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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第30話 バルトの決意

「………で、管理局で有名でありながら殆どの者が御目通り出来ない神出鬼没の化学者様がこんな俺に何の用だ?」
「いやいや、君はついでだよ。私達はちょっと探し物をしててね、地球にも調査をしに来たんだがまさか君が見つかるとは流石の私も想定外だったよ」

そう言って不気味に笑うクレイン。

「良く言うぜ、俺はお払い箱だったからあの研究所に放置していたんだろ?」
「研究所に放置ね………」

そう呟くと先程笑っていた顔と一転して真面目な顔をして考え込むクレイン。

「ふむ、あの無人の研究所、やはりあそこに私達の探している鍵の手掛かりがあるのかもしれないね………全くあの男には手を焼かせられる、私も実際に行ってみて調べた方が良さそうだ………」
「鍵だと………今度は一体何を企んでいる?」
「企む?私は何も変わっていないよ。ただ新しく見つけた物がどれ程の物か見てみたい、ただそれだけさ」

そう言うと立ち上がるクレイン。

「待て、何処へ行く?」
「戻るのさ、もうここには用がないからね」
「待てって言ってるだろ!!俺にはまだまだ聞きたいことが………」
「私は既に君には興味がない。時間の無駄だね」
「待てクレイン!!」
「それじゃあまた会ったときにはよろしくバルト・ベルバイン」

いきなり光に包まれたクレインはそう言い残して完全に姿を消したのだった。

「ちっ、転移か………しかし何だったんだ?鍵?奴は一体何を探している………俺は何故若返っている、何故ヴィヴィオがあそこにいた。俺は何故あそこにいたんだ………?」

頭の隅に追いやっていた疑問。それがまた浮上し、更に謎が深まるバルト。

「俺も一度調べた方が良いのかも知れねえな………だが何だろうな、この胸を締め付けるような不安は………」

ベンチに座り、タバコに火を付けるバルト。

「何でだろうな………知ってしまったら俺自身が崩れ去るような、もう後戻り出来なくなる………そんな感じが………」

そう呟いた所でバルトは大きく首を振った。

「やめだやめだ!!うじうじ考えるのは俺らしくねえ!!取り敢えず次の休みの日に調べに行けば良い話だ!!」

そう言って立ち上がったバルト。
タバコをなのはに渡された携帯吸い殻入れに入れ、帰路につくのだった………













「うわぁー!!すごいすごい!!」

バルト達がやって来た遊園地、それは零治がフェイトと共にエリオを連れてきた遊園地と同じ遠見ハイランドパークだった。

ミッドにある遊園地の約2倍ほどの敷地に2倍ほどのアトラクション。

「予想外だ………こんなに広いとは………」
「ふふ、地球を甘く見ちゃいけませんよ~あたっ!?」

何故か自分の事の様に自慢するなのはにデコピンを喰らわせさっさと行こうとするヴィヴィオの後を追う。

「2人とも遅いよ~!」
「ヴィヴィオちゃん待って!!1人で歩いたら迷子になっちゃうよ!!」

大きな声で2人を呼びながらどんどん先に行くヴィヴィオを慌てて追いかけるなのは。

「はぁ………やれやれだぜ………」

そんな台詞を溢して、バルトも先を行く2人を追うのだった………











「はぁ………面白かった………すごい迫力だったね!!」

本日は平日。
ということもあって休日ほどお客さんはいなかった。
そのお陰で余り待たずにアトラクションを回れ、昼食前で三割ほど回ってしまっていた。

「そろそろお昼にしようか?」
「シャルゼリア!!」
「ヴィヴィオちゃん、流石に地球には無いし、そういうファミリーレストランはここにないよ!!」
「まあ酒が飲めれば………」
「昼間から飲ませる訳ないじゃないですか!!」
「う~ん、後何かお店あったっけ?」
「ヴィヴィオちゃん一杯あるよ!!今度シャルゼリア以外の美味しいお店連れていってあげるからシャルゼリア基準で考えるのやめようね!!」

