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MASTER GEAR ~転生すると伝説のエースパイロット!?~

作者:小狗丸
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005

 ファム達の母艦を救うと約束したハジメは、彼女達をブリッジに案内するとフィーユが指定した宙域にリンドブルムを急行させた。

 リンドブルムを全速力で十分ほど飛ばして目的の宙域につくと、ハジメはモニターを呼び出して周囲の様子を映し出す。モニターには一隻の戦艦が映っており、その周りには十数体のマスターギア……いや、ファム達が言うにはアンダーギアがゴーレムと戦っていた。

「あれが貴女達の母艦ですか?」

「はい、そうです。……まだ撃沈してなくて本当によかったです」

 自分達の母艦が今もゴーレムと戦っている姿を見てフィーユはわずかに安堵した表情で言い、その横でファムとソルダの二人が驚いた表情でブリッジを見回していた。

「それにしても凄いですよね、この艦。あの距離を十分くらいで飛んでくるなんて、スピード重視の最新鋭の戦艦でも無理ですよ?」

「ああ……。それに言葉だけで戦艦を操縦するなんて……ここまで強力な『サイコヘルム』は我が軍にも数えるしかいないぞ?」

「サイコヘルム?」

 呆然とソルダの言葉に聞きなれない単語を聞いたハジメが首を傾げる。

「精神感応型操縦士。貴官のように『サイコウェーブ』と呼ばれる思念の波長だけでアンダーギア等を操縦できる特殊能力者のことだ。いや、そんなことよりも……」

「分かっていますよ。今からサイクロプスで出撃します。……貴女達はここで『偽物』のサイクロプスの戦いをよく見ておいてくださいね?」

 ハジメはソルダを据わった目で見て「偽物」の部分を強調して言うと、そのまま振り返ることなくサイクロプスがある第一格納庫に向かう。その背中を見送ってからファムは大きなため息をついた。

「うわっちゃ~。どう見てもアレ、メチャクチャ怒っていますよね」

「うん。私もそう思う」

 ファムの呟きにフィーユも頷いて同意する。

「やっぱりソルダがハジメさんの機体、サイクロプスを偽物呼ばわりしたのが原因ですよね。……というかハジメさんは私達の命の恩人なんですから怒鳴ったら駄目でしょう?」

「そ、そうだな……すまなかった」

 ファムに横目で見られながら言われてソルダが俯いて謝る。確かに彼女の言う通りハジメは自分達の命の恩人なのだ。いくら母国が誇る英雄の機体の名前を語ったとはいえ、それだけで怒鳴り散らすなど軍人として、いや人としてどうかと思う。

「私に謝ってどうするんですか? とにかくソルダはハジメさんが戻ってきたら素直に謝った方がいいですよ?」

「……分かっている」

 ファムとソルダがリンドブルムのブリッジで話している間に、ハジメはサイクロプスに乗って宇宙に出るとファム達の母艦に向かって飛んでいった。そして遠目でようやく母艦が見える距離までくると、サイクロプスを狙撃モードにしてその場で停止させる。

 遥か前方の戦場を拡大画面で映すとハジメは適当に数体のゴーレムをロックオンして、サイクロプスにロックオンしたゴーレムを撃つように命じた。

「まずは小手調べと……」

 バシュン! バシュン! バシュン!

 サイクロプスが持つビームライフル、ヘラクレスから三本の閃光がはしり、三本の閃光は三体のゴーレムを飲み込み一瞬で消滅させた。

「やっぱりノーマルショットでも十分通用するな。……だったら!」

『………!』

 ピピピピピピピピピピッ!

 ハジメが拡大画面を睨み意識を集中させると、主の意思に応えてサイクロプスが拡大画面に映る戦場の全ゴーレムを次々とロックオンしていく。

「今の僕は機嫌が悪いんだ。……悪いけど八つ当たりさせてもらうよ!」

 ハジメの言葉を引き金に、単眼の巨人の銃から無数の光の弾丸が放たれ、宇宙の戦場で一方的な虐殺ともいえる「狩り」が始まった。



「くっ! やはりこの兵力差では厳しいか!」

 時間をほんの少しだげ遡り、ファム達の母艦のブリッジでは艦長のコロネル・ルー大佐がモニターに映し出される戦況を見ながら苦々しげに言葉を漏らしていた。

「……戦闘が開始してすでに二時間か。援軍は間に合いそうにないか……」

 コロネル大佐は懐から祖父の形見である骨董品の懐中時計を取り出して時間を確認する。

 正直な話、部下達はよくやってくれているとコロネル大佐は思う。倍近い兵力のゴーレムを相手に善戦して今のところは大きな被害も出ていないし、学生達と経験が浅い新米の士官達も無事に脱出させることができた。

