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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第28話 バルトとヴィヴィオ、高町家へ行く

 
前書き
こんにちはblueoceanです。


ついにジョジョのPS3が発売しましたね。格ゲーは苦手なのですが買ってしまいました。
既に手元にあるのですが、お仕事の影響でプレー出来るのはいつになるか………

徹夜覚悟するか………? 

 
「それじゃあ………みんなお疲れ~!!」

次の日、はやての号令の元、お昼のバーベキューパーティーがスタートした。

「みんな一杯食べてね!」
「量は沢山あるから遠慮しなくて良いわよ~!!」

そんなすずかとアリサの言葉を受けて勢いよく料理に食らいつくスバルとエリオ。

「こら、お行儀よく食べなさい!」

一番小さいヴィヴィオに注意され、皆笑いに包まれた。
当の本人達が顔を真っ赤にしながらスピードを落としたのは言うまでもない………










「………」
「何をボーッとしている」
「バルトさん………」

そんなやりとりを遠くから見ていた零治にビールのジョッキを持ったバルトが声をかけてきた。

「大怪我したんだって?情けねえ、油断しているからそうなる」
「ごもっともです」
「寝てなくて良いのか?」
「はい。加奈の治癒魔法と自分の回復力でもう傷は大分良くなりました」

零治は手に持っていた飲み物を飲み、そう答えた。

(大分良くなった………だと?俺は加奈から最低でも1週間かかると言われたんだがな………)

そんな事を思いながら内心で驚くバルト。

「だけどいくら大丈夫だっていっても星達は俺の面倒を見ようとするんですよ………」
「俺に愚痴ってどうする。………ってか短時間でいきなり治ったと言われても心配するのは当たり前だろ」
「そりゃそうですね………」

何となく気まずい雰囲気が2人を包む。
並んで座る2人の空気を感じてか、2人に近づこうとする者は誰も居ない。

「………なあ零治、聞いて良いか?」
「?何をですか?」
「お前は強さって何だと思う?」
「強さ………ですか?」

そう言われて零治は深く考えてみる。

「心の強さでしょうか………」
「心?」
「はい。負けたくない、守りたい、勝ちたい。想いはそれぞれですけど、そのような気持ちや想いの強さが人を強くするんだと思いますよ」
「気持ちねぇ………」
「バルトさんの強さの元もその気持ちから培われたんじゃ無いんですか?」

そんな零治の問いに何も答えられないバルト。

(俺の強さの元か………きっかけはやはりあの事件………だが別にアイツを守りたいからってわけじゃない、不甲斐なかった自分を変えるため強くなろうと………だが俺はいつの間にかそんな事を忘れるほどただ戦いに没頭していた。強くなりたい………元はそこから始まったのに俺はかなり道がずれてしまったな………)

「バルトさん………?」
「ああ悪い、何でもないんだ。じゃあ俺行くな」
「バルトさん!?」

そう言ってさっさと移動するバルト。

『マスター、何故あんな話を?』
「いや、どうしてかな………だけど真剣に悩んでいる様に見えたから………」
『ですが、相手はあのバルトマン・ゲーハルトかもしれないんですよ!!』
「ああ、だな………」
『マスター、何でそんな他人事みたいに………』
「だってな………どう見てもあの人は………」

そう呟きながらボーッとバーベキューパーティを楽しんでいる皆を見ていた………












「はぁ美味かったっス………大・満・足!!」
「だねぇ、私も満足だよ………」

と椅子に深く座りながらそんな話をする2人。
ウェンディとスバルである。

「何もそんなに食べなくてもいいじゃないの………」
「全く、2人共みっともない………」

ティアナとノーヴェが揃って言うが、言われた本人達はあまり気にしていなかった。
女の子なのにおっさんみたく、腹をポンポンと叩いている。

「いいんスよ~ダーリンは居ないし、ダーリンに幻滅されなければ後はどう思われてもいいっス」

セインの言葉に強気で答えるウェンディ。

「だけどあまり普段からそんなだと明人先輩と一緒に居るときにもボロ出すぞ」
「私はボロ出さないっスよ」
「と言っても明人先輩だったら苦笑いしながら何も言わなそうだけどね」
「だな………」

セインの言葉にノーヴェが頷き小さくため息を吐いた。
彼氏が出来たと聞いてウェンディに変化が表れるのではないかと期待し、暖かく見守っていたのだが本人は相変わらずいつも通りだった。
唯一変わったのが、ダーリンこと吉井明人の話がかなり増えた事。
最初こそ興味を抱いて聞いていたセインとノーヴェだが、いい加減ほのけ話にも飽きていた。

