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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第四十六話 面白過ぎるぞこの世界

 一階に降りてきた闘悟を歓迎したのは、またも屈強な男達の視線だった。
 闘悟は意に返さずに受付から出る。
 そして、受付に戻って来たアンシーに声を掛ける。


「ギルドカードって、どれくらいでできるんですか?」


 いきなり声を掛けられたことに驚いたが、すぐに仕事モードに突入する。


「あ、はい! えっとですね、十分くらいです」
「なら、このまま待たせてもらいますね」
「わ、分かりました!」


 アンシーは、闘悟をジッと見ることができないのか、チラチラと盗み見るような仕草をする。
 闘悟はそれに気づいているが何も言わない。
 彼女の気持ちが理解できるからだ。
 まるで珍しいものを観察するような視線だ。
 だけど、やはり相手が人間なので、ジッと見るのは失礼だと思っているのだろう。


 その時、三人の男が闘悟の周りに集まった。
 闘悟は真ん中の体格のいい男を見る。
 背が高いので見上げる形になる。
 他の二人は、闘悟とさほど変わらないので、百七十センチくらいだろう。
 二人は対照的で、ガリガリとデブという外見をしている。
 だが、真ん中の男は間違いなく闘悟より二十センチは高い。
 かなりの大男だ。
 何を食べたらこんなに身長が伸びるのか、闘悟は少し羨ましくなる。
 だが三人とも、あの貴族であるリューイと比べると、お世辞にもルックスがいいとは言えない。
 露出させた肌からも大小様々な傷が目に入る。


「よぉ、小僧」


 真ん中の男が、男らしい低い声で話しかけてきた。
 すると、職員側に少し緊張が走った。
 それを闘悟は敏感に感じ取る。
 そのことで判断できた。
 変な奴に絡まれた可能性が高いと。
 アンシーも、不安顔をして闘悟と男を見る。


「……何?」


 闘悟は敬語は使わなかった。
 明らかに自分より年上だが、下手に出るつもりが無かったからだ。
 だが、男は闘悟の反応には気分を害さない。


「お前、今二階から降りてきたよな?」
「そうだけど?」
「少し前、二階から魔力を感じたんだが、何が原因か知ってたら教えろ」


 命令口調で言い放ってきた。


「原因? ああ、それオレだよ?」
「はあ?」


 三人だけでなく、アンシー以外、その場にいた他の職員や登録者達も目を白黒させる。


「お前が原因だと? 何の冗談だ?」
「冗談なんか言ってねえぞ?」


 闘悟の言葉を聞いて、三人だけでなく、他の登録者も笑い始めた。


「はははは! おいおい、聞いたか? さっきの魔力、どうやらこんなチビのものだったらしいぞ!」


 男達はなお笑う。


「それはそれは大したもんだ! 先輩登録者としても、こりゃウカウカしてられねえよな!」


 この場で、焦り顔を作っているのはアンシーだけだ。
 他の登録者や職員達も、いきなり現れた弱そうな少年が、ホラを吹いているとしか思っていないだろう。
 ただ、アンシーだけは、まだ完全には信じ切ってはいないが、ジュネイの言葉が引っ掛かっているので笑うことができない。
 すると、闘悟は静かに目を閉じ微笑する。


「そうだな。ウカウカしてると、先輩も形無しになるからな」


 その言葉を聞き、さすがにカチンときたのか背の高い男は闘悟を睨む。


「おい小僧、あんまり調子に乗るなよ? お前のギャグに乗ってやってるってのが分からねえのか?」
「オレはホントのことしか言ってねえ」
「ああ?」
「さっきの魔力はオレが原因だし、アンタらがウカウカしてると…………馬鹿を見ることになるぜ?」
「…………ほぅ、今日が初めての登録の小僧が、ずいぶん舐めたことを言ってくれるな」


 すると、三人の中の一人、顔も体も細長いガリガリ男が話し出す。


「アニキ、格の違いって奴を教えてやるっすよ」


 同じようにもう一人の太ってるデブ男が話す。


「そうぶひ。こんな世間知らずなガキには、社会勉強っちゅうもんを教えてやるべきぶひ!」


 何だコイツありえねえ!
 語尾にぶひって、存在がファンタジー過ぎんだろ!
 何て面白え世界だ『ネオアス』!


「……そうだな。ただまあ、こんなチビガキと本気でやっても、俺には何のメリットもねえ。だからこうしよう」


 背の高い男はニヤッと笑って一本指を立てる。


「一発だ。俺に一発本気で殴ってみな。なあに、俺は一歩も動かねえからよぉ」


 すると、二人の子分らしき男達がコソコソと話し出す。


「きたっすよきたっすよ、アニキの試しの一発」
「ぶひ、だが多くの連中がここで勘違いをするんだぶひ」
「そうっす、アニキは一歩も動きゃしねっすが、手は出すんすよねぇ」
「そうぶひ、アニキが動かないと思っている奴は、平気で懐(ふところ)に入ってくるんだぶひ。その瞬間、パンチでズゴッだぶひ」
「足は動いてねえっすから、約束通り一歩も動いてはいないんすよね」
「不憫(ふびん)なガキだぶひ。登録初日から消えちまうことになるなんてぶひ」
「ま、アニキを怒らせた罰ってやつっすよ」


 二人は怪しく微笑みながら会話をしている。
 もちろん、この会話は闘悟には聞こえない。


「さあ、どうする?」


 背の高い男は楽しそうに笑いながら聞いてくる。
 普通なら、こんなガタイのいい男に凄まれたら委縮するだろう。
 だが、残念ながら闘悟は普通ではない。
 闘悟は男と同じように笑いを返す。


「あ? 何笑ってんだお前?」
「いいねぇ、それやろう」
 
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