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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第24話 創造者の想いは相容れないようです



Side ナギ


フェイトの野郎と話し終わって俺達が突っ込もうとしたその瞬間、

フェイト達の奥から何かが現れた。


「『ならば我が直接聞こう。こちらに来い、同胞よ。』」


そいつを認識した瞬間、俺達は動けなくなった。

皆に聞かなくても、俺がバカでもこれだけは分かった。


『あいつには勝てねえ』。


愁磨とは偶に喧嘩がバトルになったりしてその度に負けるけど、一回もこんな気は起きなかった。

『戦わずして負ける』って何時だか詠春が言ってたけど、今分かった。

威圧とか魔力とか、そんなんじゃねえ。

存在が、『こいつ』に『俺』が負けてると思っちまった。それだけで、俺の負けだ。


「おいおい勘弁してくれよ……。

お前はもう少し後に出て来るべきだろ……。『造物主(ライフメイカー)』さんよ。」


だけど、愁磨は平然と喋ってやがる。

俺と・・・宿敵(ライバル)と呼べるフェイトが跪いて言う相手と。

そして――――――


「ハハハハハ!何だナギ、ビビって腰が引けてんじゃねえか?

大人しくエルザさんのとこに帰ったらどうだ!?」


愁磨の・・・いや、仲間(きょうてき)が挑発を掛けて来やがった。


「………ハッ!!ナメんなよ………!!」


リーダーらしくしねえと示しってのがつかねえだろうが!!!


「俺様を誰だと思ってやがる!?」


震えが止まる。ビクついてた心も持ち直した・・・・!


「行くぜ、愁磨!アル!ジャック!詠春!お師匠!」


俺が言うと、何時の間にか皆が俺の後ろに立っていた。


「まいったなぁ、オイ。あれには勝てないと思っちまったんだがなぁ。」

「相変わらずの滅茶苦茶でこっちが困るんだが……。」

「フフ・・・貴方達を見ていると、何とかなると思ってしまいます。」

「全く、ナギもそうじゃが、愁磨も見ていて飽きんのう。」

「おお!!ヒーロー戦隊モノっぽいな!!ポジション的に俺ってシルバーとかゴールド的な?」


「君達は本当に騒がしいね・・・。

主の質問に答えたらどうだい、アーカード。」


俺らが騒いでると、フェイトの奴から俺達に――いや、愁磨に声がかけられる。


「何度も言うが、目的も手段も話せねえ胡散くせえ奴等の味方にャならんよ。」

「なら、さっさと死んでくれないかな?」


と、フェイトがお得意の『万象貫く黒杭の円環』で愁磨に攻撃するが、

皆でそれを叩きおt―――


「『勝手な真似をするな、一番目(ウ―ノ)』。」


俺達が落とす前に『造物主』が何かをして、杭を全て落しちまった。

こいつ、マジで何が目的なんだよ?


「『我はまだこやつに用があるのだ。やるのならばそちらのモノ共にするがいい。』」

「ハ、申し訳ございません。

……さて、君達には抹殺許可が下りた。死んでもらうよ、『千の呪文の男』。」


チッ!これじゃあ、愁磨が一人であいつと・・・!!


「なるほど、じゃあ皆。そっちの片づけよろしくぅ~~。」

「な、愁磨!!一人であれと戦うつもりですか?!」


軽い事言った愁磨に、アルがすかさず突っ込む。

いくら俺でも、それは流石に賛成出来かねるぜ!?


「何、至極簡単。お前らが手っ取り早くそいつ等ぶっ飛ばせば、後はRPG同様、

パーティーでラスボスと戦えるって事だ。」

「一人であれの時間稼ぎをしようと言うのですか!?流石に無茶で「アル。」」

「俺を誰だと思ってやがる?」


自信満々に、愁磨は言いやがる。


「んだよ、俺のパクリかよ。」

「いや、俺のはとあるアニキの言葉だ。」


誰だか知らねえが、答えは一つしかねえだろ!


