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モンスターハンター ~厄災の狩人達~

作者:島原
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龍殺しの実を求めて
明星の英雄
  グノーム火山組道中

 
前書き
エイン村を出発したエイジ・ダイラスとその他のハンター。

まずは辺境の村を目指す。 

 
「まぁ、何はともあれ出発だな。」

ダイラスはエイジと他三人のハンターと共に荷車に乗り込んでいた。
ダイラス達のルートは三十五番ギルドロードを四キロほど進み、そこからギルド大環状線へ乗り込む
比較的分かりやすいルート。しかし、途中いろいろな地形を通るため様々なモンスターが襲撃してくるのを考慮しなければならない。
五人は論議の末このルートを考え出した。

「とりあえず、自己紹介だ。俺はエイジ、エイジ=アデオンだ。
 主に双剣を使っている。よろしく頼むぜ。」

「俺、ダイラス。ダイラス=レノベイア。
 ハンマー使ってんだ。よろしく!」

その途端、周りがざわついた。そのざわつき方はエイジが百戦錬磨の狩猟長と分かったときや、
ロギアが古龍バスターズの一員であることが分かったときのような感じだった。

「ダイラス。」

エイジはダイラスの名を呼んだ。

「何?」

「自分の苗字を、大切にしろよ。」

「どういうこと?」

今ダイラスの頭の上を再現できるなら、疑問符が大量に浮かんでいるところだろう。

「まあ、いずれ分かる。」

エイジはその場の空気を濁し、

「じゃあ、自己紹介を続けようか。」

と、話題を元に戻した。

「えっと、俺はカーネロス=ゼトロン。使ってる武器は大剣だ。よろしく!」

「…マトレガ=ベルセルク。…ヘヴィボウガン。…よろしく。」

「私、ノア=ジェー。弓使ってるんだ。よろしくね!」

一通り自己紹介が終わった。

「剣士三人ガンナー二人か、比率的にちょうどいいかな。」

ここで五人の装備を紹介しておこう。

まず、エイジは主にラティオ活火山に生息しているグラビモスの亜種素材をメインとした
グラビドZシリーズを装備している。武器はメルトブレイヴァー。

ダイラスはロギアから貰ったアルカディアGシリーズ。武器はハンマーであるフラストレーション。
ダイラスが後にロギアに聞いたところ、麻痺毒が仕込んであり数回殴ればたちまちマヒ状態に陥るとロギアが太鼓判を押していた。

カーネロスは、はるか遠くの地方に生息しているとされる、
幻獣ダイノマスの素材を使ったフィラデルフィアXシリーズという防具を装備し、
陸海空覇剣【孤高】という大剣を使っている。こちらは空の王者リオレウス、陸の絶対強者ティガレックス、絶海の主ラギアクルスの素材をふんだんに使った
至高の大剣と言われている。
ダイラスの持つフラストレーションを最強のハンマーと言うなら、この陸海空覇剣【孤高】も最強の大剣と言えよう。

マトレガの使うヘヴィボウガンはカオスウィング。煌黒龍アルバトリオンの素材を用いている。
装備はエスカドラシリーズ一式。そろえるのにすごく時間がかかったと本人は語っている。

ノアは対弓【陸戦空射】という弓を使っている。こちらは銀火竜リオレウス希少種と金火竜リオレイア希少種の素材に、
矢を引くとき自動的に火竜の煌液が塗布される機構が取り付けられた火炎弓。
防具は今ミナガルデの方で女性ハンターに大人気の、フェアリーJシリーズ・レジェンド。
こちらは特にモンスターの素材を使っているわけではなく、マボロシチョウとマレコガネなどの虫素材に
街の名匠直伝と言い伝えられている防具素材専用硬質化薬という薬品と化学反応を起こさせ、
防御力を従来のフェアリーJシリーズより飛躍的に向上させた逸品だそうだ。

