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lineage もうひとつの物語

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動乱
  デスナイト2

ナイルとフィオナは謎の四人組と出会わないよう道順を変え上へ上がる階段を目指していた。
ナイルの頭にはこのダンジョンのマップが入っており迷うことはない。
しかし遠回りのため時間はかかるのだが。

「ナイルさんが万全の状態なら勝てるんじゃないんですか?」

四人組の話をしながら歩いていた二人だが不意にフィオナが問う。

「まさか、魔力が違いすぎる。倒したと思ったやつもあのときすでに起き上がりかけてたし。どうやら本気でもなかったしね。見かけによらずタフだよ、あいつらは」

そうなんだ。と呟き更に問う。

「でも一人ずつならいけるんじゃないですか?」

「どうだろう、本気のやつらの強さがわからないけど運がよければいけるかもね 」

フィオナが立ち直ったようで安心したナイルは聞きたいことがあると質問した。

「聞きたいことがある。6階で襲ってきたのはデスナイトだと思うか?」

「多分そうです。象牙の塔の書物に書いてあった姿に似ています」

フィオナは思い出したのか悲しそうな表情で答える。

「思い出させてしまってすまない。」

ナイルは謝り更に続ける

「あの四人組とデスナイト、どっちが強いと思う?」

「デスナイトには不意を突かれ一瞬だったので詳しくはわかりませんが遥かにデスナイトのほうが強いと思います」

「そうか、参ったな。さすが伝説ってところか。まさか実在してたとはな」

うんうんと大きく頷きフィオナは不安そうに尋ねる

「無事脱出できますか」

「それは大丈夫だ。やつらは恐らく何かの呪いか魔法にかけられている。探し人を見分けられずここをさ迷うというね。いつまで効果があるかわからないが今は闇雲に動いているはずだ」

一呼吸おき

「こっちを追ってくる気配がないから出会わなければいいだけのことだ。但しかなりの長期戦になるのは覚悟しておいてくれ」

フィオナは納得したのか安心した表情でナイルの後ろを着いていった。

そこから通常のモンスターには幾度となく遭遇し四人組の気配を感じれば路を変え無事脱出に成功した。
脱出したときはすでにナイルが入ってから1日半の時間が過ぎていた。

「ここまでくれば大丈夫でしょう。自分はシルバーナイトタウンに行きますがどうしますか?」

ナイルは祝福されたテレポートスクロールを手に質問する。

「着いていってもいいですか?一人になっちゃって不安なんです」

ナイルは考えゲラドへの報告に彼女から話してもらったほうがいいと判断し承諾する。
二人はスクロールを使いシルバーナイトタウンへテレポートした。

宿をとった二人は何故か同室にいた。
フィオナが一人だと怖がり嫌がったからである。
ナイルは拒んだものの結局折れ同室となった。
宿の主人の何かを含んだ笑みが気になるところではあるが。

二人はベッドに腰掛け向かい合って話をしていた。
フィオナはまだ若く16歳ということだ。
見た目は二十歳そこそこに見えまさかナターシャより一つ下だとは思わなかった。
フィオナは今後行くあてがないということ、よければこれから先ナイルと同行させてほしいとのことだった。
その件についてはリーダーに相談してみると返事をし、翌日ゲラド様に報告してもらうと説明しその夜は早くに休んだ。


翌日朝も早くフィオナにローブを新調してやりゲラド家の前にきた二人。
ノックしようとした途端扉が開いた。
中から現れたのはハスランでありその後ろにはナターシャとキャスタがいた。

「何故ここに?」

ナイルは尋ねるがハスランが怒気を含んだ声で返答する。

「何故じゃないだろう。連絡も寄越さず二日も戻らないとはどういうつもりだ」

メインランドケイブ出発前に連絡しようとして忘れていた。
思い出したナイルはナターシャに頭を下げる。

「失念しておりました。申し訳ございません」

「いえ、無事でなによりです」

とナターシャは安堵しナイルに問う。

「そちらの方は?」

突然の事態に困惑していたフィオナを見て笑顔を向けるナターシャ。
なんだこの美人は馴れ馴れしい
フィオナは心の中で暴言を吐くが顔は涼しげに挨拶しようとするも

「昨夜はそちらの可憐な女性と共に過ごしたのか?」

とハスラン。

「そうなんです」

と満面の笑みを浮かべ勝ち誇った顔でナターシャへ視線を投げ答えるフィオナ。
当のナターシャは

「まあ、そうでしたの。」

と至って普通である。

ちょっと可愛いからって調子にのってんじゃないわよ!
かなり可愛いけど私の方がいい体してんだから!
とフィオナの中では暴言の嵐である。
成り行きについていけず呆然とするナイルにナターシャは優しく声をかける。

「何か理由があるのでしょう。ゲラド様にお願いして部屋をお借りしましょう」

と奥へ入っていくナターシャとキャスタ。
覗き見たキャスタの目は笑っていなかった。



案内された部屋には会議などで使っているのだろう長く大きいテーブルがあり10人程度なら楽に座れるであろう。
ゲラドはナイルの無事を喜び席を勧める。
そしてナイル、フィオナの二人はナターシャ、ハスラン、キャスタの向かいに座りゲラドが口を開く。

