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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第5話 二人は家族と出会うようです

 
前書き
キング・クリムゾン!

三番目くらいに好きな能力です。 

 
Side 愁磨


俺とノワールが修業を始めてから、約15年が経った。


初め、修業開始一分ではっちゃけ始めたノワール。

外に出れたのが嬉しかったのか、魔法をぶっ放しまくっていたら、

魔法使いの一団と思しき奴らが来ていきなり戦闘になった。

どうやらこの頃から魔女狩り的なモノが在ったらしい。

そこで俺達は、片や真白の美少女(男)、片や真っ黒な美女でかなり目を引いて、

怪しいからひっ捕らえろ、と。

・・・まあ、途中でキレたノワールが殲滅魔法で爆破したんだが、

目撃者を残さなかったおかげで賞金は付かずに済んだ。

哀れ、野盗(魔法使い)。



その後は魔力隠しの結界をノワールが張って、その中で修業していた。

いや、正確には最初の二、三年は手も足も出なくて一方的だったから、修業ではなく虐めだった。

しかし、四年かけて創った俺の固有結界魔法『武装領域』(ブルータルテリトリー)が完成してからは、

様々な能力を創り始め、八年経つと、ノワールと戦えるレベルになった。

十三年程したらノワールにも勝てる様になって来たので、

戦闘は軽めにして、『創造』の特訓に入った。

特訓と言っても、『武装領域』で『アンサートーカーになる薬』を創って使えるようにしていたので、

確認と言った方が正確だろう。


創った武装は『王の財宝』と『闇』の中に入れてある。

『王の財宝』には戦闘用の武装、そして『闇』には生活雑貨と、治癒・補助用の後衛装備と、

切り札用の『禁箱』(パンドラ)が入っている。

『禁箱』には、星破壊とか次元破壊レベルの財宝を入れてあるので、

ノワールにも開けられない様にした。


そして今俺がいるのはエヴァンジェリンが居るであろう欧州はイングランドの安宿。

ぶっちゃけ吸血鬼になる時期とかうろ覚えだし、観光しつつ捜索している。

アンサイクロではマルドゥークとか王族がどうとか書いてたから、偉い人の処に行けば分かるはずだ。

まだ1400年に入ったばかりだから、時間あるはしな、多分。

仮に時すでに遅し、になっても、アンサートーカーで探し出せば良いし。

その場合ちょうk・・・もとい、教育が大変だがろうが、なんとかなるだろう。

・・・・・行き当たりばったりだが大丈夫か?


※大丈夫じゃない、大問題だ。


お前は出てくるな宇宙意志。


「しっかしこの時代は娯楽がねえな……PCでも創るか?」

「いやいやいや、それは流石に不味いんじゃないか?

そもそも、電源が無ければ出来ないだろう。」

「フッフッフ、無ければ創ればいいのだ!!というわけで~♪」

「やめろと言っているだろうが!!

そ、それに、シュウが『創造』し始めると私が暇なのだ!!」


成程、要するにノワールはイチャイチャしたいと。そう言うわけか!!

ならばよし!!・・・まぁ彼女なんて居た事無いから何すりゃいいか分からんが。

とりあえず。


「(抱きっ)そんなに拗ねんなって。綺麗な顔が可愛くなってるぞ~」 

「拗ねてない!///くっ、後ろからとは卑怯な!おい!

くっ、離せ!!///(バッ!)」


と、俺はノワールに無理矢理引っぺがされる。


「あ…、わ、悪い。そんなに嫌がるとは……その、ごめん…。」

「えっ、あ、いや!違う!違うぞ!?

嫌だった訳じゃなくて、その、予想以上に力が入ったと言うか?!」


うん、今なら好かれてると思ってた相手に拒絶されて怒る?ってかキレて立ち去る

ギャルゲの主人公の気持ちが分かるかもしれん。うん、これはマジで胸が痛いぞ?

