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不思議なスライム

作者:yusaaoi
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薬草防衛戦③

「ギュギュー(お前、俺の子分にならないか)?」

スラ子を勧誘するスラ吉。
返答は決まっている。

「キュー!」

NOである。
力づくで薬草を奪おうとした。
そんな奴の部下など、断固お断りだ。

「ギュー(そうか、ならば叩きのめすまで)!」

両者共に、相手へ向かって走る。
リーチの長さを活かしたスラ子のパンチ。
スラ吉は鮮やかに避け、ニヤリと笑って体当たりをした。

「キュグ!?」

スラ子は吹き飛ばされ、地面に転がった。
今回の戦いで、初めてのダメージ。
痛みに顔をしかめつつ、お返しとばかりに石コロを投げる。
だがそれも、あっさりと避けられた。
他のスライムと比べて、スラ吉は戦闘経験が豊富。
相手の動きを見て、どんな攻撃がくるか予測している。
素人と変わらないスラ子の動きは、手に取る様に分かった。

「ギューギュー(俺はスラクックやスラ太朗と違うぜ、おらっ)!」

再び体当たりで、吹き飛ばされる。
起き上ろうとしたが、その前に駄目押しの体当たり。
転がされて、スラ子は倒れた。

「ギュギュギュ、ギュー(くっくっく、薬草はもらっていくぜ)。」

薬草の場所に向かうスラ吉。
しかし、ピタリと止まる。
後ろから気配を感じたからだ。
慌てて振り返った。
目に入ったのは、蹴りを放とうとしているスラ子。

「ギュ(くっ)!?」

捻って避けるが、僅かに身体をかすめた。
スラ吉の目が険しくなる。
油断した自分への怒り、身体に触れたスラ子への怒り。

「ギュー(まだ動けたか)!」

全力で体当たりし、容赦ない攻撃を浴びせる。
高く飛び跳ね、押し潰す勢いで落下したのだ。
転んでいたスラ子は避けれない。
強烈な一撃。

「キュウッ!」

「ギュー(まだまだ)!」

何度も何度も、スラ子の上で飛び跳ねた。

「ギューギュー(はぁはぁ、もう立ち上がれまい)。」

ピクピクと痙攣しているスラ子。
スラ吉は息を切らせながら、薬草の場所に向かうが・・・。

「ギュギュー(おいおい、嘘だろう)。」

また後ろから気配を感じた。
振り返って見たのは、スラ子のドロップキック。
疲労で反応が遅れる。
避けれないと悟ったスラ吉は、引きつった笑みを浮かべた。
ドロップキックのクリティカルヒット!
今度はスラ吉が吹き飛ばされた。

「ギュ、ギュハ(ぐ、ぐはっ)。」

まったく身体が動かない。
納得いかねぇーと、スラ吉は愚痴りたかった。
自分は一撃で、この有り様だ。
あれだけボコボコにしたのに、なんで何度も立ち上がれる?
しかも、元気な状態で・・・。
スラ子が近づいてきた。

「ギュギュー(ここまでか、好きにしろよ)。」

「キュー。」

覚悟を決めたスラ吉だが、目の前に置かれたのは薬草3個。
目が点になった。
渡すのを拒否した奴が、何故今になって渡す?
さっぱり分からなかった。

「ギュー(なんのつもりだ)?」

「キューキュー!」

突然、説教が始まった。
他人の物を取っては駄目、他人に迷惑をかけては駄目。
真剣に語るスラ子。
いつもなら「俺の勝手だ!」と叫びたいが、敗者だから黙って聞いた。
最後に「怪我をさせて、ごめんね」と謝る。
治療の為に、守っていたはずの薬草を、渡してくれたようだ。
スラクックとスラ太朗の分も。

「ギュー(おかしな奴だ)。」

薬草を力づくで、奪おうとした。
こうなったのも自業自得だ。
放置しておいても、誰も文句は言わない。
むしろ、よく不良達を倒してくれたと、褒められるだろう。
それなのに・・・・。
ここで初めて、スラ吉はスラ子に興味を持った。
人間みたいな姿の同族。
何度倒しても、立ち上がる奴。
馬鹿なのか優しいのか。

「ギューギュー(俺達の敗北だ、お前に従う)。」





スラ吉は・・・・・・・・・・・・・・・負けを認めた。




 
 

 
後書き
長い文章を書いてしまった。
えっ?このくらいで長いって?
・・・・・・私にとっては長いのです。
また次からは、短い文章に戻ります。
さて、今回のスラ子。
何度倒れても、立ち上がった理由。
それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・秘密です。
ただ言える事は1つ。
あの木の実の効果は、「人間の姿になる」ではないのです。
おまけです。
真の効果は、いづれまた。 
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