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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第62話 お茶会は静かに行かないようです

Side ネギ

「わー!ホントに日本庭園だー。」

「ネギ先生……。こんにちは。」

「あ、こ、こんにちは茶々丸さん。」


大会終了後、父さんを追うも影すら見つけられなかった事でちょっと落ち込んでいた僕は、

落ち着ける所を求めて、茶道部の野点会場にやって来た。

生徒皆の模擬店を回ろうと決めていたけれど、そう言えばこの部活って、エヴァさんとかもいるんだった。


「態々、ありがとうございます。着物もありますが、どうしますか?」

「それじゃあ、折角なので……。」

「では、こちらへどうぞ。」


僕とは違い、全くこちらを気にしないで案内をする茶々丸さん。なんだか、気にしてるのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

後をついて行くと、少し大きな建物・・・男子更衣室についた。

コンコン
「どなたか、いらっしゃいますか?」

「はーい。服は着てるからどうぞー。」

「失礼します。」


男子更衣室から聞こえてこなかろう、女性の――しかし聞きなれた声が答える。

カラカラと軽い音を立てて扉を開けると、そこにいたのは、珍しく髪をおろした状態の愁磨さんだった。


「あ、愁磨さん。こんにちは。」

「ネギ……。お前、そんな若いウチからこんな枯れた事やってると、人生棒に振るぞ?」

「枯れた、とはひどいです……。」

「ああいや茶々丸に言った訳では無くてだな?大丈夫安心しろって!

茶々丸みたいな美人がやってる分には絵になって現代人の荒んだ心を癒してくれると言うか満たしてくれると言うか!?」

「……冗談です。」

「心臓に悪いって………。」


そう言えば、この二人の絡みを見た事はなかったような・・・。

茶々丸さんはロボットって聞いていたけれど、感情豊かと言うか、愁磨さんをからかって楽しんでる。


「じゃあ、僕は着替えてきますね。」

「ええ、分かりました。……ネギ先生、着付け分かりますか?」

「き、着付け……?」

「あー、いい、いい。俺が教えるから。」

「はい、分かりました。…………………愁磨さん×ネg「シャラーップ!!」失礼します。」


怒鳴られ、逃げるように出て行く茶々丸さん。愁磨さんは・・・不思議な溜息。うーん、この二人って特殊だなぁ。

などと思っていると、『ちょっと待っていろ』と言い残し、数分姿を消す。

再び現れた時には、手に着物を持っていました。


「ちゃっちゃと着替えるぞ。ほら、脱いだ脱いだ。」

「え、は、はい。」


服を脱ぐと、白い・・・着物(名前が分からない)を渡される。

と、愁磨さんが何やらこっちを見ている事に気付き、聞こうとしたとき―――


「……てい。」(ペタッ

「ぅおわきゃぅっっ!?」

「随分可愛い声で鳴くなぁ……。」

「え、な、なんですか!?やめ、くすぐったいですよ!!」


身を捩って逃げるも、二の腕やら脇腹やたらを掴まれる。

暫くやっていると、ふむ、と頷いてやめてくれる。ふ、普段の修行の方がまだマシだよ・・・・・・。


「ほら、さっさと着る。」

「うぅ……愁磨さんが悪いんじゃないですか………。」

「…………随分、鍛えられてるな?」

「は、はい。学園長先生に、毎日鍛えられてますから。」

「ふぅん………。」


それだけ言うと、それっきり何もしゃべらなくなってしまう。

な、なんだろう?アンニュイな日なのかな・・・・?と、その時。いきなり更衣室の扉が開かれる。


「すいませーん、愁磨先生とネギ先生が居るって――――」


そこで、ピタリと動きを止める闖入者・・・千雨さん。ふと、自分の状態を見る。

上半身、着物、一枚、羽織っただけ。下半身、下着、のみ。

その前に、ズボンを持って、膝立ちしている、愁磨さん。髪を下ろした、女性にしか見えない、愁磨さん。


「失礼しました。」(ガラガラピシ
ガッ!!!
「誤解したまま去ろうと言うのかね?それはいけない、断じていけない。

こう言う場合、"真摯な話し合い"と言うのが必要だと思うんだ。」

「い、いや。私は全く気にしてな―――って、愁磨先生だったのか!?

