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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第二五幕 「初めての共同作業」

 
前書き
実家帰ったら体調が盛大にぶっ壊れました。作者療養中・・・
あとお気に入り登録数が40を超えました。皆さんに感謝を! 

 
前回のあらすじ:病弱少年、心配する

アリーナを奔る4つの影。ひときわ大きい一つの影は腕のみを動かし次々にビームを発射し、アリーナ内を爆炎と閃光で照らしあげる。対する残り3つの影は絶え間なく空中を走り回りながら有機的に動き、少しずつ大きな影に近づきつつあった。
現在3人の司令塔である簪は攻撃を避けながら空中でIS調整用の投影型キーボードをたたき続ける。アンノウンの攻撃を避けながら全く別の作業を続けるなど並大抵のパイロットでは不可能だが、簪は並列思考で両方を完璧にこなしていた。

「誘導ルート確認・・・誤差修正・・・《龍咆》空圧形成プログラム同期・・・フォーメーショ『T.W.S』、ゲットセット!!」

3機のISが一直線に並ぶ。フォーメーションの開始段階だ。鈴とユウは互いに簪から送られてきたデータに素早く目を通す。失敗は許されない。犠牲を出さないためにも、ここは一発で決める。

「もうすぐ範囲内よ、ユウ!カウントセット!」
「同調セット!62秒でケリをつける!」
「3・・・2・・・1・・・第一段階、GO!」

まるで十年来の仲間の様に並び飛んでいた3機は合図と同時に3機が3機、互いの機動を邪魔せず、かつ大胆に行動を開始した。

次の瞬間、3機がちょうど一直線に並んでいた空間を大型ビームが通り過ぎる。そのビームはアリーナのピットに直撃する。だがあそこのハッチには対IS用の熱拡散処理が施されているため貫通することは無かった。ここまでは計画通りだ、と鈴は内心でほっとする。脳裏に作戦会議中の簪の声が蘇る。


―――あのISからは、生体反応が検出されない・・・恐らく、無人機。だから、攻撃パターンが単純。
―――なら、3機が直線状に並べば、3機まとめてあの大型ビームで倒そうとするはず。
―――あのビームは、発射後にわずかな硬直がある。あちらが攻撃するタイミングさえわかれば、こっちの物。


言葉通り、アンノウンに隙が出来る。そして、その隙を突こうと猛然と突撃する親友のIS。

「第二段階!GO!」
「了解!」

簪の指示によりここから第2段階に入る。鈴はそのままアンノウンに直進。普通なら狙ってくれと言わんばかりの行動だが、あと1秒もしないうちにアンノウンはこちらを狙う暇が無くなる。
何故なら既にユウがアンノウンの背後に回り込み、“投桃報李”を纏わせた双天牙月を振りかぶっているからだ。

「吹っ飛べぇぇぇぇ!!!」

機体重量+噴射加速分の速度+ISの全開パワーアシストに加えて斥力バリアを牙月に纏わせた一撃。幾ら重量差があれど、これで吹き飛ばないISは無い。質量差をものともしない渾身の一刀は見事アンノウンを捉える。

がっきぃぃぃぃぃぃん!!

気味のいい金属音と共にアンノウンの足が宙に浮き―――

「ナイスバッティング!!」

浮き上がった先に待っていた甲龍の双天牙月が待ち構えていた。瞬時加速で完璧なタイミングに刀をぶつける。甲龍の馬力は現行ISの中でもトップクラスであり、無防備な体勢も相まってその力に押されたアンノウンはバランスを取る暇を与えられずに横に吹き飛ばされる。こうなってしまえば狙いをつけてビームを放つことはできない。

「まだまだぁ!これも持ってけぇ!!」

攻撃は終わらない。既にアンノウンの吹き飛ばされる方向に回り込んでいた風花が、今度は噴射加速の速度をたっぷり乗せたバリアキックを叩き込む。アンノウンはPICの慣性調節が間に合わず、その運動エネルギーに任せて更に機体が元の場所に帰っていく。

「せーのっ!!」
()ぁん!!」

甲龍の下に回り込んでいた打鉄弐式に薙刀“夢現” を展開させた簪と、ユウが手放したことで量子化し、再び舞い戻ってきた双天牙月を連結させた鈴が同時にアンノウンを斬り飛ばす。
今度は重量の差を数で補う攻撃。吹き飛ばされたアンノウンは為されるがまま、キャッチボールの様にユウの下に吹き飛ぶ。

「“義聖”展開!」

後付型炸薬式鋼貫手“義聖”・・・腕甲に展開される、まるで篭手の様な武器だ。腕部装甲内にスライド機構があり、火薬を爆発させることで人間で言う手首から先が発射される。
パイルバンカーとは違い単発式であり、一度使うたびに薬莢を詰め直さなければならなという欠点がある。しかもただ密着して叩き込むだけなら灰色の鱗殻(グレースケール)というパイルバンカーと大した威力の違いがない。
だが、この武器の神髄は“拳を振り抜くタイミングに合わせて使う”ことで爆発的な貫通力を生み出すという点だ。腕を振り抜く動作の中でかかる勢いが最大になる瞬間を見極めて火薬を爆発させる・・・文字通り貫手のような使い方をすることでこれは真価を発揮する。

「ファイア!!」

ズガァァァァァァァンッッ!!!

