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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter21「仲間と家族」


食事が始まってから少し経った……ルドガーはたまたま目にした光景に……ああ、若さって無敵だなぁと、若干20歳の身で思っていた。

「よく食うのな……」

「私は違いますよ。よく食べるのはアイツです」

フォワード達のテーブルにはそれはもう沢山の料理が置いてあったはずたが、今や皿の上に乗っている料理は残り僅か。ここまで食べたフォワード達へ呆気に取られながらも感心していたルドガーにティアナが自分達を入れないでほしいと言うように、ある人物を指す。

「違うよティア!エリオだって一杯食べるよ!」

「あ、あはは……すみません……」

指されたスバルは反論しながらも、皿を片手に持ち肉を現在進行形で焼いており、対してエリオは食べすぎた事に罪悪感を感じてか謝る。

「エリオは別にいいのよ。育ち盛りなんだから、いっぱい食べなさい」

「うぅ……ティアの私とエリオの扱いに格差を感じる~!」

当たりまえのようにそう話すティアナにスバルは差別だと抗議するが一蹴され、再びへこむ。これも六課に来てから見慣れた光景だ。

「ティアナもちゃんと食べろよ?いつ出動かかるかわからないから、今の内蓄えておかないと」

「私はもう十分食べました……というか食べたくてもテーブルにはもう何もないですから」

「ご最も……が、せめて飲み物くらいは欲しいよな。俺が湖に冷やしているのを取ってきてやるよ」

「私も行きますよ。1人じゃ持てませんよね?」

「あ!私も行く~!」

「あっ!私も行きます!」

「僕も手伝います!」

「私も」

「みんなありがとな。じゃ、行くか」

ルドガーとフォワード達は揃って湖へ向かう。

「なんか賑やかだね~」

「本当です」

「リイン曹長とかヴィータ副隊長とか、何か普通にアリサさん達に可愛がられてるし」

「ですね」

「でも、ああいう暖かくて賑やかな家族と友達なら、全身全霊で守りたいって思いますよね」

「うん……」

「でしょうね」

湖へ向かう途中、スバルが始めた今日見た隊長達の一面の感想を話し、エリオ、キャロ、ティアナもそれぞれ答え、同じだと頷く。ルドガーは背後で話す4人の会話参加せず聞いている。
こういう会話に目上の人間が参加すると、目下の人間は思っていた事を話せない事もある事を考えたからだ。

「あのですね……その」

砂を蹴る音が1つ消える。キャロが足を止め何かを話し始め、他3人もキャロの様子に気付き足を止める。

「私……最近、機動六課もなんだか家族みたいだなって思うんです」

「そう?」

「私が前にいた、自然保護隊も……隊員同士仲良しでしたけど……六課のはそれともちょっと違ってて」

キャロの言葉にティアナが聞き返す。キャロはそう思った理由を話し始めた。

「うーん……隊長達が仲良いし、シャーリーさんとかリイン曹長も気さくな感じだしね!」

「アルトさんやルキノさん、メンテスタッフの皆さんも優しいです」

スバルとエリオも六課メンバーの自分達の抱いている印象を話し始める。

(……家族……か)

ルドガーにも家族はいた。ジュード達も家族のようなものだった。キャロの言葉で家族とは何なのかと考える。六課メンバーをルドガーは家族というより今はルドガーの新たな仲間だ……ジュード達とは別に考えれば、自分の家族といえばユリウスとルル……そしてエル。今では兄ユリウスも父ビズリーも、ずっと昔には母も他界しており今になってこの世界に血の繋がりのある人間は誰1人いないという事実に気付き感じた事のない喪失感に見舞われる。

(ミラはこんな気持ちだったのか……だとしたら俺は……)

ルドガーはミラの世界をカナンの道標を回収する為に破壊し、自身の世界に……彼女を知る者がいない世界へ連れていった……それも彼女を騙し姉であるミュゼを本人の目の前で殺して……。
今自分の心に現れた喪失感など彼女に抱かせたモノを比べる事などおこがましいのだろう。

「もちろんスバルさんと、ティアナさんと、ルドガーさんも!……ルドガーさん?」

「……いや、なんでもない。ありがとう、キャロ」

「は、はい……」

キャロが心配しルドガーに声をかける。自分は今どんな顔をしていたのか?心配していたのはキャロだけではない。スバルもティアナもエリオも、ルドガーの様子に気付き心配している。4人を見れば自分がひどい顔をしていたのは聞かずとわかる。

「いやぁ、暗い湖も昼間と違ってまた綺麗だよな!ほら、行くぞみんな」

「あっ、はい!」

場に漂う空気を払拭するようにルドガーは明るく振舞い、ティアナが返答し、他の3人も続く。湖の辺に着き、エリオとキャロが水に付けて冷やしていたジュースを引き上げる。

「きゃ!?水冷たい!」

「うわぁ~本当だ……」

水に手を入れた2人は、予想より水が冷たかった事で驚くが、子供だという事もあり水の冷たさには直ぐに慣れはしゃぐ。普段六課では見る事ができないキャロとエリオの姿に無意識に微笑む。

「ちょっと2人とも!落っこちたりしないでよ」

「は~い!」

「大丈夫です!」

「………心配だ」

「………はい」

ルドガーの声にティアナが頷く。こんなタイミングで起きるはずがないと思っている時こそ、起きてしまう………旅の経験からかルドガーはこの後2人が今何かやらかすのではと考えてしまう。

