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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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無印編 破壊者、魔法と出会う
  17話:絶望を希望に そして…

 
前書き
 
土、日になんとかしようとしたんですが、なんとかできませんでした。申し訳ございません。
  

 
 



モニターに映る士とプレシアの戦い。プレシアの魔力弾が飛び交い、士はその合間をくぐり抜ける。
士が持つ銃の引き金を引き、放たれた弾丸がプレシアに迫るが、それをプレシアは障壁で防ぐ。

先程からそれが繰り返されている戦闘を、アースラのブリッジにいる面々は、固唾を呑んで見守る。

「士君……」
「………」
(フェイト……)

なのはは心配そうに士の名前をつぶやき、フェイトは顔を俯かせたままやはり動かない。声には出さないが、アルフはフェイトの事を相当気にしていた。

そんな時だった。

『なんであんな人形の為にそんなに感情を露にするか、私にはわからないわね。あんな…アリシアの代わりにもならない人形なんかに!』

「―――っ!?」
「あいつ…!」

魔力弾を放ちながらプレシアは叫ぶ。それを聞いたフェイトは体を大きく振るわす。同じく聞いていたアルフは感情が抑えられないのか、髪が逆立ち牙がいつもより気持ち大きく見える。

『アイツが人形?違うな!アイツには、悲しい時に流す涙がある。うれしい時や楽しい時に見せる笑顔も、そういう感情を持てる心も!
 アイツはれっきとした…一人の人間だ!誰の代わりでもない、「フェイト・テスタロッサ」っていう一人の女の子だ!』

「っ!」

だがプレシアの言葉に臆する事なく士は叫ぶ。その言葉に、遂にフェイトは顔を上げる。

『今までアイツがアンタにとって慰みの存在でしかなかったのなら、アイツの時間はまだ始まってもいない!だから…終わらせる訳にはいかない!アイツが…フェイトがフェイトとして生きる時間を!これから築いていく時間を!』

迫り来る魔力弾を剣で…銃で防ぎ、言葉を紡ぐ。再度銃の引き金を引き、攻撃をする。

「……士……そうだ…そうだよね…」
「え…?」
「私は……私が生きていたいと思ったのは、母さんに認めてもらいたいからだった。それ以外に、生きる意味はないと思ってた……それができなきゃ、生きていけないんだと思ってた……」

でも、と言いながら視線を落とし、手に収まっている待機状態のバルディッシュを見る。埋め込まれている宝石にはヒビが入っていて、衝撃を与えれば、今にも割れてしまいそうだ。

「……ただ捨てればいいって訳じゃない。逃げればいいって訳じゃ…もっとない……」
「っ!」

手にあるバルディッシュを強く握り、なのはから言われた言葉を、今度は自分で口にする。それを聞いたなのはは、はっと息をのむ。

「私の…私達の全ては…まだ始まってもいない……そう、なのかな?」
「…うん!きっと……きっとこれから始まるんだよ!」

顔を上げ、なのはを見つめながら問いかけるフェイト。その目には、その頬には涙があった。なのはもフェイトとちゃんと向き合って、涙を流しながら答える。
そして手に持ったバルディッシュを胸の位置まで持ってくると、フェイトはバルディッシュを起動させる。その姿は先程の待機状態と同じで、斧の刃の部分にも中心部分の宝石にも、持つ為の柄の部分にもヒビが広がっていた。

「バルディッシュ…お前も、ここで終わりたくなんか…ないよね…?」
〈 Yes sir 〉

涙を流しながらのフェイトの言葉に、バルディッシュはヒビの入った宝石部分を煌めかせ、ヘッドの部分を軋ませながら動かす。その機械的な声は、心なしか力強く感じさせた。

そのとき――――

ドゴオオォォォォォォォン!!
『どわああぁぁぁぁ!?』

「「「「っ!?」」」」

アースラブリッジのモニターが爆煙で埋まる。それと同時に響く士の声。それだけでそこにいる人達に緊張を与える。

















「くっ…そぉ…!」

転がりながら爆煙の中をくぐり抜ける士。膝立ちになりながらも、片手に持つ銃はしっかりとプレシアへと向けている。
爆煙の向こうからほんの少し光が差した瞬間、士の元に魔力弾が迫る。士はそれをライドブッカーで弾き、ウィザーソードガンで相殺する。

(このままだと近づけない。かといってむやみに突っ込むとかえって被弾してやられかねない)

