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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第15話 魔人は友と別れるようです



Side 愁磨@魔法世界



1515年  王都・大魔導士の部屋


「なぁ、本当にもう行くのか?」

「そうよ。もう少しゆっくりして行っても良いじゃない。」

「そうですよ。行ってもブラブラするだけでしょうし。」

「いや、八年も居たしな。それに、そろそろ面白くなる時代だ。」

「シュウマって意味深な発言が多すぎるんだよな~。どう言う事だよ?」

「ククク、教えたら面白くないだろ?」

「…ノワール。この性悪のどこが良いんだ?」

「ど、何処と言われても………全部?」


「あーーあーーあーーあーーあああああああ!!!」

「ごちそうさまですーー!!もう良いから行きなさいよ!」

「ハイハイ///…ま、お前等が死ぬ時くらいにゃ来てやるさ。」

「あんたに会いたい訳じゃないわよ。

ああ、アリアちゃん。またねぇぇぇぇ。」

「うん・・・また来るから、げんきでね。」

「片親がこんななのに、何故こんなにも良い子なんだ。」

「ノワールさんの教育の賜物でしょうね。」

「言ってろ。アリア、もう行くぞ。悪魔っ子の魔の手から戻って来なさい。」

「・・・はい、パパ!またね、ジルおねえちゃん。」

「またね、アリアちゃん。あんたらも元気でね。」

「随分扱いがぞんざいね!!」

「まぁまぁ。良いじゃんか。そんじゃ行くか!仲良くやれよ!!

『転移、日本』!!」

―――シュン!!




1534年 日本 甲斐


「なぁ、愁磨殿。」

「ん?どうした、信玄。」

「私は、この武田を本当に率いて行けるのだろうか?

私などより、幸隆殿の方が―――」

「大丈夫だ。お前なら出来るよ。俺が保証する。」

「お前が言うなら、そうなのだな……。しかし私には、家の地位と、この武力しかない。」

「ならば、お前の胸と旗に何か刻むと良い。信念のある人間は、それだけで強くなれるモノだ。

ん~、そうだな。『風林火山』でどうだ?」

「『風林火山』?どう言う意味だ?」


「『疾き事風の如く、徐かなる事林の如く、

侵し掠める事火の如く、動か不る事山の如し。』

つまり、男なら悩んで無いで全力で攻めて潰せ。こうと決めたら静かに、揺らがず其処に居ろ。

って事だ。」

「おぉお!なんだかカッコイイな!!」

「ま、人の受け売りだけどな。」

「なんと?!一体誰の事だ?!」

「(お前だよ。)」



1538年 再び王都オスティア


「シュウマ!!久しぶりだな!!」

「どちら様だ、おっさん。」

「分かって言ってんだろ?!」

「ハハハ!老けたな―、ジオン!!!」

「もう54だぜ?そりゃ老けるさ。」

「ああ、人間ってお前ぐらいだもんなぁ。」

「いや、竜人だけどな。」

「つっても130まで生きりゃ、人間の90ぐらいじゃねえかよ。」

「ああ、そうだな……。」

「……ジオン。本当に良いのか?」

「いいって。俺はこの体に誇りを持ってるからな。」

「そうか。……んじゃ、これ渡しとくわ。」

「ん?なんだ、こりゃ?」

「てめーの死に際に間に合う為の物だよ。」

「けっ!んじゃありがたく貰っといてやるよ。」

「エイルとキアルちゃん、大事にしろよ。」

「お前こそ早くガキの顔見せろってんだ。」

「やっぱし当たり難くてな。こればっかりは。」

「んだよ。なら、もっと回数増やせば?」

「……これ以上やったら俺が枯れる。」

「どんだけ難儀してんだよ………。」



1549年 日本 尾張


「よー!信っち!!嫁さん貰ってんだってな~。」

「貴様、何者だ?!白い髪…物怪の類か!!?」

「なー信っち~。これ殺していい?」

「よ、止せ勝家!愁磨殿も冗談が過ぎます!!」

「しゅう、ま…?!まさか、かの『白姫様』ですか!?」

「…その通りだ、勝家。そして……
ガっ
俺は女扱いされんのが嫌いなんだ。覚えとけオッサン。」

「ハ、ハハッ!!誠に申し訳ありませんでした!!!」

「シュウ。あまり苛めないであげなさいよ……。」




1555年 川中島 犀川の戦い


「ハハハハハ!!!どうした信玄!!