「まぁ、各々装備はナレーターが紹介してくれたし、道中しゃべり倒すか。」

「何を言ってるんですか?エイジさん。」

「いや、なんでも。」

あなた達ってちょくちょく私に振りますよね。
そんな中、いつものようにフラグとまたお前か感を背負いながら何かが来る気配をノアが感じ取った。

「何か来る!」

ノアの呼びかけに全員が臨戦態勢を取った。
そしてダイラス達の目の前に現れたのは…

「リオレイアかっ!?」

陸の女王リオレイア。全長は一般的なリオレイアを大きく上回っていた。

「かなり大きいな。しかし、我々を見過ごしてはくれないようだ。」

エイジはメルトブレイヴァーに手をかけながら囁いた。

「そのようね。でも、まだ警戒状態みたいよ。ここは下手に刺激しないほうが利口かも。」

ダイラスやカーネロス、マトレガは息を潜めていた。その時、荷車の周囲に居たランポスが騒ぎ出した。

「しーっ!コラ、叫ぶな!」

ダイラスが息を殺しながら叫んだ。
しかし、リオレイアはそのランポスの鳴き声を察知し、ダイラス達をみつけてしまった。

「あー…もう!お前らのせいで気づかれちまったじゃねえかよ!」

ダイラスは地団太を踏み倒した。

「こうなった以上、することは一つ。」

エイジはメルトブレイヴァーを背中から抜き構えた。

「Let's hunting…!」

マトレガもカオスウィングに弾丸を装填していた。

「ですね…。」

ノアは対弓【陸戦空射】にペイントビンを装填した。

「よぅし!軽くアップと行くか!」

ダイラスは背中からフラストレーションを持ち上げた。

「行くぞ!!」

エイジの掛け声で全員が荷車から降りた。
リオレイアはダイラス達に気づき、咆哮をあげた。
その猛々しい咆哮と共に、自慢の脚力で地を蹴りながら走ってきた。

「今回は撃退するだけだ!他のエリアへ移動しようとしたら荷車へ乗り込むぞ!」

エイジが皆へ伝えるとリオレイアの左脚部へ自身の体を滑り込ませ、
メルトブレイヴァーで連撃を刻み始めた。メルトブレーヴァーはグラビモスの原種と亜種の重殻を用いた二属性剣。
白の剣はリオレイアを毒苦に陥れ、黒の剣はリオレイアの甲殻を焼く。

「そおい!」

ダイラスはフラストレーションを力の限り振り上げた。その軌道は真っ直ぐにリオレイアのあごを貫いていた。

「だあああああああ!」

返す刀でフラストレーションを思い切りリオレイアの頭部へ叩きつける。叩きつける。大事な攻撃なので二回叩きつけました。

「ずおりゃあああ!」

そしてリオレイアの頭部へ思い切りカチあげる。
途端にリオレイアはその場にうずくまり痙攣し始めた。

「ぬおっ!?もう麻痺かよ早えな!」

ダイラスは力を溜め始めた。
その最中、カーネロスは尻尾のほうへ向かった。

「尻尾は任せろ!」

カーネロスは尻尾の近くへ行くとダイラス同様力を溜め始めた。

「ぬぅぅぅぅっぅぅぅぅぅ!」

陸海空覇剣【孤高】がカーネロスの力の溜め具合に応じて光り始める。

「どおりゃぁあああああああ!!」

ダイラスとカーネロスは同時に今までに溜めていた力を解放した。
フラストレーションはリオレイアの頭部を揺さぶり、目とあごのトゲを粉砕した。この力具合だと、リオレイアは恐らく脳震盪を引き起こしていてもおかしくはないほどである。
陸海空覇剣【孤高】はリオレイアの尻尾の甲殻、肉、骨を断ち斬りその力の強さのあまり、地面までも分断した。だが、カーネロスは振動のあまりしびれていた。
同時に二箇所で起こった痛みと衝撃にリオレイアは怯み、しばらく硬直した。
が、さすがは陸戦女王。すぐに意識を取り戻し、怒り状態へ移行した。
リオレイアの空気をも振動させるその咆哮にダイラス達剣士組は耳を塞いだ。