それなら、と魔力弾の雨の合間にライドブッカーからカードを抜き取る。

「当たっても効かなくすればいい!」
〈 FORM RIDE・WIZARD WATER 〉
〈スィー、スィー、スィースィー〉

その音声と共に再び現れる魔法陣。先程と違うのは、魔法陣の色が赤ではなく青だという事だ。それが士を通ると、士の姿は赤かった部分が青へと変わり、頭部の形状も丸からひし形へとなる。ウィザード「ウォータースタイル」だ。

「いい加減にしなさい!」
〈 ATACK RIDE・LIQUID 〉
〈リキッド・プリーズ〉
「うおおぉぉぉぉぉ!」

『バカな!突っ込む気か!?』

変身の間に用意された魔力弾が士に迫る。だが士は、今度は防ぐそぶりを見せずにそのまま走り出す。それを見たクロノが叫ぶが、お構いなし。

突っ込んだ士にプレシアの魔力弾が命中する……が、魔力弾が命中した部分の士の体が、水のように弾け魔力弾は士を通過する。その次にやってきた魔力弾も同様に士を通る。

「なっ!?」
『体が水に!?』
『何あの魔法!?』

その光景に士と対峙していたプレシアも、モニター越しに見ていたクロノやエイミィも驚く。その所為か、プレシアは一瞬魔力弾を形成することを忘れてしまう。
その隙に士はプレシアの元へ走り、ライドブッカーを回し突き出す。突き出す直前に気づいたプレシアは障壁を張り、士の攻撃を防ぐ。

「ぐぅ!!」
「くっ……!」

衝突する障壁とライドブッカーから火花が散る。突き立てられたライドブッカーの矛先が、若干障壁にめり込むが、結局そこ止まり。それ以上進む事もなく、プレシアが新たに作り出した魔力弾によって引きはがされる。

「っと……単調な武器の攻撃じゃ、あの障壁は破れないか…なら!」
〈 FORM RIDE・WIZARD ROUND 〉
〈ド、ド、ド、ドッドッドン!ドッドッドッドン!〉

魔力弾を直前で攻撃を止め後ろに飛ぶ事で回避し、離れたところで着地する。そしてまた新たにカードを使用し、今度は黄色い魔法陣を地面に出現させる。出てきた魔法陣が上昇し、基本カラーを黄色に、頭部の宝石は四角形にした、ウィザード「ランドスタイル」に変わる。

「ハァッ!」

「ふっ!」
〈 ATACK RIDE・DRILL 〉
〈ドリル・プリーズ〉
「はああぁぁぁぁ!!」

プレシアも先程とは違う魔法陣を別に展開し、紫電と魔力弾を同時に放つ。俺はその攻撃を跳んで避け、そのままカードを装填。そしてその流れで回し蹴りの体勢になり、発動したカードの効果で体ごと回転させる。
その攻撃を、プレシアはまた障壁で防ぐが、士の攻撃は障壁を破壊する。障壁が破られた衝撃で、プレシアは弾かれる。

「うっ…!」
「はぁ…はぁ…はぁ…」

弾かれたプレシアは床に転がる。着地した士は、さすがに息が切れ始めて呼吸を乱す。その間にもプレシアは杖を支えに立ち上がる。

「こ、このぉ…!」
「くっ!」
〈 ATACK RIDE・DEFEND 〉
〈ディフェンド・プリーズ〉

立ち上がったプレシアが再び魔力弾を形成する。それを見た士はまたカードを装填し、右手を地面にかざす。
そして放たれた魔力弾。だが、士に当たる前に士が展開した三つの魔法陣から土でできた壁が出現して、魔力弾を防ぐ。

「何で、邪魔するのよ!ジュエルシードがあれば…もう少しでアルハザードに行けるのに!もう少しでアリシアとまた会える…戻ってくるのよ!」
「くっ…!」

そう叫ぶプレシアの攻撃が、さらに強力なものへと変わる。いかに怪人相手用の技だとしても、限界というものはある。士が展開した壁も次第にヒビが走り始める。それを見た士は仮面の下で表情をゆがめるが、次に備えカードを取り出す。

〈 FORM RIDE・WIZARD HURRICANE 〉
〈フー、フー!フーフーフッフー!〉

そして壁が割れる瞬間、カードをディケイドライバーへ装填し、発動。上空に緑色の魔法陣を展開し、ジャンプしてみたび魔法陣を通る。
今度は緑を基本としたものとなり、頭部が逆三角形の、ウィザード「ハリケーンスタイル」だ。

魔法陣を通った士は風を操りそのままプレシアへ向かう。向かう間にウィザーソードガンをソードモードへ変え、取り付けられている手形型の親指型のレバーをスライドさせ、さらにカードをディケイドライバーへ装填する。

