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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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一部:超絶美少女幼年期
  三十三話:ひとつの恋の結末

「オカマさんは、ザイルくんみたいなひとが、すきなんですか?」

 流れで、一度は殺されかけ、二度殺しかけたオカマさんと、女子トークを始めてしまった私。

「オカマって、言わないでくれます?……でも、うん、そうなの」

 恥ずかしそうに俯いて答える、乙女なオカマさん……は嫌らしいから、おネエさんにするか。

「どこまで、いったんですか?」
「や、やだもう!ませた子ね!」

 と、照れながらもこっそりと耳打ちしてくれる、おネエさん。

 ……六歳児に、なんてこと言うんだ!
 それが聞きたかったんですけどね!!

「……でも、もう、バレちゃったから。あんなになってるし、もう、ダメ、ね」

 虚ろな目でブツブツ呟くザイルを見やり、寂しそうに呟くおネエさん。

 大丈夫、とは言えないよなあ。
 ザイルの、あの有り様では。

 見た目通りの年齢なら、ザイルはザイルで、可哀想ではあるし。
 ……元の馬鹿野郎ぶりを思えば因果応報というか、自業自得というか。笑えるけどね!!

 だけど、おネエさんは。

「そんな顔しないで。ウソついてたアタシが、悪いんだから。今のうちに、アタシ、行くわね」

 我に返ったザイルがおネエさんを見てどんな顔するかは、ちょっと見てみたいが。
 おネエさんのためには、そのほうがいいでしょうね。

「なんていったらいいか、わかりませんけど。……げんき、だしてくださいね」

 気休めにも、ならないけど。

「ありがとう。不思議な子ね、アナタは。馬鹿なことしたけど、結果、アナタに会えて良かったわ」

 不思議とかどの点を指して言われてるのか、心当たりが有り過ぎて。

「もう、わるいことは、しないでくださいね?」

 一応、念を押す私に、微笑んで答えるおネエさん。

「しないわ。もう、懲りたもの」

 厨二病、完治ですか!
 いい仕事したわ、私!

「それじゃあね。彼は無理でも、アナタには、またどこかで会えたらいいわね。元気でね、ドーラちゃん」
「はい。おネエさんも、おげんきで」

 なんか、フラグみたいな発言ですね!

 そういやゲームのリメイク版だと、ザイルもブリザードマンも、仲間になるし……。
 十年以上後なら、ザイルも完全に大人になってるし(年齢的な意味で)……。

 ……やだ、ちょっと楽しそう!
 馬鹿はパーティーにイラネ、とか思ってたけど、それはちょっと楽しそう!!

 まあ、でも、このおネエさんと愛を持って戦って、悪しき心を打ち払って仲間にするとか、無いか!
 万が一、おネエさんが仲間になったら考えよう!

 と、それもまたフラグのようなことを考えつつ、おネエさんを見送る私。

 一緒に見送っていたベラが、呟きます。

「……行っちゃったわね」
「……そうですね」
「それじゃ、私たちも!帰りましょう!」

 空気を変えるように、ベラが明るく言いますが。

 いやいや、まだですよ。

「ザイルくんを、なんとかしないと」
「……そうだったわね。全く、世話が焼けるんだから!」

 そのうち再起動するだろうから放っといてもいいんだろうけど、見たいよね!
 再起動した、直後の姿を!!

 焦点が合わない瞳でブツブツ言ってるザイルを、揺さぶります。

「ザイルくん、ザイルくん。だいじょうぶですか?」

 むしろ、大丈夫じゃないこと希望!
 さっさと、帰ってこい!

 ザイルが、はっとしてこちらに焦点を合わせます。

「……あ、あれ?オレは、なにを……。……ドーラ様?」

 そこは覚えてるのか。
 微妙な記憶の飛ばし方しおってからに!

「だいじょうぶ、ですか?ゆきのじょおうだったひとは、いっちゃいましたよ?」

 忘れたままだとつまんないし、思い出してもらいましょう!
 後でひとりで、ああああッッ……!!ってなるよりは、たぶんいいと思うの!

 うん、人助け、人助け!

「雪の、女王……、う、うわああああ……ッッ!!」

 よし!!
 これが、見たかった!!

「ザイルくん。おちついてください。だいじょうぶですから」

 今さら取り乱しても、どうにもなりませんから。

「ど、ドーラ、様……!!」

 なんか縋るような目でこっちを見てくる、ザイル。

 面白いけど一応可哀想なんで、適当になんか言っとくか。

「ザイルくん。ザイルくんは、ゆきのじょおうさまが、すてきだと、おもったんですよね?それは、みためだけ、だったんですか?」
「……ち、……違い、ます……!だけど……!!」

 うんうん、まさか男だと、思わなかったんだよね?
 変身後は、美女だったもんね?

