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インフィニット・ア・ライブ

作者:雪風冬人
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第五話「授業 ~class~」

「さて、決闘することに決まったわけだが、織斑とウェストコットには政府から専用機が支給される」

 三人の決闘が決まった直後、またもや千冬が、今思い出したといった感じに話す。
 その衝撃の内容に、クラス中でザワザワと生徒達が騒ぎ出す。

「織斑教諭、お言葉ですが、一夏君の専用機は我々『DEMインダストリー』で用意します。あ、これが日本政府と倉持技研からの許可証です」

 タブレットPCの画面を千冬に見せるエレンの言葉に、クラスのざわめきはさらに大きくなる。
 それもそのはず。DEM インダストリーは、数年前に起業したばかりの会社だが、出所不明のオーバーテクノロジーを有し、あっという間に宇宙産業や最先端医療においてなくてはならない会社となったのだ。
 一説によると、かの篠ノ之束に匹敵する技術力だともされている。
 また、謎も多く誰も本社の場所を知らない、製品を製造する工事の場所も知らないなどがある。

「フッ。勝負はフェアじゃないとね。だけど、オルコットさんは専用機がないみたいだから、打鉄かラファールでやらせてもらうよ」

 あくまでキザな態度を取る千夏に、セシリアは口元に手を当ててクスクス笑う。

「何がおかしいのさ!?」
「これは失礼しましたわ。私も専用機は持ってましてよ。むしろ、ハンデが必要なのは貴方ではありませんこと?」
「ナッ!?国家代表でも代表候補生でもないのに、なぜ専用機を!?」

千夏は馬鹿にされていると感じ、顔を赤くしながらセシリアに問い詰める。

「落ち着け馬鹿者。それと、オルコット。お前も挑発するな」
「あら、ごめんあそばせ。神童と噂される方ですのに、沸点が低いのですわね」

 スパァン、と千夏の頭を叩いた千冬は、続いてセシリアも叩こうとするが、謝礼のつもりか、スカートの端をつまんで頭を下げたタイミングと重なり、出席簿は空振りに終わった。

「避けるな」
「体罰は問題になりますわよ?」
「ここでは、教師が法だ」

 ほとんどの生徒は、ウソダドンドコドーン!!、と心の中で叫び、理不尽に嘆く。

「あー、話がそれたが、オルコットが専用機を持っている理由だが、こいつは代表候補生候補だからだ」
「織斑先生、それでは理由になってません」
「まだ続きがある。オルコットの実力は国家代表に匹敵するらしくてな。だが、代表候補生の選抜試験を故あって出なかった。そこで、オルコットの実力を惜しんだ政府が専用機を渡したというわけだ」

 なるほど、と納得する生徒達。

「それじゃあ、決闘でハンデをもらうのは、やっぱり千夏くんの方じゃない」
「どうかな?当日になれば、どちらが上かはハッキリするさ」
「あら。慢心していてもよろしくてよ?相手が慢心しているならば、慢心を持ってお相手する。これも淑女のたしなみでしてよ」
「勝手に言ってるんだね」

 千夏が席に着くと、セシリアも黙って席に着く。

「それとオルコット。教室に銃を持ち込むな」
「あら?これは護身用ですわ。自分の身を守れるのは、自分だけでしてよ」
「ここは学舎だ。不必要な物を持ち込むな」
「それ以前に、ここはISの訓練所でしょう?ISを狙って、いつ襲われるか分かりませんわよ?」
「そうならないために、私達教師とセキリティを万全に整えている」
「何事も絶対はありませんわ」

 両者が譲らないにらみ合いが続く。実際は、千冬はセシリアの持論を崩せず険しい顔であり、対するセシリアは余裕の笑みを浮かべているため、優劣は明らかだ。

「ねぇねぇ、いっちー」
「ん?本音か。どうした?」

我関せず、といった感じでスマホでTwitterにつぶやいていた一夏の肩を、隣の席の本音が叩いた。

「いっちーとセッシーって知り合いなの?」
「セッシー?」
「セシリアのことだよ~」

 本音の質問に、一夏はあごに手を当てて考える素振りを見せる。

「そう。あれは今日のような穏やかな日差しの日だった」
「手短に」
「イエス、マム!」

 長くなりそうな雰囲気を察した本音の脅しに、一夏は躊躇いもなく方向転換する。

「セシリアのISの開発に、DEMが一枚噛んでいた。
 その時セシリアの琴線に触れて、拳で語り合う。
 ライバル認定される。ついでに、性格が変わったな」
「なるほど~。私らの時みたいな感じか~」
「大体はな」

 本音が納得すると、丁度セシリアと千冬の話し合いも終わり、授業が再開される。
 表情から察するに、セシリアが勝ったようだ。
 その様子を千夏が驚愕の表情で見ていたが、それを一夏は冷めた表情で見ていた。

「では授業を再開する」
「えー、では今まで習ったところで分からない人はいますか?織斑くんとウェストコットくんは、大丈夫ですか?」

 今の時代では、ISに関する知識は女性なら義務教育の一環で受けている。しかし、男性はISに触れる機会など皆無に等しいため、今年のイレギュラーたる二人も当然の如くこのIS学園で初めて教えられる。
 そのため、真耶は教師として彼らが授業に付いてくるのに無理をしていないか不安になり、尋ねたのだった。

「問題ありません」
「こちらもです」

 二人の回答に、ホッとする真耶。

「ウェストコット、お前は参考書はどうした?」
「今朝、生徒会長の襲撃を身をていして庇ってくれました」

 本音と机を合わせて参考書を広げていた一夏を不審に思った千冬が尋ねるが、風穴が開いた参考書に顔をしかめる。

「仕方ない。再発行してやる」
「恐悦至極」

 それからの時間は、特にこれといったこともなく流れて行った。
 
 

 
後書き
嘘予告

「フフフ。ウェストコットくんは、何もしなくていいんだよ?」
「クソゥ!何でだよ、何でお前がそこにいるんだ!?相川ァァァアアアア!?」

 知り合って間もなき、しかしお互いに同志だと、心の友だと感じた少女に裏切られる一夏。その運命や如何に!?
 次回「放課後 ~quest~」
 世界を敵に回し、その瞳は何を見る? 
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