〈 FINAL ATACK RIDE・wi wi wi WIZARD 〉
〈ハリケーン!スラッシュストライク!〉
「はぁぁぁぁああああああああ!!」

ウィザーソードガンを逆手に持ち替え、風を操り自身を回転させる。プレシアがまた放った魔力弾は、回転する事で全て弾く。そしてウィザーソードガンに緑色の竜巻が纏われ、長い刀身となる。

〈 Slash strake 〉
「はぁぁああああ!!」
「くぅぅぅ!!」

士の攻撃をプレシアは障壁で防ぐが、また障壁が破られ、プレシアは吹き飛ばされる。

「がぁっ!?ガハッ、ゴホッ」

飛ばされたプレシアは部屋の壁に激突。そのままずり落ちるように床に落ち、口を覆い咳き込む。

「グッ…ゥゥ…まだ、よ…まだ……」

だがそれでもプレシアは杖を支えに立ち上がる。その口には赤い筋を浮べている。

「まだ…まだぁ!!」
「っ…!」

振り上げた杖にプレシアは魔力を込め始める。そして足下には魔法陣が展開される。
それを見た士も、ライドブッカーからカードを取り出す。

「ぁぁぁああああああああああああ!!」

〈 ATACK RIDE・THUNDER!〉
〈サンダー・サイコー!〉
「はぁぁぁあああっ!」

振り下ろされた杖の先からさらに魔法陣が展開され、先程までとは比べ物にならない程の紫電が士に向かっていく。
士はそれを緑色の魔法陣を展開し、右手の平を向ける。すると魔法陣から緑色の雷が放たれる。
二つの雷は丁度二人の中央で交錯し、均衡する。雷と雷が衝突する度に、火花が散り爆発する。

「あの子の笑顔を…あの子との時間を…もう一度過ごすの!あの幸せだった日々をもう一度!!」

瞳孔を大きく開き、プレシアは叫ぶ。その光景にアースラにいる面々は息をのむ。

「ふざけるな!なくなった過去が戻ってくることはない!まして、死んだ人間が生き返るなんて…ある訳がない!」

士もプレシアの言葉に答えるように叫ぶ。

「それにアンタの娘…アリシアは、本当に笑ってくれると思うか!?」
「っ…な、何を…」
「フェイトはアリシアの記憶を引き継いでいる。そこから導きだされたアンタの面影は、アリシアのそれと同じ筈だ!」

士の言葉を聞いたプレシアは眉をひそめる。あまりに急の事で、プレシアは言葉を詰まらせる。

「フェイトはアンタの為に戦った。それほど大切な存在だったんだ、アンタは!それと同じアリシアが、今のアンタの姿を見たら…一体どう思う!?」
「っ!?」
「そんなボロボロになった原因が、自分にあると知ったとき、彼女はなんと思う!?」
「……まれ…」

士の言葉にプレシアの体が小さく震えだす。そして口もわずかながら動いている。

「アリシアは…今のアンタを見て笑ってくれると、本気で思っているのか!?」
「黙れぇぇええええええええええ!!」
「!くぅっ!」

最後の士の叫びに、プレシアは魔力を込める事で応える。勢いが大きくなった紫電に対し、士も耐えるよう右腕を左手で支えるように掴む。

「あああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「くっ…!トリス、行くぞ!!」
〈 All right! 〉
「ぅぅうおおおおおおおおおおおお!!」

士もさらに魔力を込め、プレシアの紫電に均衡する。

―――ドゴオオォォォォォォォォォォォン!!

そして遂に両者の攻撃が爆発と爆煙を生み出し消し飛んだ。


















その様子をモニター越しに見ていたなのは達は、慌てふためいていた。

『どうなってる!状況は!?』
『わからない!でも二人の魔力反応はあるし…』

管制室でのクロノとエイミィの会話がブリッジに届く。どうやらまだ二人とも倒れてはいないらしいが、爆煙に呑み込まれたままで、状況がうまく把握できない。

「あのプレシアと対等に戦うなんて…なんて恐ろしい子なの…」
「士君!」
「士!」

ブリッジにいるリンディは驚きの声を漏らす。なのはとユーノは士の名前を届いている筈と信じてモニターに叫ぶ。

「…………」
「士…!」

フェイトはバルディッシュを握る力をさらに強め、アルフはフェイトの肩に手を添えながら士の名前を小さくつぶやく。

そこへ………

《 FORM RIDE・WIZARD FLAME DRAGON!》
《ボー、ボー、ボーボーボー!!》

「「「「「っ!?」」」」」

突如爆煙の一部が吹き飛ばされる。そしてそこにいたのは士。
士の足下には赤い魔法陣が展開されており、それが上り始めると同時に竜の姿をした赤い魔力の塊が士の周りを飛び回る。
そして魔法陣が上りきり、赤い竜が士の中に入り込むと、士の姿がまた変化していた。
ローブの色が裏返しにしたように黒から赤に変わり、頭部には二本の角のような装飾・エクスドラゴロッド、両肩には赤く丸い宝石が埋め込まれた装甲・グランマジェスティが追加され、胸部には竜の頭部を模した装甲・スカルキュラスが施された姿、ウィザード「フレイムドラゴン」となる。