「ねえねえ、明人さんってどんな人?」
「ダーリンは優しいっスね。どんなボケも拾ってくれるし、私の我儘にも付き合ってくれるっス」
「へぇ、いい人じゃない」

そんなウェンディに関心するティアナ。

「ティアナとスバルには彼氏いないんスか?」
「あはは………いない」
「そうね、私も」

苦笑いしながら答えるスバルに堂々と言うティアナ。

「もしかして2人も見た目は良くても中身はってやつっスか?」
「「ウェンディだけには言われたくない!!!」」

まだ会って数日にも関わらずハッキリとそう叫ぶティアナとスバル。
しかしその反応がウェンディに火を付けた。

「おおっ~息ぴったり。もした百合っスか?」
「「違う!!」」
「またまた~恥ずかしがらなくていいっスよ~」
「「違うって!!」」
「どっちが受けでどっちが責めっスかね………ティアナが責めでスバルが受けが普通っスけど………いや、案外ツンデレドMって可能性は………」
「「いや無いから!!」」

「完全におもちゃだね………」
「ウェンディの奴楽しそうだな………」

生き生きとしてるウェンディを見ながら姉2人がため息を吐いたのだった………











「さて、これからの予定なんやけど、事件も早期解決出来たんで残りの日は休日とします」

元々はやてが言っていた事でもあるが、予定通りスターズとライトニングは休みとなった。

「ねえねえ折角だし地球観光しよう!!」
「………確かに凄腕の魔導師が多く生まれた街には興味あるわね………」
「なのはさんの家のケーキ屋さんものすごい美味しいらしいよ!!」
「スバル、そこは要チェックね!!」

とプランを練るティアナとスバルや、

「私はミッドチルダに戻ります。父の様子も気になりますので………」
「了解や、ゲンヤさんによろしく言っといてな」

ギンガの様にミッドチルダに戻るものとそれぞれ別々となった。

「へん、俺達はどうせ学校だよ………」
「いいじゃん、久しぶりに佐助や夏穂達ともゆっくり出来るし」
「優理とリンスも忘れちゃ駄目」
「そうですよ………」
「ごめんごめん………」

睨む優理とリンスに謝るルーテシア。

「そうだね………だったら久しぶりに秘密基地にでも集まろうか」
「そうですね、あそこなら一杯遊び道具もありますし、最近行ってないから私も行きたいです」
「でも零治さんの事は良いのキャロちゃん?」
「大丈夫、家でお兄ちゃんと一緒に居るし」

真白の質問にキャロは笑顔でそう答えた。

「まあ確かに零治さん普通に動いてたし心配無いか」
「だけど私、レイ兄は結構重傷だと聞いてたんだけどな………」

そんなルーテシアの心配をよそに優理とキャロが口論となっていた。

「キャロ、レイと寝るのは私だからね」
「えっ!?一緒に寝てるの!?……………良いなぁ」

そんな優理とキャロの会話。

「この2人は………何時になったら兄離れするのかしら………」
「むしろレイ兄の方が妹離れ出来るのか僕は結構不安なんだけど………」

2人を見ながらルーテシアとエリオがため息を吐いたのだった………












「はやて達はどうするの?」

それぞれ色んな話をしている中、アリサがはやてに聞いてきた。

「久しぶりに地球でのんびりしてるつもりや。六課にいるシグナム達にもお土産買ってあげんといかんし………」
「はやてちゃん、映画も見たいですぅ!!」
「私はゲーム買っときたい………」
「じゃあ私も付き合うわ」

ヴィータの小さく呟く姿を見て笑みをこぼしながらアリサが言った。

「ええの?学校は?」
「2、3日位平気よ」
「すずかはどうする?」
「うん、私も行くよ。フェイトちゃんとなのはちゃんは?」
「フェイトちゃんはエリオと一緒リンディさん達の所に行くって言ってたで。そんでもってなのはちゃんは………」

と言っている途中で考え込むはやて。

「はやてちゃん………?」
「どうしたの………?」

「なあ2人共ちょっとええ?」











「さて………俺達は帰るかヴィヴィオ」
「何でー!!?」

皆がそれぞれどう過ごすか話す中、バルトは帰る気満々であった。

「だって久しぶりのまとまった休みだぞ?部屋で寝ているに限る」
「嫌だー嫌だー!!」

駄々をこねるヴィヴィオにため息を吐くバルト。

「それに地球にいる間滞在中の費用は自腹だぞ。地球の金に換金しなくちゃならないし面倒だ」
「何だよーそんなのすぐ終わるじゃん!!」
「いいから帰るぞ、ミッドで遊園地位連れてってやるから」
「バルトすぐ嘘つくからやだー!!!」