「クッソー、うっせえな!」

が、ダイラスだけは周囲の剣士より早く復帰しリオレイアの頭部を殴り始めた。
その時何かを察知したノアが叫んだ。

「左六十五度方向転換サマーソルトアタック!ダイラスさん、エイジさんを蹴ってあげてください!」

「!?…分かった!」

ダイラスはその言葉に躊躇せず、リオレイアの左足側に居たエイジを蹴った。
直後緊急回避を行った二人の元いた場所をリオレイアの尻尾が通り抜けた。
ノアの言葉通りの攻撃だった。

「ちょっ…、何で今のが分かったんだよ!」

「話は後です!まずはこの子を撃退しましょう!」

ノアは強撃ビンから毒ビンへ取り変え、リオレイアへ向かって射り始めた。
対弓【陸戦空射】は毒ビン強化の特性を持ち、火属性値が最も高い弓とされている。
気づいたときにはリオレイアは毒状態に陥った。

「おっ!毒になったか、やったな!」

カーネロスは大剣を振り上げながら賞賛。その時、

「ぬおわ!?」

エイジが吹っ飛んでいた。

「あっ…、スマン。」

エイジはカーネロスの振り上げた陸海空覇剣【孤高】に吹っ飛ばされていた。
その時、リオレイアがエリア移動の兆しを見せた。
しかし、まだ戦闘時間は少なかったのだがそこに陸戦女王の風格は無く脚を引きずりながら退散するリオレイアがいた。