『な、何だ今度は!?』
『すごい…魔力が上がってる!?』

またしてもクロノとエイミィが声を荒げる。ブリッジにいる面々も開いた口が塞がらなかった。















「さぁ、終わりにしよう…プレシア・テスタロッサ」
「くっ…私は…まだ…!」

爆煙が吹き飛んだ事で視界が良好になり、お互いまだ倒れていない事が判明する。
そして士は最後のカードをきる。

〈 ATACK RIDE・SPECIAL 〉
〈スペシャル・サイコー!〉
「はっ!」

士は両手を開き、宙に浮かぶ。その背中には魔法陣があり、周りには火を纏った竜が現れる。
そして竜が魔法陣を通り士の中に入ると、士の胸部に竜の頭部、「ドラゴンスカル」が具現化する。

「なっ!?」
〈 Dragon breathe 〉
「いっけぇぇ!!」

出現したドラゴンスカルが口を開き、火炎放射を放つ。プレシアもそれを障壁を展開し防御する。

―――ビギッ、ビギビギビギッ
「っ!?」

ドゴオオォォォォォォォン!!

だが、次第にその障壁にヒビが入り始め、砕けると同時に爆発する。

「ガハァッ!」

爆発の余波でプレシアは飛ばされ、手放した杖が地面に転がる。プレシアは壁際まで床を転がった。








「うっ…ぅぅ…」
「はぁ…はぁ……」

士は息を少し上げながら床に転がるプレシアの元へ近づいていく。

「ぐっ…とどめでも…指そうっていうの?」
「俺は人を殺められる程、度胸がある訳じゃない」

プレシアの問いに士はプレシアの肩を持ち、壁にプレシアの体を寄りかからせる。

「なんの、真似よ…?」
「まぁじっとしてろ」
〈 ATACK RIDE・PLEASE 〉
〈プリーズ・プリーズ〉

プレシアの手を取りながらカードを装填すると、プレシアに士が持つ魔力が流れ込んでいく。その光景にプレシアは目を大きく開く。

「こ、これは…」
「これで少しは楽になるだろう。あいにく俺は回復魔法を持ってないのでね。自分の体は自分で治してくれ」

と、ウィザードからディケイドに戻り、さらに変身を解く士。それを見たプレシアはまたも目を見開く。

「あなた…子供だったの?」
「あぁ、フェイトから聞いてなかったか?それならそれでいいんだけどよ」

プレシアは士の姿に驚き、士はその反応になんら興味を持つ事なく、プレシアの前で陣取るように座る。

「それで…これからアンタはどうするつもりだ?」
「どうって…?」
「アリシアの事を…フェイトの事を、だ」
「…………」

士の言葉にプレシアは唇を噛み、顔を俯かせる。戦いの途中で士が言った言葉が、少なからず影響しているようだ。

「……確かに、大切な人と…大切な家族と会いたいというアンタの気持ちは、わからない訳じゃない。だけど、その代わりに他人を傷つけ、アンタも心身共にボロボロになった。それを見て、アリシアはうれしいと思うか?」
「っ!!」

プレシアは士のその一言に目を開き、涙を流した。

「私は…私はただ、アリシアと…また昔のように……!」
「………」

顔を両手で覆うプレシア。それを黙って見守る士。
そこへ、士にモニター通信が入る。通信相手は、リンディだった。

『士君、いいかしら?』
「…短めに頼むぞ?」
『先程そっちに、クロノ執務官と、なのはさん達と…フェイトさん達を転送したわ』
「…そうか」
『いらないかもしれないけど…その間、プレシアの事――』
「わかった。元より、俺はもう少しここにいるつもりだったからな」
『お願いね』

リンディからの頼み事を引き受け、改めプレシアに向き合う。

「と、いう訳だ」
「…フェイトも来るのね」
「そうらしいな」

通信を聞いていたプレシアが、士が言うより前に口を開く。それを聞いた士は目を閉じ、再びプレシアに問いかける。

「で、どうするつもりだ?フェイトの事」
「どうする…?」
「一応フェイトはアンタを母親と言っている。戦う前にも言ったが、フェイトの事を…娘としてみてやれないのか?」
「………」