え、いや、その、なんだ。私は"そういう"世界に対して、一般人よりは理解はあるぞ?うん。

それにあんた、見た目は、女だから?抵抗は、少なくて、済むだろうし……。」

「ちっがあああーーーーーーーーーーーーーーーーうぅ!!」


・・・・よし、さっさと着替えちゃおう。


「お ま え も !!言い訳くらいしなさい!!」

「じゃあ、お茶の席でしましょう。ほら、茶々丸さんも待たせてますし。」

「何ゆえ冷静!?…………はぁ。ほら、次これな。ノワール、そいつ着替えさせちゃって。」

「ラジャー♪千雨ちゃん、いらっしゃーい。」

「げっ、いつの間に!?って、はーなーーーせーーーーー!」(ドップラー


どこからともなく出て来たノワールさんが千雨さんを抱え、恐らく女子更衣室の方へ飛んで行った。

そして、再度静かになった更衣室でさっきの言葉を思い出した。


「(見た目だけは、か………。)………って、あれ?こうやって、こう。……あれ?」

「あーあー、もう。しょうが無いなぁ。」


考えながらやっていたせいか、着物の紐が上手く結べず、愁磨さんにひったくられてしまった。

・・・こうして改めて見ると、確かに女の人っぽい事が分かる。

色だって白いし、体だって細いし、髪だって綺麗な上長い。けれど、僕にとってはどうしても男の人だなぁ。


「ほい、出来た。もう全部やってやるから、足上げな。」

「はーい。」


結局、五分足らずで着付けられた後、お茶を飲みに行く事になった。

着替えた愁磨さんに連れられ、会場に行くと・・・。


「あ、ネギくーん!やっほー。」

「こんにちはネギ先生。」

「まき絵さん、いいんちょさん。こんにちは。」

「あたし達もいるよーー!」


いいんちょさん達、計十名の生徒がいた。

その後ろに、更に織原家の皆さん12人が控えていましたけれど。うん。多いよ!?20人越えってダメだよね!?