「あのひとは、おんなのひとです」
「いや……!あれは、どう見ても……!いくら、ドーラ様の、お言葉でも……!!」
「こころは、おんなの、ひとです。」
「……!?」

 全く理解してなさそうだけどとりあえずなにも言わずに、私の次の言葉を待つザイル。
 うむ、成長したね!
 お馬鹿さんなりに!

「こころと、からだが、おなじじゃないひとが、いるんです。あのひとと、おはなし、しました。あのひとは、おんなのひと、でした。」

 完全に、乙女でした。
 ザイルくんに恋する、乙女でした!

「ほんとうは、からだも、おんなで、うまれたかったんです。おんなのひととして、ザイルくんを、すきに、なったんです。」
「でも……!オレは……!」

 うんうん、わかるよ。
 ()()の問題と、君の気持ちは、別だよね!
 騙されてたわけだしね!
 そこ割り切れるほど、大人じゃないよね!
 大人に、されてしまったわけだけどね!!

 正論ではもう無理なので、雰囲気で流してみるとしましょう!

 ちょっと声のトーンを落として、言います。

「……だから、いなくなりました。ザイルくんに、ゆるしてもらえないと、おもって。いなく、なりました」
「……!」

 意味がちゃんとわかってるとは思えませんが、雰囲気の変化にザイルがピクリと反応します。

 よし、そのまま流されろ!

「あのひとは、もう、いません。このあと、どうしようかなんて。かんがえなくても、いいんです。もう、なにも……できないんですから」
「……もう……」

 表情に、喪失感を滲ませるザイル。

 失ってなかったら投げ捨てたくなったかもしれないなんてことには、気付かなくていいんですよ!

「あのひとは、おんなとして、ザイルくんを、すきになった。ザイルくんは、おんなの、あのひとを、すきになった。そして、もう、おわったんです。……それで、いいじゃ、ないですか?」
「……」

 少なくともその時は、美女だったんだろうから。
 綺麗な想い出に、しておけばいいじゃない?

「ザイルくんは、あのひとが。すき、だったんでしょう?」

 そんなような気になってただけかもしれないけど、どっちにしろ確認できないから大丈夫!

「……はい。ドーラ様。ありがとう、ございます。オレなんかの、ために……!」

 涙でも滲んできたのか、盛んに瞬きを繰り返す、ザイル。

 ……ヤバい、面白い!
 笑いたい!!

 さすがに笑いだしたら台無しなので、慈愛に満ちた笑みに変換して笑いを逃がします。

「(思いっきり楽しませてもらったから)いいんです。さあ、もう、いってください。おじいさんが、しんぱい、してますよ?」

 早く大声で笑いたいので、とっとと立ち去ってください。

「ありがとうございます、ドーラ様!本当に、ありがとうございました!!」

 感激したように私を暫しじっと見つめた後は、一切こちらを振り返らずに走り去って行く、ザイル。
 きっと、涙を流しているのを、見られたくないんですね……!

 ……笑いたい!
 もう、笑いたい!

 でも、ベラがいる……!!

「……ぷッ……」

 あれ?
 私まだ、我慢できてるよね?

「………あはははは!ちょ、ドーラ!酷すぎ!面白がりすぎ!面白すぎ!!」

 ああ、ベラか!
 ベラは、勘がいいからね!
 バレてたなら、もういいか!

 微笑みに抑えてた顔を、思いっきり笑いの形にします。

「ウソは、いってませんよ?」
「だけど、完全に!ザイルのことは、面白がってたでしょ……!あはは、もうダメ、お腹痛い」
「あのほうが、ザイルくんも、しあわせだと、おもいますよ?」

 放っといたらトラウマになりそうだし。

「あはははは!そうよね!ザイルの、幸せの、ためよね!うん、いいこと、したわね!」
「もちろんです!」

 我慢する必要が無くなったので、私も思いっきり笑います。
 あー、すっきりした!!


 散々笑ってやっと落ち着いたベラが、言います。

「それじゃ、帰りましょうか!」
「はい!」

 今度こそ、もう用は無いからね!
 フルートを持って、ポワン様のところに帰りましょう! 
 

 
後書き
 ザイルは、ドーラちゃんの見立てでは、見た目ローティーンですが、人間では無くドワーフなので。
 感覚も歳の取り方も人間とはたぶん違うし、異世界なので。
 その辺のショタ的な犯罪臭は、きっと気のせいです。 
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