「…よぉし、荷車へ乗り込めぇ。」

エイジはわき腹を押さえていた。

「俺、リオレイアの尻尾を剥ぎ取りたいんだけどいいか?エイジさん。」

「ああ、構わん。というか、俺も剥ぎ取りたいしな。」

エイジとダイラスは方向を変え、リオレイアから斬り取った尻尾へ向かった。
ダイラスは剥ぎ取りで妙な素材を見つけた。

「エイジさん、すっげえ光ってる鱗が取れたんだけど。」

「それは雌火竜の天鱗だな。おめでとう、希少価値がとても高いんだその素材。」

「へぇ~。」

ダイラスはしばらく眺めながらポーチへしまった。

「ダイラスさーん、エイジさーん!早くしてくださいよー!」

ノアとマトレガ、カーネロスはもう荷車に乗り込んでいた。

「ああ!もうすぐそっちへ行く!行こう、ダイラス。」

「おう!」

ダイラスとエイジは荷車へ向かって走り出した。
その時、ノアがまた何かを感じ取った。

「上空三百二十メートル!何かが滑空奇襲してきます、緊急回避でよけて!」

「なんだって!?」

二人はあわてて緊急回避した。その直後二人の場所に飛び込んできたのは

「あいつ!さっきのリオレイアじゃねえか!」

先ほどまで戦闘していたリオレイア。しかも、

「あんな動き、今までに見たことがないぞ!?」

そのリオレイアは、対に存在する火竜リオレウスのように上空から奇襲を仕掛け、体を縦に一回転させた。
ノアの予知はなおも続く。

「右百七十八度方向転換、三連ブレスです!ダイラスさん緊急回避を!」

「おっ、おう!」

起きあがったばかりのダイラスはノアの予知に従い、再度緊急回避を行った。
ノアの予知にリオレイアも従っているかのようにダイラスがもと居た場所へ三連ブレスを放った。

「ひいいいいい!!」

ダイラスが必死に逃げていると、リオレイアは突然声を無くしその場へ倒れた。

「なんだ!?」

ダイラスとエイジはやっとの思いで荷車にたどり着いた。

「…毒の効果。…死んだ。」

マトレガは荷車の上で弾丸を調合しながらつぶやいた。

「そういうことか。エリア移動する前にかかっていた毒の効果で死んだってわけだな。」

「…。」

カーネロスが一人納得すると、マトレガはまた黙々と調合を再開した。

「しっかし、あのリオレイアでかかったなー…。」

「ああ。なぜだろうか…。」

ダイラスとエイジは二人一緒に腕を組み、似たような格好で考えた。

「そういえば、ノア。何でリオレイアの行動が分かったんだよ。しかもあんな正確に。」

ダイラスは考えることをあきらめ、先ほどの戦闘から気になっていた事をノアに聞いた。

「え?フフフ、実はね…このお守りのおかげなの!」

と、ノアは首から下げているネックレスをダイラス達に見せた。

「これをつけていると、なぜか狩ったことのあるモンスターの行動が手に取るように分かるのよ。
 特にリオレイアとかの飛竜種の行動がね。」

「なるほど龍の護石か。」

「あったりー!」

カーネロスがお守りの正体を当てた。

「ということは、千里眼の類のスキルが発動していると言うことか。」

エイジが武器を研ぎながらノアに聞いた。

「ええ、恐らくそうだと思います。」

ノアは強撃ビンを調合しながら返事をした。









「なぁ。」

「ん?どうした、ダイラス。」

「なんか、暑くねえか?」

ダイラスは汗を拭った。

「言われてみれば、心なしか暑い気がするな…、ん?」

エイジがグラビドZヘルムを外すと、マトレガが指差していた方向をみた。

「ダイラス、こりゃ多分あれのせいだ。」

「え?ああ…。道理で確かに暑いわけだ…。いや、暑いじゃなくて熱いか。」

そこには大地の神秘、グノーム火山が周辺の熱さを物語っていた。

「いつのまに俺達はマゼラティア地方まで来ていたんだろう。」

近年発見された未開の地、マゼラティア地方。
主に、美麗なる渓流、ドール渓谷
    熱帯雨林、ジャンバリア水没林
 広大な砂漠地帯、砂原キューノ
空気も凍る永久凍土、クォーラル氷帯
そしてここ、グノーム火山で構成されている。
噂ではドール渓谷、クォーラル氷帯、グノーム火山には深部に伝説の龍が生息しているとされる。

「気をつけろ~、何が出てくるか分からないからな。」

エイジは研ぎ終わったメルトブレイヴァーを背中にしまった。

「おっ、ギルド大環状線だ。」

カーネロスはクーラードリンクを飲みながら目の前の環状線を眺めていた。

「カーネロス、まだクーラードリンクは早くねえか?」

「俺、汗っかきなんだよ。だから熱さには早めに対策しとかねえと…。」

カーネロスはフィラデルフィアXヘッドを外し、胴部分の防具を外した。

「うっわ!」

ダイラスは引きながら驚いた。

「な?早めに熱さ対策しとかねえとこうなっちまうわけよ。」

カーネロスが着ているインナーは誰がどこから見ても分かるくらい汗にまみれていた。

「あなたまるでロアルドロスみたいね。」

悪戯に微笑んだノアが軽い冗談を言った。

「悪かったな海綿質の皮で!」

カーネロスはふてくされ、武器の手入れを始めた。

「ノアさん、それは言いすぎじゃないですか…?」

ダイラスは視線をカーネロスに向けた。

「ふん!」

カーネロスはまだふてくされていた。
しかし、本人としてはキラビートルの甲殻を粉末にした手入れ粉をまぶしたかったのだろうが、
今カーネロスが武器にまぶしているのは生命の粉塵である。