お前の国が誇る騎馬隊12000はそんなものか!?」

「抜かせ!!お主が人外過ぎるのじゃ!!」


「ぅおおおおやかたすぁまああああああああああああ!!」

「おお、幸村!!愁磨殿に負けるでないわぁぁぁぁ!!!

行くぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

「侵略する事火の如くぅ!!うおおおおおおおおおおおおお!!

み・な・ぎ・るぅぅぁぁぁああああああああああああ!!!」

「ハハハハハ!!暑苦しいな!!だがそれが良い!!!!」


「「「「「総大将が突撃しないでくださあああああい!!!」」」」」


                              
                             
1560年 桶狭間                       


「愁磨殿!!敵主力の足止めを願う!!」

「足止めをするのは良いが。――別に、あれを倒してしまっても、構わんのだろう?」

「そんな事本気で言うのは貴方くらいですよ!!」

「おら。さっさとマロの首取って来い!!」

「ハイ!!」




1561年 川中島 八幡原の戦い



「信玄!!」

「おお!愁磨殿!如何なされた?!」

「ユッキー!!信玄は何処だ?!」

「分からんでござる!この乱戦故!!」

「チィィィィ!猪武者が!!」

「愁磨様!!信玄様はあちらにて謙信公と!!」

「なに?ありがとう!!」


「フハハハハハハハ!!!やはりお前との戦いは心が躍るわ!!」

「ええ、私もですよ!信玄公!!!」


「しぃぃぃぃぃんげええええええええん!!!!」


「ぬぅお?!不味い!!」

「なに謙信たんと乳繰り合ってんだ!!ぶっ殺すぞ!?」

「ち、乳繰り合ってなどいません!!///」

「うるせえ!!いい加減結婚しちまえチクショウが!!」

「「しませんよ(しないぞ)!?」」



1565年 オスティアの遊園地


「ヒャッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

ギュウン!!

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」

ゥン!!

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア♪」

ガタコンガタコンガタコン!!

「あ、ちょっと、待って、いやああああああああああああああ!!!」



「なっさけねーなジオン。キアルちゃんとアリアは笑ってるってのに。」

「俺はもう72だっつーの!!殺す気か?!!それにキアル笑ってなかったよな?!」

「サーセンwwwww」

「笑ってんじゃねえええええええええ!!」

「・・ジオンおじさん、ごめんなさい・・・・・。」

「ああ、いや。アリアちゃんは悪くないぞ?」

「その通りよ、全部シュウが悪いのよ。」

「そうよアリアちゃん。ジルなんてお化け屋敷で泣いてたんだから。

パパはすごいのよ?」

「いちいち言わなくていいのよ!!!///」

「ヘイワダナー。」

「「「「どこが?!」」」」


「アリアちゃんのパパが居ると騒がしいね……///」

「・・・ごめんなさい・・・・///」



1567年 東大寺


「おおー。ホントに燃えてるぜ~。」

「フフフ、げに、風流であるな。」

「自分で燃やしといてよく言うよ。」

「……なぁ、愁磨殿。」

「ん?なんだ、久ちゃん」

「……人間の夢とは、儚きモノであるよな。」

「んなの当然だ。『人の夢』と書いて『儚い』んだからよ。」

「そうですな…。ところで一つ疑問なのだが。

どうして君は天下を取らないのかね?君なら簡単に取れるだろう?」

「簡単だからこそ、なのだよ松永クン。」

「ふぅむ、力あるモノ故の苦悩、と言う事か。かくは言うまいて。」




1569年 北条領の一角


「ぬぅぅぅ!抜かったわ……!!」

「死ね!!武田信玄!!」

「親方さまあああああああああああああああああああ!!」

「失せろ、雑種!!!!!!」(ドザン!!