誤解と分かっているんだが、ちょっと泣きそうだ。

ああ、そうだ、もう寝ちまうか。※不貞寝と言う奴である。


「ああ、…大丈夫、分かってる、うん……、大丈夫。じゃ、おやすみ。」

「ぅえ?!ちょ、シュウ!!話を聞いてってば!!」


ノワールがお姉様モードじゃなくて女の子モードになっているが、・・・ダメだ、なんかダメだ。


気にはなるんだが、起きる気になれんぞ?一体どうした、俺?

いつもならマッハで抱きしめるんだが・・・

いかん、なんだ、この気持ちは?拗ねてんのか?俺は?


Side out



Side ノワール


「ああ、…大丈夫、分かってる、うん……、大丈夫。じゃ、おやすみ。」


え!?寝るって、まだ昼なんだけど!?


「ぅえ?!ちょ、シュウ!!話を聞いてってば!!」


しかしシュウは怒ってしまったのか、壁に顔を向けて布団を被ったまま返事をしてくれない。

・・・ど、どうしよう!?嫌われた?!それはないよね、だよね?!

シュウが私の事嫌いになんて・・・ならない・・・よね・・・・?


嫌だよ、そんなの・・・。私には、もう、シュウしかいないのに・・・

シュウの傍に居られないなんて・・・シュウが居ないなんて、そんなのヤダよ・・・・・・



私はフラフラと愁磨の方に近づき、恐る恐る肩に触れる。

触った瞬間、私の手がビクリと震え、離れる。

が、布団に包まれたままの愁磨の左肩を、縋るように抱きしめる。

と、私の目から涙が出てきた。


「愁磨ぁ……」


Side out




Side 愁磨




俺の上になっている方の肩に誰かの・・・まぁノワールだがな。

両手が置かれ、弱々しく握られる。と、


「愁磨ぁ……」


泣きそうな、いや、もう泣いているノワールの声が聞こえる。


「嫌だよ…私を嫌いにならないで……私を…一人にしないでよぉ……

もう、一人は…独りは嫌だよぅ……シュウ、シュウぅ……返事してよぉ…。」


俺は布団を撥ね退け、ノワールを思いっきり抱きしめる。

するとノワールの体ははビクリと震えた。

・・・さっきと同じ様に柔らかいが、さっきとは違い、すごく冷えていた。


「全く、馬鹿だな……。」

「ぅえ…ごめんなさい、ごめんなさい、シュウぅぅ……私を――」


ホントに馬鹿だよなぁ。あんな事で拗ねて一番大切な人泣かすとか。

ああ、ホントは場所整えてやりたかったんだけどなぁ。衝動では

やりたくなかったんだけどなぁ・・・まぁ、こう言うのもアリ、かなぁ?


