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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第十二話 かつての日常

シンは部屋でベッドに仰向けになりながら昔のこと―――オーブにいた頃のことを思い出す。
オーブでクラウと始めて会ったのは確か戦争が始まる一年ほど前のことだった。








「お兄ちゃん、早く!置いてっちゃうよ!」

「待てよ、マユ!」

家族で買い物に出かけてて、マユは欲しがってた携帯電話を買ってもらえることに凄い喜んでたんだ。だから、一人先走っててそれを兄として諌めるために追いかけてた時にマユが後ろを向いてたせいでぶつかった人。
それが、クラウ・ハーケン―――プラントに行く際に俺に色々と援助してくれた兄のような人との出会いだった。

「すいません、妹が!」

「だって、お兄ちゃんが遅かったせいだし」

「こら、マユ。謝れって」

和気藹々とした様子で話し合う兄妹を微笑ましく見るようにその青年は言った。

「いや、ぶつかったって言っても怪我もないし大丈夫だよ。君の方こそ怪我はなかったかい」

知り合ったきっかけはこの時。互いに家が近いと言うこともあり、彼は良く家に来るようになった。俺には本やゲームを、マユにはぬいぐるみや飾りといったものをよく持って来ていた。
モルゲンレーテで働いてるらしく、彼はその中でも開発関係の部門で働いてたらしい。らしいと言うのは実際に俺がそれを知ったのはプラントに移住してからのことだからだ。

「おにーちゃん!」

「うわッ!?」

紅葉の景色が綺麗に映っている森林公園で本を読んでた時にマユは後ろから突撃してきたことがあった。怒って追いかけたらいつの間にかただの追いかけっこになってた気がする。

「あ、クラウ兄さん!」

マユはそう言いながらこちらに来ていたクラウにそのまま突撃する。微笑ながら彼は受け止めて頭をなでたりもしていた。マユはクラウに懐いてクラウ兄さんとまで呼ばれてた。
ちょっと嫉妬したりもしたけど、それがマユに対してなのか、クラウに対してなのかは微妙な所だ。正直な所どっちにも嫉妬してたかもしれない。とはいえ、どちらにしても俺もマユと同じくらいにはクラウを尊敬してた。
一回り離れた年の兄が居たらこんな感じなんだろうかっていつも思ってたと思う。

戦争が始まってからクラウが来る機会は減った。その時はまだ戦争の実感はなかったけど、クラウが来ないのは戦争が原因だって言うのは理解してた。
それでも暇を見つけては会いに来てくれたりもして父さんや母さんと良く話したりもしてた。今にして思うときっと戦争に対して何か話してたんだと思う。
ヘリオポリスが崩壊したって話を聞いた時は驚いた。クラウはそれが原因なのかもっと忙しくなったみたいだった。

アラスカの本部やパナマがやられてしまうと、戦争は一気に僕達の側にやってきた。旗色の悪くなった地球軍がバカなことを考えていると父さんは言っていた。クラウは大局を読み誤ったオーブは選択が迫られてるとも言ってた。敗北か隷属かだと。そしてそれは一気に、信じられない形で始まった。

俺達はクラウの家族と一緒に避難してた。クラウ自身は数日前からPCを使って何かデータを抜き出してたみたいだ。俺を含めた全員に早く行こうと説得されてたけど、データを回収したらすぐに行くとだけ言って先に行くように促してた。
結局、プラントに着いた時に全部抜き出しきれなかったと呟いてたけど。
マユが携帯電話を落として駄々を捏ねる。マユにとって色んな思い出がつまったものだったし、色々と我慢してまで手に入れた携帯電話だった筈だ。俺は父さん達より身体能力が高いし、すぐに追いつけると思ってマユの携帯電話を取りに行った。
その小さな行動の違いが俺の運命を変えた。

「うわぁぁあああ――――――!?」

自分の後ろで爆発が起きて吹き飛ばされる。暫くは痛みで何が何だかわからなかった。必死に誰かに呼びかけられて目を覚ます。目を空けた先にいたのはオーブ軍の人だった。
ハッとなってあたりを見渡すと瓦礫が出来ており、その下にはマユや、父さんや母さん、クラウの家族の体の一部が埋もれた中から赤く染まってはみ出てた。

