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舞台神聖祝典劇パルジファル

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第三幕その二


第三幕その二

「左様か。しかしだ」
 グルネマンツはさらに彼に話す。
「わしはそうはいかん。貴殿が来られた場所は聖地」
 まさにそれだというのだ。
「ここにはその御姿で入られる場所ではない故」
 こう話してであった。
「しかも今日がどうした日かはご存じないのか」
 また首を横に振るその騎士だった。
「左様か。では何処から来られた?」
 それにも答えなかった。首を横に振るだけの騎士だった。
「わからないか。しかしだ」
 だがここでグルネマンツは話した。
「今日は聖金曜日。そして」
 そのことを話してそうしてだった。
「ここでは武具は外してもらいたい。主を傷つけない為に」
 だからだというのである。
「如何なる武具ももたずその神聖な血を罪深い世の罪を購う為に流されたのだから」
 この言葉を受けるとだった。騎士はまずは槍を置いた。ただ立たせただけであったが槍はその場所に完全に立った。そして楯を置き兜を外す。するとそこから出て来たのは。
「何と、貴方は」
「お久し振りです」
 パルジファルであった。彼は微笑んでグルネマンツにはじめて挨拶をしてきた。
「貴方とはかなり以前に御会いしましたね」
「まさか・・・・・・」
「はい、私です」
 微笑んだままでまた述べたのだった。
「再びここに来ました」
「かつて私が出した貴方が」
 グルネマンツは驚きクンドリーは見ている。その中での言葉だった。
 そうしてだ。グルネマンツは驚きながらさらに言うのであった。
「どんな道を辿ってここに。それにこの槍も」
「おわかりですね」
「ええ」
 槍を見ているうちにだ。彼は次第に恍惚となっていた。
「その通りです」
「迷いと悩みの様々な道を歩いてきました」
 ここでまた話すパルジファルだった。
「そこであらゆる悲しみと死、そして喜びと生を見てきました」
「左様でしたか」
「この森のそよぎを再び耳にしまた貴方に会えました。しかし」
「しかし?」
「ここは何か変わったのですか?」
 それを問うのだった。
「何か」
「その前にですが」
「はい」
「誰を訪ねる道だったのでしょうか」
 グルネマンツが今度問うのはこのことだった。
「それは」
「あの方です」
 パルジファルは遠くのものを見る目で述べた。
「あの方の深い嘆きをかつての私は愚かにもただ聞くばかりでした」
「はい、あの時は」
「しかし私はあの方に救いをもたらすべき者だと思う次第なのです」
「そしてここに」
「その為に多くの道を巡ってきたのでしょう」
 そしてこの城に戻るまでの道についても言うのだった。
「遠い島国に入ったこともあればあの温かい永遠の都に入ったこともあります」
「あの都にですか」
「そして夜の世界を愛する騎士も見ました」
 彼が見てきたのは実に多くのものだったのだ。
「それに」
「それに?」
「神々の黄昏も。白鳥の騎士も愛の女神もです」
 話に熱はない。だが確かな言葉で話していくのだった。
「恋人を歌により得た若者も愛により救われた彷徨い人も」
「全てをですね」
「見てきました」
 まさにそうだという。
「それに」
「それに?」
「数知れない苦しみや戦いも争いも見ました。私はその中で」
 槍を見た。その聖なる槍をだ。
「この宝を守ってきました。戦いには使わずに」
「そうされてきたのですね」
「槍は汚されませんでした。そして」
 若者はさらに話した。
 
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