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ジークフリート

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第三幕その十四


第三幕その十四

「ブリュンヒルテは私のものかどうかという燃えるような心配は消えました」
「私は今から貴方のものなのか」
 ブリュンヒルテも言った。
「神の静けさが我が身の中に波立ち」
「そして」
「最も純潔な光が灼熱に燃え上がります」
「私の手によって」
「そうです。貴方の手で、です」
 お互いに熱い目で見合っていた。
「天上の知識は私から消え去る。愛の歓喜がそれを追い払ったのです」
「愛の歓喜が」
「そうです。私は今貴方のものなのか」
 そして彼の名を呼んだ。
「ジークフリート」
「はい」
「私が見えますか」
 こう彼に問うのだった。
「私があまりにも見るので目が見えなくなっていませんか」
「その目がですか」
「そうです。私の腕が貴方を押し付けても」
 その手をジークフリートの前に出した。
「私の手が貴方を押し付けても貴方は燃え上がりませんか」
「その炎で」
「そうです。私の血が今」
 恍惚となった言葉が続く。
「奔流の様に貴方に向かって流れ出した」
「それを」
「その激しい炎を感じませんか」
 ジークフリートに対して問う。
「ジークフリート、貴方は私を恐れませんか?」
「私をですか?」
「そうです。この野生の激しい女を恐れないのですか」
「血の激流に火が点いた時」
 ジークフリートはそれに応えて述べた。
「眼差しの輝きが己を苛んだその時」
「その時は」
「私はです」
 言葉を続けていく。
「眼差しの輝きが己を苛んだ時」
「その時には」
「腕が激しく固く抱き締めたその時には」
 言葉はもう自然と出されていた。
「私の大胆な勇気がまた私に戻って来ます」
「私がその勇気だというのですね」
「そうです」
 話はそう移っていた。
「一度も習えなかったその恐れを」
「恐れを」
「貴女が教えてくれたばかりのその恐れをです」
「恐れを」
「愚かな私は全く忘れてしまいたいのです」
 熱い言葉で語ったのだった。
「それをです」
「その言葉こそがです」
 ブリュンヒルテは微笑んでその言葉を受けたのだった。そうしてまた告げた。
「私はです」
「貴女は」
「子供らしい英雄、素晴らしい若者」
 彼を評した言葉だった。
「貴方は気高い行為の愚かな宝です」
「それが私なのですね」
「そうです、貴方なのです」
 まさにそうだというのだった。
「まさにです。ですから」
「ですから」
「私は笑いながら貴方を愛さなければならないのです」
「私をですか」
「そう。そして」
 恍惚とした言葉はさらに強いものになってきた。
 
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