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第二章

「私思いきりお洒落してくるから」
「俺もね、今みたいな格好じゃなくて」
 ラフな上着とジーンズでなく、というのだ。
「いい服着てくるから」
「凄い服を着てくるから」
 こう話してそしてだった、由紀はデートの時を待っていた。そしてこの日からだった。
 次の日曜日を待った、それでだった。
 いつもうきうきとカレンダーを見る様になった、すると。
 家でカレンダーを見ている時にだ、母にこう言われたのだった。
「あんた最近変よ」
「変って?」
「カレンダーを見てにこにことして」
「だって日曜デートだから」
 自分で言った、そのにこにことした顔で。
「だからよ」
「それでなのね、それはいいけれど」
「いいけれどって?」
「挙動不審よ、今のあんた」
 こう娘に言うのだった。
「あからさまにね」
「不審って」
「クリスマスを待つ子供みたいよ」
「もうそんな歳じゃないわよ」
 そう見えるの、本当にどうしたのよ」
「いや、ちょっとね」
「どうせあれでしょ」
 娘の事情を察してだ、母は彼女に眉を顰めさせてこう言った。
「デートでしょ」
「えっ、わかるの!?」
「わかるわよ、私はあんたのお母さんよ」
 母親が娘のことをわからないでどうするかというのだ、流石に全てわかっているとまでは言わないにしてもだ。
「それでわからない筈がないでしょ」
「そういうことなのね」
「そう、今の彼氏の子とデートなのね」
「実はね」
「気持ちはわかるけれどもう少しね」
「気持ちを抑えろっていうのね」
「そうよ。お父さんも何も言わないけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「見ていて変だからそこは落ち着きなさい」
「わかったわ、じゃあね」
 一応こう答えはした、だがだった。
 由紀は日曜のことを思うとついついにこにことしてしまう、口元も思いきり緩めさせてしまう。
 それで大学でもか、一緒に食堂で食べている友人達にこう言われる始末だった。
「あのね、あんた今凄く変よ」
「口元でへへ、って感じで開いて」
「目元も思いきり垂れてるし」
「もう何?って感じよ」
「涎垂れそうよ」
「えっ、そんな顔になってるの!?」
 言われて気付く、好物の味噌汁を飲む手も止まる。
「今の私って」
「そうよ、お味噌汁そんなに好き?」
「それと鯖味噌も」
「野菜のお浸しも」
 どれも由紀の好物だ、和食派なのだ。
 だがそれでもだ、今の彼女はというと。
「何か物凄くいいことみたいな顔だから」
「一歩間違えればお薬やってるみたいよ」
「何か決めてる感じだから」
「思いきり怪しいわよ」
「まあちょっとね」
 顔を何とか元に戻しながらの言葉だ。
「それはね」
「あのね、何かデートの約束してもらったらしいけれど」
「気持ちはわかるけれどね」
「それでも今のあんた変だから」
「本当に引くから」
 実際に引いている顔で言う彼女達だった。 
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