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IS<インフィニット・ストラトス> ‐Blessed Wings‐ 

作者:やつき
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第一章 『交差』 ‐暴風の竜騎兵と紅の姫君‐
  第7話 『親心子心』

――『親の心子知らず』という言葉がある。
親は子供の事を心配しても、子供はその心に気づく事が出来ない事がある という意味だ。

逆に言えば――子供の心も親は知らない、とも言える。
子供がどれだけ考えても、悩んでも――それを親は気がつくことができない事もある

人間である以上、そんな簡単に分かり合うことなんてできない。
親の心を子が知らないように、子の心もまた親は知らない。そうして――すれ違いが起きる

『デュノア』という家族もまた――すれ違いを続け、互いを分かり合えず、迷い続けていた。
だが――子が変わる事で、親も変わり、その結果として『分かり合える』事もあるのだ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――『ジェームズ・デュノア』、量産機ISのシェアが世界第3位の大企業である『デュノア社』の社長にして、一児の父親でもある。

彼には父親ならではの悩みがあった――誰にも打ち明けられないような悩み、だがなんとかしたいと強く思う悩みがあった



「はぁ…」

デュノア社の社長室、自分の仕事用のデスクで仕事の手を止めると私はため息をつく

「…まさか、あの時シャルロットから話をしてくるとは思っても居なかったものだからな、今でも信じれん」

ため息をつきつつも、私は笑顔だった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


時間は遡り、数日前――シャルロット、うちの娘が実家から無理に脱走したあの日。
私自身は会社の仕事と、今最も問題になっているわが社の経営危機についての問題もあったためその日は家にはいなかった。

私は知っていた、あの日は――彼女の、シャルロットの実の母親である『コレット』の命日である事を。
本当ならば、私も直接墓の前に行きたい、言いたい事も、贖罪したい事も、謝まりたい事も沢山あるのだ。

だが、私は――娘であるシャルロットに対してちゃんと話どころか、親らしい事もできていない、会話すら――冷め切った事務的なものとなってしまっている。
娘であるシャルロットについてちゃんと理解してやれない、そして『二人を捨ててしまった』私に墓参りをする資格なんてないと思った。

あの日、仕事中に自宅でシャルロットをガードしている黒服から連絡があった、『申し訳ありません…お嬢様が脱走しました』と
その時私は慌てたが心のどこかで『ああ、やはりな』と思うと同時に大体の行き先の予測はついていた。
無理をして黒服達を振り切ってまで、シャルロットが行こうとする場所――それは、墓だろうと。

後に黒服に連絡した際に確認すると、丁度娘を墓地で連れ帰ろうとしているところだった。
そこで私は――話をしようと思い、黒服達を帰らせると娘と話をしようとしたが…結果的に喧嘩になってしまい、私自身もどうしていいかわからず

『お前は私の言うとおりに動いていればいいのだ!』

などと――酷い事を言ってしまった。

シャルロットに一方的に電話を切られ、疲れ果てると同時に『私は最低だ』と思いながら仕事に戻ったが――その後、まさかの事態が起こった。
シャルロットが、私の電話に掛けてきたのだ…しかも、仕事用のではない――プライベートに私が使用している携帯電話だ。

電話で『帰りは会社に連絡を入れなさい、迎えを寄越す』と言っていたので――あの状況で電話が切られてしまってからは、きっと会社に連絡を入れるのだと思っていた。
だからその時仕事中だった私は驚いて、そのまま携帯を地面に落としそうになった。

…シャルロットが私のプライベートの電話番号に掛けてくるなんて事は、一度も無かったからだ。
形式上で携帯電話には連絡先を入れていたが――それだけで、仲が険悪な私達の間では今まで一度も使われる事がなかった。
だが、その番号が使われたのだ――しかも、シャルロットからだ。

私はその時、自分の手が震えるのが分かった――それは、期待と不安、多くの感情が入り混じっていたからだろう。
恐る恐る、私は電話に出た――


「――私だ、どうかしたのか?」

いつもと変わらず、事務的に話したつもりだったが…きっと、私の声は震えていたかもしれない。

「――お父さん?僕です…大事な、話があります」

ドクン、と自身の心臓が跳ね上がるのがわかった。 話――何だろうか
もし仮に暴言を吐かれたり、侮蔑されても仕方ないと思った――私は、シャルロットを傷つけ…どんな形であれ『利用』してしまっているのだから。