「最強無敵の、『紅き翼(アラルブラ)』の一人だ!!んでもって、愁磨だ!!」

「クク、聞きたいのと大体合ってるからそれで良いや。んじゃ、そっちは頼んだぜ?」

「・・・全く、無茶な人ですね。ナギより扱いに困ります。

絶対に、死なないでくださいね。」

「あったりめ―だ。俺が死んだら、ノワールとアリアとアリカとエヴァが悲しむからな!

んじゃ、テメ―らも死ぬんじゃねぇっ、ぞ!!」


最後に言い残して、『造物主(ライフメイカー)』と一緒に奥に消えちまった。


「いいのかい?彼一人では主には絶対に勝てないよ?」

「ああ、問題ねえよ。」

「随分薄情だね。仲間が心配じゃないのかい?」


フェイト言うこたぁ尤もだが、これだけは言える。


「あいつが負けるはずがねえんだよ!!

ってーか、あいつがノワールさんとアリアちゃん以外に負けるわけがねえ!!」

悔しいが、『紅き翼(アラルブラ)』ん中で愁磨は一番強ぇんだ。

「………だけどな、俺達が心配してるのはそこじゃねえ。」

「これ以外に心配する事があるのかい?」


当然だ、と頷く。


「美味しい所を全部愁磨に持ってかれるのが気に食わねえんだよ!!!」


ん?なんだ、フェイトの野郎。アホな面しやがって。

って、そう言えばこいつがこんな表情しやがったのは初めてだな。


「ク、ククククク・・・・ハハハハハハハハハハハハ!!!

良いね、君は本当に面白いよナギ・スプリングフィールド!!

ああ、何故かとても満ち足りた気分だよ。このにんg……おっと、危ない。

これはまだ言うべきじゃないね。」


・・・・なんだ、フェイトの奴。ぶっ壊れたのか?

まあ、ンなこたぁどうでも良い!!


「そう言う訳だ。とっとと終わらせてもらうぜ!!!」

「ツレないけど、仕方ないね。行くよ!!」


俺とフェイトが飛び出したのを合図に、戦闘が始まった。

待ってろ、愁磨!!美味しいとこは持って行かせねえぜ!!!