そしてやはり彼の感は見事に当たる。

「っきゃあ!?」

「キャロ!?」

(……ベタすぎだろ)

悲鳴を聞きながら危惧していた事が予想どおり起こってしまい軽く笑えてくる。だが笑える実際状況はエリオとキャロには優しくはなさそうだ。湖に落ちそうになるキャロを慌てエリオが彼女の手を掴むが、助けに入ったエリオは重力の力にあらがえずそのまま湖へと身体が傾く。
このまま2人が湖に落ちるのを見てはいられない……ならやる事は決まっている。
足に力を入れ、その場から一瞬でキャロの手前に移動。ヴィクトルやビズリーが使った瞬間歩法をルドガーなりに再現した技だ。舞う枯れ葉を残し、目の前にいた人物が突然消えた事にティアナとスバルは驚いている。

「ふぅ……大丈夫か?」

間一髪最悪の事態を回避でき一息つきながら、2人を引き上げる。

「は、はい」

「ご、ごめなんさい」

「いいんだ。次から気をつけろよ?」

謝るエリオとキャロにルドガーはそれ以上厳しい事は何も言わず、次から気をつけるように促した。
後ろからティアナが遅れて駆け寄って来る。

「もぅ……それ持って先に行ってなさい!残りは私達がもっていくから」

「「は、はい」」

返事をすると2人は、言われたとおりにペットボトルを持って先に戻る。

「ありがとうございます、ルドガーさん」

「ああ……寒い季節じゃないとはいえ、夜の湖は冷たいから落ちなくてよかったよ」

ティアナがルドガーに礼を告げ、それを何ともないとルドガーは返し、残った3人は残りのペットボトルも湖から引き上げる。ペットボトルに手を当てると冷蔵庫に入れ冷やしたのかと錯覚するほど、中身はキンキンに冷えている。同じような事を幼い頃ユリウスと一緒にいったキャンプで、やった事を思いだす。あの時ペットボトルを冷やす役割をしてくれたのは川だったが、同等の水の冷たさだ。自然とは何と素晴らしいモノか。

「ねぇ……ティア、あのルドガーさん」

「何よ?」

「 ? 」

スバルが普段の彼女とは違う、落ち着いた口調で話しかけてくる。本当に今日は色んな人物の様々な一面を見る事ができている。

「機動六課に来て……私達、良かったよね」

「……まだ分かんないわよ」

そう答えたティアナ。彼女に限らず、管理局では憧れの対象である人間が勢揃いした部隊で仕事と訓練が出来る事は、ティアナ達からすれば夢のような事なのではと思っていたルドガーは彼女の意外な言葉に目を丸くする。

「……訓練だってずっと、基礎と基本の繰り返しで……ルドガーさんとの訓練は、ルドガーさんの銃の腕をを見て自分の足りない所がわかって、今後の私の課題が出来上がる……でも本当に強くなってのか……いまいち分かんないし……」

確かにティアナの言うとおり、なのはの訓練は基本基礎固め。戦闘訓練というより、生き残る事を常に優先した教導だろう。これは教導官の方針で変わってくる事だが、あえてここはなのは教導方針を立てる方で説明すれば、彼女のやり方は間違ってはいない。戦い……任務において最も必要なのは命……無事任務から生還する事……それが戦う者として最低限の心構えだ。たがこれは状況により良くも悪くも変化する。……その者の自身の命以上に優先する存在によって。大切ななにかを守る為に人は自分の命を投げ出す事すらできる……無論ルドガーもその1人。でなければあの時に、あんな選択などしてはない。

「ティアナは強くなっている……確実にな」

「そうだよ!威力とか命中率とか、明らかに上がってるし!」

「それは……クロスミラージュが優秀だからでしょ」

「クロスミラージュは、ティアの為に生まれたデバイスだってリインさん達も言ってたでしょ?」

自分が強くなっている事を認めようとしないティアナ。だが彼女の口にする言葉から彼女が何をここまで固執しているかルドガーは理解する。

「お前は……あくまでも“自分自身”の力に固執しているな」

「そんなの……当たりまえですよ……強くならいと、何も出来ない……守る事も……」

「………」

ティアナの瞳を真っ直ぐ見据える。暫しの沈黙の後、ルドガーはペットボトルを数本持ちティアナとスバルの横を通り抜ける。

「あの、ルドガーさ---」

「……ティアナ」

スバルがルドガーに声をかけるが、ルドガーは彼女の声を遮りティアナの方を向かずに話しかける。

「前に俺は言ったよな?1人で戦い続ければ、いつか孤独に呑み込むれる……って」

「!!」

「スバルの言ったとおり、リインが前言った事は正しい……クロスミラージュはお前の為に生まれた言わばお前の半身であり、そして……仲間だ」

「…………」

「自分が誰と一緒に戦っているかを忘れないでくれ……」

ルドガーの言葉で雨に打たれたようなティアナとスバルを残しルドガーは今度こそ、その場を後にする。1人コテージに向かう中、ルドガーはティアナが今自分がいる“世界”で孤独だと思っているのではと、今までの会話で感じ取れた。
だから、初出撃の際自分が言った言葉を彼女に思い出させた。

お前は1人じゃない……仲間がいる……そして俺達を信じろ……そう伝えた。

この思いを常に彼女には持ってもらいたい。
そうすれば、人はもっと強くなれる。


守るモノがあれば人はどこまでも強くなれるのだから………。

 
 

 
後書き
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