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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第8話 魔人は賞金首になるようです

Side 愁磨


魔法世界。それは、想像したモノと殆ど変わりなかった。

・・・転送ゲートでいきなり一悶着あって、賞金首になるとは思わなかったが・・・。


街から少々行っただけで、精霊、妖精、ペガサスもドラゴンも見た。何時か戦いたいな。

エヴァには「アホな事を言うな!!殺されるぞ!!?」って言われたけど。

男の子のロマンだよね!ドラゴンって。


「兄さま!あっちにアイスがあるぞ!!」

「ダーメ、さっきクレープ食ったばっかだろ?太るぞ。」

「「ぐぅ?!」」

「に、兄さまは本当にデリカシーがないな?!」

「そうよ!!女の子はお菓子を食べたいのよ!

それをただでさえ我慢しているのに、なんて事言うの?!」

「いや、二人とも『女の子』なn――いや!?なんでもない!なんでもないです!!

ふぅ、仕方ないな。皆で半分ずつだぞ?」

「やったぁーーー!!姉さま!行くぞ!!」

「フフフ、何食べようかしら~♪」

「全く…。精神年齢変わらんなぁ……。」


そう言って俺は苦笑する。

周りの人もエヴァとノワールを優しい(生暖かい)目で見ている。


俺達が居るのは王都オスティア。

人が行きかうメインストリートは、呼び込みの声や、

笑い合う声、どこからか喧嘩してる声やそれを煽る声までするが、『平和な声』だ。

右を見ると凄まじく大きな木に店が点在している。左を見ると下が見えて、まさに絶景。

一見アマゾンの様だが、こちらにも大きな木が在り、飛び立つ鳥の大きさが異常だ。

あ、河から出てきた30mのワニモドキに食われた。イッツァ・ファンタジ―。


―――勿体無いな。こんなに綺麗なのに、後300年もしたら此処は落ちちゃうのか。


此処を落とさない様にする事は俺の実力上簡単だ。

しかしそうすると、アリカ姫は投獄されない、かも、しれない。

そうするとナギが告白出来無くなる、かも知れない。

するとネギは生まれてこないかも知れないし、生まれたとしても歳が変わるかも知れない。


俺は原作の大筋を変える事は出来ないが、細かく下地を重ねていけば多少は可能だろう。

しかし、こいつらにそこまでしてやる義理は無い。だから、やらない。やれない。


俺の大事なものはノワールとエヴァだけだ。

それ以外を守るのは、二人が確実に、何があっても大丈夫で、

俺がいつでも駆け付けられる状況で無いと、知った事ではない。

それを怠って知らない他人が助かっても、二人に一ミクロンでも傷が付いたら意味がない。

大切な人を守れなくて後悔するより、その他大勢が助からなくて後悔した方が俺は良い。


二人と二兆人どちらを選ぶ、と言われれば勿論二人を選ぶし、

二人の内どちらを選ぶ、と言われれば二人を選ぶ。以前ならノワール一択だったが。

人でなしだろうが知った事ではない。俺の守りたいモノは二人で、他人の守りたいモノが他のモノ。

それだけだ。否定はしない。否定するのは許さない。

だが、そんな問答より今は――。


ガシィ!!


「俺の女に何触ろうとしてるんだ、ニイチャン。」


俺はノワールに手をかけようとしたゴミの手を掴んでやる。

リミッターはもう外れているから、俺は身体能力のみで17000m/sの速さで移動出来る。

要するに音速の50倍。

比較するなら、野菜の双壮時の速さが150km/s。

これや『千の雷』は落雷と同じ原理で行使される為、正確にはマッハ440、149.6km/sとなる。

・・・・計算合ってるか自信無いが、そんな感じだ。


「気付くのが遅いわ、シュウ。

私に意識を向けたらもう捕まえるくらいで無いと。」

「そんなこと言ったら、ここら一帯死体だらけになるぞ?」

「そ、それは私が勘弁して欲しいのだが……。」


と俺達が談笑していると、


「てめえ!!何、間に入って……って、

なんだネエチャン。メチャメチャ美人じゃねえか!!」

「うっわ、本当だ!!銀髪なんてめっずらしぃーー!」

「…勿体無い。あと十年幼かったら好みだったモノを。…本当に惜しい。」


そう。虎獣人どもが言う通り、美人。

ロリ、いや、ショタのままだとノワールに似合わないと思った俺は、

『体を成長した未来の姿へ変える薬(永久版)』を創り、20歳まで引き上げた。

少しは男らしくなるかと思ったがそんな事は無かったでござる、だ。


手足は長く艶やかに、髪はサラサラポニーテール、顔は女性らしさのみが上がった。

体はペッッッタン・キュッ・プリンとした。胸が出てたまるか・・・・・・!!