「あー……うん。じゃ、俺達が移るよ。」

「申し訳ありません、私はこちらにつかないといけませんので……。」

「いや、いいよ。エヴァに淹れさせるから。」

「え゛っ。」

「あらあら、それは楽しみねぇ~。」

「・・・飲めなかったら、怒る。」


ギャーギャー言いながら、2~30m程離れたシート(?)へ向かう。

一緒に居たお姉ちゃんはチラリとこっちを見たけれど、結局、アリアさんの手を引いて行ってしまった。


「(お姉ちゃんのあんな顔、久しぶりに見たなぁ……。子供の時以来、かな。)」


いたたまれない様な、懐かしい様な気がした。

茶々丸さんの点ててくれたお茶は、そんな僕を癒してくれた、けど・・・。

・・・・うん、その後の事は無かった事にしよう。

Side out


Side 愁磨

「・・・・エヴァ、まずい。」

「ぐっ………つ、次までには何とかしておく。」


エヴァに茶を淹れ(点て)させると、案の定・・・飲めないほどではないのだが、それでも十分に不味かった。

不機嫌なままにしておく事も出来ないので、仕方なく俺が点てノワールが砂糖を入れ、アリカがフォローを入れつつ

アリアに飲ませる事で、何とかなった。


「で、一体どういう事だ?」

「さぁて、何の事か分からんのう。」

「ふぅー……それだけで十分だよ。」


王家の武術を知ってるのはアリカだけなんだから、明日菜に教えられるのもアリカだけ・・・・

理由は、聞かないでおこう。記憶が若干戻りかけてるフシがあるが、その時はその時だ。


「理由は聞かんのか?」

「いいさ、どうせロクな事じゃ無い。」

「そうか。実はのう、つい一か月ほど前じゃ。私の所にいきなり明日菜が来ての。何を言うかと思っダブッ!?」

「・・・・・め、なの。」

ひらいへははひかはひは(痛いではないか、アリア)!」

「・・・何言ってるか、わかんない・・・もーん。」


喋り始めたアリカに、アリアのチョップが入る。うーん、不機嫌だ。仕方なく、その不機嫌の原因であろう元に話を振る。


「……で、しずな。どう言う事か説明してくれるよな?」

「ええ、勿論ですわ。"創造主"猊下。」


その呼び方に、今まで反応を見せなかった全員が動く。

喉元に様々武器を突き付けられ、それでもしずなはお茶を飲み干す。

反応を見せていたネカネ・刹那・木乃香はついて行けず、アワアワと踊りだす。


「話は単純ですわ。わたくしも超 鈴音同様、未来から来たのです。

と言っても、時代が違いますしわたくしは愁磨さんの頼みで、ですけれど。」

「俺を敬ったり、普通に呼んだり。俺とどんな関係にあったんだ?」

「勿論、妻ですわよ?」


『さいですか』と溜息をつくと、それを合図に何でも無かったように皆はお茶を飲み始める。

さっきの三人は、それにもついて行けず、わちゃわちゃと踊っている。


「え、えーと………………………それでいいんですか!?」

「・・・ダメなの?」

「だ、ダメと言うか何と言うか。」

「・・・いい、の。パパが良いって、言った、から・・・。」


少々釈然としない物を残しつつ、三人は座る。

その後ノワールの質問をきっかけに、馴れ初めだとか聞き始め姦々々しい事となり、隣で似たような事(?)に

なっているネギと眼が合い、深い深い溜息をつく事となった。

Side out


Side ネギ

ピンポーン―――

「すいませーん。」

「はいはい、今出るのじゃ。」


お茶を飲んだ後学園祭を皆さんと回り、弟子入りやその他の話しをするために愁磨さん達の家へきた。


ガチャッ
「おお、ネギではないか。と、何やら大勢じゃのう……。」

「「「「「こ、こんにちはー。」」」」」


一緒に居た明日菜さん達・・・ずっと前に、この家に来た面々が、アリカさんに緊張しながら挨拶をする。

一回記憶を封印された後だし、警戒もするよね。


「今は丁度人も少ないからの。まとめて入ってよいぞ。」

「あ、ありがとうございます。失礼しま―――

――――ズンッ

グッ……!?」


家の中に入った途端、重力魔法でもかけられているのでは、と思うほどの重圧が重くのしかかる。


「あら、いらっしゃい~。どうしたのかしら?」

「え、ええ。舞闘会での約束を果たして貰おうかと思いまして。その他もろもろの事情もありますが……。」

「失礼しま―――ウッ!?」


僕に続いて入って来た皆も、この重圧に気付きうめき声を上げる。のどかさんなんかは、今にも倒れそうで・・・。


「お話の前に、ノワールさん。これ、どうにかしてくれませんか?」

「これってどれ―――ああ、すっかり忘れていたわ。ちょっと待っててくれるかしら。」(パチン


何かを思い出したかの様に、二階へ上がって行ってしまう。・・・態々結界を張って。

アリカさんに座る様にすすめられ、お茶が出たその時―――


バシン ベキッ ドガッ ズズン! パカンッ ドゴガガガガガ!!
「って、ええと、一体何が……?」

「いや何、愁磨がまだ落ち込んでおってな。それ、さっき感じとった重圧の発生源じゃ。」

「ど、どんな落ち込み方したら、あんな事になるのよ……。」


雰囲気だけで魔法並みの重圧出すとか、今さらだよね。

でも、さっきまであんなに元気だったのに・・・何があったんだろう。・・・と、暫く紅茶を飲みつつ待っていると。


シュルン
「で?」

「「「「「うわぁっ!?」」」」」

「ええとですね?この間かけられた記憶封印が、何故か解けまして。愁磨さんに説明と謝罪と追及したいと、

みなさんが。僕自身は、早速修行を開始して欲しいと思って来たのですが。」

「……お主が実は一番、愁磨に慣れておるのではないか?」


いきなり天井(あっちからしたら床)をすり抜けて来た愁磨さんに、皆が何故か驚いた。

僕は代わりに――と言うか事情が飲み込めているのは、こっち側は僕だけだから説明すると、

アリカさんに何だか失礼な事を言われた。


「はぁ~~~~………。

じゃ、ノワール、アリカ。ネギは任せた。後は知らん、ネギが何とかしろ。お前の嫁達だろうが。」

「そんな、愁磨さんじゃないんですから。僕はそんな節操無しじゃないですよ。」

「それこそ失敬な。俺は皆をこの上なく平等に愛しているだけだ。」

「はいはい、言い合いしてると夜が明けるわよ?あなたはこっちに来る。」


ノワールさんに襟元を掴まれ、引き摺られて行く。あ、歩けますから掴まないで欲しいんですが・・・。


「あ、ちょっと!待ちなさいよネギ!」

「ま、待ってくださいー。」

「お大事にー。……いや、こう言う時はアレか。ご愁傷様。」


あなたのせいでしょう!?と言う前に、ダイオラマ球の中へと放り入れられたのでした。

Side out
 
 

 
後書き
書くのに夢中で上げるのを忘れていた今日この頃。
フルに書けるバトルパートはやっぱりいいですね。ノリと勢いで書けるので楽です。 
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