最低だと思う。
自分の最愛の娘を利用して、ISに乗らせてデータを取らせて――『捨てた』癖に必要だからと利用して…私は、最低の父親だ。
――だが、本当は私はシャルロットには笑っていて欲しい。彼女は母親…『コレット』によく似てくれた、私のように最低な父親に似てくれなくて良かった。
だから、あの子には本当は笑っていて欲しいのだ。
当たり前のように『両親』と子供の関係、私は――今最も欲しいものがそれだった。 

「…なんだ、どうかしたのかシャルロット」

いつもと同じ、威圧的な口調――電話の先でシャルロットが息を呑むのが分かる 違う、違うんだ…私は――
そう自分の発言を後悔していると

「――お父さんと、あの人…『お義母さん』に、大事な話があります だから…いつでも構いません、話す時間を…くれませんか」

恐らく精一杯の言葉だったのだろう、シャルロットはその後黙ってしまった。
私は――状況が分からなかった。
混乱しているわけではない、ただ…嬉しかった、本当に嬉しくて――目の前が霞むと同時に、涙が1滴だけ、零れ落ちた。

「…今、どこに居る?」

私は、娘に泣いていることが分からないように――できるだけいつも通りに答えた。誤魔化せたかどうかは、自信が無かった。

「…お母さんのお墓がある、集合墓地です」

「――集合墓地を抜けたらその近くに、カフェがあるだろう…そこで、待ってなさい」

「えっ?」

私の返答が予想外だったのか、驚くシャルロット。

「丁度仕事が終わったところだ…迎えに行くから、待っていなさい――最近は、物騒だからね」

「あ、あの――」

そのまま私は「それではな」と言うと一方的に電話を切った。
そのまま会話を続けていたらきっと、シャルロットの前で泣いてしまいそうだったから。
私は先程電話を切った自分に対して『本当に不器用な男だな、私は』と思った。
もっと、気の利いたいい方は無かっただろうか?――まったく…

私は急ぎ準備をすると秘書に『出かけてくる』とだけ言って出かけた。
何故か秘書は嬉しそうだった――何故だろうか。
車で出るときにガードマンに『娘を迎えに言ってくる』と言うと『お気をつけて、帰りをお待ちしています!』と笑顔で敬礼された、何故だろうか。

だが、そんな不器用な私でも――わかることはあった。
きっと何かが変わる、いい方向に何かが――そう考えると、私は星空を見上げた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


暫くして、私は集合墓地の近くにあるカフェの駐車場に車を止めた。
そして恐らくシャルロットは中に居るだろうと思い、歩き出そうとすると――店の前に、娘の姿があった。

「…お父さん」

最初に口を開いたのは、シャルロットだった。 複雑に表情に無理に笑顔を浮かべたような表情――そういえば『コレット』もよく似たような表情を浮かべていた。

「…中で待っていればよかったものを、寒かっただろう――シャルロット」

「い、いえ――そんな事はありません」

親子なのに敬語、というのは私自身――やはり嫌だった。
とはいっても、私がそうさせてしまったのだ…責任は私にある

「車に乗りなさい、家まで帰ることにしよう」

シャルロットを助手席に乗せると、私は車を出して帰路を車で走る。


「…それで、話というのは――何なんだ?」

「大事な話です、とても大事な――あの、お父さん――」

「なんだ」

運転する私を見ながら、シャルロットは――



「お父さん、僕の――『わがまま』を許してくれますか・・・」



運転をしていたので、横目で見る事になったが――シャルロットは真剣な目つきで、精一杯言っているのが分かった
だから、父親として――私は

「ああ…言ってみなさい――『シャル』」

もう二度と、その名前で呼ぶことは無いのだと思っていた。
私に呼ぶ資格も無い、そしてきっと――そう呼ぶことを許してくれないだろうとも思ったから。

私が『シャル』と呼ぶことできっとこの子は怒ると思った――だが、シャルロットは…驚いて眼を見開き、泣きそうになるのを堪えながら

「…僕と、お父さんとお義母さんの事の話です――今までの事、それから…これからの事について」

「シャル」

「は、はいっ――」

「すまなかったな、シャル――私は悪い父親だ」

「お父、さん…?」

今の私が言ってやれるのは、それが限界だった――

「僕も、ごめんなさい――」


最後にシャルがそう言うと、会話は終わってしまった。
きこちなくて、親子なのに他人行儀くさくて――それでも 私とシャルの初めて親子らしい会話 だった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