「しゅ、愁磨殿ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「幸村!何やってやがる!さっさとその忍者くずれぶっ殺せ!!」

「分かり申した!!大車輪!火焔ぐるむぁぁぁ!!!」


「幸村………。」

「どうした信玄!!交代にゃまだ早えんじゃねえか?!」

「…そうじゃな。ここでは、ない!!」




1572年 犀ヶ崖


「ハァ、ハァ、ハァ・・・・。」

「ハハハ!やはり信玄は病で限界だ!

誰ぞ、あの老いぼれの首を持って来い!!」

「・・・・しを・・・・・・・わ・・・。」

「どうした?命乞いならもっと大きなこえdーー」

「ワシを、侮るでないわ!!!小僧おおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ?!??!」


「……あれが死に際の爺さんに見えるかってよ。」

「拙者には若かりし頃の親方様にしか見えませぬ!」




1573年 4月9日(旧暦) 信州の何処か


「愁磨殿……。」

「どうした、信玄。」

「幸村を、頼めぬか……?」

「……あいつは、一人で大丈夫だ。俺とあいつを信じろ。」

「そう、か。…これで、心残りは一つだけじゃ……。」

「んだよ、まだあんのかよ。」

「謙信公との決着が、のぅ。これは、本に口惜しい……。」

「…三日だけなら、俺の業で延命出来るぞ?謙信の所までも、俺が連れてってやる。」

「三日も、か。ふふ、ははは。それでは、頼む……。」



―――その後の戦いと決着が、歴史に残る事はない。




1577年 信貴山城



「ズズズズズズズズズーー。」

「ズズズズズズズズズーー。」

「「フゥ。」」


「して、愁磨殿。如何なされた、こんな時に。」

「いや、最期くらい見といてやろうと思ってな。」

「ふむ。ならば、一つ相談だ。君は、どのような死が私に相応しいと思うかね?」

「そうだな、奇抜で華々しい死が良いんじゃないか?」

「ほぅ。具体的には?」

「そうだな。此処ごと自爆したらいいんじゃないか?」

「ふ、フハハハハ!!それは良い!!今にぴったりだ!」

「ククク。だろ?」


「フム。これは、何か報いねば為らないのだが・・・。

おお、そうだ。この茶釜を差し上げよう。」

「え?いいのか!?」

「壊すくらいなら、君に持っていて貰いたい。」

「……そうか。でも価値なんて分からんぞ?」

「安心するといい。その壺はいい物だ。」


「まぁ信っちが欲しがる位だしな。んじゃ、ありがたく。」

「ああ。それではな、愁磨殿。また、いずれ。」

「安心しろ、お前の事は覚えといてやるよ。」

「フフ、安心してくれ。私は、思い出にはならないよ。」


――――ッドオオオオオオオオオオオオオオオオオンンン



1581年 本能寺


「よ!信っち。随分魔王らしくなって。」

「フゥハハハハハハ!その魔王にそぉんな口を利くのは最早お主だけだぁ。」

「ところで、お前と戦わせたい奴がいるんだがいいか?」

「他ならぬお主の頼みだ。して、だぁれだ?居ない様だが?」

「ああ。『出て来い、アリア。』」


ヒュインッ


「あ。・・・ひさしぶり、まおーのおじちゃん。」

「だぁれかと思えば、貴公の娘ではぁないか。」

「そそ。前から戦いたいって言ってたからさ。」

「フゥゥハァハァハァハァ!!冗談が過ぎるぞ!!」

「余所見してていいのか?」

「なぁにゲブルァァアァァァア!!!??」

「・・・まじめにやってくれないと、おこる。」

「ぬぅぅぅぅ!!加減の効く相手ではなぁいようだぁなぁ!!」

「・・・いく!!」

