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ひとりぼっちの太陽の歌。

作者:石榴石
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それでもここにある。

 
前書き
太陽はここにある。 

 
誰かに必要とされたい――そう思ったから旅に出た。

太陽のような存在になりたいと思ったんだ。


太陽は雲に隠れ、世界は冷え切ってゆく。

だからみんなは太陽を必要とする。


誰かに必要とされたい――太陽のように必要とされたい。


――


それから太陽を中心に、僕は廻っていたようなものさ。

どこに行ってもそれはついてくるんだ。

見えなくたってそれは在るんだ。


そこには到底かなわない。

それは何年たっても、何万、何億年たってもかわらないだろう。


気が付かないうちに、僕は回転しているのかもしれない。

地球が自転をしていくように。

太陽の周りを公転しているように。


それは自らの意志なのか、

無理やり回転させられているのかはわからない。


ただ、確実に言える事は、『そこに存在している』という事だろう。

そう考えるならば、大小の差は大きくても同じに思えてくる。


そう思うのは愚かだろうか。

僕もこの自然の一部と考えるのは。


そんな事を思いながら、僕はまだ旅を続ける。


――


僕はふと思う。太陽は寂しくないのだろうか?

僕が太陽だったら、きっと寂しいのだろうと思う。


近づくものを焼き尽くし、全てを遠ざける炎のからだ。

いくら世界が冷えていようと、その身だけは彼方で燃え続ける。


そして僕は、太陽になった気持ちになって悲しくなる。

日照りが続けば疎まれる。

『ああ、暑い』

『日の当たらない場所へ』


無いなら無いでそれを望まれ、

在るなら在るで煙たがられる。


でも、だって。

しかたのないことでしょう?


そうだね。

でもそれは勝手な事なんだよ?


――だからどうだというのだろう。

僕にはどうすることもできないよ。


そう言ってても何も変わらない。

この話は永遠に終わらない――何億万年かけたとしても。


結局僕はやめたんだ。

太陽のような存在になるという事を。

だから僕は続けることにしたんだ。

ここでこうして生きていく事を。


だけど最後にこう思ったんだ。

これが僕にとっての幸せだったと。
 
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