Side out




Side 愁磨


「ックション!」

「『風邪かね、同志よ。』」

「いや、この感じは多分鳥頭が噂してやがるな……。

―――さて、話しって何だ?それと同志ってどう言う事だ?」


奥までトコトコ歩いて来た俺達だったが、

いい加減痺れが切れたので、何時までも話し出さない『造物主』を促す。


「『話しというのはさっきも言った通り仲間になって貰いたいと言う事、

それに伴う目的、方法、動機。しかし、それを話すには私と君の共通点から話そうか。」


そう言うと、『造物主』は目深に被ったフードを取る。

そこには―――顔があった。普通にカッコイイ男の顔。


「へー。お前ってそんなか……あれ?」


言う瞬間、『造物主(ライフメイカー)』の顔が美しい女性に変わっていた。


「え、あれ?今男の顔……って、また?!」


今度は、小さな男の子の顔。


「最初に言うが、私はこの世界の人間ではないのだ。」


と、フェイトに似た声が発せられる。


「私の世界は、この世界の魔獣が可愛く見える程の異形が跋扈し、

人々は飢えに苦しみ、異形の常に怯えながら暮らしていた。」

「……で?」

「――感謝する。そこで私は思ったのだ。『別の世界に行きたい、もっと幸せな世界に!』と。

その手段は、意外と身近にあった。

町の外れに古ぼけた神殿、もしくは教会があって、そこの地下にあったのだよ。

『主神ノ救済』という本が。」

「――!!」


その言葉に、俺は衝撃を受けた。『主神』、という事は・・・・。


「まさか、お前……。」

「その通り、私も創造主神殿から力を貰ったのだよ。私が願ったのは、『世界を創る力を』。

しかし、願いが曖昧だったせいかと初めは思ったよ。

貰い受けた能力は『他惑星を媒介とした平行次元に世界を創る力』だった。

随分面倒な能力だと思わないか?」

「面倒だとは思うが……。

俺も一度、自分で世界を創ろうとした。が、ダメだったから分かる。

『世界』を創るなんて、全宇宙・全次元に関わる事だから法外な力が必要らしい。

いっそ、その星を丸ごと他世界に持って行った方が安いくらいだ。」


某螺旋族とか、とあるアンチスパイラルが分かり易いだろう。


「ほう、君も創造系か。と言っても、それ以外になると身体強化のみや物品贈呈になるのだがね。

因みに、君の能力は?」

「誰が教えるかよ。で?」

「尤もだ。さて願ったのは良いが、星を渡る事など私には不可能だった。

しかし、そこには私ともう一人、親友がいたのだ。」


―――そう言った瞬間、一瞬だけ『造物主』の顔が、黒髪のフェイトになった気がした。


「そこで友は願った。『世界を渡り歩く力をくれ』と。

能力はそのまま『あらゆる他世界・他次元を渡る力』。

『定員2人、使用代償:使用者の一分の寿命」と言う実にリーズナブルなモノだった。

そして、私達はこの星を見つけこの世界を創った。――代償は、『私の世界の人間全ての命』。」

「全ての、人間……?」

「ああ。男性女性男児女児老翁老婆動植物全ての命、16億9375万214人と後は数え切れん。

言っておくが、勝手に使ってはいない。了承を得て使った。

話したら、嬉々として受け入れてくれたよ。

こんな世界から居なくなって、どんな形であれ平和に暮らせると聞いてね。

……そう、全て、私の中にある。」

「成る程、だから顔が一定しないのか。」

「まぁ、代償と言えば代償だ。最早、自分の顔すら忘れてしまったよ。だが―――」


一人だけは、覚えている。そう、言った気がする。


「……で、新世界の神になったお前が、どうしてその世界を終わらせようと?

それは横暴が過ぎるんじゃないのか?」

「ふ、く、ククク。分かっているのではないか、君は?

――まあ良い。さて、この世界を存続させて約400年。

この間の存続エネルギーは全て、この中から使って来た。世界の寿命1年分で、約500年分の人の寿命。

そして、魔法世界人はこの中の人々をそのまま生み出す、というサイクルを初めは取っていた。

しかし、そのまま生み出したのでは寿命は簡単に尽きてしまう。

ならば、少人数のみ生み、それをアダムとイヴにすればいい。

その数人から産まれる子にこの人達の一部を植え付け、生を謳歌させる。

徐々に徐々に寿命を減らしながらも、幸せに暮らしていたのだ。私達は。」


そして、今まで無表情だった顔が憎悪に歪み、憤怒により闇の気が立ち上る。


「しかし、そこに来たのだ!!この世界の媒介となった惑星のある、旧世界側から!

どうやってか、人間がこちらの世界に渡って来たのだ!!」


そして、徐々に魔法世界人と人間が交わり合い、

亜人と呼ばれる新人種が生まれ、同時に種族間の軋轢も生まれ、争いが生まれ、

武器が生まれ、――――戦争が生まれた。


「故に、私は許さない!!ただただ平和に暮らしていた私達の間に割り込み、

不幸を撒き散らした旧世界人を許さない!!」

「だから、この世界をゼロにして一からやり直す、と……?」

「――その通り。そして『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』とは組織名であり、

計画名であり、新たな世界の名なのだ。

勘違いの無い様に言っておくと、旧世界人共も殺さない。

この中に取り込み、『完全なる世界』と新たに創った暁には、住人として暮らさせてやる。

もっとも、多少は恨みを受けて貰う事にはなるがな。」

「――成る程、言ってくれれば実に分かり易い。

お前は、旧世界人に壊されたお前の……前の世界の人達の日常を取り戻すために

行動している……そう言う事で良いんだな?」

「そう!そうとも!!分かってくれたならばs「まあ待て。」」


俺は『造物主(ライフメイカー)』の言葉を遮り、一つ質問する。


「3つ、重要な事を聞いていない。……一つ目、どうして、この世界を消す必要がある?」

「決まっている!もうこの世界は旧世界人に染められてしまった!!