「あ、あの………」

そんな互いに平行線で話が続くバルトとヴィヴィオに遠慮がちになのはが声をかけてきた。

「あん?何だなのは?」
「あのですね………もしよかったらなんですけど………私の家に泊まりに来ませんか………?」

もじもじしながら話すなのはを不思議そうに見るバルト。
取りあえず話を聞いてみるとこにした。

「なのはの家?確か地球に来る前に話してたな………」
「忘れたんですか?私の家、洋菓子屋さんなんですけど家も広いし、お兄ちゃん結婚して家に居ないから部屋も空いてるんです………」
「洋菓子?………ケーキ!?」
「うん、そうだよ」
「バルト行こう!!!」
「そんなに目をキラキラさせるな………」

しかも目だけでなく、よだれも垂らすヴィヴィオにバルトはため息を吐きながらふいてあげた。

「だがな………」
「あと、お父さんがこだわってるコーヒーはとても美味しいですよ」
「よし行くか!!」
「うん行こう行こう!!」

コーヒーには弱いバルトだった………













「なのはちゃんナイスや!!」
「まさかあのなのはがね………」
「あんなモジモジしてるなのはちゃん初めて見たよ………」

そんななのは達のやりとりを遠くから見ていたはやて、アリサ、すずか。

「だけど勝負に出たなぁなのはちゃん。まさかバルトさんを家に招待するなんて………」
「外堀から埋めるつもりかしら?」
「でも大丈夫かな………恭也義兄さんや士郎さんはなのはちゃんを溺愛してるから………無理矢理道場に連れてったり………」
「バルトさんの場合ノリノリやろな………」

「あんた達何してんの?」

そんな3人を不審な目で見ながら声をかける加奈。

「なんや、加奈ちゃんかぁ~ビックリしたで………」
「私がビックリしたわよ。一体何を覗き見してたのよ?」
「なのはちゃんとバルトさんの話や」
「なのはとバルトさん………?」
「なのはちゃんがね、頑張って家にバルトさんとヴィヴィオちゃんを招待したの」
「ものすごいもじもじしてたけどね」

「へぇ………なのは勝負に出たわね………」

すずかとアリサの話を聞いて素直に関心する加奈。

「そう言えば加奈ちゃんは休暇どうするんや?」
「私はダメっ子の様子を見てミッドに戻るわ。後、さっき連絡があったんだけど大悟が来れなかったの私が移動した後、更に事件が起きたらしくてあのバカ駆り出されちゃったらしいのよ」
「へぇ………あのバカ頑張ってるのね」
「一応エース・オブ・エースだから」
「何か凄いね………」
「相変わらずヘタレだけどね」

加奈の厳しい言い方に苦笑いするアリサとすずか。

「そうだ、零治君は大丈夫なん?普通にバーベキューで食事してたけど………」
「普通なら最低でも1週間は安静にしてほしいんだけど………大丈夫だって普通に動いているのよね………」
「確か結構な大怪我だったのよね?有栖家皆で慌ててたけど………」

その様子をアリサとすずかは見ていた。有栖家の面々が囲んでいたため零治自身は見えなかったものの深刻な事態だと感づけた。

「その筈なのよ………なのに次の日には大分完治してて、あの様子なら普通に歩くくらいなら大丈夫。多分2、3日したら戦闘もできるんじゃないかしら」
「それ、本当なん!?」

はやても信じられないようで大きな声で聞き返してしまった。

「不思議でしょ?でも本当なのよ………兄さんの体一体どうなってるのかしら?一回精密検査を受けた方が良いわね………」
「確かに、俺もそう思う」
「そうやね………ん?俺?」

ふと異変に気が付いたはやてはゆっくり声のした方を見てみる。

「………何してんだお前ら?」

そこには不審な顔ではやて達を見るバルトがいた。

「あら………バルトさんいつの間に私達の所へ来たんや………?」
「声がしたからな。何をこそこそしてたんだ?」
「いやぁ………お、乙女には、そう!色々秘密があるんや!!」
「ほう………」