鉄の抉れるような甲高い音が響き、胸部装甲に出来た大きな傷と共にアンノウンは上に打ち出された。そして、それに合わせる様に全ての準備が整う。全てがここにつなぐための連鎖であり、これが最後だ。

「最終段階!セット!」

既に敵がユウの方に吹き飛んだ時点で簪と鈴はユウの元へ駆けだしていた。そう、これこそが簪の考えた最後の策。
鈴が“龍咆”を発動する。だが、それは単純に衝撃砲を発射するのではない。甲龍の前に立ったユウは荷電粒子砲“鳴動”の発射準備に入り、後ろに立った簪は背部にマウントされていた荷電粒子砲“春雷”を長距離射撃モードに切り替え、発射準備に入る。だがそれも決して単なる一斉攻撃ではない。

「砲身形成開始!データリンク・・・“空間圧縮レンズ”形成完了!!」
「“鳴動”エネルギーチャージ120%!発射トリガーは簪に任せた!」
「“春雷”リミッター一時解放、発射準備完了。軸線よろし・・・」

それはある者にとっての夢、ある者にとっての憧れ。ISという分野で、恐らく初めての試みだろう。これから彼女たちは、後にIS界を震撼させることとなるとある事を、"やらかそう"としていた。

「今!!」

瞬間、風花の“鳴動”と弐式の“春雷”が同時に火を噴く。猛然と発射された計4門分の荷電粒子は・・・そのまま直進することなく正面の空間に吸い込まれる。
吸い込んだのは先ほど甲龍が形成した“空間圧縮レンズ”だ。空間に圧を加えて砲身を形成できるなら、力の加え方を変えれば疑似的な重力レンズも形成できる。そして空間自体を圧縮して造ったレンズは粒子を余すことなく歪曲・収束し、そこに衝撃砲のエネルギーを起爆剤として一気に解き放たれる。

一度息を吐いた簪は勢いよく息を吸い込み、腹の底から叫んだ。



「雷 咆 鳴 撃 ! バスタァァァァァキャノォン!!!」



三位一体、エネルギー収束率200%。砲台を大型化し、衝撃諸共圧縮して打ち出されたそれは、文字通り3機の最高火力となってアンノウンに襲いかかった。


《グオォォォォォォォォォォォォン!!!》


まるで竜の轟きのような凄まじい轟音を放ちながら、3人の力を合わせた“合体攻撃(ロマン砲)”は空中に放り出されたアンノウンを飲み込み、そのまま上空の遮断シールドまで打ち抜いた。

遮断シールド激突と共にアリーナに響き渡る轟音と閃光。
その眩い閃光はまるで勝利と成功を祝福するかのように、3人とそのISを明るく照らした。


「これがッ!!」

「私たちの!!」

「乾坤一擲の、一撃砲!!!」


『・・・・・・どうしよう、ノリについていけない』

ポツリと呟く佐藤さん。それにしてもこいつら、ノリノリである。



がしゃぁぁぁぁぁん!!

金属の擦れる轟音を立てて、巨大な敵ISが地表に叩きつけられる。3人も続きようにゆっくり地上に着陸する。
既に先ほどの攻撃で全身がボロボロであり、とてもではないが動けるようには見えない。つまり―――

「か、勝った・・・のか?」
「・・・多分」
「さっきの攻撃で甲龍のシールドエネルギーはほぼすっからかんになっちゃったし?これで倒れなかったらもはやISじゃないっての」

と鈴が漏らした瞬間―――

『ウッソ・・・ちょっと皆!そいつまだ動いてるよ!!』
「・・・・・・え?」

佐藤さんの通信に振り返った皆が見たもの。
ギギギ・・・とアンノウンの腕が持ち上がった。腕のビーム発射口からは余剰エネルギーが漏れており、発射準備をしていることは明白だった。
倒したと思い完全に気が抜けていた3人は一瞬判断が遅れ、その遅れが危険な事態を致命的にしてしまった。

「嘘・・・もう、動けるわけが・・・」
「これでも倒れないのか・・・!二人とも下がれ!」
「だ、駄目!もうエネルギーが切れて・・・!!」
「なっ・・・!?具現維持限界(リミットダウン)か!?」

致命的で最悪のタイミングだ。皆が油断していた間に、既にアンノウンはエネルギーチャージを終了しようとしていた。
どうする?このままでは鈴が避け切れない。かといって今からではアンノウンに攻撃するのも簪と二人で鈴を持ち上げるのも間に合わない。

「万事休すか・・・!一か八か、投桃報李のバリアで・・・」
『その必要はないぜ!!』
「!? その声は・・・!」

「俺の大切な人に・・・手を出すなぁぁぁぁぁ!!」

それは見覚えのある純白のIS。親友である一夏が駆る“白式”が雪片弐式を振りかぶる姿だった。
雪片のパーツ上部が展開され、内部から眩い非実体刃が現れる。以前の戦いではとうとう当てることが出来なかった白式のワンオフ・アビリティー、“零落白夜”。その力を一言で表せば―――


ぞんッッ!!


「・・・よう、みんな。遅くなってゴメンな?」

――― 一撃必殺。
そこには雪片を肩に担ぎ、逆光が指す中こちらに笑いかける一夏の姿があった。やや遅れて、頭から真っ二つにされたアンノウンが今度こそ崩れ落ちた。
千冬からの伝言より、ぴったり4分後の出来事である。
 
 

 
後書き
やだ、イケメン。
スパロボ的合体攻撃をやってみた。思い付きでやったんだけどなかなか楽しいっす。
TWS=T(トリプラー)W(ウェポン)S(ショット) 元ネタはあるが深い意味はない。 
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