「ああ、ああ……ああああああ――――――」

そこからのことはハッキリとは覚えていない。クラウがいつの間にかいて、いつの間にか船に乗せられていた。クラウも疲れがでたのか横で座りながら寝ていた。それが俺にはまるで家族との別れを受け入れられないかのように見えて、罪悪感で胸が苦しくなった。

「君だけでも、助かって良かった」

艦内にいた一人の軍人がそう言う。俺は首を横に振る。何で俺だけ助かったんだッ!マユも父さんも、母さんも……こんなことなら俺もあの時一緒に……

「少なくとも、ご家族は、きっとそう思っていらっしゃるよ」

「う、うっ……あぁぁ―――」

俺は声を殺しながら泣き続けた。

その後はクラウやトダカさんに色々と便宜を図ってもらいプラントに行くことになった。トダカさんは年配の大人だったと言うこともあって恩を返しきれないほどお世話になった記憶がある。
メールでのやり取りもしばらくはしてたけど、その内プラント本国の近くでも戦争が激化したりして結局今は音沙汰がなくなった。
今でも時々思い出すけど、あの人は今頃どうしてるんだろうか。







夢から目が覚める。いつの間にか眠ってしまったようだ。
あの時のことを思い出すと俺はいつもザフトに入ったきっかけを必ず思い返す。
戦争なんて起こらないほうがいいけど、現実を見ないで理念だけ語ったってどうにもならない。マユも父さんも母さんももう戻らない。戦争を止めることができないならば、オレは戦う。戦って、今度こそ大切な全てを守ってみせる。
そう決めたんだって、自分にいつも言い聞かせる。でも何で、こんなこと急に思い出したんだろうか。アスラン・ザラとの距離が少し縮まったような気がしたから?
それとも、これから何か起こる予知夢めいたもの?

「まさかな―――」

馬鹿なことを考えたと首を振り、起き上がる。そろそろ基地に着く頃だろうかと考えながら俺は部屋を出た。








「やれやれ、俺も暇じゃないんだけどな。折角ゲルググ以外の機体だって完成したってのに―――」

また議長にお呼ばれした俺は宮仕えのようにせっせと働かされる。個人的にはゲルググシリーズも初期のシリーズ機が完成してようやく順調に配備が進みだしてこれからって所だったんだが。

「議長、ディオキアに到着しました。ミネルバクルーを何人かお呼びするんで?」

「ああ、人選に関しては君に任せる。何なら君もその場にいてもらって構わんよ」

「……状況次第ではそうさせていただきます」

どっちにしても問題ないような回答をしつつ、VTOLから降りる準備をして久しぶりに見た気がするミネルバへと向かうことにする。(具体的には七話分位)

