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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第六十話 束縛

ミネルバとラー・カイラムは戦闘を終了した後にロゴスの最後の構成員であるアズラエルの受け渡しと修理、補給の為にプラントに帰還していた。そして既にその仕事も終わり、二隻の艦は長い戦いから漸く休むことが出来ていた。

「ああ、マーレ――――残念だったね。君が出る前に決着が着いちゃってさ」

そんな中、クラウがラー・カイラムから降り、MS格納庫の一角にいたマーレを見つけるとそう声を掛ける。マーレの不機嫌そうな顔つきはいつにも増した様子を見せており、やはり出撃できなかったことに不満を持っているようだった。

「テメエのせいだろうが……出撃が延長させられた上に機体の調整が完了した頃にはロゴスが壊滅したんじゃ出られるわけねえだろ」

普段ならクラウに対してある程度、お前とかアンタといったりするマーレがテメエという人称代名詞を使っている時点で彼の不機嫌さは目に見えてわかるものであり、流石にクラウも苦笑いしながら答える。

「でも、実際間に合わなかったのは仕方ない話だよ。他の機体で出ても戦闘が終了したころに辿り付たんじゃ意味がないだろう?」

マーレが出撃できなかったのは機体の調整が間に合っていなかったのが原因だが、仮に他の機体で出撃し、敏速のナスカ級での移動であったとしても主戦場に辿り着く前に決着がついていたことだろう。

「そういう問題じゃねえだろ。間に合う、間に合わないは別にしても意志の問題だ」

そんなものかね?とクラウは言いつつもマーレとの会話を続ける。彼にとってそういった感情は分からないでもないが、そこまで固執するかと言われてしまえば否と答えるだろう。それは元来の彼の性格からか、或いは繰り返す転生による部分的な感情の壊死なのかはともかくとして。

「まあ、決着はついたんだしロゴスとの戦争(・・・・・・・)もこれで終わりさ」

「……折角用意した機体は無駄にはならないって事か?」

クラウの言葉の裏を読んだのだろう。マーレが小声でクラウに対してそう尋ねる。流石に人が大勢いる格納庫でそのような話は不適切だと感じ取っているのだろう。

「流石ニュータイプ……勘が良いね。まあ、その話は追って連絡があるだろうさ。準備だけは怠らない方が良いと思うよ」

最初のニュータイプという初めて聞いた単語にマーレは引っ掛かりを覚えるが、それを尋ねようとする前にクラウがマーレから離れて言った為、聞くタイミングを失ってしまいマーレも多少引っ掛かった程度なので別に良いかと思いその場から離れた。

「ああ、楽しみだな――――待ち遠しいよ。この戦争が総てを変えることになるのか、それとも――――」

クラウが一人歩いていく中で浮かべた笑みは破滅を期待するかのような酷く冷たい笑みだった。







「議長からの声明だってよ――――」

「ロゴスを討ったってことを正式的に公表するのかな?」

多くの激戦を乗り越え、ようやくプラントで休息を得たミネルバやラー・カイラムのクルーはそれぞれ羽を伸ばしていた。そんな中、議長が全世界へと放送を発信しようとしており、その声明はロゴス打倒以来の大規模な放送だった。

「戦争がこれで完全に終わった、ってわけじゃないからな、実際は。俺達は一応まだ連合と戦争中ってことになってるんだしよ」

ハイネはロゴスを壊滅した報告をすると共に、連合に対しての何らかのメッセージ的な意味合いを持つ放送を行うのではないのかと予想する。

「だが、連合に継戦能力はもう殆ど残っていないのではないか?宇宙の連合拠点はアルザッヘルだけ、地上に関しても連合は組織として瓦解している状況だ。地上もパナマ基地位しか残っておらんぞ」

アレックは連合との戦争を継続するのは連合側にとって不可能ではないかと推測し、別の意図があるのではないかと発言するが、実際の所はどうなるのかは分からないといった表情で答えた。

「どちらにしても難しい話でしょうね。私達現場の軍人が考えて解決するような話ではないはずよ」

「個人的にはこれで終わってほしいんですがね~、この戦争で失ったものは多すぎますよ……ユニウスセブンの落下から始まって、ゴンドワナを含めた多くの部隊の壊滅。軍人だけならまだしも、ヤヌアリウスやディセンベルといった市民プラントにまで被害が及んでいますしね」

