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ベイサイドの悪夢

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第二章

「熱望します」
「そういうことだな」
「それは警部もですよね」
「まず昇進すればな」
 その場合はどうなるか、ホイットマンは表情こそ変わらないがそれでも言うのだった。
「地位があがりだ」
「ええ、それがいいですよね」
「しかも給与もあがる」
「いいことばかりですね」
「ついでに責任も負うことになる」
「それからは逃げられないですね」
「逃げてもいいが後で倍になって返って来る」
 この世の摂理としてそうなるというのだ。
「だから責任はその場で負うべきだ」
「そうなりますね」
「しかし地位と給与はな」
「あと役職もつきますし」
「いいことだ」
 そして次はだった。
「ボーナスもいいことだ」
「ですね、本当に」
「懐が温かくなるからな」
「だからここはですね」
「是非捜査を成功させる」
「何としてもですね」
「ただしだ、もの好きが見に行って首なし死体で発見された」
 このこともまた重要だった、それもかなりだ。
「しかも海の中でだ」
「何でも溺死してですよね」
 キッドニーは検死の結果から話す、二人が進むシアトルの街は妙に霧が多い。そのせいで車のライトも薄明るい感じだ。
 今は街の人も少なく見える、霧のせいか。
 その街の中を進みながらだ、キッドニーは隣にいるホイットマンにこう言ったのだ。
「それで、ですよね」
「海中でな」
「首をこう」
 右手で首を左から右に掻き切る動作をして言った。
「されたんですね」
「何か鋭利な刃物の様なものでな」
「何なんでしょうかね」
「怪物かもな」
 ホイットマンはあえて怪しい存在を出してみせた。
「若しかしたらな」
「怪物が海の中に引き込んで、ですか」
「そしてだ」
 首を切ったというのだ、それも切断である。
「尋常な話ではないな」
「ええ、そうですよね」
「しかしこのことからだ」
「真夜中の港に何かが出るのは間違いないですね」
「まずは、そうだな」
「どうしますか?」
「話の出処から調べるか」
 そこからだというのだ。
「まずはな」
「そこからですか」
「そうだ、何処から話が出たかでかなり違う」
 その相手が何者かわかる手掛かりがだというのだ。
「だからな」
「出処ですね」
「酒場かネットか」
「ネットを調べてみますか」
 キッドニーの灰色がかった青の目が光った、そうして。
 ネットでこの話のことを検索してみた、その結果一番古い書き込みはというと。
「案外早いですね」
「四ヶ月前だな」
「ええ、そうですね」
 その頃からだった、この話が出ていたのは。913
「これは思ったよりも」
「かなり早いな」
「それでもの好きが見ていってですね」
「それだ」
 首なし死体で海中から見つかったというのだ。
「しかも噂の出処だが」
「オカルト関係からですか」
「しかしこのハンドルネームの人間は」
 その書き込みがあったサイトの掲示板、最初のそれを書いた人間のハンドルネームは。 
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