はやての物言いから更にバルトの眉がつり上がる。

「俺ってさ………何かこそこそ隠されると力ずくでも知りたいと思うんだ。………言いたいことは分かるだろ?」
「お、乙女を傷つけるなんて紳士のやることじゃないで!!」
「構わねえ、紳士じゃねえしな。………さて、覚悟はいいか?早めにバラした方が失うものも少ないぞ?」
「あ、アカンよ!!一体何するつもりや!!」

わさわさと指を動かすバルトに赤面になりながらはやてが後ずさる。

「口では言えない事だ………」

楽しくなってきたのかバルトもニヤリとしながらゆっくりはやてに近づいていく。

「口では………」
「言えない事………」

そんな意味深なバルトの言葉に顔を赤くして抱き合うアリサとすずか。

「あっ、後ろに木が………」
「さあ覚悟は良いかはやて………?」
「ああ乙女の純情が………せやったらせめて優しく………」
「無理だな、諦めろ」
「そんな殺生な!!」

「バ・ル・トさ~ん?」

そんなバルトに声を掛ける人物が1人。

「な、なのはちゃん助かったで………」
「私が電話している間に何をしているんです………?」

既に黒いオーラを纏っている姿に他の者も戦慄を覚えるがバルトだけは呆気らかんとしていた。

「いやな、盗み聞きしていたであろうはやてにオシオキを。そんでもってあそこで抱き合っている2人にも後でオシオキの予定」

「「えっ!?」」

まさか自分達にも飛び火するとは思ってなかったアリサとすずかはその発言に一気に顔が青くなった。

「とか言いつつ綺麗な3人にセクハラするつもりだったんじゃ無いんですか………?」
「睨むなよ、別にただオシオキをだな………」
「本当ですか?アリサちゃんとすずかちゃんバルトさんの好みですよね………」
「………まあ否定しないさ」
「やっぱり………アリサちゃん大人になっておっぱい大きくなったし、すずかちゃんは更におしとやかになって美人になったし………」
「何言ってんだよ、ハッキリ話せよ………」

ごにょごにょと話すなのは。先ほどの黒いオーラもすっかり無くなっていた。
そんななのはを見て、バルトはため息を吐いた。

「ったく、興冷めだぜ。………でなのはどうだった?」
「あっ、はい。電話に出たのはお母さんだったんですけど是非いらして下さいって」
「そうか、まあタダなら良いか。このまま帰ってもヴィヴィオがうるさそうだしな………あっ、なのは近くにパチンコとかあるか?」
「休み少ないんですよ?ヴィヴィオちゃんと遊んであげてください!!」
「あ~分かった、考えとく」
「必ずです!!」

そう話しながら、2人は何処かへ行ってしまった。

「た、助かった………」
「何時から気が付いていたのかしら………?」
「多分大体聞いていたんじゃないかな………?」
「バルトさん、やっぱり危険や………気になるけどやっぱりやめた方が良さそうやな」
「そうね………って別に私達は賛同してないわよ!!」
「うん、はやてちゃんが取り敢えず来てって言うから来ただけだし………」
「あれ?そうやったっけ?」

全く覚えていないはやての反応に呆れるアリサとすずかであった………












「なのは呼んできて正解だったかしら?」
「加奈、余計な事を………もう少し遅けりゃ3人のm………」
「バルトさん、オハナシ………する?」

先程ちゃっかり逃げた加奈は近くで電話していたなのはに事情を説明。
なのでなのはもいち早くバルトの所へやってこれたのだった。

「バルト何したの?」

そんなやり取りを全く知らないヴィヴィオがバルトに聞いてきた。

「いやな、はやての奴等盗み聞きしてたから少しお仕置きをしようとしたんだ。なのになのはがそれを邪魔して………」
「ああっ~なのはお姉ちゃんいけないんだ!」
「ええっ~!?」

オハナシを始めようとしたなのはの雰囲気が一変した。
まさかヴィヴィオに怒られるとは思っていなかったので慌てたのだ。

「ヴィヴィオちゃん、確かにはやてちゃん達は盗み聞きしてたけど、問題はバルトさんの方にもあって………私は別に悪いことは……」
「でも友達が悪いことしてたのに悪いって言えなかったんだよね?それって本当に友達なのかな?」
「うっ………」

