| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ベイサイドの悪夢

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七章

「全く以て」
「そうだな、ただな」
「ただ?」
「考えたものだな」 
 ホイットマンは腕を組み考える顔で言った。
「相手も」
「そうですね、本当に」
「普通に麻薬の取引をしてもな」
「マークされるものですからね」
「見つかりやすい」
「だからああしてですね」
 ネットや酒場を使ってだというのだ。
「やったんですね」
「噂を流して、実際に見た奴を殺してな」
「しかも殺し方を怪物がしたみたいに見せて」
「人が寄らない様にした」
「人間は恐怖からは身を避けますからね」
「どうしてもな」
 これは本能的にそうすることだ、命の危険があると感じたものからは逃げるのは生物の本能なのである。
 人のそれを利用してだ、人を寄せつけなかったというのだ。 
 そのことについてだ、ホイットマンはある意味感心して言うのだ。
「よく考えたものだ」
「そうですね、それに隠れてですから」
「一つ面白いことがわかった」
 ホイットマンはこうも言った。
「悪党は隠れるものだが」
「悪事をしてますからね」
「これもまた本能的にそうすることだ」
 ばれてはそれが身の危険になる、良心がなくともこのことは本能的にわかる。この世の中には法律があるからだ。
「しかしだ」
「隠れ方ですか」
「目くらましをして隠れるやり方があるな」
「今回がそれですか」
「ああ、そうだ」
 まさにそれだというのだ。
「人の恐怖を起こさせてその中に隠れる」
「そのやり方ですね」
「今回はそれをした」
 まさにそれだというのだ。
「本当に考えたものだ」
「ですね、確かに」
「こうした隠れ方もある、このことがわかった」
 こうしみじみと言うのだった。
「本当にいい勉強になった」
「ですね、俺もですよ」
 二人で話すのだった、今シアトルはファミリーへの一斉捜査と逮捕で大騒ぎになっていた。その中で二人で話しているのだ。
 そしてだ、ホイットマンはキッドニーにこうも言った。
「それでだが」
「ええ、この一連の捜査と逮捕が終われば」
「いよいよだ」
 やはりにこりともしないがこう言うホイットマンだった。
「私達のお楽しみだ」
「ええ、ボーナスと昇進ですね」
 キッドニーはにこりと笑って応える。
「それですね」
「君は警部になりだ」
「警部は警視にですね」
「ついでに言えば警視も警視正になられる」
「ははは、そこはついでですか」
「内緒だ、ご本人がおられれば第一になる」
 この辺りは気を使うというのだ。
「署長もほくほく顔だ」
「しかも警察には内通者もいませんでしたしね」
「そのこともよかった」
 ファミリーとの内通者もいなかった、このこともよかったというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