「私をきr――ンッ!?」


うるさい口を塞いでやる。いや、俺自身、初めてだからよく分からんが、

とりあえず、悲しい顔をされてるのが嫌だった。まぁ、俺のせいだが。


「んん!…ん、ん……、んっ。……チュ、んちゅ……ン…」

「ノワール…///ン……ちゅ、んん……ん……」

「ン…フ、んっ……ッちゅ……フゥ、シュ、シュウ?///」


唇を離すと、ノワールが真っ赤な顔をしていた。俺もだろうが。

そしてノワールを抱き締めなおす。


「俺がお前を嫌いになんてなるわけ無いだろうが…全く……。」

「ふぇぇえぇ…。」

「ごめんな、ちょっと、よくわからないんだが。拗ねた?だけだから。

……お前をもう独りにしない。一人になんてさせないから。

もう二度と悲しませない。だから、…笑っていていてくれないか?」

「ふっ、うぐっ、ぅええええええええええええええ!!!」

「だから泣かないでくれって、もう……。」


俺はノワールが泣き止むまで抱き締めている事にした。





・・・・数十分後、ノワールが静かになった。

「もう大丈夫か?ノワール。」

「………。」

「の、ノワール?もしかして怒ってる?」

「・・・・すぅ・・・・・・・・・すぅ・・・・。」

「……なんだ、寝ちまったのか。」


ノワールをベッドに寝かせようと運んで、下ろす時に、服を掴まれている事に

気がついた。


「………まぁ、この場合はしょうがないか。」


独りごちると、俺はノワールと一緒のベッドに寝転がると、眠ることにした。


「…おやすみ、ノワール。」


この少女が明日は、笑って居ますようにと願いながら。



Side out




Side ノワール



―――チュンチュンチュン、


「ん……。」


ああ、そうか、もう朝か・・・・だが・・・・

なんだか、暖かいな。それに、とても安らぐ・・・。

抱き枕・・・か?私より10cm程しか小さくないから、そうだろう。

しかし、私は昨晩、何時寝たんだろうか?記憶が無い。


ん?いや、違う、昨晩では無い。たしか、そう。私は昼過ぎに寝たんだ。

シュウに嫌われたかと思って、また優しくされて、

そして、泣き疲れて寝てしまったんだ。


くぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!///はっ、恥ずかしい!!///魔王とあろう者が、

人に縋りついて甘えた声出してキスされて泣き疲れて寝るとか・・・子供か!!

ラブコメなのか!?それともギャルゲとやらか!?


と私が悶えていると、抱き枕がモゾモゾと動く。・・・ん?