シャルロットが『話をしたい』と言ってきた日の夜――私は早速時間を作った。
妻である『アルメル』に私が『シャルが話をしたいといってきた』と伝え時には、妻は驚いて、そして泣いてしまった。

私自身もシャルを愛したい、幸せにしてやりたいという気持ちがあるように――アルメルにも、実の子ではないシャルを幸せにしたいという気持ちがあった。
きっと、私より遥かに――シャルの事を考えているのはアルメルだと思う。心配して、関係を気にしているのも妻だろう。
それには理由がある――妻は 『二度と子供を産めない』身体なのだ。

シャルを引き取る少し前、原因不明の病で妻は病院に搬送された。
一時は意識不明の重態で、生死を彷徨った――だが、妻は奇跡的に命を取り留めて元気になった。
眼が覚めて、医師から告げられたのはとても残酷な現実だった。
原因不明の病で彼女の子宮の機能が停止――子供を、産めなくなってしまった。

その事実を聞いて、妻は塞ぎ込んだ。そしてそに追い討ちを掛けるように…『コレット』が病気で亡くなった。
報告を聞いたのは、妻の目が覚めて医師から通告を受けてすぐだった。
妻を悲しませてしまうだけではなく、愛人としてだけではなく一人の女性としても愛していた『コレット』をも失った。
そして、私は…妻の傍に居るのか、コレットの葬儀に参加するのかどちらかの選択を迫られて――妻の傍に居る事を選んだ。

あの時の妻は、眼を離すと自殺でもしそうで…とても脆くて、そしてその時の私は…妻しか目に入っていなかった。

アルメルは、私に愛人が居る事を知っていた。
だが妻は、それについて私を責めなかった――それどころか

『貴方が私を愛したのと同じで、その人のことも――心から愛しているのでしょう?』

そう言ったのだ。その言葉を聞いて、私は――男として情けないとも思ってしまった。

愛人に子供が居る、という事を話しても彼女は変わらなかった

『なら、私も――いつかその子に私の子供を見せてあげたいわね』

本当に、妻は妻には敵わないと思ったし、妻は――『自分の子供をいつかシャルに会わせる』というのが1つの願いだったらしい。

だが、その願いは叶う事は亡くなった。原因不明の病――亡くなった『コレット』、引き取る事になったシャル、そして――あの事件は起こった

シャルを引き取り、実家連れてきたその日――『子供が産めない』身体となり、心を病んでいたアルメルは初対面のシャルに対を見るといきなり――


――パァンッ!
「この…泥棒猫の娘が――!」


そう、言ってしまったのだ。
そうしてしまった事を、妻は後に酷く後悔していた。
「私は、あの子を傷つけたくなかったのに…なのに、私の事であの子に八つ当たりをして…」 そう言って、ひたすら妻は後悔した。

本当は妻だって、シャルの事を見てやりたかったのだ、受け入れてやりたかったのだ――そして、そんな事があったにも関わらず私がしていた事は『仕事』だった。
最低だと思う。私は、仕事に逃げて娘と妻を見ないフリしたのだ――

そうして、私と妻、シャルの親子関係に溝を作ってしまう。
後に――娘のIS適正が非常に高いと会社の調べで分かると、私は…また過ちを犯してしまう。

シャルロットを自社のテストパイロットにして、他者や国が娘に干渉するのを防ごうとした。
確かに、国や他企業は娘に干渉する事はなくなった――そもそも、娘の存在自体が一部の人間にしか知られていなかった。
だが私の『良かれと思って』やった行動は、シャルを傷つけてしまい関係に更なる溝を作る事になる。

娘は、実家と『デュノア社』に幽閉される人形になってしまったのだ。そして…デュノア社を倒産させないために、経営危機をなんとかするために私は娘のIS稼動のデータが必要だった。
私は、結果として『守る』のではなく――傷つけ、『利用』してしまったのだ。

だが、今日シャルが『話をしたい』と言ってくれて、私と妻はリビングでシャルの前に座ると、話を聞いた――

『今日知り合った人達に、僕は教えられて分かったんです――自分で何かをしなきゃ、自分で『可能性』を信じて行動しない限り何も変わらない、今の僕は――自分の思ってる事を全部伝えなくちゃいけないと思った』