ならば、一度リセットするしかないだろう!!」

「…二つ目、どうして俺に協力を仰ぐんだ?これまでの説明だと俺が必要に思えないが。」

「端的に言うならば、より良い世界にするためだ。

具体案の一つとしては、他種族が入って来られない様にして欲しいのだ。」

「三つ目、この魔法世界人は全て消すのか。

加えて、消したその人は次に生まれて来る時にはどうなっている?」

「最初だが、無論全て消す。世界と、不幸を憂うる同世界の住人だ。

次だが、これは完全に別人として生まれて来る。

人種、記憶、魂の在り方……全て違う人間として生まれて来る。」


「そうか……。ならば、俺はお前に協力しない!」


「な、何だと?!何故だ!!」


まぁ、こいつからしたら断る理由は無いんだろうけど。


「簡単なこった。お前が消しちまう中に、俺の嫁と仲間が居るからだ。

それとも、あいつ等は除外してくれんのか?」

「我々は一心同体なのだ!その様な事はできん。」

「……なら、仕方ねえな。≪招来:『私の救世主(メシア)さま』≫》」


俺は短縮しておいた『メシアの鎧』『アトロポスの剣』『救世ノススメ』を一気に呼び出す。


「残念だ……。君とは、『同志になれると思ったのだが……。』」


俺が武装するのを見て、『造物主』もフードを被り、宙に浮く。

そして奴の背後には、凄まじい大きさの魔法陣が次々と浮かんで行く。


「『ならばここで果てろ、異世界の創造者よ。』」


その言葉と同時に、魔法陣から複数の砲撃が放たれる。


「薙ぎ払え、『アトロポスの剣』!!」


しかし、いつも通りに魔力砲の因果を消しとば―――


ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

「な!?――クッ!!」


間一髪、魔力砲を避ける事に成功する。だが――何が起きた!?
  

「『動揺するのも無理は無い。君のそれは因果、存在を断ち切るそうだが―――』」


奴は、俺を見下ろしながら言い放つ。


「『この世界の因果を……全てを司るのが誰か忘れたのか?』」


――この世界の全ては奴が存在させるかさせないか決めているから、

他人(こいつ以外)が勝手に因果ぶった切ろうが、直死で切ろうが意味が無いって事。


「……要するに、フツーに戦えって事ですね。」

「『その通り……。』」


となると・・・この世界の魔法以外を試すしかないな。


「じゃあ、最初っからクライマックスだぜ!!!

星光の砲撃放つ殲滅杖(シュターイン・ヴァニシュトン・ルシフェリオン)』!!!」


新たに『王の財宝』から呼び出したのは、RH(レイジングハート)と瓜二つの杖。


「集え、明星(あかぼし)!全てを焼き消す(ほむら)となれ!!」


空間が歪む程の魔力が集まり出し、放たれる。


「ルシフェリオン・ブレイカーーーぁぁああああああああああああ!!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


耳を劈く音を立てながら『造物主』に向かっていく魔砲。

攻撃力だけなら核をも凌ぐ程の威力。流石にこれを無傷で―――


バシュウウ!!

「ですよね~。フラグですよね~………。」


奴に届く前に、障壁で掻き消されてしまう。っていやいやいや!?どんな障壁だよ!!


「『この程度か?』」


ウォン! ブゥン! ゥオン! ウォン! ギュィィン! グォォン!

奴の前に攻撃用と見て分かる禍々しい魔法陣が広がり、技名と共に放たれる(・・・・・)


「『六天傀儡(プロテ・ネクスィ・クライスィス)』」

―――――ィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイインンン!!!!