いや待て、これはイリヤ主体の体、と言う事は・・・・・。

残念ですが、手遅れです・・・・・!!!


・・あ、俺男だから関係無いじゃないか。

い、意識をしっかり持て俺!!俺は男、男なんだ!!!!!


コホン。そして、男物の似合わない俺は、黒いYシャツに白ネクタイ、

黒の裾広のスラックスと言う、せめてと中性的な格好。

ちなみにノワールは白いワンピースに黒いストールで、エヴァは茶々ゼロ片手に白ゴスロリ。

皆モノクロなのは俺の好みによる所が大きい。


「ん?どうしたネエチャン。俺の手ずっと掴んで。

ああ、そうか!そこの黒いネエチャンに取られまいってかぁ?」

「ギャハハハハ!そんなわけねえだろ!?

てめえの顔が怖くて固まっちまってんだよ!!」

「…勿体無い。あと十年幼かったら食べごろだったモノを。

…本当に惜しい。惜しいなぁ……。」


喜べ三番目、お前は色々ダメだが、酒を飲めそうだから容赦してやる。


「おいおい、どうしフベレバゴォォ?!バァァ!!ヘデブッ!?」


魔王拳×2(ジャブ)、灼光拳で掴みつつ、金的に三華猛襲脚、獅吼滅龍閃。

飛んで行く前に踵落しで犬神家にする。


「あ?変な声だグギャ?!ブルァ!ブルァ!ゲ!グ!ギョ!ガ!!?」


孤月閃、断空剣、断空剣で上空に打ち上げ、鷹嘴襲落×四で地面にめり込ませる。

俺にネエチャンって言った事を後悔しろ、二匹・・・!!


「ああ、本当に惜しゴフッ!!」


鳩尾に迫撃掌一発で沈めてやる。怨むなよ・・・!!


「アハハハハ!相変わらず面白い連撃ねシュウ。」

「今、獅子の顔出たんだが!?スルーで良いのか、姉さま?!」

「そんなの今更だろう、エヴァ。

修業中に、は、魔法しか使ってなかったな、そういや。」

「そうだよ?!見たことの無い技ばかり使いおって!なんだあれは!?」

「まぁまぁ良いじゃねえかそんな事は。適当に行こうぜ、適当に。

さ、さっさとアイス食おうぜ。

――ああ、すいません、騒がせて。お代と、迷惑料です。」


そう言って金貨を店員の女の人に渡す。金を『創造』で創るのは簡単だ。

金貨には『力』がないから、一瞬で作れるのだ。

嵩張るが、一応数枚、一番価値のある金貨を持っている。

・・・・・だんだん『創造』が日常用になってる気がするなぁ。

食材も創造で出してるし。だが、お菓子は繊細なモノなのでぶっちゃけ無理。

だから、こうして買って食べている。


「さ、行こうぜ。警備隊来てもm「そこまでです!!動かないでください!!」

……仕事熱心すぎるだろう。」


喋っている数分の内に警備隊が来てしまった。


「た、隊長!!こいつ、『白き死神』です!!

恐らく隣のは『黒翼氷帝』と『闇の福音』です!!」

「『白き死神』って、あの『殲滅白雷の白雪姫』の事?!

クッ、最悪ね!!お、大人しくしなさい『白雷姫』!在り得ないくらい綺麗だからって容赦しないわよ!!

…髪の手入れになに使ってるんですか?!」


・・・『殲滅白雷』、これは良い。素晴らしい厨ニだ。

しかし、『白雪姫』ってなんだ?


「隊長?!ずるいです!!