シャルは私達に向かって、そう言った。
私と妻は、そんな強くなった娘を見ると――全てを話した。
全てを話し終えて、シャルはただ…驚いていた

「ごめんなさい――シャルロット、私は貴方を傷つけた 本当に…ごめんなさい…」

妻がどんな身体なのか、どう思っていたのか――妻は自分で全てをシャルに教えた。そして、泣きながらシャルに頭を下げた。

「――僕も、ごめんなさい…壁を作って、溝を作っていたのは僕も同じだから…だから、ごめんなさい 『お義母さん』――」

シャルも、自分の気持ち全てを出し切ったのか、涙を流していた。だが、そこにあったのは――『笑顔』だった
コレット、見ているか――お前の子は、とても強く、『太陽のような子』に成長したぞ――

「…私を、母と呼んでくれるの?シャルロット、貴方を傷つけてきた私を――」

「『シャル』、そう呼んで…お義母さん――きっと最初はぎこちないかもしれないけど、僕は――『お義母さん』の事も『お母さん』だと思うから――」

「…シャル、私も済まなかった。今までお前を利用して――傷つけてきた 理解なんてせずに、大人の都合ばかり押し付けて――すまなかった」

「お父さん――ううん、僕も…何もせずに、ただ否定して逃げてたから――だからこれからは…『家族』、だよね? 」

『家族』、その言葉を聴いた瞬間――私はもう限界だった。

「あぁ…ああ…!――シャル、私達は家族だよ、今までは間違ってたんだ、だから間違いを正そう、そして――これからは『家族』として…一緒に暮らそう――!」

大の男の私が――大泣きしながらそう言った。


わだかまりが消えて、その後シャルは色んな事を笑顔で話してくれた。
今日何があったのか、『どんな出会い』があったのか――そして、それが自分を変えてくれて、強くしてくれたと。

「そうか…では、私達もその人達には感謝しなければならないな、そうだろう、アルメル?」

「ふふっ…そうね――私達がいまこうして『家族』として居られるのはきっと、その人達のお陰ね――」

一体何者なのだろうか、私はふとそう思った。
シャルの話を聞く限りだとうちの黒服達を前に引かずに、初対面なのにも関わらずシャルの心理を見抜いて手を差し伸べた二人組み… 
私は、その事についてシャルに聞いてみる事にした

「なあシャル――聞いてもいいだろうか?」

「ん…? 何?お父さん」

笑顔で『お父さん』と言われると嬉しくて仕方ない。今までの関係が関係だったが――笑顔でそう言われると、思わずニヤけてしまいそうになるが…私はそれを押さえ込む

「その二人、というのは一体何者なんだ――?」

「えっとね――まず『アリア・ローレンス』っていう人で、私はアリアさんって呼んでるんだけど…髪が僕の髪の色と一緒でね、凄く綺麗な人だったんだ。 もう一人は『月代 悠』って男の人、僕はユウさんって呼んでるんだけど…フランス空軍の人で、えっと身分証見せてもらったんだけど――そういえば、ドッグタグに『S.H』って彫られてたような…」

月代――ツキシロ? いや、まさかな…
だが空軍、そしてドッグタグに彫られていた『S.H』という文字――まさか…

私はテーブルの上のペンとメモ帳を取るとそこに 私の予測した『S.H』の文字を書く

「シャル、こんな文字じゃ無かったか?」

「あ、うん――お父さんの書いたのと一緒だよ」

やはり――『スカイ・ハウンド隊』か、つまり…『ルヴェル・エディ』か
私がその場で硬直しているのを気にしたのか、シャルが不思議そうに声を掛けてきた

「…お父さん?どうかしたの?」

「あ、いや――もしかしたら空軍に居る私の知り合いの部隊の人間じゃないかなと思っただけだよ」

誤魔化すように笑うと、別の話題に切り替えて私達親子は他愛ない話を続けた。


だが、『ルヴェル・エディ』の関係者に、もう一人の女性か――
……まさか、とは思うが、調べてみたほうがいいかもしれんな
私は妻と娘に悟られないように会話を続けながら、思った。

――先日の郊外の森での事件、政府はマスコミで上手く誤魔化したようだが…私の調べた限りではあれは『IS』での戦闘があった後だ――そしてルヴェル、私の調べではお前の車があの近くで確認されているんだ――私を甘く見てくれるなよ?
一体、今度は何を考えている――? お前は一体 『何を知っている』?

