーを助けるから!」
「あの女人とドーラ様では、始まる前から勝負は見えてござりますが。ご武運を」
「ありがとう!私、頑張るね!」


 ピエール情報でどうもやっぱりヘンリーは嫌がってたらしいことがわかったし、気合いを入れ直して!
 あとはヘンリーが帰ってきて、バネッサさんが突撃してきたら!

 いよいよ、戦闘開始です! 
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