あの、男って噂が在るんですが、そんなに綺麗なら女なんですよね!?」

「――『姫』だと……?そうか、何処に行っても俺は女扱いか……。

しかも、『男』の方が『噂』か……。そうか、俺はそんなに綺麗なのか。

ク、クフフ、フハハハハ、アーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

「不味い!?エヴァ!!早く逃げるわよ!!!」

「ええ?!だ、だが周りの人達は!!?」

「大丈夫!!ギャグ補正かかるから死なないわ!!良いから早く!!!」

「えぇええぇえ?!本当か姉さま!?

クッ、口は災いのもと、自業自得か。怨むな!!」


ノワールとエヴァが避難したか。ならばもういい。憂いは何も無い。

俺は・・・・俺は・・・・・・・!!!


「こ、この魔力は……!!全員、魔法障へ――」



「俺は男だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」




俺が叫ぶと、周囲500mに白い雷がこれでもかと落ちる。

これは野菜小僧の『白き雷』と同じ技だが、威力の次元が違う。


野菜の全力がLv1の『ライトニング』や『サンダ―』だとしたら、

俺のこれはLvMAXのインディグネイションやアルテマ(限界値突破済)と同等の威力。

普通なら一発喰らえば即死。

だが、今はギャグ補正のおかげで、クロ焦げアフロになるだけだ!!!!


「「「「「「「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ」」」」」」」」」

「ハハハハハハハハハハハハハ!!叫べ叫べえええええええええええええええええええええええ!!!!」


―――十分ほどこの雷は振り続いた。







―――今日のニュースです。


昼頃、女性二人、子供一人に言い寄る男三人に警備隊が注意に向かいましたが、

白髪の女性が男を一瞬で倒す、と言う喧嘩がありました。


警備隊は女性の方を危険視、連行しようとしましたが、

女性は『白き死神』『殲滅白雷の白雪姫』などの異名を持つ、殺人鬼『アーカード』である事が判明。

さらに同行する『黒翼氷帝』と『闇の福音』を発見。

これを逮捕しようとしましたが『白雷姫』が抵抗、周囲の民間人ごと警備隊を撃破、以前逃走中です。


死者は出ていませんが、怪我人が1000人は出ている模様です。

こちらが現場の状況です。

今なお怪我人の救助が・・・ッブ!!ちょ、ちょっとこれ何よ?!

んんっ!し、失礼しました。げ、現場のサルトさ・・・ブッ!!プツン――


―――ただ今電波の調整中です。申し訳ございませんが、しばらくお待ちください―――





「アハハハハハハハハ!!!見て見てシュウ!!

どこの放送局もキャスターが笑って、ニュースが流れてないわ!!」

「ハハハハハ!!これは見事だな兄さま!!ハハハハハハハハ!あー、腹が痛い!!」

「俺は全然愉快じゃねえっつーの。

こんな髪だから余計なんだよなぁ。はぁ、いっその事髪短くしようk―――」

「「絶対ダメ!!」」

「うおわ!?」


テレビを見て笑っていた二人がグルン!!とこっちを見て叫んだ。

ちなみに普通のテレビじゃなく魔法による通信みたいなもので、

丸い筺体が信号(念波?)をキャッチ、幻術の応用で映像の様に見せている。



「なんでだよ?別に髪型なんて俺の好きで良いだろ?」

「ダメったらダメ!!そんなに綺麗なのに勿体無いじゃない!!」

「そうだぞ兄さま!!似合っているんだから良いじゃないか!!」

「だから嫌なんだよ!?

一瞬女に見られるのは別に構わないんだが、その後が問題なんだよ。

せめてショートボブとかにだな、」


しかし、ノワールとエヴァは全く俺の言う事を聞かない。


「ダメ!!私はシュウの長い髪が好きなんだから!良い匂いするし!!

そんなに切るって言うんだったら、私も髪切るんだからね!?」

「何?!だっ、ダメだダメだ!!そんなの許さないぞ!?」

「ああ、それは妙案だな、姉さま。

兄さまが髪を切ったら私も髪を切ってやろう。」

「エヴァまで?!わ、分かった!!髪切らないから!!な!?早まるなよ!?」


俺はショートもセミロングも大好きだが、ロングこそ至上!!黒髪なら尚良し!!

超ロングなら更に良し!よって二人とも愛してる!!