タリアやアーサーもこの戦争が終わってほしいと願う一方で、実際にそうなるのは難しいだろうという予測が存在している。連合も無条件降伏は受け入れられないだろう。となればあと一度か二度、連合側が勝てる見込みのある戦闘を行い、多少なりとも戦果を得たうえで交渉の場に立つのではないか。
もしそうならば、こちらが意固地になって勝ちにこだわらず、被害を抑えて下がった方が得策とも言えるかもしれない。そんな風にそれぞれが自分たちの考えを発言し、内容を吟味していく中で議長の声明が始まるまで雑談が続いていった。







「ミーアはこれからどうするつもりなんだ……」

「え?」

ミネルバがプラントに帰投した話を聞き、ミーアはアスランに会いに行き、彼をデートに誘っていた。断られるかもしれないという不安はあったものの、彼は溜息を一つ吐き、しょうがないと言った様子ではあったが了承してくれた。そのこと自体はミーアにとって嬉しかったことなのだが、同時に不満も覚えた。
アスランがミーアに付き合ってくれているのは世間体や体裁、演技だという事が分かるからだ。とはいえ彼も本気で嫌がっているというわけではないのだろう。実際、彼自身も自分の趣味に関する事で楽しんでいる様子が見られた。
そんな仮初の逢引の最中、アスランは突然この先の事について尋ねてきた。ミーアは訳が分からず一瞬茫然とした表情をアスランに向ける。アスランも意味が伝わらない言い方だった事に気付いたのか説明を捕捉する。

「君の役割は言ってしまえば戦争のプロパガンダだ。少しでも早く平和になるために士気を上げさせようという議長の試み……わかってるとは思うが、この戦争が終われば君の役割も終わりなんだ」

シンデレラは十二時に魔法が解けてただの少女に戻ってしまう。つまり、ミーアがラクスを演じていられるのはこの戦争が終わるまでという事だ。戦争が終わってしまえば彼女はラクスを演じる必要がなくなる。はっきり言って政治的に彼女の存在は戦後には邪魔だからだ。だが、ミーアはこれまでそんな事を考えていなかった。いや、あえて考えようとしなかった。
自分はラクス様の代わり。そっくりな声で話せて歌えるだけのちっぽけな存在でしかない――――そんな彼女はいつか自分がその役割を失うことなど本当はとうの昔に気付いていた。だけど、それに気づかないふりをして、与えられた役割を演じて、自分がただラクスに成り替わる。そういった夢に浸っていたい。
だけど、アスランはそれを良しとしない。何故なら、いつだって彼は人一倍真面目で何に対しても考え込んで、現実を見つめる人間なのだから。

「私は――――別に幻想でもいい。嘘で塗り固めた事実でもいい……ただ、貴方と一緒にいて、ラクスを演じて皆を幸せにしたい」

だが、それは叶わない夢でしかない。薄氷の幻視に過ぎない。例え本物が消え去ったとしても彼女が本当の意味でラクスになることは出来ず、本物の役割としてラクスを求められることはない。彼女自身が自分と向き合わない限り、彼女は永遠にラクスの幻影という存在に束縛された人生を歩むことになる。
それが本当に不幸な出来事なのか、或いは、それは本人や周りにとって幸福であるのかもしれない。少なくとも今現在、ミーア自身は己が不幸などと感じていることはなかった。

「だからね、大丈夫よ。私は――――」

「……わかった。もし君が本当の自分を見せることが辛いっていうのならこれ以上詮索はしない。だけど、自分がラクスではなく、ミーアだっていう事だけは忘れるな。自分を押し殺して作るような幻想はきっと後悔しか生まないことになる」

重く溜息を吐きながらもアスランは同意を示すと共に警告を促す。それは自分がアレックス・ディノでいた頃の経験則からなのか、或いは他の要因によるものなのか。どちらにしても、その言葉はミーア自身の胸に大きくのしかかるような言葉だった。







「結局どうする気なんだ、隊長さんよ?」

消耗しているガーティ・ルーのMSパイロットの一人であるダナはネオに対してそう尋ねる。彼にとっては軍組織であり、ファントムペインの母体であったロゴスが壊滅したことに別段何も感じていない。寧ろ、そういった組織からの束縛がなくなったことで気を楽にしてた。
最も、艦はいまだ健在であり、勝手気ままに行動することが出来ないので面倒だと思っている。

「決まっている。コーディネーターの排除だ。今すぐ戦力を整えてダイダロスを壊滅させた部隊を排除すべきだ」

「そうだぜ、あいつらミネルバとかいう奴なんだろ!だったら今すぐぶっ壊しに行くべきだっての!!」

エミリオはコーディネーターを抹殺すべきという意志から、アウルはスティングの仇という事からそれぞれダイダロスに向かうべきだと主張する。尤も、ミネルバは既にプラントに到着しており、ダイダロスには居ないのだが。ネオは二人の発言を聞いても現状の戦力不足や艦の損耗から考えてそれを諌める。