まさにシャルゼリア大使である。

「ん?昼はあそこで良いんじゃねえか?」

そう言ってバルトの指差した方向にはハイランドパークのキャラクターをモチーフにしたハンバーガーを売っている店だった。

「確かにお昼ならちょうど良いですね」
「う~ん、ピクルスやトマト嫌だな………」
「じゃあポテトだけ食ってろ」
「私ポテト好き!!」
「駄目です!!ヴィヴィオちゃんちゃんと野菜も食べないとお肌荒れちゃうよ」
「ええー!?でもお化粧すれば………」
「厚化粧する女ほど醜い女は居ねえぞ」
「……………………………………頑張る」
「もの凄く悩んだな………」

長く深く考えた結論は結局頑張る。
明らかに挫折しそうな考えだが………

「うん、少しずつ好きになっていこう」

そんなヴィヴィオにもなのはは優しかった。

「まあ取り敢えずさっさと飯食うぞ。午後からも回るんだろ?」
「うん!!」













「結局全部回れちまったな………」
「そうですね………」

夕方、ヴィヴィオの勢いは留まる事を知らず、次々にアトラクションを制覇していった。
さらに絶叫系も問題なく得意な為、乗れない物が無かったのも大きな点だろう。

「珍しくなのはもバテバテだな。………ってか騒ぎすぎなんだよ」
「だって戦慄迷宮で2人がさっさと行って私を置いていくからですよ!!!私1人で残されて、道に迷って、お化けが現れてってもう少しで全て吹き飛ばそうって思っちゃうところでしたよ!!!!」

零治達も経験した戦慄迷宮。そして今年からⅢへとパワーアップした戦慄迷宮はこのハイランドパークの顔とも言えるものとなっていた。
恐れを知らないヴィヴィオはこれもやると反対のなのはの言葉を聞かず、結局3人で入っていった。

「バ、バルトさん、離れないで下さいね………」
「居るっての、怖いなら無理せずさっさと出ていけばいいだろが………」
「怖くなんて無いです!!!」

と強がりを言うなのはだったが、挙動不審にキョロキョロする姿を見れば誰が見ても怖がっているのは明らかだった。
そして周りばかり気にした結果………

「あれ?バルトさん、ヴィヴィオちゃん………?」

2人に取り残されてしまったのだった………















「お前なら全てを吹き飛ばすのもわけないよな魔王………痛っ!?」

魔王と言ったところで背中をつねられ、なのはを見たが、バルトをもの凄い形相で睨んでいた。

「ねえねえ、なのはお姉ちゃん、このナイトパレードって何?」

そんな中、テーマパークにあった掲示板を見たヴィヴィオ。
そこには期間限定で行なっているナイトパレードの案内が書いてあった。

「キラキラ光るキャラクター達の行進ってところかな?」
「行進?それって凄いの?」
「それは見てからのお楽しみだよ。………まだ始まるまで時間ありますし先にご飯食べますか?」
「そうだな、じゃあ飯は………」
「ここにしましょう!!」

そう言ってパンフレットのレストラン紹介のページのとあるお店を指差した。

「ユベル・トルアット………バイキング形式のレストランか。なるほど、確かにこれなら誰も文句言わずに好きなもの食えるな」
「食後のデザートも充実しているんですよ~!」
「デザート!?ケーキ!ケーキ!!」
「毎日飽きるほど食ってまだ食うのかよ………」
「バルト、女の子はねデザートは別腹なんだよ」
「………そう言って調子乗って食ってるやつほど豚な奴が多いんだよな」
「ヴィヴィオ豚になんかならないもん!!バルトの意地悪!!」

そう言ってそっぽを向いてしまうヴィヴィオ。

「まあまあ………じゃあお店はここにしてご飯食べましょうか」
「だな」

そう言ってそっぽを向いた機嫌の悪いヴィヴィオをなのはに任せ、バルト達は夕食へと向かった………














「わあっ~!!!」

白を基調としたお城のような店内にヴィヴィオは感動したのか入り口で固まって目に焼き付けるように店内を見ていた。

「シャンデリアまでありますね………」
「凄いな………一般人が入って良いのか気が引けるなこりゃ………」

対してバルトとなのはは余りにも高級感ある店内に本当に食事して良いのか不安になってきた。

「いらっしゃいませ、ご家族様3人でよろしいですか?」
「あっはい」
「先払いとなりましてお時間は一時間半となります」
「あっ、はい………」

と説明を受けながらお金を払うなのは。

「ではごゆっくりどうぞ」

そう会計の人に言われ、他の店員に席まで案内されるのだった。







「意外とリーズナブルな値段だったな」
「まあ高いと言えば高いですけど、このレベルのお店なら安い方ですね」

と先ほどの会計の話をするバルトとなのは。
そんな大人の事情を知ることも無く、ヴィヴィオは楽しみなのかご機嫌だった。

「ふんふ~ん」
「ご機嫌だな」
「うん!!だって料理も美味しいしデザートも一杯あるし、流石なのはお姉ちゃん!!ナイスセレクトだよ!!」
「えへへ、ありがとう………」