士の言葉に押し黙るプレシア。それを見た士は、深いため息をつき、立ち上がる。

「…まぁ、その答えを今すぐに出せとは言わないさ」
「ちょっ、何を!?」

立ち上がった士は小さいからだながらプレシアを支え、立ち上がらせる。

「だが、少なくとも娘の言葉ぐらいは聞いてやれよ?」
「え?」

士がそう言うのと同時に、士達がいる部屋に数人の足音が響く。プレシアが部屋の入り口を見ると、そこにはクロノ、なのは、人間状態のユーノとアルフ、そしてフェイトの姿があった。

「母さん!」
「…フェイト……」

フェイトの顔は、何かを決心したようなものだった。士は支えているプレシアから離れ、なのは達の元へ向かう。途中、フェイトとすれ違う時、士はフェイトと目を合わせる。フェイトはゆっくり、一歩ずつプレシアの元に歩いていく。

「……何しに来たの…」
「っ……あなたに、言いたい事があって来ました」

そのフェイトの足を止めるプレシアの言葉。だがフェイトはその場でプレシアに語りかける。

「私は、アリシア・テスタロッサではありません。あなたが作り出した、ただの人形なのかもしれません。」


「……でも、それでも私は…フェイト・テスタロッサは、あなたに生み出してもらった、あなたの娘です」


「っ!」

フェイトの言葉に顔を歪ませるプレシア。だがすぐに平静な表情に戻し、口を開く。

「…フッ、フフ…それで、何?今更あなたを娘と思えと?」

それを黙って聞いていたアルフは飛び出しそうになるが、ユーノとなのはがその体を抑える。
フェイトはそれを尻目に続ける。


「あなたが……それを望むなら。……それを望むなら、私は…世界中の誰からも、どんな出来事からも…あなたを守る」
「っ!!」
「私が…あなたの娘だからじゃない。あなたが…私の母さんだから!」
「……ぅ…ぅぅ…」

フェイトの、必死に紡ぎだした言葉を聞いたプレシアの目から、涙が流れる。まるで先程から我慢していたものが、一気に流れるように。

「母さん…」
「…うぅ…フェイト…」

自分の元に到達したフェイトを、プレシアは膝立ちになり抱きしめる。

「本当は…あなたの事を何とも思ってない訳じゃなかったわ…」
「えっ!?」
「何度も何度も、私を「母さん」と呼ぶあなたを…本当に嫌いにはなれなかった!でもその分、あなたをアリシアと比べてしまって…その違いがはっきりしてくると…どうしても私はアリシアにすがってしまう!」
「母さん…」
「本当に…ごめんなさい……フェイト、あなたを…こんなにも傷つけてしまって…」

そう言い、プレシアは抱きしめる力を強くする。フェイトも、プレシアの体をしっかりと抱きしめる。

「…あれが、本当にプレシア・テスタロッサなのか?」
「あぁ。といっても、あれが今までフェイトやアルフが見てこなかった一面だってだけの話だろうけどな」
「フェイトちゃん…よかった…」
「フェイト…!」

その光景を見ていたなのは達は涙を流していた。クロノはプレシアの変わり様に、少々驚きを見せていた。










しばらくし、落ち着いた二人がやってきた。すると改め、クロノがプレシアの前に出る。

「プレシア・テスタロッサ。こんな時で悪いが……管理局法違反及び、次元航行艦襲撃の容疑で、あなたを逮捕させてもらいます」
「…えぇ、わかったわ」

クロノの言葉にプレシアはうなずき、おとなしく逮捕されるという意思を見せる。
それを見ていた士は、少し顔をしかめる。

―――本当にこれでよかったのか?

すると、何かに気づいたフェイトがこちらを見ながら目を大きく開ける。

「つ、士!う、後ろ、危ない!」
「「「「「「っ!?」」」」」」

その声に他の皆が一斉に士の後ろを見る。士も急いで振り返る。
そこには灰色のオーロラと、金色に光る人影が視界に入った。

そしてその人影の手に、剣がある事も。

「っ!しまっ―――」

瞬間、その剣が振り下ろされ――――


 嫌な音と共に、血しぶきが飛んだ



  
 

 
後書き
 
ドリルの時の体勢は、エターナルの必殺キックをイメージしてください。
後主人公の名前を(名字を)変えました。さすがに「神崎」は在り来たりすぎるかと思いまして。

ではまた

(7/2 ちょい修正)
  
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