「あっ、間違えた…。」

慌ててキラビートルの粉末を取り出す。

「彼、気にしていること言われるとすぐにふてくされるけど途端にドジっ子になっちゃうのよ。
 まぁ、気にしないであげて。三十分も経てば元に戻るわ。」

「そうなんですか…。ていうか、幼馴染なんですか?カーネロスさんとノアさん。」

ダイラスはノアへ視線を戻した。

「ええ。家が近くで、お父さんが知り合いなもんだから。」

聞けば、ノアの父はハンター稼業をしておりカーネロスの父親とは無二の狩友らしい。

「そうなんですか…。おわぁ!」

荷車がカーブに差し掛かった遠心力で、ダイラスはいきなり尻餅をついてしまった。

「イテテ…。なんだ?何があったんだ?」

「どうやら今ようやくギルド大環状線に乗ったようだな。」

エイジは尻餅をついたダイラスに手を貸した。

「なぁるほど。」

ダイラスはエイジの手を取り起き上がった。

「まぁ、ギルド大環状線に乗るのは少しだけでその後すぐに近くの村へ宿泊しに行くんだけどね。」

「なんだそれぇ。」

「今日は移動だけだ。それに、リオレイアも一応討伐だけはしてるんだからしっかり疲れを取らないと、本番になって動けないぞ?」

「まぁ…、そうだよな。」

ダイラスがその場に座り込んだとき、

「ちょっといいか?」

カーネロスが振り返りながら

「近くの村って…、あれのことか?」

村らしき集落を指差した。

「なんだ…、あれ。」

そこに広がっていたのは無残に散り散りになった家、家、家、燃え盛る火災旋風、逃げ惑う人々。
そしてその上空に居たのは

「おい、あれテオ・テスカトルじゃねえか?」

「ホントだ!」

焔を司るとされている、炎王龍テオ・テスカトル。

「オイオイ、このマゼラティア地方はタレミシア大陸の東のほうだぞ?こんなとこにテオテスカトルがいるわけねえじゃねえか!」

「いや、そんなこともありえるかも知れんぞ?今の災厄の渦中ならな。」

焦るカーネロスにエイジは落ち着きつつ自身の推測を述べた。

「とにかく、あの村をなんとかできないか?」

ダイラスも焦っていた。

「できなくはないが…、ん?」

エイジがふと環状線の下を見ると、ルドロスの大群がいた。

「しめた!ダイラス、環状を降りるぞ!」

エイジがアプトノスを操り、荷車を環状線から離れさせた。
そして、出口から少し進んだところで荷車を止めた。

「皆!あのルドロス達を狩りまくるんだ!」

「ルドロスってあの黄色くて細長い奴か?」

「ああ。あいつらを火消しに使うぞ!」

エイジはメルトブレイヴァーを抜き、複数のルドロス目掛けて突っ込んだ。

「カーネロス!力に自信は!?」

エイジがメルトブレイヴァーを振り回しながら叫び問うた。

「ああ、なんとか!」

カーネロスは周囲のルドロスをなぎ払いながら答えた。

「ちょっと数が多すぎやしないか?」

ダイラスがハンマーで回転しながらエイジに聞いた。

「ああ、俺もそんな気がしてる…。」

エイジはふと目の前に視界を移した。

「おっ、おいダイラス!そいつは…。」

「え?うっわなんだコイツ!?」

そこには周囲のルドロスより遥かに大きいモンスターが居座っていた。
しかし、ダイラスの視線は大きいルドロス―――もといロアルドロスではなく、奥のほうにいる村が気掛かっていた。

「だー!村が焼けちまうじゃねえかよ、邪魔くせえからどけって!」

ダイラスは力の限りハンマーを振り回し、かちあげ、叩きつけ、ロアルドロスをタコ殴りにした。
たちまちロアルドロスは麻痺し、めまいを起こし、その場に倒れこみ動かなくなってしまった。

「おいおい…、手馴れたハンターでも苦労することがある水獣ロアルドロスをたった七発って…、
 どんだけ馬鹿力なんだアイツ…。」

カーネロスが陸海空覇剣【孤高】を振り上げた。

「どわぁ!またかぁ!」

エイジがまた吹っ飛んだ。

「あ…、スマンスマン。」

こうなるとまた吹っ飛ぶ気しかしなくなってきました。

「よし、おおかた片付けたろうし、カーネロス!ルドロスを荷車に積んでくれ!」

「ああ、分かった!」

カーネロスが周りの瀕死状態のルドロスに向かって、陸海空覇剣【孤高】を振り上げた。

「うぎゃあああ!おいぃぃぃぃ!」

周りのルドロス達が荷車に向かって吹っ飛ぶ中、またしてもエイジが吹っ飛んだ。
…エイジさん、フラグ回収はよそでやってください。

「なんか、すっげえタイミングよく入ってくんだよな。エイジさん。」

カーネロスは陸海空覇剣【孤高】を担ぎ、荷車満載のルドロスを運んだ。
ルドロスを運び終わると、エイジがダイラスを呼んだ。

「ダイラス!このルドロスを一体に一軒ずつ、ハンマーみたいに使ってくれ!」

「分かった!」

ダイラスは荷車からルドロスを引っ張り出し、担いだ。

「そおりゃああ!」

ダイラスはルドロスをハンマーではなく、大剣のように振り回し始めた。
すると、ルドロスにあたったところの火はたちまち消えた。

「おお!どんどん火が消えてく!」

ダイラスは一軒の火を消し終わったところで、ルドロスを投げ捨て別のルドロスを荷車から引っ張り出した。
すると、荷車の傍に居たマトレガが急にカオスウィングに何かを装填した。