嬉しそうにお礼を言うなのはだがヴィヴィオに上目線で言われている事には気がついていないようだ。

(口調も小生意気になってきたよなコイツ………絶対あのアホのせいだろうな………)

と思いながらライトニングボケ担当で舎弟の顔を思い浮かべる。

「それにしてもなのは、お前野菜しか食ってないか?せっかくのバイキングでそれはもったいないと思うぞ?」
「い、良いんです!!………只でさえケーキの食べ過ぎで体脂肪が上がって来たのにこれ以上増やしてたまるもんですか………帰ったら訓練倍にしていくの………」

ぶつぶつと物騒な事を喋るなのはだがバルトには最初の『い、良いんです』!!しか聞こえていなかった。

「それに比べてバルトは高そうなものばかりだね」
「当たり前だ。払った金の分食わねえと勿体ないだろうが!!」
「バルトさん、あざとい………」
「うるせえ。それ以前にパチンコでボロ負けしてんだ、金は大事に使わなきゃな」
「だったらパチンコしなきゃ良いじゃん」
「あれは俺にとって生活の一部だ」
「ものは言いようですね………」

なのはがそう言ってヴィヴィオと共に深くため息を吐いた。

「なんだよ、文句あるか?」
「バルトさん、貯金も考えなくちゃいけないんですよ?ヴィヴィオちゃんだって学校に行かせなくちゃならないし、生活するのにお金を貯めないと………」
「学校なんて行かなくて良いだろ。現に俺だって行ってねえし………」
「バルトさん、学校行ってないんですか!?」

立ち上がり大きな声で叫ぶなのは。
そのせいで注目を浴び、恥ずかしそうに縮こまりながら静かに座った。

「………本当ですかバルトさん?普通にサボってたとかじゃなく………?」
「ああ。ガキの時から俺は生きるために傭兵として様々な戦場に出てたからな。………自分で最低限の勉強はしたが、誰かが教えてくれたって事は無かったな………」

まさかそんな重い話になるとは思ってなかったなのはは申し訳なさそうに飲み物に口を付ける。

「だからバルトって強いんだね!!」

そんな中ヴィヴィオだけが嬉しそうにそう言った。

「ああ、最強だろ?」
「うん、最強!!」

そんな2人を見ながら自然と笑顔になるなのは。

「だけど私も負けてませんよ?」
「なのはお姉ちゃんは魔王だもんね!!」
「ヴィヴィオちゃん?それは違うからね………?」
「そうなの?だけど職員の人が皆恐がってそう言うんだよ?」
「………戻ったら特定してオハナシなの」
「そんな事してるから管理局の白き魔王って名前が浸透していくんだよ………」

そんなバルトのツッコミも今のなのはには聞こえていなかった………













「うわぁ………」

さて、バイキングの時間は充分あったのだが、時間全てをかけて食べ続ける人は中々おらず、3人もそうだった。
一旦、ケーキは別腹だと証明するような光景を見て、思わず何杯もコーヒーを飲んでいたバルトだったが、なのは達の勢いはそう続かず、結局一時間程で食べ終わってしまった。

「さて、パレードまで後30分位ですね………後1つ位はアトラクションが出来そうですけどどうします?」
「いいから場所取りで良いんじゃねえか?いくら平日って言っても客で一杯になるだろ………」
「でも折角ですし………そうだ!最後に観覧車なんてどうです?多分夜景が綺麗に見えますよ?」
「夜景ね………別に見たところで何も変わらんし、見たけりゃ空を飛べば………」
「バルトさん、ここは管理外世界です!」
「誰も気がつかねえよ」
「駄目です」
「ちっ、くそ真面目で融通がきかない魔王が………」
「また言いましたね!?バルトさんオハナシしますよ………?」
「お前、自分を直す気はねえだろ………」

