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第五章

 その彼を見てだ、村人達は驚きを隠せない顔で言った。
「ペガサス、それじゃあ」
「貴方はペレロポーンですか」
「あの」
「そうだった、今まで隠していたがな」
 その通りだとだ、ペレロポーンも答える。
「私はペレロポーンだ」
「何故そのことを隠しておられたのですか?」
 村人の一人が彼に怪訝な顔で問うた。
「そのことを」
「わかると思うが」
 これがペレロポーンの彼への返答だった。
「私のことを知っていれば」
「天に登ろうとされたことですか」
「そうだ、私はあの時驕っていた」
 その過去を話す時は目が曇った、今は俯きはしなかったが。
「そして天から落とされた」
「そうなったことについてですか」
「私は悔やみ恥じていた」
 引き摺っていた片足もここで思い出した。
「そうだったからだ」
「ずっとお名前を隠しておられたんですか」
「そうだったのですか」
「そうだ」
 その通りだとだ、ペレロポーンは村人達に答えた。
「鍛冶屋として生きていてもな」
「そうでしたか」
 村人達はここまで聞いて納得した、そしてペレロポーンはというと。
 顔を上げてだ、村人達に対してこう言った。
「悪いが私はどうやら」
「この村をですね」
「去られるのですね」
「そうしなければならない様だ」
 ここで後ろを見た、ペガサスはずっと彼の傍にいる。
 その天駆ける馬を見てだ、ペレロポーンは村人達に言った。
「ペガサスと共に天を駆けてキマイラの様な獣や悪人達を倒していかねばならない様だ」
「かつての様にですか」
「そうなのですね」
「そうだ、ではだ」
 それではと言ってだ、そうして。
 そのペガサスの背に戻った、今度は馬上から村人達に告げた。 
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