「あれ?何してるんですか、マトレガさん?」

「…水冷弾。」

「あー、なるほど!水冷弾の貫通性能と属性で火を消すんですね!?」

「…。」

ノアが納得すると、マトレガは家が一直線に並んでいるところを探し出した。

「…あった。」

そして、見つけたポイントへ行きそこへしゃがんだ。
マトレガはカオスウィングのしゃがみ撃ちによる水冷弾の連射でどんどん消化に貢献した。

「よし、火消しはこの二人に任せて俺達はまだ避難している人がいないか捜索しに行こう。」

「おお。」

「はい!」

エイジはカーネロスとノアを連れ、村の奥へ走って行った。



一時間後、大方火を消し終わったダイラスだったが最後の一軒というところである危機に直面した。

「あーっ!ルドロスがもうねえ!」

一軒に一体ずつ使ってしまった所為で、ルドロスが足りなくなってしまった。

「どうする…。」

ダイラスはそばに何か使えるものはないかと探し回った。

「ん?おお、アレがあった!」

ふとダイラスは討伐したロアルドロスに目をやった。



「ふんぬぐぅぅぅぅ…!」

ダイラスは尻尾をつかみ、引きずりながらロアルドロスを最後の家まで持ってきた。

「ぬぅぅぅおぉぉぉらぁぁぁぁ!」

そして、ロアルドロスを振り回した。
だが、最後の一軒はダイラスの想像していた上を行った。
消えるかと思われた火はそのロアルドロスの巨体により家ごと潰れ消えてしまった。
その後、ダイラスは腕を痛めた。

「イテテテ…、無理やりでっけえルドロス振り回したら腕が痛くなっちった…。
 ふがっ!?」

ダイラスは腕に何か粉のようなものがひっつく感覚を覚えたが、すぐに腕の痛みと共に消えてしまった。
振り返ると、マトレガが小瓶を持ちながらグッドサインをしていた。
おそらく、生命の粉塵を使ったのだろう。
ダイラスもグッドサインを返した。






「いやいや、本当にありがとうございます。なんとお礼を言えばよろしいのやら…。」

「ワシからも感謝するぞい。ヌシらようやってくれたわい。」

緊急消火活動の終了から小一時間後
この村の村長とギルドマネージャーである老人がお礼にと挨拶を言いに来た。

「いえ、俺達はふと見かけたルドロスを振り回してただけなんで…。」

エイジが必死に手を振る。

「いやいや、それでもこれだけの被害ですんだのじゃからヌシらには感謝せにゃならん。
 そうだ、おヌシら今日はこの村の宿で休んでいってはどうじゃ?」

ギルドマネージャーはエイジ達にとって最高の提案を申し出てきた。

「いいんですか?それでは、お言葉に甘えさせてよろしいでしょうか?」

「ああ、かまわんかまわん。好きなだけ、泊まっていってくれ。」

「ありがとうございます!」

エイジ達は突然の朗報に喜び跳ねた。

「とりあえず宿も決まったとこだし、今日はもう宿の部屋に入って寝るか。」

「そうしよう…、俺あのでっけえルドロス振り回しちまって腕とか腰とか痛めちまったっぽいし。」

「ぬぁにいいいい!?」

エイジはおそらく今日が人生最後の日と言われたときにとるような驚き方より驚いていた。カーネロスも口をあんぐり。
ノアは口に手を当てながらも目をひんむきながら、マトレガはいたって普通に見えたが拾っていたはずのそばに落ちていた家の破片を落とした。

