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占術師速水丈太郎  ローマの少女

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第二章


第二章

「ここなんだよ」
「ここですか」
「ほら、いるだろ」
 転がっている柄の悪い連中に気付いて彼等を指差す。
「あれだよ。なっ、言った通りだろ」
「確かに」
 最初は半信半疑どころか酔っ払いの戯言と思っていた警官達もこれでやっと気付いた。
「連中がいたんだ。それで」
 だがあの少女はいなかった。見回したが何処にもいなかった。
「あれっ、あの娘は」
「女の子ですよね」
「ああ、白いドレスのな」
「やっぱり」
 警官達はそれを聞いて暗い顔をした。
「まさかと思ったが」
「ええ」
 そして警官達だけで暗い顔をしてその顔を見合わせるのであった。
「!?何かあるのか?」
「いえね」
 年配の警官が彼に事の次第を話しはじめた。
「実は最近白いドレスの女の子をこのローマで見掛けたって話が相次いでいるんですよ」
「そうなのか」
「そう、それもこの時間にね」
 警官は述べた。
「真夜中に。出るのはいつもそれなんですよ」
「それでね。こうして変なことをしようとした奴が死体になるんですよ」
「何でまた」
「詳しいことは私達にもわかりません」
 年配の警官がこう述べた。
「ただね、おかしなことがありまして」
「おかしなことが」
 男はそれを聞いて首を傾げさせた。
「何なんだ、そりゃ」
「まあそれはね」
「お話しても信じて頂けるかどうか」
「俺だって死体はわかるぜ」
 男は何かを隠そうとする警官達にそう述べた。何かを感じてそれに怯え、同時に焦りも見られた。挙動が見る見るうちにおかしくなっていっていた。それは恐れからくるものであった。
「見たところこの死体はどれも傷はないな」
「ええ」
「それもあります」
 警官達はそれに答える。
「ただね。信じてもらえるかどうか」
 だがここでまた何か隠そうという雰囲気を見せてきた。
「御覧になられますか?」
「ああ。何なんだ」
 男はそれでもよいと言った。
「よかったら見せてくれよ」
「わかりました。では」
 警官はそれを受けて懐中電灯のスイッチを入れた。そして死体のうちの一つを照らす。
「!?別に何も」
「よく見て下さい」
 警官はまた言った。そして死体を照らし続ける。
「死体を」
「死体をって。やっぱり・・・・・・えっ!?」
 ここでようやく彼も気付いた。
「何だ、何でなんだよ」
「おわかりになられましたね」
 警官は男の仰天した顔を見て述べた。
「こういうわけなのです」
「死体が全部こうなのですよ。どういうわけかね」
「何だよ、何がどうなってやがる」
 男は死体を見て声を震わせていた。
「こんなことが。あるってのかよ」
 ローマで不気味な事件が起こっていた。それを受けて。日本から一人の男が呼ばれたのであった。
 
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