「今の俺達じゃ返り討ちにあうだけだっての。俺達は少数で補給もままならない状況だぜ?迂闊に動くわけにはいかんさ」

どの道、ロゴスが壊滅した時点でエクステンデットであるアウルはこのガーティ・ルー以外では調整を施すことが出来ないのだ。おそらくは探せばいくつか施設はあるのだろうが、ネオはそういった施設への繋がりを持っていない以上難しい。

「じゃあいつ出るっていうんだよ!」

「今は無理だろうが、機会は巡ってくる筈だ。その時までは大人しくしてるしかないな」

ロゴスが壊滅したとはいえ、連合がこのまま黙っている筈はないだろう。おそらくだが戦争終了のタイミングを計るために戦闘が最低でもあと一度は行われるはずだ。厄介者のファントムペインが生き残るにはそのタイミングでの介入しかないだろう。

「それが無かったときは――――俺達はどういう立場になるんだろうな……」

その介入する機会が無ければ確実にネオ達は詰みとなるだろう。その結果で、ネオ自身は自分が戦犯として処刑されても構わないと思っている。いや、実際に処刑されるのは嫌だが、自身の命一つで他のファントムペインの部隊が生き残るなら構わないと思っている。

(実際、そうなるのは難しいっていうか、ほぼ無理な話だろうがな……)

現実を直視しているネオは自分たちが爪弾きものであり、最早まともな方法で生き延びる方法はないことを理解していた。同じ連合に頼ろうにも彼らはこちらを嫌悪しており不可能、母体であるロゴスも既にない、民間企業もファントムペインに協力しようなんて変わり者はそうそう居るはずもない。
この八方塞がりとも言える状況で生き延びるには連合に価値のある存在だと売り込むか、悪行を働くかのどちらかだ。そして、ネオは他の選択肢が残っている中で自分から犯罪者になろうという気が起こることは流石になく、連合に対して売り込むために独自に行動し、漁夫の利を狙っていた。








「さて、これが私にとっての最後の望みとなるのかな」

全世界へと放送を発信する直前、デュランダルは一人で部屋の椅子にもたれかかりながら独白する。

「人は自由を求めながら秩序を望む。束縛を嫌いながら解放を望まない。難儀なものだ――――そして、そのような矛盾を抱えている人という存在が、他ならぬ人の手によって平和など、得られるはずもないだろうに……」

だからこそ、デュランダルはデスティニープランを望む。そもそも人が人によって平和を創ることなど不可能だ。独裁は不満を齎し、共産は腐敗を生み、民主は愚盲を曝す。人という種の枠には限度がある。ならば人がそれらの支配を行わなければいい。
遺伝子学が発達したこの時代だからこそ許される才能の証明。確かに最初の一代は色々と望まぬものを強いる事となるだろう。無論、遺伝子が総てを決めるなどと言う傲慢なことを言いはしない。環境が社会が彼らという人格を形成させ、社会の概念を変えていく。しかし、遺伝子が重要なファクターであることは誰であろうとも否定できない。

「世界は変わらなくてはならない。今というこの時を逃せば人は何も変わらぬまま同じ過ちを繰り返す事となる。歴史は繰り返され、いつかは彼の言ったように数多の予言の日となってしまう」

人が平和を継続させるなど所詮不可能な世迷言だ。己の器を理解できず、己を知ることをせず、ただ他者を見て、都合の良いものだけが自分にあると錯覚する。それが人という自らを蝕み、やがて種としての人類を滅ぼすことになる。

「だが、遺伝子による支配を望まないというのなら、私はそれもまた是としよう。人の数だけ理想は存在している。そして、それは同時に新たな策を生むことになる」

既に準備は整っている。故に、デュランダルはこのデスティニープランが失敗したところで問題ない。

「これを止めることが出来ないのであれば、所詮それが人の限界だという事だ」

そう言ってデュランダルは座っていた席から立ち上がり、声明を行う為に移動する。

「さあ、運命の始まりだ――――」
 
 

 
後書き
久しぶりにクラウ登場!こいつ本当に主人公らしくないね。今更ながらだけど、この作品の主人公って本当に誰なんだろうね?もうクラウに主人公属性なんて皆無な気がするよ。(笑)
原作と違いミネルバはプラントにアズラエルを運ぶために着艦しました。まあアズラエルは殺されたんですけどね。
このまましばらくは議長のターンになりそうな予感。専用機の出番もそろそろか? 
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