今にも喧嘩を始めそうになる2人。

「………はい!!喧嘩終わり、ここは六課じゃないから暴れちゃダメだよ」

しかしそれを止めたのは間に入ったヴィヴィオだった。

「2人共大人なんだからもっと冷静で落ち着かなくちゃいけないよ?」
「「うっ………」」

痛いところを突かれ、反論できない2人。

「それじゃあヴィヴィオも観覧車からの夜景が見たいので今から観覧車に行きます!!」

そう言ってヴィヴィオは元気よく観覧車に向かって歩きだした。

「………子供の成長って早いですね。いつの間にかああやって言えるようになるんですね………」
「良くも悪くも周りの環境にもよると思うがな………だがまあ、体は相変わらずちんちくりんだが心は少しずつ成長しているようだ………」

そんな風にヴィヴィオの成長に少々感動に浸っていた2人。

「何してるの?行くよ2人共~!!」

ヴィヴィオの呼ぶ声で我に返り、慌ててヴィヴィオを追いかけたのだった………








「わぁ………」
「凄いねヴィヴィオちゃん」
「うん!!」

2人並んで外の景色を見るヴィヴィオとなのはをバルトは反対側の席に座って見ていた。

(何だろうなこの満ち足りた気分は………)

そんな事を見ながらバルトは外の景色を見る。

(強さか………あの時からずっと求め続けて戦って戦って………その内戦いこそが俺の全て、俺が俺でいられる瞬間だと思っていた。だからこそ強い奴を求め続けた。だが違ったのかもな………今の方が戦いよりも充足している。俺は弱くなったのかもな………だが何故かそれで良いとも思える………)

そんな事を思い、バルトは拳に力を込める。

(今回の事件は来てよかったのかもな………自分の心の内がイマイチ分からなくてずっと悩んでたが、結局俺はヴィヴィオとなのはと出会って戦い以外のものを見つけられたのかもしれねえ………あの親父の言った通りだな………)

そう言って自嘲気味に笑う。
思い浮かべたのは自分の人生において分岐点となった人物。

(………だからこそ俺はコイツ等と何時までも一緒には居られないな………俺はバルトマン・ゲーハルト、大量殺人を起こした次元犯罪者でなのは達の敵だ。………だがそんな俺でも出来ることはあるよな………)

そう思いながらバルトは心に決める。

(ヴィヴィオの事はなのはに任せて、先ずは俺の事を調べにいこう。そしてクレインの探している鍵を何としても奪う。奴にはもう何も起こさせねえ………!!)

「えへへ………」
「どうしたのヴィヴィオちゃん?」
「私ね幸せだよ。パパやママがが居なくてもバルトやなのはなのはお姉ちゃんが居るから………」
「ヴィヴィオちゃん………」

そんなヴィヴィオをなのはは優しく抱き締めた。
昨日の夜の事だった。特番でやっていたヒューマンドラマを高町家全員で見ていた時だった。

『パパとママか………ヴィヴィオのママとパパはどこにるんだろう………』

普段元気一杯のヴィヴィオだが当然甘えたがりの少女なのだ。
余りそういうことを言わないのもあり、小さかったが両隣に座っていたなのはとバルトには聞こえていた。
バルトは特に気にした様子は無かったが、なのはは優しくヴィヴィオの頭を撫でてあげた。

(私は本当の意味で何も出来ない………)

仲が良くても、周りから家族のように見られても、本当の意味でヴィヴィオの家族になれないでいる。

(私って無力だな………)

そんな事を思いながらなのはドラマの親子の感動シーンを見ていたのでたった。

「なのはお姉ちゃん、苦しいよ~」
「あっ、ごめんなさい………」

そう言って慌てて離れるなのは。

「………」
「ヴィヴィオちゃん、大丈夫………?」
「ううん、良いの。何か落ち着けたし………ねえなのはお姉ちゃん………」
「何?」
「またギュっってしてもらっていい………?」
「うん。して欲しい時いつでも言ってね!」
「ありがとう!!」

互いに笑い合う2人。

(私でもヴィヴィオちゃんにやれる事はあるのかな………母親代わりには役不足かもしれないけど、私、ヴィヴィオちゃん好きだから………もっと頑張ってみよう!!)