話が逸れたな。逸れてはいないか。まぁいい。


「あ、ホラ。テレビ映ったぞ。」



―――先ほどは失礼致しました。

この事態に政府は、指名手配犯アーカードの懸賞金を大幅に上乗せする事を発表。

同時に、ノワール、エヴァンジェリン両名の懸賞金も―――



「「「ゑ゛」」」



――『白き死神』『殲滅白雷の白雪姫』『返り血染紅の雪の精』『嗤う不死女王(ノーライフクイーン)』

通称『皆殺しアーカード』

本名不明の懸賞金を100万ドラクマ(以下Dq)から1300万Dqへ。



『黒翼氷帝』『詠う黒獅』『黒燐迅豹』『片翼の堕天使』

通称『微笑みの漆黒菩薩』

本名ノワール・プテリュクス・エ―デル・織原の懸賞金を80万Dqから700万Dqへ。



『童姿の闇の魔王』『闇の福音』『禍音の使途』『不死の魔法使い』

通称『災厄と共に来る真祖』

本名エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルの

懸賞金を、150万Dqから600万Dqへ引き上げました。



政府の発表によりますと、アーカードの危険度は史上最高。

アーカード討伐の為の魔法部隊が二個大隊規模で形成されており、

明後日には討伐に向かうと思われます。

元軍人であるマッカーさんはこれについてどう考えますか?