いや、抱き枕は動かんよ。それにこれは、私が抱かれて―――



「…ん……。」

「あ………。」



私が抱き枕だと思っていたのはシュウだった。

その寝顔は彫刻の様に整っていて、宝石の様に綺麗だった。

私を抱く腕は少し力を入れただけで折れそうな程細く儚げで、

でも、どこか頼りがいがあった。


生前とは全く違う、少女にしか見えない顔。細い腕と肩、狭い背中。

でも、同じように馬鹿馬鹿しく優しい愚か者。

私が唯一、共に居たいと思った人。私のいとしいひと。


「良かった…………。」


そう、よかった。

シュウの心は、私と同化させてから読めなくなってしまった。

そのせいでたまに不安になることもあった。だが、彼は優しくしてくれた。


彼と居られるのが嬉しい。彼が私の事を好きで居てくれるのが嬉しい。

そう思ったら、また涙が込み上げてきた。


ああ、私は弱くなってしまったな。こんな、ただ一人の事を考えるだけで、

こんなにも嬉しくて楽しくて、切なくて悲しくて。胸がいっぱいになる。

涙なんて投獄されて100年程で枯れてしまったと思っていたが、

二日続けて泣いてしまうとは。

ああ、ダメだ。早く泣き止まないと。じゃないと――――――


「なんでお前は朝一から泣いてんだよ……?」


シュウが起きてしまうと言うのに。


Side out




Side愁磨


―――グスッ・・・ふぇ、っうう、ヒック・・・



近くで女の子の泣く声がして、俺は起きた。

目を開けると、眼の前でノワールが泣いていた。・・・またか。

なんだ?泣き癖でも付いたか?全く・・・。


「なんでお前は朝一から泣いてんだよ……?」


と、俺が声をかけると、ノワールは吃驚したようにこちらを見た。


「あぅ…シュ、シュウ。いや、ヒック、これはだな。」

「ボロボロ泣きながら何言っても無駄でーす。全く、泣くなって言っただろうが。

俺は偉そうに話しながら、自信ありげに微笑んでるお前が一番好きなんだから。

その他も勿論良いんだけどな。」


言いつつ、ノワールを優しく抱きなおす。


「落ち着くまでこうしててやるから。」

「……ありがとう、シュウ。」



・・・十分もしたら、ノワールは落ち着いたようだった。


「もう大丈夫だ。ありがとう、シュウ。」

「ん、そうか。…あ、そうだ。まだしてなかったな。

おはよう、ノワール。」

「…クスッ、ああ。おはよう、シュウ。

こう言う時はおはようのキスでもした方がいいのか?(ニヤリ」

「なっ…!!?///」

「ふふふ、冗談だ。」


こいつは・・・・少し弄ってやろうか。


「フン、また泣き疲れて寝られたらどうしようかと思ったぜ。」

「フグッ、いや、それはだな……。」

「大体、おはようのキスとか。そんな発想、ホントは冗談じゃなくて、

お前がしたいだけじゃないのか?」

「ふあ?!いっ、いいいいや、私は別にそんな事……ない…ぞ?」


ククク、良い反応だ。ちょっと楽しいぞ。


「おやおや?その反応はなんだ?真剣(マジ)でして欲しいのか。」

「くぅぅぅ、ああ、して欲しいよ!悪いか!!バk――ん!…んん……」


言い終わる前に口を塞いだ。

いやいや、ギャルゲみたいな状況に自分がなってる事もビックリだが、

自分から進んでキス出来る様にすらなるとは。

転生してちょっと性格変わった気がするなぁ・・・・・・。


「はふ……満足か?」

「ふぁ…うぅぅ、フッ、フン!満足げなのはシュウの方じゃないか!!///」

「俺は満足だぜ~?こんな美女と朝っぱらからキス出来るんだからな。」

「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」


うん、ノワールのキャラがだんだん崩壊してきたからやめておこうか。


「コホン、さてノワール、少々早いが、エヴァンジェリン探しをしようと思うんだが?」

「むぅぅ、覚えてろよ…!!

…ふう。しかし、まだ時間があると言っていたのはシュウじゃないか。

どうして早く探すんだ?アンサートーカー使えば一発だろう?」


まぁそっちの方が早いし正確だし楽なんだが・・・・・。


「いや、これにばかり頼っていると直感が効かなくなるからな。

いくら能力的、ステータス的に勝っていたとしても、第六感ってのは必要だ。

それに俺の『創造』で感覚系を底上げする物も創ったが、限界が在ったのが気になる。

おそらく感覚の実質は、経験でのみ上がるモノなんだろう。」

「自分で何かする分が無駄にならないのは良い事じゃないか。

頑張っても報われん者など掃いて捨てる程居るのだからな。」

「………そうだな。

ってああ、言わなくても分かってる。憐れんだりなどしないさ。そいつが、そいつの限界に

挑んだ結果だ。そんな事をしたら礼を失するだろう。」


十分上から目線で失礼な上傲慢だと思うがな。


「気にはしてないからどうでもいいが。私はシュウの事しか考えていないからな。」

「Huh!!そっ、そうかい///」

「変な処で照れるな、お前は。で、これからどこに行くんだ?」

「そうだな、やっぱりここは王さm「化け物だぁぁぁぁぁ!!吸血鬼だぁぁぁぁぁぁ!!!」

…………探さなくても良くなったかもしれんな。」

「ふぅ…一体どこがまだまだ余裕なんだ?」

そういや細かい所は原作通りじゃないんだったな、この世界。

自分の曖昧な知識と直感より、能力に頼った方が良い気がしてきたなあ・・・・。


「ま、まあ良いじゃんか。行く手間省けたんだし?ってか、まだエヴァンジェリンだって

決まったわけじゃ「いやぁぁぁぁぁぁ!!離して!離してよぉ!!!」……」


窓の外に見えるのは金髪ゴスロリ?の幼女です、はい。

はぁ・・・鬱だなあ・・・・。


「ハハハハハ……。」

「シュ、シュウ、大丈夫だって。ほ、ホラ!行く手間省けたんだから良いじゃないか!な!?」

「そうっすね……んじゃ、目標其の一。行きますか!!」

「具体的には?」

「素直に渡すなら良し。記憶消すだけ。

渡さないなら、見敵必殺(サーチアンドデストロイ)、ただそれだけだ。」

「何も殺さなくてもいいのでは……?」

「ダーメ。花を手折る奴はその時点で死ぬべきなんだ。そこに慈悲をくれてやるんだから、

感謝して欲しいくらいだよ。」

「お前、前に確かアリアをどうとか言ってた様な……?」

「『撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ!!』」

「黒いな……。それでは、お姫様を助けに行くのか?」

「俺のお姫様はここに「そう言うのは良いから!!///」全く…

んじゃ行くか。お姫様とやらを助けに、さ。――ま、適当にな。」


言いつつ窓から出ると、もう十字架型に木が立てられ、エヴァが縛られていた。

さっき見た感じだとまだ壊れてはいない。ならばさて、壊れる前に助けますか。

・・・・・・俺が正しく壊すために、な。


Side out

 
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