 だがゴーレムを倒すまでにはいたらず、アンダーギアに乗って戦っている部下達も、激しい戦闘で動きが目に見えて鈍くなってきている。ゴーレムに襲われてすぐに近くの宙域にいる友軍に援軍要請を出したが、このままでは援軍が到着するまでに全滅するという最悪な結果になりかねなかった。

「何か打つ手はないのか? ……っ!?」

 バシュン! バシュン! バシュン!

 コロネル大佐がこの状況を打破するために考えを巡らせていたその時、宇宙に三本の閃光がはしった。

「今の光は一体……?」

「こ、コロネル大佐! 戦場にいるゴーレムが三体が……しょ、消滅しました!」

「何だと!?」

 ブリッジで戦況を監視していたオペレーターの一人が信じられないといった表情で叫び、それを聞いたコロネル大佐は思わず自分の耳を疑った。

「三体のゴーレムが消滅しただと!? どういうことだ!」

「は、はい! ……どうやらゴーレムは遥か遠方から飛来してきた高出力のビーム攻撃の直撃を受け、消滅したもようです」

「高出力のビーム攻撃……さっきの光か? まさか援軍? オペレーター、今のビームの発射地点を探しだせ」

 コロネル大佐に命令されたオペレーター達がビームの発射地点を探しだすと、モニターに緑色の装甲を身に纏い両手で巨大な弩を構えた単眼の巨人の姿が映し出された。

「アンダーギアが一機? 一体どこの部隊の機体だ?」

「分かりません。機体の識別コードはベット・オレイユのものですが、かなり古いコードらしく特定に時間がかかります!」

「正体不明のアンダーギアだと? いや、しかし、あの機体、どこかで見たような……?」

 オペレーターの報告を聞いたコロネル大佐はモニターを見つめて何かを思い出そうとするが、その間にもモニターの中の単眼の巨人は次の行動に移ろうとしていた。

 バシュン! バシュン! バシュン!

 一秒数える間に単眼の巨人の銃から三本の光線が放たれる。銃から放たれた光線は寸分たがわずゴーレムに命中すると一撃で消滅させていき、モニター越しにその様子を見たコロネル大佐を初めとするブリッジクルーはビーム攻撃の威力に絶句する。

「なんて威力だ……!? 何だあの機体は?」

 長距離からの一撃必殺の威力を持つビーム攻撃の連射。一撃放つ度にゴーレムを一体文字通り消滅させる単眼の巨人の戦いは、もはや一方的な虐殺、いや作業としか見えなかった。

「コロネル大佐! 残りのゴーレム、三十を切りました!」

 オペレーターがわずか数秒でたった一機の援軍により二十体のゴーレムが撃破されたことを報告するが、オペレーターの声は助かるかもしれないという安堵よりも困惑と恐れの色の方が強かった。

 生き残っているゴーレムの群れは単眼の巨人の方が脅威と感じとったのか、今まで戦っていたアンダーギア部隊と母艦を無視すると単眼の巨人に向かって飛んでいく。だが単眼の巨人はその場から動くことなく銃から光の弾丸を放ち、ゴーレムをやはり一撃で次々と撃ち落としていき、気がつけばゴーレムの数はすでに十体にまでなっていた。

 バシュン! バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!

 ゴーレムの数は残り五体……四体……三体……二体……一体……、

『これで終わりだ』

 コロネル大佐は単眼の巨人がそう言ったような気がした。そして、

 バシュン!

 巨人の銃から放たれた閃光が最後のゴーレムを消滅させた。

「しゅ、周辺にゴーレムの反応はなし……全て……撃破されました……」

 まるで独り言を呟くような呆然とした口調のオペレーターの報告を聞いてコロネル大佐は手に持っていた懐中時計を見た。懐中時計は先程見た時から一分しか時を刻んでいなかった。

「……一分。たった一分で五十体のゴーレムが全滅だと? ……あり得ない」 
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