「こぉむすめがぁ!!調子に乗るなよ!我は、織田信長ぞ!」


―――この後5時間戦って信っちが勝ったんだが、

アリアを泣かせたのでOHANASHIしたのは余談だ。





翌年 同所・本堂 炎上中



「信っち。なんで逃げないんだ?」

「その様な問い、愚問であぁろう。

我は第六天が魔王ぞ。俗物相手に臆して逃げるなぁどぉ!片ぁ腹ぁ痛しぃぃ!!!」

「そうかい。で、誰を待っているんだ?明ちーか?」

「ククク。光秀とぉはぁ、地獄にぃて決着を着けよう。

しかし今は………我をも謀ったお前とぉの決着よ、松永ぁ!!」


「……おやおや、気付かれていたとはね。さてさて、久しいな、愁磨殿、魔王殿。」

「よ、松ちゃん。やっぱ生きてたか。」

「フフフ、気付かれているとは思わなんだよ。何時から気付いていたのかね?」

「松ちゃんの茶室に行った時には分かってたぜ?

目的までは分からんけどな?」


「君は本当に理解できないな。…ふむ、目的か。私も武人の端くれ。

一度くらいは真剣勝負をしたいと思ったのだよ。

ま、その他にも色々あるがね。」

「その割には大した舞台を造ったじゃねえか。」

「演出はしてもし足りないモノだよ。…と、お喋りはこの位にしないと。」

「そぉうだな。そぉろそろ、光秀が来てしまうだろぉうなぁ。」

「んじゃ、立会人は俺がやるよ。」

「フフフ、私達の戦いが永劫語られるとは、光栄だよ。」

「安心しろ。閻魔には話し付けとくから。」

「ふぅははははは!!丁ぉぅ度良い冗談だぁ!!」

「二人とも、辞世の句はあるか?」

「「……これじゃ(だよ)」」(スッ

「準備よすぎるだろう……。

…オッケー。それじゃ、両者構え!!」

「第六天魔王、織田ぁ信長。我は、魔おぉぉうぞ!!」

「求む者、松永久秀。卿からは、混沌を賜ろう。」

「それでは、―――始めえ!!!」


「いざや開かん、冥底の門んん!!!!」

「愉快だよ、こうも心が躍るとは!!!」




――――――――――――――――――――――――

1598年 王都オスティア



Side 愁磨


俺は、十年前から魔法世界に居続けていた。

―――ジオンにやったお守りの、片割れが砕けたからだ。



「―――ああ、もう、か・・・・・。」


ジオンが弱々しく声を出す。

ジオンは現在114歳。人間にしたら80中後半。

娘のキアルも今では60にもなり、孫すらいる。


「なんだよ、もうって…?」

「分かっているくせに、聞くんじゃない・・・・。」

「そうだな。……安心しろ。お前等は全員死んだ後も、

同じ場所で過ごせるようにすっからよ。」


「いや・・・・どうせなら、来世でも逢えるようにしてくれ。」

「……ちょっと難しいが、頼んどくよ。」

「ハハ、神様は、お前の友達かよ・・・?」


「似た様なのと知り合いなだけだよ。

……俺の友達は、お前らだけだ。」

「・・・・・心臓止まるから、そう言う事言うなよ・・・・・。」

「じゃ、訂正。

第六天魔王と嫌味なお茶好きと、熱血馬鹿も友達にしとこう。」

「ハハハ、そうかよ。

・・・・・・ありがとう。」

「フン。………気が向いたら、じゃなく。また会いに行ってやるよ。」

「・・・・・・最期にお前の素直な気持ちが聞けて良かったよ。

じゃあな・・・・・・。ま、・・た・・と、も・・・・・・」

「……お前がなりたくないって言っても、なってやるさ。」

「ハハ。・・・・・・あり、が・・・と・・・・な・・・・。



――――――――人の死で、泣いたのは初めてだった。


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