「で、ナイル君説明してもらおうか。君のことだよほどのことがあったのだろう?」

ナイルは頷き話し出す。
まずフィオナを紹介しデスナイトによって彼女のパーティーは壊滅しておりその生き残りだということ。
デスナイトを復活させたのはカスパーと名乗るウィザードであり四人組だったこと。
そしてその四人組は自分より格段に強く逃げ帰ってきたと。

ナターシャらは驚愕し言葉もでない。
伝説上のデスナイトが実在することにも驚くが復活した?
ハスランがまず口を開いた。

「おまえほどの使い手が逃げ帰るとは信じられん。いったい何者だ?」

「わからん。オリムと関係あるようだから象牙の塔にいけば資料があるかもしれんが」

ナイルは思い出すように話しゲラドへ視線を向ける。

「俄には信じられんが事実なのじゃろう。警告文を出さねばならんな」

ゲラドは呼び鈴を鳴らすと現れた従者に何ごとか告げ再び話し出す。

「フィオナさん。思い出すのは辛いじゃろうがそのときの状況を詳しく話してはくれんか」

フィオナは頷き語り出す。
自分達は5人組で自分以外のメンバーは熟練者でそれなりに名前が売れている。
自分は二月前に入った新人で弱いため自分を守るような陣形だった。
5階から階段を降りた先で急に襲われた。
まず先行していたナイトがやられ驚く間もなくエルフが切り捨てられた。
もう一人のナイトとウィザードが応戦するも二人とも一撃だった。
自分が狙われたとき息のあったエルフが弓で気を引き逃げろと叫んだ。
エルフの断末魔を聞きながら必死に階段を登りナイルと出会ったと。

悲痛な表情で涙を浮かべ話す彼女の手をテーブルの下で握り励ますナイル。
彼女はナイルの励ましがあり詰まることなく話終えることができた。
ナイルは代わり続ける

「四人組も同様警戒すべきです。私一人だと出会い頭で終わってました。感じたことのないような魔力の高さでした。」

それを聞いたゲラドは頷きナターシャが口を開く

「それは例えば私達が揃っても無理なほどでしょうか?」

「物理攻撃に対する耐性がどれだけあるかによると思われます。しかしまだ無理ではないでしょうか」

ナイルは冷静に分析する。

「やつらは捕らえるために攻撃してきたのであって殺すためではありません。一人気絶させた後のやつらは本気になったのか魔力が高まりどこまで上がるのか想像もつきませんでした。最初から殺す気だったのなら自分達はここにいないでしょう」

ナイルの魔法に絶対的な信頼をおいているナターシャ達にとっては衝撃だった。
そしてゲラドが語る。

「ナイル程の使い手にここまで言わせるとは只者ではない。すぐ象牙の塔に使者を派遣し調べることにしよう。それにデスナイトじゃ。その娘が語ったパーティーには覚えがある。おぬしらには及ばぬが上級者といえるパーティーじゃわい。それが手も足も出ぬとは想像もつかん強さじゃ。有象無象が何人揃っても無理じゃろう。この問題は糸口が見つかるまではわしが預かろうと思うがどうじゃ」

皆を見渡し一人一人確認していく。
誰も声をあげる者はなく沈黙をもって答える。
そして飲み物に口をつけ唇を潤わし

「そしてフィオナさん。今の国王をどう感じておる?正直に話してもらいたい」

話を振られたフィオナはビクッとし考え込む。
正直に言えば捕まって処刑されてしまう恐れがあるからだ。
フィオナは黙り俯いてしまう。

「正直に話してほしい。俺達は何を聞いても君に危害を加えることはしない。約束する」

ナイルの真剣な表情にこの人を信じて死ぬことになってもいいかと

「私は今の国王に反対です。私利私欲のため国民を苦しめるなどあってはならならないことです。今は力をつけいつかはレジスタンスへ加入し国と戦うつもりです」

言ったらスッキリした
フィオナは晴れ晴れとした顔で文句があるならいってみろと言わんばかりである。

ナターシャは笑顔を浮かべフィオナに伝える

「では、私達と一緒にきませんか?」

フィオナは呆気にとられナイルを見る。
ナイルは頷き

「この方は先代の善王デューク・デフィル様の嫡子ナタリシア様。そして今我々は国を取り戻さんと旅をしている」

フィオナは軽い目眩がした。
この人達は只者ではないと思っていたがまさかである。
嗚呼、失礼なことをしでかしてないだろか
記憶を探るが軽いパニックになっているため思考が定まらない。

「フィオナさんどうされました?」

ナターシャは体を伸ばしフィオナの頬をそっと撫で心配した面持ちで尋ねる。
しかしそれがいけない。
更にパニックに陥りながらフィオナは答える

「ふ、不束者ですが宜しくお願いします」

と。
 
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