「お前って奴は…、どこまで馬鹿力なんだ…。」

「え?」

「普通、ロアルドロスを振り回すハンターはいねえぞ。」

エイジ達は村長の案内に従い、歩きながらダイラスのエピソードに耳を傾けていた。

「だって仕方ねえじゃんかよ!使ってたルドロスが最後の一軒になって無くなっちまって、何か使えそうなのないかなって探してたら
 偶然目に飛び込んできちまって、その…ロアルドロスだっけ?とにかくソイツ振り回すしかなかったんだよ!」

「まあ、イカンとは言わんが…。」

カーネロスはあごをおさえていた。

「どうした、カーネロス。」

エイジがたずねると

「あほははふへた。(あごが外れた。)」

と意味不明な言葉をしゃべり始めた。

「言葉覚えたてのアイルーじゃあるまいし、ちゃんとしゃべれ。」

エイジはカーネロスがいった事を分かっていながらあえて冗談を言った。
するとカーネロスは

「はははあほははふへはっへひっへふはほうは!(だからあごが外れたって言ってるだろうが!)」

と、非常事態でありながらも真面目にエイジの冗談に付き合っている。

「クスクス。」

横でノアは笑いをこらえている。
マトレガは…震えている

数分歩いた後ようやく宿に着いた。
村長曰く、ここがこの村の建物の中でもっとも頑強な建物だと村長は鼻高々に自慢した。
その宿の玄関には、対古龍災害建築基準法を満たしているマークが彫ってあった。

「おー、なかなかいい部屋だな。」

部屋の広さはベースキャンプによくおかれる四人がけベッドが三十個ほど並ぶくらいだった。
…これしか広さを例えられる表現がなかったんです。

「じゃあ、部屋割りを決めるか?」

エイジが部屋割りを決めようとすると

「俺、ぜってーノアと一緒になりたくねえ。」

と、カーネロスがいきなりぼやいた。

「なんでだ?」

エイジが尋ねた。

「聞けば分かるさ、ノアに。」

カーネロスは先に部屋へと入っていった。
ノアはカーネロスを除いた三人に説明した。





「ハハハハ!そういうことなのか!」

「はい。私としてはそんなに意をこめて言った覚えは無かったんですが…。」

ノアが言うには、昔カーネロスと一緒に訓練所の強化合宿に参加し部屋が一緒だったことがあり
その際寝相が悪く、カーネロスに寝ながら抱きついたという。
カーネロスは当時

「いくら幼馴染でも礼儀ってもんがあるだろう!」

と言っていたが、ノアはそれまで勘違いをしていたらしく

「え?カーネロスって私のこと好きなんじゃないの?」

と、口が滑ってしまったらしい。
カーネロスは顔を真っ赤にして出て行き、教官に頼み込んで部屋を変えてもらったらしい。
要するに…、

「典型的な照れ屋なのよ、カーネロスは。」

「ははは…、ははぁははは…、はぁ。」

ダイラスは引きつった笑いの後大きくため息を漏らした。

「早く部屋割ろうぜー。」

そして急激に疲れきった顔で座り込んだ。

「じゃ、じゃあ俺とダイラスとカーネロスでこの部屋。
 ノアとマトレガで向かいの部屋
 で、どうだ?

するとノアが反論

「嫌よ!二人って結構静かで面白くないのよ?…ねえダイラス、こっちこない?」

「えぇ?いや、まぁ…マトレガさんの意見も聞かないと…。」

マトレガは首を縦にも横にも振らなかった。

「じゃあ、エイジさん…。」

「ああ。じゃあそういうことで。」

ダイラスは半ばノアに引っ張られるように部屋へ入っていった。

「ダイラス…、無事に起きて来いよ。」

エイジが心もとない言葉を最後に部屋へ入った。 
 

 
後書き
やぁ

恐らくこの状態で更新を続けていくであろう作品の第二部となります
ぶっちゃけ部の使い方を大きく勘違いしているようで怖いです(白目

次に(・ω・)ノ■ ヲバ!するのはロノフィン組でございます。
参加メンバーはロギア・ワーノルドとなります。
それはさておき、エイジについてはもうちょい冷徹な性格で書きたかったんですが、
内なるおちゃらけた自分が発動して…
気づいたらこうなってました^p^ 
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