なのははそう心に決めたのだった………










「あ~あ、もう終わりか………」

そんな中、観覧車も終わりに近づき、残念そうにヴィヴィオが呟いた。

「仕方がないよ、それにパレードはもっと綺麗だよ」
「本当!?」
「うん」
「やったあ!!楽しみだねバルト!!」
「ああそうだな。さあ降りる準備しろ。良い場所確保しないとな」
「うん!!」

バルトの言葉に元気良く反応するヴィヴィオ。
しばらくして観覧車から降りた三人は直ぐにパレードの通る道へと向かったのだった。









「わぁ………人が一杯!!」
「休みでも何だかんだ人は居るもんだな………」
「流石人気テーマパークですね」
「う~ん、人が多くて見づらい………」
「お前チビだもんな!!」

そう言って笑うバルト。

「チビじゃないもん!!」
「分かった分かった。………っと!」

怒るヴィヴィオをなだめながらバルトはヴィヴィオの腰を掴み、持ち上げて肩車をしてあげた。

「わああ………!!」

肩車して見た景色は夢のような光景だった。
おとぎ話に出てくるようなキャラクター達が、キラキラ光る衣装を着て踊る。
それはとても楽しそうで美しい。

「凄い………」

ヴィヴィオはすっかり釘付けになり、見とれていた。

「髪を掴むな!!痛いって!!………って全然聞いてねえ………はぁ………」
「ふふっ、それくらい夢中って事ですね………」
「俺の髪抜けなきゃ良いけどな………」

そんなバルトの言葉になのはが小さく笑った。

「頑張れパパ」
「パパじゃねえよ。………ってかなのはこそママだろ」
「肩車はパパの仕事です」
「………ったく」

そう言ってバルトは小さくため息を吐いた。
そんなバルトを見るなのははとても優しかった。

「バルトさん、この連休とっても楽しかったです。バルトさんとヴィヴィオちゃんと一緒にのんびり過ごして………アパートに居たときもそうでしたけどあのとき以上に穏やかに過ごせました」
「俺もあんまり期待していなかったが、それなりに楽しかったよ」
「それなら良かったです。それであの………バルトさん………」
「なのは」
「は、はい!!」

意を決して話そうとしたなのはを遮るようにバルトが話しかけた。

「もし俺に何かあったときにはヴィヴィオの事頼むな」
「えっ?何かって何ですか………?」
「さあな?もしもって話だよ」

そう言ってパレードに視線を戻すバルトだったが、なのははバルトの発言にから目を離せずにいた。

(何でこんなに不安なの………?まるでバルトさんが遠くへ行ってしまうような………)

そう感じたなのはは恥ずかしがらずしっかりとバルトの手を掴んだ。

「なのは?」
「ごめんなさい、しばらくこのままで………」

恥ずかしさよりも自分を包み込む不安の方が大きかった。

「何処にも行かせません………私がバルトさんを捕まえますし、助けます………」

丁度パレードの大きな音でバルトには聞こえなかった。

「綺麗だなぁ………」

ヴィヴィオが小さく呟く。
夜に輝くパレードの中、それぞれの思いが交錯していた………












「寝ちゃいましたね………」
「全く、最初からあんなにはしゃぐからだっての………」

帰路。電車を降りた3人は歩いて高町家へと向かっていた。
ヴィヴィオは電車に揺られている途中に寝てしまい、電車を降りてからずっとバルトがおんぶしていた。

「あの………バルトさん………」
「何だ?」
「何処にも行かないですよね?」
「はぁ………またその話か………」

パレードが終わってからのなのははかなりおかしかった。
バルトと離れようとせず、逃がさないように目を離さない。
しまいには何度も『何処にも行かないですよね?』と聞いてくるのだ。