見た目とは裏腹に静かに放たれたそれは、先程のただの魔力砲とはケタが違う。

魔力砲とて、避けなければ確実に墜ちていた。

ならば、それとケタの違う攻撃なぞ喰らったら―――――


「『フィジカル・フルバースト』!!」


いつか使った、時間&思考百倍化の能力で時間を稼ぐ――が、やはり動きが速い。

攻撃自体が速いのでは無く、恐らく世界への干渉が軽減されている。


今攻撃しても、障壁で掻き消されるだろう。

かと言って貫ける程の攻撃を用意するには、時間が足りない。

だから俺は、≪Alucard≫の最終封印を解く。


「『 拘 束 制 御 術 式  零 号  開 放 』!!」


その言葉と同時に、周囲が赤く、黒く染まり、無数の目が現れる。


「帰還は果たさずとも良い。幾百幾十となって帰還を果たせ。

所詮貴様らは残り滓。故に一時その為に、自らを犠牲として完全に俺を守れ。さぁ逝け、塵芥。」


行進の言葉により、俺に殺されたあらゆる者達が出て行く。

それに若干遅れて、時間が元に戻る。


「『・・・・何をしたかは知らぬが、無駄な事を。

どれ程雑兵が集まろうとも、我には勝てぬ。』」


魔力砲が次々と放たれ、魔族・人間・天使が葬られて行く。

経過時間23秒。残存戦力は約2046万/2068万。時間は余裕、しかし零号開放により残機は1。

ミス一つで死ねる状況。――これまでで最も過酷。だからこそ、燃えて来る。


「さあ、挙げて行こうか!!『全魔力解放、≪宝玉≫に集中』」


地獄の魔王が司る筈の大罪、それを顕した≪宝玉≫を開放する。


「≪我の中に眠る罪よ。今こそ裁かれろ。発動、『七つの大罪(スィーヴンディートゥリーズィンツ)』≫

ッ――ガハァッ!!?」


発動と同時に、フルバーストですら生温い痛みが俺を襲う。


「ぐぅぅ、グ、ク……、ち、チマチマやったんじゃ埒が明かねえな………。

傲慢(ヴィーヴォリヒシュカイト)嫉妬(アイファズーク)憤怒(ラーズハイル)怠惰(フォールハイト)、|強欲《アピリ

スティア》、異端(ハーガズィ)耽溺(ナーシュィーシュト)

解、放ぉぉぉお、ぉ!?ぐああああああああああああああああああああああ!!!」


内外共に傷は無く、痛みだけで体が軋む。眼の前が明滅し、平衡感覚も無くなって行き――

――そして突然、それが終わる。


「く、クハハハハハハハハハ!!力が、力が溢れて来るぞ!!!」


敵っぽいセリフになってしまうほど、俺の気分は高揚していた。

現在も痛みは続いているが、それが全く気にならない程の力の奔流。

俺がただ立っているだけで、某戦闘民族が気を高めている時のように地面が砕け、

重力を無視して石が上に昇って行く。


「行くぞ、『造物主』。

『形態融合:『七つの大罪(スィーヴンディートゥリーズィンツ)』/『救世主(メシア)さま』」


初めて使う、しかも自分で創っていない装備。

融合≠付加の為、『形態融合』なんて存在しない筈の能力。


「―――否 ≪禁忌ヲ犯シタ救世主(アーヴォ・ガジ・エッティアス・メシア)≫」


唱えると、俺の体と『メシアの鎧』が融合して行き、同時に形が変化して行く。

骨ばった翼が生え、体は全て刺々しい鱗の様なもので包まれる。

ドラゴンの様な角、爪、尻尾も生え、その姿はまさに悪魔。しかし、その色は全て白。

黒の悪魔とも、白の天使としても異端。ましてや、人間では無い。


「【零号解除。さて、『造物主』。自己紹介がまだだったな。】」


零号術式を解除し、≪Alucard≫として再び自分に付加する。

経過時間2分と49秒。残存兵力1546万/2068万。

三分と掛からず500万の敵を葬るとは・・・。流石はラスボス。

中には英雄級すら居たんだが・・・まぁ、どうでも良いか。

だって、今からそのラスボスの相手をするのは――――


「【愁磨・プテリュクス・ゼクスパール・織原。―――『魔人』と呼んでくれ。】」


その英雄を片端から葬って来た、『魔人』なのだから。


Side out
 
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