ヴィヴィオの言葉は間違っているわけではないので言い返せないなのは。

「ヴィヴィオが大人な事を言ってる………頭大丈夫か………?」
「それどういう意味!?それに本当に心配そうな顔しないで!!」

バルトの態度が気に入らなかったヴィヴィオはバルトに文句を言うが、バルトは妙に優しかった。

「何か悪かったな。今回の休みは付き合ってやるから………」
「同情しないで!ヴィヴィオだって成長………あれ?もしかして結果オーライかも」
「そ、そうだね………」

未だに引きずっているなのはが弱々しく答える。

「じゃ、じゃあ公園行こう公園!!」
「ああ、パチンコの後な」
「さっきの言葉は!?」
「と、取り敢えず話はこれくらいにして、私の家に行く準備しよう2人共」

多少立ち直ったなのはがそう提案し、2人の言い争いも収まった。

(どう見ても家族よねこの3人………)

静かに3人のやり取りを見ていた加奈はそう思いながら自分の部屋へと向かうのだった………









「じゃあスバルとティアナは加藤家に泊まるのか」
「はい!!桐谷兄にも許可貰いましたし、ウェンディ達も良いって言ってくれたので」

皆、それぞれ荷物をまとめている中、零治は既に準備の終わったスバルとティアナと話していた。

「あの………もう傷は良いんですか?大怪我って聞いたんですけど………」
「ああ、全快って訳じゃないけど普通に動く分には支障はない」
「そうですか………良かったです」

少しよそよそしいティアナを不思議に思う零治だったが、気にしない事にし、さっきからそわそわしているスバルに声をかけた。

「少しは落ち着け」
「だって!!前に来たときは余りゆっくり出来なかったんですもん………翠屋のケーキや大きなショッピングセンター、それにそれに!!」
「遠足前の小学生かお前は………」

そんなスバルに呆れながらも零治は別の事を考えていた。

(何で魔力が………)

大怪我してから魔力が何時もより回復していなかったのだ。どんなに長く戦闘し、魔力をギリギリまで使用しても一日しっかり休めばほぼ回復するのだが、今零治の魔力残量は3割を切っていた。

(詳しく測っている訳じゃないが昨日大怪我する前でもまだ5割以上あったはずだ。なのに休んで更に減ってるって………一度スカさんに相談したほうが良さそうだな………)

体の異常。いつの間にかあった自己治癒力。
命の危険を回避出来ている以上、決して悪いというわけでは無いのだが自分でも不気味だと思っていた。
これほどまで治癒力が上がると何処かマイナスな所が出てきてもおかしくない。

(俺はもう簡単には死ねない。家族を悲しませる訳にはいかないからな………)

「零治さん?」
「ん?どうした?」
「聞いていなかったんですか?ウェンディ達って私達と一緒に一度ミッドに行ってから地球に帰るって言ってたんですけど………」
「はぁ?聞いていないぞ?」
「ですよね………一度六課を見ておきたいって」
「アイツ等………連れてきたんだから言えよな………まあいいや、大変だと思うけどよろしく頼む」
「はい、ノーヴェとセインにも協力してもらいますから恐らく大丈夫です」
「それでも恐らくだもんな………」
「スバルもいますからね………」
「えっ、私も!?」
「当たり前よ、アンタは直ぐに乗せられそうだから気を付けなさい」
「大丈夫だよ!私は意外としっかりしてるから!!」

胸を張って、自慢げに言うスバルだったが、ティアナと零治の視線は冷ややかだった。

「何て冷たい………!!これが世間の冷たさなんだね!!」
「バカな事言ってないの。じゃあ私達はこれで………」
「ああ。地球楽しんできな」
「さようなら零治さん!!」

そう言って2人はペンションの中へと戻っていった。

「………さてと、そろそろ星達も来るだろうし、飲み物でも買ってくるか………」

そう言って考えていた事を取り敢えず頭のすみにに置き、重い腰を上げたのだった………












「着きました。ここが、私の家のケーキ屋さん、翠屋です!!」
「お客さん多い!!」
「なるほど、繁盛しているのを見ると期待出来そうだ………」

さて、一度ミッドに戻った六課メンバー。
はやて以外はそれぞれ再び身支度を済ませ、地球のお金に換金した後、再度地球にやって来ていた。

「しかし3日も休暇が取れるとはな………」
「確かにそれは予想外でしたね………」

すっかり夕方となってしまったが、それでもまだ休みがある方なので遅くなったが特に文句は無かった。

「まあ連休なんて滅多に無いから嬉しいが………なのはは教導隊の仕事ねえのか?」
「訓練の指導の要請はありましたけど、全て断っておきました。たまには私も実家で羽を伸ばしたいです」
「そうか」
「ねえねえ入らないの2人共!!」

