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MS Operative Theory

作者:ユリス
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RX計画とV作戦①

 
前書き
久しぶりに怒ってしまったゾ 

 
——“勝利=Victory”の頭文字を冠した「V作戦」発動!——

よほどの地理条件が整わない限り、“想像を絶するスーパーウェポン”など存在しない。第二次世界大戦におけるロシア軍の革命的戦車T-34や米国の原子爆弾など、各国を震撼させた兵器は存在したが、(最悪レベルとはいえ)予想の範囲内のことではあった。

しかし太平洋戦争直前の米軍が、事前の詳細な報告を受けていたにもかかわらず、人種偏見的侮りから、日本軍の零式艦上戦闘機の性能とパイロットの練度を見誤ったように、慢心や軍上層部の発想の硬化などが、思わぬ被害を生み出すこともある。一年戦争の緒戦におけるMSが、まさにそれに当たるだろう。

公国がMSに関する情報を偽装していたとはいえ、ザクに完膚なきまでに叩きのめされた地球連邦の醜態は、無能の誹りを受けざるを得ないものだった。

MSはギレン・ザビの冷笑を買ったというエピソードからも推測できるように、出現当時の常識では荒唐無稽な兵器ではあった。頭どころか手足も付いていて、銃や斧を振り回す兵器など冗談と思われても仕方がない部分があったのだ。これに可能性を見いだせるのは、よほどの天才か、ある種のマニアだけだろう。

だが、公国にはその天才が存在した。30:1以上といわれている国力差を覆すため、従来の電子戦が無効化されるミノフスキー粒子散布下での運用を前提とした新兵器として、MSを開発したのだった。その威力は改めて語るまでもない。

一方の連邦軍も、ザクの設計図とサンプルを入手したといわれ、U.C.0078,03には、MSの開発プロジェクト「RX計画」を立ち上げている。しかし、当初の連邦軍はこれを活かせなかった公国が公開した、MSの作業テスト風景を嘲笑し、兵器としての可能性を見出すことを放棄してしまったのだ。

連邦軍にも公国の意図を読み取った者がいたようだが、楽観論と信じがたい侮りの前に、賢明な物の声はかき消されてしまったのだろう。せっかくの「RX計画」も基礎研究は進められた者の方針が徹底されず、日陰技術者の吹き溜まりの様な印象すら持たれかねない状況だった。

連邦軍は彼らの信奉する大鑑巨砲主義と、それを具現化した宇宙艦隊、そして何よりも圧倒的な物量をもってすれば、公国など一蹴できると信じて疑わなかったのだ。

が、一太刀で打ち倒されたのは連邦軍だった。一週間戦争とルウム戦役で、無敵だと信じられた連邦艦隊は壊滅し、敗北寸前に追い込まれたのだ。

一般人ならざる、プロの軍人が敵兵器の力を見抜けなかったのは犯罪的ですらある。更に信じがたいのは全滅に近い被害を出しながらも、上層部はMSの戦闘能力を評価しようとしなかったことだった。なんという怠慢、なんという慢心だろう?しかし、やっとここで連邦軍にも一条の光が差し込む。

 U.C.0079,04,01、人望と政治力に富むレビル大将(彼はルウム戦役で、MSの威力を持って知らされた)の働きかけによって、試作MSと運用艦、そして主力MSの開発・生産を骨子とした「V作戦」が発動する。歴史の舞台裏では深く静かに連邦軍の反撃準備が始まっていた。





補足事項

——宇宙艦隊再建プラン「ビンソン計画」——


 連邦軍は「V作戦」でMS関連の充実を図る一方、一年戦争の緒戦で失われた艦艇の再建を進めることになる。それが「V作戦」と同じU.C.0079,04,01に発動された「ビンソン計画」である。

 「V作戦」の発動を許可した連邦軍上層部だったが、必ずしもMSの有用性が認められたわけではなく、MSに惨敗を喫したはずの大鑑巨砲主義に拘泥する者もいた。「V作戦」と「ビンソン計画」という、新旧相反する計画が同時に進行した背景には、MS派と、艦艇派の微妙な政治力学を見ることができる。

 それでも、MSの開発と生産を進めざるを得ない現実の前に両派の歩み寄りはあったようで、「ビンソン計画」で完成した艦艇にはMS運用能力を持つ艦も多かった。

 また、艦艇の持つ大火力は機動兵器相手には効果が薄いが、要塞攻略戦や対艦戦には有効であり、ソロモンやア・バオア・クーなどの対要塞戦が続いた一年戦争末期の戦いでは有効性があったのは間違いない。そもそも、運用試験の終了していない新造艦ばかりを建造するのは冒険的過ぎるため、旧来の戦艦や巡洋艦の改修型を大量就役させた判断は正しかったといえるだろう。
 
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