「俺は何処にも行かねえって。明日六課に帰るからって朝まで居酒屋巡りなんてしねえし………」
「いえ、そう言うことじゃ無いんですけど………」

そう言うとまたもバルトの服の袖をしっかり握るなのは。

「ガキじゃねえんだからそんな所掴むな。しわくちゃになるだろうが!!」
「………」

そんなバルトの言葉に全く反応せず手を離さない。

「ああ分かった分かった!!じゃあこれでどうだ?」

そう言うとヴィヴィオを支えていた両手を左手だけにし、右手を差し出した。

「バルトさん?」
「手を繋げば文句ねえだろ?」
「は、はい………」

そう返事し恐る恐るバルトと手を繋ぐ。

「バルトさん手、温かいですね」
「なのはは冷たいな。調子でも悪いのか?」
「ううん、大丈夫です。あっ………」
「どうした?」
「記念撮影してない!!」
「写真か?別に良いだろ写真なんて………それにもう家に近いんだぜ」
「駄目です!!………って言ってもヴィヴィオちゃんも寝てますもんね………なので明日帰る前に撮ります!!」
「まあ帰る前になら別に良いか………」
「じゃあそう言うことで!!」

そう言って嬉しそうにバルトの手を引っ張るなのは。

「女って良く分からん………」

バルトはなのはに聞こえないように小さく呟いた………










「………でこれがその写真と」
「うん、綺麗に撮れてるでしょ!!」

と嬉しそうに言うなのは。
写真は数十枚あって今見ているのはなのは達3人と高町家3人の集合写真だった。

現在なのははフェイトと部隊長室。連休の最終日、3人は連休のそれぞれ出来事を話していた。
………と言うのは建前で、本心はなのはとバルトの関係がどれくらい進んだのかを確認するためにはやてとフェイトがなのはを呼んだ様なものだった。

「バルトさん凄い顔………」
「写真に慣れてないみたいでね、どうしても仏頂面になっちゃったから無理矢理笑ってって言ったらそんな顔になっちゃった」

写真で皆笑顔の中、バルトだけが変な風にひきつった笑みになってしまい、面白いと言うより不気味な感じになってしまっていた。

「まあバルトさんも災難やったな………」
「あっ、これ………」

そう言ってフェイトがチョイスした写真はなのは、ヴィヴィオ、バルトの顔がアップで撮られた写真だ。

「幸せそう………」
「バルトさん文句言ってそうやな………」

と羨ましそうに見る2人。

「これはタバコ吸ってるバルトさん?」
「うん、1人外れてタバコ吸ってたからカシャッと」
「あっ、それで頭しばかれたんやな………」
「うん、お姉ちゃんが」

写真には痛そうに頭を押さえてしゃがんでいる美由希が写っていた。

「バルトさん誰でも容赦ないね………」
「これはなのはさんピンチなんやないか………?」

からかうように言うはやてだったが言われた本人は冷静だった。

「大丈夫だよ、バルトさんのタイプはフェイトちゃんだから」
「ふぇ!?」
「ああ、金髪ぼんきゅぼんが好きなんやったな」
「うん、零治君と一緒」
「本当にフェイトちゃんモテモテやなぁ………」
「もう止めてよはやて………」

少し困った顔ではやてに言うフェイト。
その控えめで弱々しい姿に更に調子に乗ってしまうはやて。

「その大きな胸で男をたぶらかしてるんやな………私にもちょっと触らせてや!!」
「ちょ、はやて!?きゃ!!」

後ろから胸を鷲掴みにするはやて。

「何やて!?この大きさでこの張り!!フェイトちゃんの胸は重力にも打ち勝つんやな!!」
「へ、変な事言わないで!!なのは助けて!!」
「………こうなったら私もフェイトちゃんの胸の恩恵を………」
「恩恵って何!?なのは何を………きゃ!?」

今度はゆっくり近づいて来たなのはに正面から揉まれるフェイト。

「何や気持ちエエんか?フェイトちゃんはドMやなぁ………」
「ち、違っ………」
「ふふっ、フェイトちゃん可愛い………」
「なのはそこ駄目!!止めっ………」

とそんな風にかなり遅くまで騒いでいた3人だった………











「失礼します~」
「あらどうしたの大悟くん?」

時を少し戻して3日目の午後3時頃、臨時で呼ばれた武装隊の用事を済ませた大悟は1人機動六課の医務室へとやって来ていた。

「良かった、シャマルさん居た」
「ちょうど書類の準備も終わって帰ろうかなって思ったところよ。それでどうしたの?ディナーを加奈ちゃんと一緒に行くって聞いてたけど………」
「あっ、はいそうなんですけど、ちょっとシャマルさんにお願いしたいことがありまして………」  
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