―――そうですね。

賞金首一人に二個大隊が投入されるケースは例を見ません。

大隊と言っても、まぁ一概に人数は言えませんが、

最低でも2000~4000人は投入されるでしょうな。

中には神官クラスが300人からいるでしょう。

また、この大人数は人海戦術での捜索と共に、アーカードと共に行動している

ノワール、エヴァンジェリンへの警戒もあるのでしょうね―――――――



俺は何時から裏切りの騎士になった。ってゆーか。


「ふーん、4000人だってさ。雑魚がまあワラワラと来るんだねぇ。

一撃で全部潰してやろうか。」

「笑うんじゃないわ!!どうするんだ?!神官クラスが最低でも300は来るんだぞ?!」

「エヴァ?その神官と言うのはどのくらい強いのかしら?」

「知らないのか?!常識なんだがな……。魔法使いの最上『大魔導士』。

その候補となる者たちが『神官』と呼ばれる者だ。

奴らは4属性以上の魔法を使えるエリート中のエリートで、

光だけでなく、聖属性の魔法を使う者も居る。

私達、『闇の生き物』にとってはまさに天敵なのだ。」

「…聖属性とはつまり、神様の力って奴か?そいつ等相手にエヴァは勝てるか?」

「え、ええと、それに近いモノ、と言われている。

使えるのが十人ほどしか居ないせいで解析が進んでいないそうだ。

そして、…多分、私でも上の奴は、一人相手でも勝てるか分からん。

一番厄介なのが聖魔法だな。浄化効果があるらしい。」

「……『顕れろ全知ノ樹』。」


俺が唱えると、小さな樹が『闇』からせり出てくる。と、エヴァが声を上げる。


「や、闇の次元魔法だと!?こんなモノどうやって?!」

「エヴァ、少し黙ってろ。久しぶりだな、アーク。良く枯れなかったな。」

「≪フン、一体何の用だ?またふざけた事だったら―――≫」

「『神官とナギ・スプリングフィールドとエヴァ。それぞれの魔法戦による勝率・相性』を教えろ。」

「≪…どうやら真面目な要件の様だな。少し待て。≫」


この樹アークは俺の創造物の一つだ。

樹ではあるが、一種の機械の為、、生命創造では無い。


そしてこいつには『答えを出す者』の力と、

限定的なアカシックレコードへの接続能力を持たせた。

故に、俺では主観・才能により辿り着けない答えにも、こいつなら届く。


「≪分かったぞ。魔法戦による相性、現在の感情値も計算に入れた勝率だ≫」


流石だ。俺の注文の上を行くか。



「≪神官1人~500人vsナギ ナギの勝利100%

ナギvsエヴァ ナギの勝利23% エヴァの勝利12% 引き分け35% 戦闘不成立30%


エヴァvs初級神官100人 エヴァの勝率97% 神官の相打ち成功率12%

   vs中級神官35人  エヴァの勝率68% 神官の勝率16% 相打ち成功率35%

   vs上級神官1人  エヴァの勝率75% 神官の勝率42%

上級神官については、一人増えるごとにエヴァの勝率が(-25%)×0.89%だ。

総神官数 初級412人 中級237人 上級64人。

これが全て大隊に配備。三部隊に分けられている。≫」

「なっ?!」


とエヴァが絶句する。そうだろう。神官が全員配備されているなど、俺でも考えてなかった。

しかも総勢713人がたった三部隊、一部隊約237人の神官が居るのだ。


「≪二個大隊は常時共に行動。

『大神官三名』による広域捜索魔法による捜索を敢行する。≫」

「だっ、大神官が全員出てくるだと!?兄さま、これは無理だ、逃げよう!!」

「お前らしくもない。いつもの尊大さはどうした?ってゆーか大神官って

……ああ、ああ、分かった分かった。

神官の頂点で、もはや大魔導士レベルの強さだってんだろ?」

「わ、分かったなら早く逃げよう!!今なら旧世界に帰れる!!」

「アーク。『俺達全員がこのまま無事に旧世界に入れる確率と、負傷確率』は?」

「≪すぐ分かる。……。 愁磨の負傷確率0%、ノワールの負傷確率33%、

エヴァの負傷確率100%。よって無傷での脱出確率0%

お前の『闇』に二人を入れての脱出は100%だが、戦闘無しでの脱出時の

旧世界への侵攻確率は95%だ≫」

「なら脱出は却下だな。って言うか、今ので答え出てるじゃないか。」

「シュ、シュウ?!まさか貴方!!」

「だ、ダメだ兄さま!!危険すぎる!!」


「ククク、アーク。『二人が『闇』に入った状態での俺vs大隊共の戦闘結果』は?」

  ・・・・・
「≪害敵殲滅率100% 敵弾被弾確率0.3% 負傷率0.001%

被弾時のダメージはHP100の場合、0.1ポイント程度と推測。

よって愁磨単体での魔力or気強化5%時の戦闘結果、完勝(パーフェクト)≫」


「ハハハハハ!!聞いたか、ノワール、エヴァ。

PERFECTGAMEだってよ。議論の必要がないだろ!?」

「し、しかし兄さま!!やはり危険すぎる!

相手はあの神官と大神官だぞ?!幾ら兄さまでも無理だ!!」

「そ、そうよ!!イレギュラーがあったらどうするの?!」

「ククク、アーク。『イレギュラーがあった場合の戦闘結果』だってよ。」

「≪分かっているくせに良く言う。

今のは英雄が加入したイレギュラーを含めた戦闘結果だ。≫」

「と、言う訳だ。明後日起きたら旧世界にゆるりと帰還。これで決定だ。異論は?」

「あるに決まっているでしょう?!