「ああ、ハイネは如何する?今のうちにミネルバクルーと顔合わせしておくかい?」

通信機を起動させてグフに乗って同行していたハイネに一応聞いておく事にする。まあ、ライブが忙しそうだから無茶だと思うが。

『いや、お誘いは嬉しいが俺もこの状況じゃ動けないからな。任せとくよ』

予想通り断られたのでライブが始まって騒がしくなる前にミネルバクルーを探すことにする。

「お、いた。おーい、シン!」

「クラウ!?」

俺を見つけたシンを含めた複数人のミネルバクルーがこちらに向かう。

「クラウさん、どうしてここに?」

「プラントにいるんじゃなかったけ?」

ルナマリアやショーンも疑問を口にしながらこちらに駆け寄ってくる。

「あー、色々とあって…まあ一言でいえば仕事だ。議長が来ていてな、その護衛っていうか手伝いだよ。後、ミネルバクルーの何人かは呼ばれてるからね。こっち来いって」

それからは色々と雑談もしながら俺はシン達を議長の元に連れていく事になった。







議長、タリア、レイの他に、アスラン、シン、ルナマリア、ついでにマーレと俺も含めてお茶会としゃれ込む一同。
そうした中、核心を突いた話を議長がしだす。

「我々も努力はしているのだがね―――戦いを回避しようとする事は戦うと決める事よりも遥かに難しい……」

「ですが議長、普通に、平和に暮らしている人々は守られるべきです。だから敵の脅威がある時は戦わないといけない。そうしないと何一つ守れない―――と俺は思います」

「殺されたから殺し、殺したから殺されて、それで最後に本当に平和になるんでしょうか?」

シンやアスランは議長の言葉に自分たちなりに考えた言葉を告げる。そして議長は語る、こういった戦争を経済活動としてとらえる組織、ロゴスがいるのだと。

「そう言った意味じゃ―――俺なんかもその加担者の一人ですかね?」

クラウがそう言いつつ、議長の発言に介入した。

「結局、戦争も政治家にとっては政治の、経済界の人間にとっては経済の一端です。人の死を数としてとらえて、その人の死すらも逆に利用する。そういった存在は弱体化は可能でも根絶は不可能だと俺はそう思いますよ」

「クラウ君。つまり君は彼らの存在はなくならず、戦争がなくなることもないと、そう思うのかね?」

「仮になくなったとしても戦争のない世の中なんて実現不可能だとは思ってますよ。戦争とは乱暴に言ってしまえば一種の競争です。ハッキリ言ってしまえば子供が二人で喧嘩するのが国家規模になったものが戦争でしょう。そこまで単純な話じゃなくても人間は他者と自分を比べたがります。そして優れていたいとも同時に思う」

「つまり、君は人が人である限り戦争はなくならないと?」

「人類にコーディネーター以上の革新でもあれば何か変わるのかもしれませんね。もしかしたらの話ですが」

例えばイノベイターやNTのように、或いはSEEDもその可能性はあるのかな―――言葉にならないほどの小さな声でそう呟いた。









「で、俺達は帰還するのか?」

議長との話し合いも終わり、黙って話を聞いていただけのマーレはクラウにそう尋ねる。

「始めはその予定だったんだけどね……」

夜空を見上げながら適当な場所にもたれかかっていたクラウは口籠り、ばつが悪そうに頭をかきながらそう言う。

「予定だった?」

「ああ、俺も含めてミネルバ入りだって話だ。ハイネも配属されるんだから戦力は十分そうな気がするんだけどね―――」

「は、待て?お前も配属されんのか―――開発主任のお前が?」

嘘だろと言わんばかりにマーレは尋ねるが首を横に振りその通りだと答える。

「議長は何考えてるんだ?―――ともかく、お前の機体はあるんだろうな?」

当然とばかりに胸を張るクラウ。彼はミネルバ配属の命が下された時から色々と準備もしていた。

「俺の機体は当然用意してるし、試作段階の物も多いが色々と装備関連も用意してある」

仕方が無いから開発は基地に着くたびにデータで送ったりするのがメインになると言いながら話す。

「下手すりゃ、データを送るって手間がかかってる間にデータごと盗まれる可能性もあるからな」

「ナチュラルにか?ありえんだろ、ナチュラルが数以外で俺達コーディネーターに敵うわけない」

「盗むのがコーディネーターの可能性だってあるだろ。ジャンク屋や信念の違うザフト残党もそれこそテロリストだっている。連合だけじゃないんだよ。心配すべきなのは―――」

クライン派も、サハク家も、一族も、マーシャンも―――不確定要素はいくらでもある。それらを避けるか潰すかは状況次第だが、余計なリスクは背負いたくないものだ。

「全く、先が思いやられるな……」

マーレもクラウも共に溜息をつきながら空の星を仰いでいた。
 
 

 
後書き
クラウは当時からオーブに対してあまり心象は良くなかったようです。シンの父が連合のことを言ってるのに対して、連合ではなくオーブを話題の引き合いに出してる所からおそらくそうだと。
クラウ、ロリコン説登場!?マユに対してはきっとやんちゃな妹という印象に違いありません。そうに決まってます!もしそうじゃなかったらゲシュタポかシベリア辺りにでも送ってしまうべきです。 
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