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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第4章:モンバーバラの姉妹は狼と行く
  第15話:いざエスケ-プッス!

(エンドール行きの船上)
マーニャSIDE

私達は悲しみに暮れエンドール行きの船に揺られている。
キングレオ城ではウルフの作戦通り、何とか牢屋を抜け出せたが……
彼の予想通り外に出るまでが困難で、大勢の兵士等に囲まれ絶体絶命に陥った。

しかしオーリンが……『マーニャお嬢さん、ミネアお嬢さん……この場は私が食い止めます! ウルフを…そのいけ好かない優男を連れて逃げてください……お二人が逃げ切ったのを見計らって私も逃げ出しますから!』と、自らを犠牲に私達を逃がしてくれた。

きっと助からないだろう……
そう思うと彼には酷い事を言いすぎた様で堪らない気持ちになる。
狭い船室のベッドで眠るウルフを見詰め、止め処なく涙が溢れ出してくる。

骨折の影響で高熱を出し、ルーラで私達をハバリアまで運んだ後、そのまま気絶したウルフの看病をしながら、泣いてる私の手を握り寂しく微笑んでくれるミネアが愛おしい。
あぁウルフ……早く元気になってよ。
貴方の笑顔を今すぐ見たいわ。

マーニャSIDE END



(ハバリア港)
ビビアンSIDE

遂に到着した新天地ハバリア……
エンドールの武術大会で、私が男である事をバラされた為、逃げ出す様に船に乗り込み新たなる人生を歩む土地へやって来た私。
船で仲良くなったマリーちゃんと一緒に、女子らしくキャピキャピはしゃいで下船する。

彼女は人を捜してこの地まで来たらしく、下りて早々人々に話を聞き回っている。
何でも家族とはぐれてしまったらしいが……
一緒に旅をしているメンバーが変なのだ。

一人は厳つい髭を生やしたピンクの鎧を着た戦士風のオッサン……
もう一人……って言うのか、もう一匹は何とモンスターのホイミスライム!
マリーちゃん曰く『ホイミンは良い子なのよ。人を襲ったりしないから怖がらないにでね♥』って事なのだけど……
やっぱり怖いから近寄らない様にしている。


「えー!? じゃエンドール行きの船は、私達が乗ってきた船と入れ替わりで出港した船で最後なのぉー!?」
何やら港の人達と話をしていたマリーちゃんが、ガックリと項垂れ此方へ戻ってくる。
どうしたのだろう?

「マリーちゃん……どったの?」
「ビビアンちゃん……私の知り合いらしき人物が乗った船が、既に出港しちゃったらしく……入れ違いでエンドールに行っちゃったの……こんな事なら船に乗るんじゃなかったー!」

まぁ、アンラッキー!
「じゃぁ再度船に乗ってエンドールへ帰っちゃうの?」
「ううん……それがこの国から出港する船は、もうないらしいの……何でも国王暗殺があったらしく、キングレオ領内は鎖国するって話! キメラの翼も王家が回収しちゃったんだって!!」

「しかし国王暗殺とは……物騒な事ですな! 我々としてはそこら辺も調べ、勇者様の足取りを追わねばなるまい!」
「ああそうですか……頑張って」
私この男苦手……お堅そうなのよねぇ……
男が堅いのは一部だけで良いのに♥

「あ、ヤベェ……あのウソを真に受けたままだったわ……」
ヒゲ戦士の熱い闘志に、小声で何かを言うマリーちゃん。
何やら後ろ暗い事があるらしい(笑)

詳しくは解らないけど、何か面白そうだし一緒について行こうかな?
新天地で素敵な彼氏が見つかるまでの間、マリーちゃん達と一緒に冒険してみようかな?
本当は武術大会で優勝し、興味ないけど姫と結婚して王位を継いだら、マッチョメンを集めたハーレムを築く予定だったの。

だけど筋肉姫(あとセコンドのターバン男)の所為で夢が叶えられなかったし、この土地で冒険しながら一生の伴侶を捜すのも良いかもしれないわよね!
うん。マリーちゃんと一緒にいると楽しいし、取り敢えず一緒に行こ~うっと!