私の疑問は、ただ大きくなるだけであったが…

『…私の迷いも吹っ切れたさ、なら――私の動こうではないか』

娘と妻の笑顔を見ながら私は心の中で、そう呟いた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


時間は戻り、現在――私は…私も未来を望むために、ある行動を起こした。

娘と妻が寝静まった後に、自分の持つ情報ルートを駆使して調べて分かった事があった――それは、ルヴェルが『ネクスト・インダストリー社』に行くという事だ。
そして彼のデータから分かったのは、シャルの話にあった『月代 悠』という人間は…ルヴェルの部隊に存在した。
私の中でパズルのピースが組み合わされて、自身が知りうる情報を整理して分かったのは――ルヴェルがISを保有している可能性、そして恐らくシャルロットの言っていた『アリア・ローレンス』という人物は――<ブラッディア>の異名を持つエージェントだろう。

私はルヴェルと、シャルの言っていた人物達には何かあると確信した――だが、私を突き動かしたのは企業や理念、ましてやビジネスではない…シャルの心を動かした二人の『可能性』、私もそれに魅せられてしまった。
だから私は、その二人に会いたいと望んだ――そして、私達家族をその『可能性』で変えた二人に、私は会って話をして、そしてもし私の信用に足りるなら――協力したいと思った。

私のやった事は 『社長である自分自身が直接『ネクスト・インダストリー社』に話を持ちかける』 という事だ。
今日、恐らくルヴェルと彼ら二人は『ネクスト・インダストリー』に居るだろう。そこで何をしているのかは定かではないが…確実に居る。
だから私は直接電話をして、『レオン・ハルベルト』に私自身の運命と社運を掛けた『ある重要な提案』を持ちかけ、二人に会う事を希望した。

場所は数日後に開かれるわが社の『晩餐会』、そこで極秘に『あの話』を『レオン・ハルベルト』に持ちかける。
そして、シャルロットに未来と『可能性』を示した二人に会い、話をしよう――感謝の言葉と、本当に私が自身の『可能性』を預けるに相応しいか、話をして見極めたい。

さあ、『可能性』を私にももっと魅せてくれ、ルヴェルの秘蔵っ子よ――そして、私を納得させてくれ。 魅了させてくれ。

――もし、シャルを変えたそれが本物なら、 私も全力で力を貸そう。 私をビジネスではなく『可能性』で動かせた君達について、もっと教えてくれ

私は、ふと自分のデスクの上を見る。そこには1枚の書類があった――

『デュノア社とネクスト・インダストリー社の提携提案書』 私の未来と希望を託した、数日後に切る私の――最大の切り札。

その書類を私は厳重に保管すると


「―― 一人の子の親として、そしてシャルを変えた君達の『可能性』に魅せられた私に教えてくれ、君達は 『何者』なのかとね」


そう、社長室で呟いた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――すれ違いを続けていた親子は、分かり合い、歩み寄り…『可能性』を信じる事で本来の『家族』としての形を取り戻す。そして、ジェームズ・デュノア、彼もまた『可能性』に魅せられる。


――彼と二人が出会い、『運命』が大きく動き始める時は近かった。そして――刻々と世界を揺るがす出来事も、二人と『可能性』に魅入った者達に迫りつつあった。



 
 

 
後書き
作者のYatukiです。編集中のあとがきと言うことで、何を書きましょうか。
ひまず、今回のお話は私としても思い入れのあるお話の1つです。そして、それなりの想いを込めて描きました。

すれ違いと衝突を続け『分かり合う』ことができない家族の一人ひとりの心の内をどう表現したらいいか、非常に難しくありましたが書いていて楽しくもありました。

ひとまず、今回編集中に聴いていた執筆BGMは機動戦士ガンダムUCより『RE:I_AM』でした。

文章が荒かったり変な部分がやはりあるかもしれませんが…そこは確認次第、修正と変更を行います。


感想・評価・ご意見下さると作者のやる気がみなぎります。


さて、それでは今回はここまでに。
それでは、また次のあとがきでお会いしましょう。

 
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