危険すぎるわ!!もっと別の「ノワール」っ?!」


「俺は、他の案があるなら、話せと言っているんだ。

悪いがこれはお前達の身を守る最善で最高の手段だ。無理矢理でも聞いて貰うぞ。」

「で、でも!私はシュウが心配で……!それで………。」

「ノワール。お前を悲しませないと約束した。

しかしそれはお前達の安全とは天秤にかけられない。

お前らが傷を負おうものなら、俺は仇成す可能性のある万物を破壊し、俺は死ぬ。

俺はエヴァもノワールも簡単に殺せる。そんな俺を、俺は残しておかない。

確率をゼロにする為に、俺の死は必要だからな。」


「「シュウ?!(兄さま?!)」」


「言っただろうが、俺が一番大切なのはお前達だ。

俺自身はその次でしかないんだよ。自分勝手で悪いな。

さて、どうする?別のあてのない方法か、俺を信じてくれるか、だ。」


まぁ、ここまで言ったらどう答えるかなんて経験で分かってるんだよなぁ。

最低?知った事か。何度でも言ってやろう。


「ずるいわ。そこまで言われたら、シュウを信じるって言うしか無いじゃない。」

「ああ、全くだ。しかし忘れるなよ。」

「「シュウ(兄さま)が死んだら私達も死ぬからね(な)」」


俺は、ノワールとエヴァ以外、知った事じゃ無い。だから、死ぬ訳にはいかない。

二人の前に片膝をつき、手を握り、首を垂れる。


「承った、姫様方。この愁磨・プテリュクス・ゼクスパール・織原。

全身全霊を持ってお守り致します。」

「フフフ、私と愁磨は愁磨がマスターなのに、立場が逆ね。」

「ククククク、私は心地よいぞ。兄さまが跪くなど見た事が無いからな。

いつか修業で負かして跪かせてやるぞ!!」


全く、情緒もへったくれもない姫様だな。


「お前らな……。もっと感動的に行けよな!!演技でもいいからさ?!」

「ああ、そうだ。戦前に、勝利の女神からプレゼントしないとな。」

「いや、それって普通戦いの前夜に送るモノじゃ――ム!?」

「なぁ!!??!?」

「……ん、ふ………っちゅ。フフフ、頑張れよ、マイマスター?」

「ハハ、これじゃ負けらんねえな。もっとも、女神じゃなくて魔王様だけどな。」


ちょっと死亡フラグな気もするが、そんなもんへし折ってやる。


「な、なななななな?!///何をやっているんだ!!姉さま!?///」

「何って、キスだけど?」

「そっ、そう言う意味では無い!!///だから、その、だなぁ?!!」

「もう、うるさいわねえ。良いわよ、エヴァだったら、シュウにキスしても。」

「にゃあ?!?!

わ、私は別に兄さまと…兄さまと…キス……な、なんてしたく

無いん、だからな……!本当だぞ?!」

「はーいダウト~。ウソついちゃダメよ?ほら、大人しくしなさ~い。」

そう言うとノワールはエヴァを羽交い締めにする。


「なぁ?!は、ははははは離せ、姉さま!!!////」

「シュウ。今のうちよ。やっちゃってあげて~。」


いや、やっちゃってと言われても。


「いやいや、やめろってノワール、嫌がってんじゃないか。

はぁ。疲れたからもう寝るぞ。お前らも早く寝ろよ。」


と俺は自分の部屋に戻る。


「むぅぅ、(ほら、どうするのエヴァ。私が良いって言ってるのよ。ホントにいいの?)」

「(ね、姉さま……。くぅぅう!!///)兄さまっ!!!」

「なんだよ、まd―――ムグッ?!」

「ん、…ん、ぁふ///………んん、兄さまぁ……////」

「え、エヴァ!?///ちょ、んん、……ん、ふ……ぁ、…ふ、んん。」

「あらあらエヴァったら大胆ねぇぇぇ。若いわぁ。」


三十秒もキスしていただろうか。苦しくなってきた所でエヴァが口を離した。

息も絶え絶えで顔は茹でダコみたいに真っ赤だ。


「ふ、フン!///今はもう無い国だが、

正真正銘、王女からのキスだ!ありがたく思え!!///」


態度も言葉も尊大だが、顔真っ赤で涙ぐんでる上に

背が低いからせいで上目遣いになって言われても可愛いだけなんですけど。

可愛いから抱き締めよう。ノワールも一緒に。


「ふにゃ?!///兄さま、離し………。」

「……お前らは、俺が守ってやるから、安心しろ。必ず、守るから。絶対に。」

「に、兄さま………。」

「フフフ、見た目は女の子だけど、やっぱり男の子ね。だから好きよ。」

「わ、私も、す、す、好き…だぞ、兄さま。///」

「ありがとう。俺も、二人の事大好きだ。」



「…兄さまの女誑し。どっちか決めないのか?」

「うるせえよ。―――ふぁぁぁぁ。もう眠いからこのまま寝るか。」

「ええ、良いわね。勿論シュウが真ん中ね。」

「いや、私が真ん中で川の字だろう。」

「くっ、シチュエーション的には美味しいけど、エヴァが得してるからダメよ!!」

「おい、もう寝るから二人とも来いよ。一人で寝るぞ。」

「「今行きます!!!」」


やれやれ。こんなんで明後日大丈夫かなぁ・・・・・・・。

ま、俺が頑張るだけだ。この二人を守るために。


「おやすみ。ノワール、エヴァ。」

「おやすみなさい。エヴァ、シュウ。」

「おやすみ。兄さま、姉さま。」



―――魔法世界第一次大戦争まで、あと一日。

今は、夢を見ていよう。


Side out

 
 

 
後書き
次回、初大戦。やる事は変わらないですけど。 
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