ビビアンSIDE END



(エンドール行きの船上)
ウルフSIDE

俺は目を覚ます。
まだ腹部に痛みを残したままだが……
ゆっくり目を開け周囲を確認する。

「……!?」
思わず叫びそうになる……俺の隣では裸のマーニャさんが寝息を立ているではないか!?
腹部の激痛のお陰で、間一髪大声を上げずに済んだが……

慎重に起きあがりベッドから抜け出して腹部を確認する。
どうやら骨は元の位置に戻った様だ。
どのくらい気を失っていたのだろう?
最低3日は経つだろうな。

俺は内臓の損傷を直す為、自分の腹部にベホマをかけた。
よし! これで主導権を握る事が出来る。
裸のマーニャさんが隣で寝ていただけで大声を上げて驚いていては、今後の主導権を握れないからね。
青臭い頃のティミーさんを見ていれば良く分かる。

フッとベッド脇の床に目をやると、ミネアさんが毛布にくるまり眠っている。
これはどういう状況だ?
ベッドで寝るのはマッパの姉……愛しの妹は床で寝る。
月明かり差し込む船室で、俺は交互に姉妹を眺めて考える。

「ん……お目覚めですかウルフさん?」
すると目を覚ましたミネアさんが、気遣う様な視線で話しかけてくる。
やはり床では熟睡は出来ないのだろう……

「ご心配お掛けしました。俺はもう大丈夫なんですけど……この状況が飲み込めなくて」
俺は怪我していた部位を両手で軽く叩き、自らの魔法で完治させた事をアピールして、お二人の位置関係を尋ねてみる。

「あ、ご説明しますと……ウルフさんの作戦のお陰で、私達は無事船に「いえ……キングレオ領から逃げ出せた事は推測出来るんですが……ミネアさんが床で寝ていて、マーニャさんが俺の隣で裸な事が意味不明なんです」

だが真面目な性格のミネアさんは、俺が“キングレオからの逃亡経緯”を尋ねたと勘違いし、親切に説明しようと立ち上がった。
しかし俺は知っている……城から逃げ出すのが困難で、オーリンが自らを犠牲にしてお二人と俺を逃がした事。
何とか外に出て、俺がルーラを唱えハバリアまで逃亡できたこと。
そしてルーラの影響で俺の内蔵に負荷が掛かり、激痛で気を失った事など……

「あぁ……これはですね、只今姉さんの服は洗濯中なんです。私達慌てて逃げ出してきたので、ウルフさんの剣以外の荷物は回収出来なかったんですよ。だからエンドールに着くまでの間、服が1着しか無くて……昨晩は私の服を洗濯したので、ウルフさんの隣で裸になって寝てたんですよ(笑)」

なるほど……確かに牢屋から抜け出した時、最初に遭遇した兵士が戦利品とばかりに俺の剣をぶら下げていたので、オーリンが一撃で伸し回収する事が出来たが……
彼女等の荷物は何処に保管されたのか分からないから、探し出す事すら出来なかったし、そんな余裕も無かったな。
何より保管されているのかも分からないし。

「なるほど理解出来ました。てっきり『何時でもどうぞ♥』って意味かと思って考えちゃいましたよぉ(笑)」
「何時でも……? それは一体……?」
あぁそうだ……この(ひと)に下ネタは危険なんだった。

「いえ……何でもありません。それより俺はもう大丈夫ですから、ミネアさんもベッドで寝てください」
俺は剣を腰に下げ、きっと気絶中に洗濯してくれたのだろう綺麗なマントを羽織り、夜の海を眺めに船室から出て行く。

月明かりを浴びながら、何処にいるのか分からないマリーを考え黄昏れよう。
でも……リュカさんと合流出来たら必ず戻るぞ!
キングレオに戻って仕返しをしてやる!
あんな美女二人を悲しませた奴等を許しはしない!

ウルフSIDE END



(エンドール行きの船上)

深い悲しみの中、モンバーバラの姉妹と異時代の達人ウルフ達は、エンドールへの航海を続けて行く。
熱い決意を胸に秘め、はぐれた家族との再会を思い描きつつ……
そしてミネアのみが勇者の存在を新天地に感じながら。

蛇足だが……
翌朝ベッドで目覚めたマーニャは、隣で寝ているであろうウルフに目覚めのキスを行い、ミネアの悲鳴で我に返る。
夜中に入れ替わった事を知らない彼女は、妹に舌を絡ませたキスをしてしまったのだ……

「私……姉さんに愛されているとは感じてましたけど……そう言う意味でだったんですか?」
「ち、違うわよ! だって……隣はウルフだと……その……ね、寝ぼけただけなんだから!」
裸のまま慌てるマーニャを眺め“美人双子姉妹によるディープな百合劇場”ってのも乙かな? と思いを馳せるウルフ。

彼等の冒険はまだまだ続く……
勇者と合流し家族と再会し、受けた借りはキッチリ返す冒険の旅はこれからなのだ。



第4章:モンバーバラの姉妹は狼と行く 完



 
 

 
後書き
やっと4章も終わりました。
そして次話は遂に勇者様の登場です。
リュカ家の面子もビアンカとリューノを残すのみ……
勇者の性別やビアンカとリューノのどちらが登場するのかは、次回までの秘密ですけど……
勇者の性別は連載開始前から決めておいた事ですので、皆様大目に見てやってください。

「第5章:導かれし者達…トラブルを抱える」は6/10の0時1分掲載です。
お楽しみに! 
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