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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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強さと戦い方

<リムルダール>

「………ハツキ………君は弱くないよ。思っている程、弱い存在ではないよ。ただ……」
リュカは瞳を閉じ、深く考えるかの様に沈黙を作り出す。
そして瞳を開け語り出した言葉は、
「『強いから勝つ』のではなく『勝ったから強いと思われる』事なんだ…」

「「「「……………」」」」
誰もが額にシワを寄せ、リュカの言った意味が理解出来ないでいる。
「あ、あの父さん…『勝つ』と言う事は『強い』と言う事でしょ?…仰っている意味がちょっと………」

「違うよ…弱くたって勝つ時もあれば、強くたって負ける時もある!今日のハツキみたいに、格下の相手に負ける事だってあるさ」
「か、格下…ですか…でも…負けちゃいましたよ、私…どうしてですか?」
ハツキにはナールが格下だとは思えず…また格下に負けたと認められず、涙を零しながらリュカへと詰め寄り、今回負けてしまった理由を問いただす。

「うん。バラモスとの戦いを思い出してごらん。……勝つ事が出来たけど、あの時のみんなはバラモスより強いと思えてる?あの時に戻って、もう一回バラモスと一人ずつで戦ったら、勝てると思ってる?」
「いいえ…あの時勝つ事が出来たのは、リュカさんがバラモスの攻撃を一手に引き付けてくれたお陰だと思ってます。例え今の私達の実力でも、1対1では勝てるとは思いません」
メンバー中、短期間ではあるが一人で戦った経験のあるアルルが、自らの実力に多少の驕りのある一同の代わりに、リュカの質問へ答えた。
「うん。素直でよろしい…頭ナデナデしてあげよう」
アルルの答えに満足したリュカは、ティミーの目の前で彼女(アルル)の頭をナデナデし、当のアルルもちょっと嬉しそうに顔を赤らめる。

「だ、だとしても…僕等は仲間なんですから、1対1で戦う事を前提にする必要は無いじゃないですか!」
頭を撫でられ嬉しそうにするアルルに嫉妬したティミーは、目の前を横切るリュカの腕を力一杯払い除け、アルルの頭を抱き締めながら父親に突っかかる。
「だからそれが『強いから勝つ』と言う事では無いって言ってんの!」
彼氏の抱き締められ温もりにトリップしているアルルを除き、皆がリュカの言っている意味を理解出来ないで居ると、
「あぁ…そう言う事ですか!だからあんな戦い方をして見せたのですね!?」
いち早く解ったラングストンが感嘆の呻きを上げながら、本気でリュカを尊敬し始める。

「え!?あの相手を馬鹿にした戦い方に、意味があったんですか?」
「無意味にあんな事をする訳ないだろ………説明してやっから、イチャつくのをヤメロ!」
アルルも彼氏から離れようとしないのだが、ティミーも彼女を抱き締めたまま離さないでいた。
「「………はい」」
渋々離れる勇者カップル…真面目に話そうと思っていたので、ちょっと苛つくリュカ…


「いいかい…僕はあの馬鹿(ナール)を初めから見下し貶してた。それは怒らせ、冷静な判断を下せない様にする為なんだ」
「冷静な判断…」
「うん。冷静に状況…戦況と言うべきかな…戦況を見る事が出来ると、戦い方の選択肢が増えるんだよ。でも頭に血が上ってると視野が狭くなって、戦いの手数も減るんだ」
「でも父さんだったら、あの男相手にそんな事をしなくても勝てるでしょう!?」

「う~ん………どうだろうね?勝てたかもしれないけど、今回は戦い方を見せようと思ってたから…」
「ティミー殿。リュカ殿は如何なる時も必勝を目指すという事を仰ってるんですよ!『リュカ殿ならば…』という事は言わず、続きを聞きましょう!」
武人にとってこれ以上ない勉強のチャンスに、『その必要は無いのでは?』と話の腰を折るティミーに苛つき、珍しく声を荒げて苦言を言うラングストン。
「す、すみません……」

「うん…ラングの言う通り、常に必勝を心掛けなければ危険だよ。僕は幼い頃、ゲマに負けた所為で父を目の前で殺されたんだ…『もっとちゃんと戦っていれば負けなかった』なんて言い訳は出来ない!」
ティミーも分かってはいるのだが、リュカが偉大すぎて思わず言ってしまったのだ。
それが解るリュカは、優しく頭を撫でながら息子を諭す。

「さて…相手の手数を減らした所で次だ…次は減った手数を更に限定する為、あえて不利な状況を作ってみせる。今回は杖を地面に刺し、これが地面から離れたら負け…って感じに」
「何故それが相手の手数を限定する方法なのですか?」
今回ナールに負けてしまったハツキは、一同の中で最も真剣にリュカの話を聞いている。
「それはねハツキ…今回、この杖が僕の弱点になっていたからだよ」
普段は賢いマリーも戦いの事となると不得手な様で、リュカの言っている意味が解らず小首を傾げている。

「つまりねマリー…相手の弱点が分かっていれば、そこを重点的に攻撃するだろ?だから相手の手数が減るんだよ。弱点である杖を攻撃すると分かっていれば、カウンターを取るのは簡単だろ」
「あぁ!!」
感嘆の呻きと共に首をコクコク頷かせる少女。

「でもリュカさん…何処を攻撃する分かっても、攻撃の仕方が分からなければ対応のしようが無いのでは?」
彼氏の温もりにトリップしていたアルルだが、何時の間にか正気を取り戻しておりリュカの戦法に疑問を投げかける。
「ふふ…だからこそ僕はアイツに星降る腕輪を渡したんだ。腕輪を装着すれば分かるが、このアイテムの能力は凄い…一度使ったら、是が非でも手に入れたくなるだろう。となれば相手の弱点を徹底的に突き、完全に勝利を物にしようと考えるだろう…更に言えば、急激に素早さが上がり強くなった様な気になっていれば、その素早さを駆使して僕の死角から素早く突進してくると予想が出来る。そして予想通りに弱点目掛け、死角から突っ込んで来たのが、あの馬鹿(ナール)の結末だ」

リュカは先程の戦いで、相手(ナール)の攻撃方法を限定させ、それが自分の意志であると思い込ませて、戦いを挑ませてから叩きのめしたのだ。
「で、では父さんは…さっきの戦いで実力を出すどころか、何時も以上に実力を落として戦ったのですか?」
「う~ん…そうだね…あの馬鹿の姿が視界より消えてから、自分の死角に足を突き出しただけだからね………アイツが勝手に突っ込んで自滅しただけだよ!(笑)」

注文した食事が順次運ばれてくる中、リュカの楽しそうな笑い声だけが響き渡る。
常に冷静に判断するリュカに、今更ながら感心する一同…
妻のビアンカは当然だが、ルビスまでもがとろける様な瞳でリュカの事を見つめている。
男性陣も弟子のウルフが憧れる様な眼差しで見とれ、ラングストンも普段の小馬鹿にした様な表情ではなく、心酔しきっている表情だ。

そして1人の男が感極まって叫び出す…
「すげー!!!」



 
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