少し話しているだけであったがヴィヴィオは我慢しきれなかったのか、2人の腕の袖を引っ張って急かす。

「分かった分かった!!」
「だから引っ張らないでヴィヴィオちゃん!!」

2人はヴィヴィオに引っ張られながらお店へと入っていった………










「いらっしゃいませ!!………ってなのは!!」
「お姉ちゃん!!ただいま!!!」

お店に入ったなのはを最初に迎えたのは高町家の長女美由紀だった。

「お帰り!!………でそっちに居るのはお母さんが話してた………」
「うん!バルトさんとヴィヴィオちゃん!!」
「バルト・ベルバインだ。このガキ共々お世話になる」
「ヴィヴィオ・ベルバインですよろしくねお姉ちゃん!!」
「はい、私なのはの姉の高町美由希と言います!!あっ、詳しい話はお店が閉まってからで良いですか?もうすぐ閉店なので………取り敢えずそちらの席に座ってください。直ぐにケーキと飲み物を持ってきますので」
「あっ、お姉ちゃん、私も手伝うよ」

そう言って高町姉妹はそれぞれ店の奥に行ってしまった。

「………取り敢えず座って待つか」
「うん!ケーキ楽しみ!!」

とはしゃぐヴィヴィオ。
そんなヴィヴィオを見てバルトも自然と笑みが溢れる。

(その笑顔が見れただけでも来たかいがあったか………)

「お待たせしました!!」

大体5分程待った2人。
元気な声が聞こえ、振り向くとそこには美由希と店のウェイトレス姿になったなのはがいた。

「ど、どうですか………?」
「何がだ?」
「この姿ですよ!!」
「いや、コスプレイヤーを見てきた俺にとって別に珍しくは………」
「なのはお姉ちゃん似合ってるよ!!」
「ありがとうヴィヴィオちゃん。バルトさんは全く分かってないよね~」
「ねえ~」
「何の事だよ………」
「「教えな~い」」

そんな2人の態度に舌打ちをするバルトだが直ぐに気にせず2人の持ってきてくれたケーキとコーヒーを受け取った。

「ゆっくりしててね」
「なのはもゆっくりしてて良いわよ」
「たまにしか手伝えないんだから手伝うよ」
「そう?だったらそうしてもらおうかしら………」

そう言って2人は再び店の中へと入っていった………











「………美味い」

コーヒーを一口飲んで思わず言葉が溢れた。
深みとコクがあり、苦味もそれほど感じない。バルト的には苦いコーヒーの方が好きなのだが、これほどのコーヒーを今まで飲んだこと無かった。

「侮れんななのはの実家………」
「ふえ?」

そんなバルトの呟きに反応するヴィヴィオ。
ヴィヴィオのケーキはイチゴのミルククレープだった。バルトにとって甘いケーキは天敵なのだが小さい子には好評のようだ。

因みにバルトはチョコレートケーキである。

「どうですか?家のコーヒーとケーキは?」

そんな中、1人の男の従業員が話しかけてきた。

「美味いな、これほどの美味いコーヒーは初めてかもしれん。強いて言えば俺はもう少し苦めの方がいいかもしれん」
「おっ、苦めのコーヒーがお好みだったかい?」
「もしかして出来るのか!?」
「ああ、コーヒー豆のブランドを変えれば可能だよ」
「………出来れば頼む」
「了解しました」

そう言って男の従業員は立ち去る。

「あっ、そう言えば自己紹介まだだったね。私は高町士郎。なのはの父です」
「ち、父親!?」
「叔父さん若いね!!」
「ありがとうお嬢さん」

そうヴィヴィオに返して士郎は中へと戻っていった。

「父親………嘘だろ………」
「バルトどうしたの?固まって………」
「だってよヴィヴィオ、なのはが19で兄が既に結婚してるんだろ?………結婚しているって事は最低でも25歳前後って考えるのが妥当?………って事は早くてもあの親父さんは若くても50手前って事だ」
「50歳近いの!?全然見えない………若いね!!」
「若いね………じゃない!明らかに異常と言えるレベルだぞ!?どう見ても30代にしか見えねえ………」
「うん、そうだね。………ねえバルト、バルトのケーキ食べてみてもいい?」
「お前に話した俺がアホだった………食ってもいいが少し苦いぞ?」

そう言って自分のチョコレートケーキを差し出すバルト。

「ありがとう!!いただきま~す!!……………って苦い!?」

やはりヴィヴィオには早かったみたいで、慌ててオレンジジュースを飲んだ。

「バルト~苦いよ~!!」
「それが大人の味だ。コーヒー飲むか?」
「ミルクと砂糖一杯入れていいなら!!」
「うわぁ………邪道な………」

そんなたわいもない会話を楽しんでいると今度はなのはや姉の美由希よりも大人な女性が現れた。

「はい、これはコーヒーの御代わりです」
「ああ、ありがとう。えっと………流れからするともしかしてだがなのはの母親って事になるんだよな………?」
「はい。母の桃子と言います」

(ば、化け物だ………どう見ても若奥様にしか見えねえ………熟女とは到底思えねえぞ!!!)

「初めまして!!ヴィヴィオ・ベルバインです!!」
「あらあら、ちゃんと挨拶できて偉いわね!!」
「えへへ………」

撫でられ嬉しそうな顔をするヴィヴィオ。

「2人の話はよくなのはから聞いていましたよ。いつか会ってみたいと思っていました。いつも娘がお世話になってます」
「あっ、ご丁寧にどうも。こちらもお世話になっています」
「バルトがいつものバルトじゃない!?」
「俺だって多少の礼儀はわきまえてるっての!!」

ヴィヴィオに本気で驚かれ、少し顔を赤くしながら怒鳴るバルト。

「あらあら………」

桃子の優しい眼差しがバルトにとって逆に痛かった………











「いらっしゃい、ここが私の実家だよ!!」

普通の一軒家より少し大きめの家、それがなのはの家だった。

「うわぁ~バルトの家より広い!!二階もある!!!」
「当たり前だ。俺達の住んでいたのはアパートだからな。………ってあんまりはしゃぐなヴィヴィオ!!」
「まあまあ。元気があって良いじゃないですか」

初めての一軒家に興奮してかあちこち走り回り、各部屋を確認する。しかし桃子さんはそんなヴィヴィオを見ながら笑ってそう言ってくれた。

「あっ、ここ多分なのはお姉ちゃんの部屋だ!!可愛いお人形さん一杯!!」
「おっ、ちょっと興味あるな。管理局で恐れられている白い魔王がどんな少女趣味なのか………」
「にゃああああああああ!!バルトさんは勝手に女の子の部屋に入っちゃ駄目!!」
「あがっ!?」

2階に登ったヴィヴィオの声を聞き、バルトも興味本位でなのはの部屋に行こうとした所をなのはに突き飛ばされ、壁に背中を強打した。
なのは気にせずヴィヴィオの所へと向かっていった。

「だ、大丈夫ですか!?」
「なのはのバカやろう………冗談だろうが………マジで突き飛ばしやがって………」
「それよりバルトさん、管理局の白い魔王って………」
「ああ、あなたのお子さんですよ。可愛い顔してえげつない攻撃をし、なおかつ、本気でキレされたときは塵一つ残さない所業にいつしか白い魔王と呼ばれる様に………」

「言われて無いから!!バルトさんデタラメ言わないで!!!」

今度は慌てて1階に降りて来て、バルトの口を抑えようとするなのは。
しかし身長が足らない為、別の角度から見たらなのはが積極的に抱きついている様にしか見えない。

「あらあら………」

そんな2人のやり取りを温かく見守る桃子であった………











「それじゃあヴィヴィオちゃん、お風呂入る?」
「入る~!!」
「あっ、私も入る!」

夕食後、なのはとヴィヴィオと美由希の3人はお風呂へと向かった。

「ヴィヴィオはともかくなのはと姉は一緒に風呂に入れんのか?」
「ははは、さすがに無理だね。順番に風呂に入るんじゃないかな?」

バルトの指摘に士郎が笑いながら答えた。

「はい、2人共どうぞ」
「ありがとう桃子。ささっ、バルトさん」
「あっ、どうも………」

桃子が持ってきたビールを士郎にコップに注いでもらい、バルトも注いであげた。

「プハァ~!!美味い!!」
「良い飲みっぷりだね」
「ああ。地球のビールはまた美味いからな。まだまだいけるぜ」
「まだまだありますから遠慮しなくて良いですからね」
「ああ、そうさせてもらう」

そう言ってゴクゴクとイッキ飲みするバルト。

「………さてバルトさん、色々聞きたい事とかあるんだけど良いかな?」
「ああ、構わねえよ」

士郎はお酒を飲みながらそんな事をバルトに言った。

「まあ取り敢えず今はゆっくりお酒を飲むとしよう。………そう言えば野球のナイターもやっていたっけ………?」













「じぃ………」
「えっと………ヴィヴィオちゃん何かな?」

3人で仲好く入浴中。
そんな中ヴィヴィオは湯船から体を洗っている美由希を見つめていた。

「美由希お姉ちゃん眼鏡外したらなのはお姉ちゃんそっくりだね」
「まあ姉妹だもんね」
「私もなのはの様にサイドテールにしたらなのはに見えるかな?ほら、こうやって………」

そう言って自分でサイドテールを作ってみる。

「どうヴィヴィオちゃん?」
「見えな~い」
「うん、お姉ちゃんだ」
「それになのはお姉ちゃんの方がおっぱい大きい」
「ガーン!!気にしている事を………」

そう言ってガクンと俯く美由希。
それほど大きさには大差無いが、妹より小さいことを美由希は気にしていた。

「良いもん!!どうせなのはの胸だって垂れてくるんだから!!」
「私は垂れないもん」
「じゃあ後でバルトに聞いてみるね」
「「聞かなくて良いの!!」」

ヴィヴィオの発言を慌てて止める2人。

「でも美由希お姉ちゃんケーキ美味しかったよ!」
「ありがとうヴィヴィオちゃん!」
「でもね、お姉ちゃん料理大の苦手でね、よく味見させた零治君をノックアウト………」
「なのは?」

笑いながら目でそれ以上言うなと訴える美由希。
姉妹なのか、魔王と呼ばれるなのはでさえ、萎縮してしまうほどの眼力だった。

「お風呂上がったらまた食べたい!!」
「ヴィヴィオちゃん、食べ過ぎちゃうとおなか壊しちゃうよ。だから今日は我慢して明日にしようね」
「え~」
「その代わりアイス食べましょ」
「食べる~!!」
「ヴィヴィオちゃん、食べたら歯磨きするんだよ」
「はーい!」

なのはにそう言われ、大きく手を上げて答えるヴィヴィオ。
お風呂では楽しい時間が流れていた………













「おっ、打った!!」
「デカイな、入るか………」

『入ったー!!8回2アウトから村井の逆転スリーラン!!これで4対3と終盤でゲームがひっく返しました!!』

「ほぅ、あの場面で打つか………やるな村井」
「バルトさんは野球を知っているのかい?」
「ライトニングに野球好きがいるからな。ヴィヴィオも何故か知ってるし、俺もたまに遊びに付き合ってるんだ。ミッドでは知られてないが、おかげさんでルールと球団位は把握している」
「そうなのか。いやぁ勿体ない」
「まあ確かに面白いな………」

そんな感じでテレビを見ながらたわいもない話をしている2人。

「そう言えばなのはと結構長い付き合いみたいだけれど出会いはどんな感じだったんだい?」
「出会いか………なのはに聞いてないのか?」
「あの子は詳しい事は教えてくれなかったからね」
「確か初めてミッドにやって来て買い物にでかいショッピングモールに行ったとき、ヴィヴィオが人質になっちまってそこで一緒に人質になってた管理局の魔導師がなのはだったんだよな………」
「そんな事件あったのかい!?全く知らなかったよ………」
「んでもって取り敢えず無事に済んで新しく住む予定のアパートに帰ったら………」
「なるほど、それでお隣さんだったって訳だね」
「おっ、そこは聞いていたのか」
「ああ、そこは話してくれたよ。基本的になのはは何か良い事があると話してくれるんだ」
「良い事ね………」

小さく笑いながらビールに口を付ける。

「ちゃんとヴィヴィオちゃんとバルトさんの事も話してくれたよ」
「あんまり良い事は言ってそうにないな」
「まあそうだね。ヴィヴィオちゃんは良い子で可愛いっていうのが多いけど、バルトさんの方はがさつで口が悪くて………って感じで愚痴が9割かな」
「いや、いくらなんでも多すぎだろ!?どんだけ溜め込んでるんだ!?」

驚くバルトに士郎はクスクスと笑い始めた。

「私も驚いたよ。だけどね、それは逆に言えばよっぽどその人を見ているんだなって事になる」
「まあ六課に入る前はぶっちゃけ俺の家に住んでいるって言っても間違いじゃねえからな。………って親に話すのは不味い内容だったか………?」
「いや、それはなのはの決めた事だ。もうあの子も大人だし、とやかく言うつもりはない。だけどね、私もやっぱり親なんでね………」

そう言って先ほどまでの優しい目が一転して真面目な顔になった。

「バルトさん、君はなのはの事をどう思っているんだ………?」
 
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